330: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:22:17.29 ID:cVj44lIb0
える「それでは」

える「今年一年、お疲れ様でした」

える「古典部として活動する時間も大分少なくなって来ましたが……」

える「最後まで、頑張りましょう!」

里志「いいね、やっぱりこういうのは千反田さんに任せるべきだ」

千反田のスピーチで、里志曰く「忘年会」

俺からすれば、ただの集まり……が始まる。

える「ふふ、ありがとうございます」

331: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:22:51.37 ID:cVj44lIb0
それにしても、改めて思うが……もう今年も終わりか。

……思えば早かった。

里志の言葉は、概ね正しいのかもしれない。

終わってしまえば、過去の事なんてあっという間だと。

千反田との事も、考えねばならない。

何か良い、最善の策はある筈だ。

今まで何度も考えてきて、色々な問題に答えを出してきたんだ。

きっと、今回の事も考えさえすればどうにかなるだろう。

しかし、その反面……それは俺の希望なんじゃないかとも思う。

……もし、もし何も答えが出なくて、どうしようも無くなってしまったら。

せめて千反田との約束だけは果たそう。

別れる時に、悲しまないという約束だけは。

332: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:23:30.71 ID:cVj44lIb0
里志「ホータロー?」

奉太郎「ん、何だ」

里志「中々に神妙な面持ちをしていたからね」

里志「まあ、無理も無いとは思うけど」

そう言う里志は苦笑いをしていた。

奉太郎「そうだな……」

里志「僕に出来る事なら手伝うからさ、何かあったら言ってね」

里志に何か出来る事……か。

そう言えば、何か忘れている気がする。

ええっと、確か……

333: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:24:16.42 ID:cVj44lIb0
える「折木さん、現場検証をしましょう!」

ああ、そうだった。

千反田のチョコの謎があったのか。

里志「現場検証? 面白そうな話だね」

奉太郎「そうだな、里志や伊原にも話しておくか」

すると俺の言葉が聞こえたのか、伊原も近くに寄ってきた。

摩耶花「何? またちーちゃんの気になる事?」

奉太郎「ああ、その通りだ」

奉太郎「えっとだな……」

334: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:24:42.77 ID:cVj44lIb0
里志「なるほど、千反田さんのチョコが消えたって事だね」

摩耶花「でも、その話を聞く限りだと……」

奉太郎「そうだ、千反田の母親にしか出来なかったんだ」

える「ですが、母は知らないと……」

里志「ううん、確かにそれは妙だね」

奉太郎「ああ、だから現場検証って訳だ」

そう言い、俺は立ち上がり、そのままの足でテーブルの近くに行った。

上に並んでいるのは簡単なお菓子や飲み物。

その殆どは、千反田の家に来る途中買った物だった。

その内の一つの皿を手に取り、千反田に問い掛ける。

335: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:25:25.65 ID:cVj44lIb0
奉太郎「千反田、これは?」

える「え? ええっと、それはお菓子ですよ、折木さん」

奉太郎「そうだな」

それを聞き、俺はその皿をテーブルへと置き直す。

次に違う皿、これは冷蔵庫に入っていたのか少しだけ冷えていた。

その皿を持ち、千反田に再度聞く。

奉太郎「じゃあ、こっちは?」

える「あの、もしかしてお菓子の種類ですか?」

える「それならば、そちらはマドレーヌですね」

奉太郎「……そうか」

336: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:25:52.36 ID:cVj44lIb0
奉太郎「皿の大きさに比べて、乗っている数が足りない気がするんだが」

える「あ、ええっとですね……」

える「最初は、私と両親で食べようと思っていたんです」

える「ですが、皆さんが来ると聞いたので……」

奉太郎「なるほど、それで皿に移したって事だな」

える「いえ、そのお皿には元々乗せていました」

奉太郎「ああ、そうか」

一つだけ気になる事があるが……どうした物か。

337: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:26:35.45 ID:cVj44lIb0
ん、待てよ。

奉太郎「これ、一つ貰うぞ」

える「ええ、どうぞ」

俺はその言葉を聞き、マドレーヌを一つ口に運ぶ。

える「ふふ、おいしいですか?」

奉太郎「ああ」

とにかく、これで先程の疑問は解けた。

後は、一連の事を繋げるだけなんだが……まだ足りない事もあるな。

里志「ホータロー、まさかマドレーヌが食べたかったってだけじゃないよね」

奉太郎「何だ、里志も欲しいのか」

摩耶花「ちょっと、冗談は良いけど、何が何だか分からないんだけど」

338: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:27:09.33 ID:cVj44lIb0
……あまり伊原を怒らせない方がいいだろうな。

奉太郎「じゃあ、そうだな」

奉太郎「場所を変えるか」

奉太郎「千反田、そのチョコが置いてあった場所に案内してくれるか」

える「ええ、分かりました! いよいよですね」

える「では、台所にまだあると思うので、行きましょうか」

339: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:28:43.22 ID:cVj44lIb0
~台所~

える「良かったです、まだありました」

そう言い、千反田はチョコが入っていたと思われる箱を指差す。

奉太郎「なるほど、確かに一つも残ってないな」

箱には20個程入っていたのだろう、だが中には一つも残されていない。

摩耶花「あれ、こっちの箱は?」

伊原が指差すのは、隅に置いてある箱だった。

見た目的には確かに、お菓子の箱みたいだが。

える「それは、先程のマドレーヌが入っていた箱です」

里志「なら、関係は無さそうだね」

確かに……一つ一つ見ると、関係は無いように見える。

340: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:29:29.24 ID:cVj44lIb0
奉太郎「ふむ」

俺は一度、考えを整理する為に廊下に出る。

台所の方からは、微かに三人の話し声が聞こえていた。

奉太郎「さてと」

廊下は冷たく、少しの風が吹き込んでいる。

しかしなんとなく、こっちの方が集中できる気がした。

奉太郎「……まず」

考えるべき事を纏めよう。

千反田のチョコを隠したのは誰なのか?

何故、そんな事をしたのか?

そしてまだ、そのチョコはあるのか?

今まで見た事を繋げれば、答えは出る筈だ。

しばし俺は、集中して考えた。

341: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:30:23.58 ID:cVj44lIb0
台所に繋がるドアを開ける。

すると、すぐに三人の視線が俺の方に向いた。

奉太郎「何だ、何か顔に付いてるか」

里志「敢えて言うなら、目と鼻と口、眉毛って所かな」

摩耶花「そうじゃなくって、何か分かったの? 折木」

奉太郎「……まあ、一応はな」

える「本当ですか!」

やはり、最初に反応を見せたのは千反田であった。

里志「さすが、ではご説明願うよ」

奉太郎「ああ」

特に焦らす必要も無いし、俺はそのまま説明に入る事にする。

342: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:30:50.49 ID:cVj44lIb0
奉太郎「まず、そうだな」

奉太郎「誰が千反田のチョコを隠したかって所からか」

里志「悪く言うなら、犯人って所だね」

奉太郎「そう言う事だな」

える「それで、犯人は?」

奉太郎「これはまあ……全員予想が付いているだろ」

摩耶花「って事は、ちーちゃんのお母さん?」

伊原の問いに、頷く。

奉太郎「そうだ、もし母親以外だったらそれこそオカルトになるな」

里志「はは、それも中々に面白そうだけどね」

奉太郎「俺も別に嫌いって訳じゃないが、今は省くぞ」

343: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:33:01.56 ID:cVj44lIb0
える「やはり、そうでしたか……」

える「でも……何故、母はチョコを隠したのでしょうか?」

奉太郎「それは少し、長い説明になるが」

奉太郎「どこから説明するか……」

奉太郎「ああ、その前に千反田に一つ聞くことがある」

奉太郎「聞くと言うよりは、頼み事だな」

える「私にですか? 何でしょうか」

奉太郎「今日のチョコの一連の流れを再現してくれるか」

える「分かりました、では」

その言葉を聞き、里志と伊原は場所を空ける。

344: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:34:42.87 ID:cVj44lIb0
える「まず、この場所でチョコを食べていました」

千反田が指したのは、簡単なテーブルと椅子がある場所。

える「それでですね、途中で電話が鳴ったので……」

奉太郎「一度、席を離れたんだったな」

える「はい、そうです」

える「それで、戻ってきた時には既に無くなっていたんです」

奉太郎「ふむ、その後確か……親に聞いた」

える「ええ、ここにあったチョコを知らないか、と言った内容の事を聞きました」

そう言い、千反田は先程見せたチョコの箱を指差す。

奉太郎「なるほど……やはりそうか」

摩耶花「え? 別におかしい所なんて無かったと思うけど」

里志「でも、聞けば聞くほど変な話だよね」

里志「千反田さんのお母さんは、千反田さんが尋ねた事に何で答えなかったのか」

里志「やっぱり、オカルト的な何かなんじゃないかな」

345: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:37:22.90 ID:cVj44lIb0
える「本当ですか、私の家にはお化けが出るのでしょうか……」

奉太郎「んな訳あるか」

奉太郎「いいか、まず千反田の癖について話す」

える「私の癖、ですか?」

奉太郎「そうだ」

奉太郎「さっきのマドレーヌ、元から皿に乗っていると言ったな」

里志「それは僕も聞いたけど、それがどうかしたのかい?」

奉太郎「手作りって訳じゃないんだろ? 千反田」

える「はい、そうです」

奉太郎「さっき伊原が箱を指したとき、それにマドレーヌが入っていたと言ってたしな」

奉太郎「つまり、千反田はわざわざ箱に入っていたマドレーヌを皿に移したって事だ」

奉太郎「それも、俺達が来るからでは無くて元からな」

346: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:38:46.92 ID:cVj44lIb0
里志「え? 僕達が来るって事だから移したんじゃないのかな?」

奉太郎「違う、それだったらわざわざあんな大きな皿には乗せないだろう」

奉太郎「見た限り、丁度良さそうな皿なんていくらでもあるぞ」

里志「なるほどね、それで元から乗っていたって事が分かる訳だ」

える「で、ですがちょっと待ってください」

える「それとチョコに、どういった関係が?」

奉太郎「千反田は恐らく、そのチョコも皿に移していたんだろう」

奉太郎「それで皿に乗っていたチョコを食べていた、そこに電話が来る」

奉太郎「それで戻ってみたら……無くなっていたんだ、皿に乗っていたチョコが」

里志「……なるほどね」

347: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:39:57.88 ID:cVj44lIb0
奉太郎「そして千反田はその場に居た母親に聞いた、チョコはどこにあるのか、と」

える「ですが、それなら母が答えなかった理由が……」

奉太郎「この箱を指差して、言ったんだ」

摩耶花「って事は、ちーちゃんのお母さんは箱に入っている物とお皿に乗っている物を別々に捉えたって事?」

奉太郎「そうだろうな、そう考えれば答は出る」

奉太郎「千反田、冷蔵庫を開けてみろ」

える「は、はい。 分かりました」

そう言い、千反田は冷蔵庫を開く。

里志「はは、灯台下暗しって所かな」

える「どうして気付かなかったんでしょう……」

奉太郎「まあ、千反田の母親も悪気は無かっただろうさ」

摩耶花「でも、でもさ」

348: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:41:15.84 ID:cVj44lIb0
摩耶花「ちーちゃんはお菓子とか用意したのに、なんで気付かなかったの?」

摩耶花「開ければすぐに気付くよね? ここなら」

奉太郎「そうとも限らんさ」

そう言い、俺は先程まで居た部屋へと足を向ける。

当の千反田は、もう気付いている様子だった。

349: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:41:44.59 ID:cVj44lIb0
~居間~

奉太郎「これだ」

俺は皿を一つ手に取る、マドレーヌが乗った皿だ。

奉太郎「まだ分かるかもな、食べてみろ」

摩耶花「……うん」

伊原は依然、納得出来なさそうな顔をしている。

渋々、と言った感じでそれを口に運んでいた。

摩耶花「……あ、冷たい」

里志「なるほど、分かったよ」

里志「千反田さん、このマドレーヌは冷蔵庫に入ってたんじゃないんだね」

350: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:42:16.03 ID:cVj44lIb0
える「正しく言えば、そうですね」

摩耶花「……私も分かったかも」

奉太郎「そう、それが入っていたのは」

奉太郎「冷凍庫だ」

里志「はは、マドレーヌやケーキは冷凍保存できるからね」

里志「それで気付かなかったんだ、冷蔵庫に入ったチョコに」

える「なるほど、確かに冷蔵庫の方は見ていませんでした」

える「やはり、母が仕舞っていたんですね……」

ま、千反田の気になる事がこれで解けたなら、めでたしと言った所だろう。

里志「じゃあ、気を取り直して……って言うのもあれだけど、忘年会の続きをしようか」

351: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:42:46.34 ID:cVj44lIb0
里志の言葉を受け、千反田と伊原は再び席に付き、何やら話を始めている。

……随分と切り替えが早い奴らだな。

俺はと言うと、楽しそうにしている里志達に気付かれない様、そっと部屋を出た。

いつもの……と言うのも変か、俺の家じゃあるまいし。

縁側に座り、かなり冷たくなった風を浴びていた。

352: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 17:44:03.14 ID:cVj44lIb0
俺は一つの事を考えていた。

今日の問題みたいに、簡単に解決できない物かと。

変わらずにあいつと接していると言っても、やはり妙な距離感は感じてしまう。

千反田はどうか分からないが……

一度、里志にでも相談してみようか。

意外と頼りになるしな、あいつは。

伊原も頼りにはなるが……里志の方が、まあ気楽に言えると言う物だ。

後数日すれば、今年も終わる。

卒業式はいつだったか、3月だっけか。

って事は、後2ヶ月程度か?

それまでに答えは出せるのか、俺に。

353: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 18:04:17.38 ID:cVj44lIb0
……にしても寒い、流石は12月か。

北海道の方が寒かったが、こっちもこっちで寒い物は寒い。

何か暖かい飲み物でも持ってくれば良かったか……

そんな事を考えていた時、ふと後ろに気配を感じる。

姿を見ずとも、なんとなく誰かは分かった。

奉太郎「千反田か」

える「凄いですね、後ろに目でもあるのでしょうか」

奉太郎「どうだろうな、気になるか?」

える「ええ、少し」

笑いながら、千反田は俺の隣に腰を掛ける。

354: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 18:04:47.60 ID:cVj44lIb0
奉太郎「なんとなくな、分かっただけさ」

える「そうでしたか、本当に目があるのかと思いました」

俺の事を化け物とでも思っているのだろうか。

奉太郎「それで、何か用事だったか?」

俺がそう聞くと、千反田は手に持っていたコップを一つ俺に手渡す。

それは暖かい紅茶だった。

奉太郎「凄いな、テレパシーでもあるのか」

える「え? どういう事でしょうか……」

奉太郎「いや、何でもない」

二人並んで座り、紅茶を飲む。

……やはり俺の淹れたお茶より、こっちの方が数倍美味い気がする。

355: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 18:05:14.55 ID:cVj44lIb0
える「あの、一つ良いでしょうか」

奉太郎「ん、どうした」

える「先程のチョコの件なんですが、分からない事がまだあるんです」

奉太郎「……ああ、何となく察しは付く」

奉太郎「何故、千反田の母親はそれが千反田が聞いたチョコだと分からなかったのか、だな」

える「ええ、そうです」

える「いくら私が箱を指していたと言っても、おかしくは無いでしょうか」

える「もし、私が逆の立場だったら」

える「お皿に乗っていたチョコを思い出して、これの事か聞いていたと思うんです」

奉太郎「確かに、その通りだ」

える「それなのに、何故母は言わなかったのでしょう」

356: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 18:05:41.31 ID:cVj44lIb0
奉太郎「……真実が分かるのは千反田の母親だけだが」

奉太郎「もしかしたら、何か言わない理由があったのかもしれない」

える「言わない理由……ですか」

奉太郎「俺はお前の母親の性格とかは知らないし、考えも分からないが……」

奉太郎「何かの目的が、あったんじゃないか?」

奉太郎「それを言わない事でどうなるか、考えれば……お前になら分かるかもな」

える「それを言わない事で、何が起こるか……ですか」

える「……」

千反田は集中して考えいてる様子だった。 何もそこまで集中しなくていいだろうに。

千反田が考えている間、俺は紅茶を啜る。

357: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 18:06:11.51 ID:cVj44lIb0
3分くらい経っただろうか、千反田の口から言葉が漏れた。

える「……もしかしたら」

える「母が言わない事で起きた事、分かったかもしれません」

奉太郎「ほう」

奉太郎「それで、起きた事とは?」

える「今日の事です」

今日の事……と言われても、どれを指しているのか分からないでは無いか。

奉太郎「えっと、今日のどの事だ」

える「全部ですよ」

358: ◆Oe72InN3/k 2012/12/19(水) 18:06:55.96 ID:cVj44lIb0
える「折木さんが推理した事、全てです」

奉太郎「俺がした事?」

奉太郎「すまん、良く意味が分からないんだが……」

える「あ、すみません」

える「実はですね」

える「良く、母とお話しているんです」

える「折木さんの事を」

千反田は恥ずかしそうに、そう言った

第32話
おわり

365: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 15:53:45.87 ID:l81KEbcN0
こんにちは。

今日は多分、18時くらいの投下となります。

土日月はちょっと投下できそうにないので、来週完結となりそうです。

それではまた後ほど、失礼します。

368: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:09:46.08 ID:l81KEbcN0
1月のとある日、俺は里志を家に呼び出した。

理由が無く呼び出した訳では無い、俺はそういう奴では無いから。

里志「ホータローの部屋に入ったのは随分久しぶりな気がするね」

奉太郎「そうだったか?」

里志「前に来たのは、確かホータローが風邪を引いた時だったかなぁ」

ああ、去年の話か。

奉太郎「そんな事もあったな」

奉太郎「あの時は随分な扱いをしてくれて、ありがとう」

369: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:10:19.42 ID:l81KEbcN0
里志「はは……悪いとは思ってるよ」

里志は少しだけ顔を引き攣らせながら笑い、壁を背に座る。

里志「それより、今日は思い出話の為に呼んだのかい?」

奉太郎「そうだと言ったらどうするんだ」

里志「別に? ホータローにもそういう感情があるんだな、と関心するかな」

奉太郎「そうか、なら関心はされないな」

里志「はは、そうかい」

里志「それなら、本題は何かな」

恐らく分かっているだろうに、こいつも性格が悪い。

370: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:10:47.61 ID:l81KEbcN0
奉太郎「の前に、何か飲むか?」

里志「お、気が効くね」

里志「なら、お茶でも貰おうかな」

奉太郎「ああ、ちょっと待ってろ」

俺はそう言い、部屋を後にする。

台所でお茶を淹れ、考える。

今日、里志を呼んだのは……千反田の事で相談したかったからだ。

だが、それだけでは解決できないのかも、と言った想いもある。

俺は……誰かに話したかったのかもしれない。

371: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:11:15.65 ID:l81KEbcN0
そんな事を考えている間に、お茶を淹れ終わった。

カップを二つ持ち、自分の部屋へと戻る。

奉太郎「待たせたな」

里志「ホータローが自ら動いて淹れてくれたお茶なんて、一生に一回飲めるか飲

めないかじゃないか」

里志「いくらでも待つよ」

奉太郎「さいで」

里志に片方のコップを手渡し、俺はベッドに腰を掛けた。

奉太郎「それで、本題だが……」

奉太郎「里志も大体の見当は付いているだろ」

372: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:11:45.03 ID:l81KEbcN0
里志「……ま、付いていないと言えば本当の事では無いね」

奉太郎「なら話は早いな、千反田の事だ」

里志「僕が提案できる事なんて大した事では無いけど、いいかな」

奉太郎「構わんさ」

俺の言葉を聞き、里志は天井を見ながら口を開いた。

里志「まず、さ」

里志「ホータロー自身は、どうしたいの?」

373: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:12:14.58 ID:l81KEbcN0
奉太郎「俺自身か」

奉太郎「そりゃ……別れたくは無い」

奉太郎「俺が考える最善は」

奉太郎「千反田の気が……千反田と言うか、千反田の両親のだが」

奉太郎「進学する大学を神山市内にする事にした……それと」

奉太郎「俺が付いて行く、千反田に」

里志「……そうかい」

そう言う里志の顔からは、いつもの笑いは消えている様に見えた。

374: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:16:15.76 ID:l81KEbcN0
里志「まず、前者だけどね」

里志「遅すぎるってのが、正直な感想かな」

奉太郎「そりゃ……そうだろう」

里志がそう言うのも無理は無い、この時期に進学する大学を変える等……無理な話だ。

里志「後者だけどね、それはホータロー自身は望まないんじゃないかなって思うよ」

里志「勿論、千反田さん自身もね」

奉太郎「……ああ」

千反田は最初こそ、自分を連れて遠くに行こうと提案していた。

しかしあれは、駄目だ。

千反田は恐らく、もう決心は付いている。

俺がもし、千反田に付いて行く等言ったら……あいつはどんな顔をするのだろうか。

それが少し、怖かった。

375: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:17:17.34 ID:l81KEbcN0
奉太郎「どっちにしろ、遅すぎるって事か」

里志「……だね、ホータローの出した案だとそう言う事になるよ」

奉太郎「……もし」

奉太郎「もし、里志が逆の立場だったら……どうすると思う?」

里志「それはつまり、僕がホータローの立場だったらって事かな」

奉太郎「そうだ」

里志「うーん」

口ではそう言っていた物の、里志はあまり考えている様には見えなかった。

里志「無難に別れるって選択肢を選んだら、後が怖そうだね……」

奉太郎「おい、別に相手を伊原で考えろとは言ってないぞ」

里志「はは、冗談だよ」

376: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:17:46.10 ID:l81KEbcN0
里志「逆の立場だったら、か」

里志「……質問に質問で返して悪いんだけどさ、ホータローはこのままだとどうなると思う?」

奉太郎「このままだと? そんなの、決まっているだろ」

奉太郎「……別れるしか」

里志「やっぱり、そう思ってるのか」

俺の言葉を途中で切り、里志は口を開く。

里志「何でそうなるのかな?」

奉太郎「何でって、誰が考えてもそうなるだろ」

里志「はは、それは違うよ」

里志「僕だったらね、伝えるよ」

377: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:18:12.53 ID:l81KEbcN0
奉太郎「伝える……って言うのは?」

里志「想いをね、ちゃんと伝える」

奉太郎「それは……迷惑だろうが」

里志「何でそうなるのかな?」

奉太郎「千反田はもう、決心が付いているんだ」

奉太郎「なのに、それを揺らがせる事を言ってどうする?」

里志「……はは」

里志「ホータローはさ、おかしいと思わなかったの?」

奉太郎「……何がだ」

里志「今日の事さ」

378: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:19:11.43 ID:l81KEbcN0
今日の事……?

里志「君はこう思っているんだよね」

里志「千反田さんに自分の気持ちを伝えるのは、千反田さんの決意を折る行為だと」

奉太郎「……そうだ」

里志「でも、君は僕に相談した」

里志「どうすればいいのか、とね」

里志「はは、おかしいと思わない?」

奉太郎「……そうか」

奉太郎「俺が言っている事は、そういう事か」

里志「そうさ、矛盾しているんだよ」

……言われるまで、全く気付かなかった。

379: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:19:53.77 ID:l81KEbcN0
里志「矛盾が起きたのは仕方ないよ、ホータローは他人に優しすぎる」

里志「去年と同じ事を言うけど、気持ちは伝えた方が良いと思う」

本当に……奇しくも、去年と同じ様になっていた。

俺は、あの時から成長していないのだろうか。

奉太郎「そう、か」

だがそれだけで、良いのだろうか。

千反田に気持ちを伝えるだけで、解決するのだろうか。

何かある筈だ。 何か。

俺は何度も考えた、悩んだ。

今の俺では、どうする事も出来ないと。

……なら、そうなのではないだろうか?

つまり、そう言う事だ。

ああ、何だ……そんな事だったのか。

380: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:20:40.85 ID:l81KEbcN0
奉太郎「……はは」

里志「びっくりさせないでくれよ、いきなり笑うなんて」

奉太郎「すまんすまん、ただ……ちょっとな」

里志「ま、いいさ」

里志はゆっくりと立ち上がり、俺に向けて口を開いた。

里志「それで、答えは出たかな」

奉太郎「まだ、はっきりとは分からない」

奉太郎「だが、後2ヶ月はあるし」

奉太郎「千反田と別れる日までには、出しておく」

奉太郎「……最悪の結果になっても後悔はしたくないしな」

381: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:23:33.17 ID:l81KEbcN0
里志「大丈夫だよ、心配いらない」

里志「最悪の結果って言うのは、何も起こらない事だろうしね」

里志「少なくとも、この状況なら……だけど」

そう言った里志の顔には、いつも通りの笑顔が出ていた。

奉太郎「もうこんな時間か」

ふと時計に目が行き、時間を確認した。

既に針は夕食時を指している。

里志「本当だ」

里志「思いの他、話し込んでいたみたいだね」

奉太郎「だな」

382: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:24:54.93 ID:l81KEbcN0
奉太郎「ああ、そうだ」

里志「ん?」

奉太郎「今日、姉貴が家に居るんだが……飯、食って行くか?」

里志「お! 久しぶりのお姉さんのご飯か、頂いてもいいかな?」

奉太郎「構わん、姉貴に伝えてくる」

俺は扉に手を掛け、開いた。

そのまま廊下に出て、閉め掛けた所で一度その手を止める。

奉太郎「……里志、最後に一ついいか」

里志「うん? まだ何かあったのかい」

奉太郎「俺は、去年から成長しているのだろうか」

383: ◆Oe72InN3/k 2012/12/21(金) 18:25:23.89 ID:l81KEbcN0
それを聞くと、里志は一瞬きょとんとした顔をした後、すぐにいつも通りの顔に戻る。

里志「今更? そんなの分かりきってるじゃないか」

里志「ほら」

そう言いながら、里志は指さす。

俺はその先に、視線を移した。

そこには、先ほど俺と里志が飲んでいた紅茶のカップが二つ、並んでいた。

里志の言いたい事を理解し、俺は苦笑いしながらリビングに居る姉貴の元へと向かって行った。

第33話
おわり

397: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 17:58:30.94 ID:ZxovJm850
奉太郎「何だ、珍しく早いな」

里志「そりゃ、最後くらいは一番乗りしたいからさ」

奉太郎「普段からそれをしていれば、どんだけ楽だったか」

里志「今更だよ、それは」

奉太郎「さいで」

まだ少し寒さが残る中、いつもの場所で里志と落ち合う。

いつも、とは言った物の毎日って訳では無いが。

398: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 17:58:59.94 ID:ZxovJm850
摩耶花「ふくちゃんと折木が先に居るなんて、今日は雪でも降るのかしら」

奉太郎「どっちかと言うと、里志だけに言って欲しい台詞だな」

里志「はは、次からはちゃんと来るからさ。 勘弁してよ」

奉太郎「次、か」

奉太郎「その次って奴は、いつになるんだろうな」

摩耶花「そっか、今日でもう」

える「遅くなりました!」

伊原が最後まで言い終わらない内に、千反田の声が聞こえた。

える「おはようございます、皆さん」

里志「おはよう、千反田さん」

摩耶花「おはよ」

奉太郎「おはよう」

399: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 17:59:31.96 ID:ZxovJm850
里志と会う場所に、全員が揃う。

それもまあ、最後くらいは全員で行こうと言う里志の提案なのだが。

奉太郎「で、遅れたと言ってもまだ5分前だぞ」

摩耶花「ちーちゃんは折木とは違うのよ、時間を大切にする人だから」

奉太郎「ほう、つまり俺は時間を大切にしていないって事か」

摩耶花「そりゃそうよ、休みの日なんて家でゴロゴロしているだけでしょ」

ごもっとも、何も言い返せない。

里志「まあさ、これで皆揃ったね」

える「あ、福部さんも来ていたんですね」

里志「ち、千反田さん。 冗談だよね?」

千反田も随分と里志の扱いに慣れた様だ、見ていて面白い。

400: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 17:59:58.19 ID:ZxovJm850
奉太郎「じゃあ、そろそろ行くか」

える「はい、そうですね」

摩耶花「桜も咲いてるし、良い日かな?」

里志「そうだね、卒業式の日だし上出来じゃないかな」

そう、今日は神山高校の卒業式だ。

401: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:00:35.46 ID:ZxovJm850
~古典部~

里志「暇だねぇ」

一度教室に行った後は、時間まで自由行動となっていた。

それも多分、最後に友達と話したり思い出に浸る時間を与える為だろう。

教室には、仲間と話す奴や先生と話す奴。

いつも通りに本を読んでいる奴やトランプで遊んでいる奴も居た。

俺は半ば強制的に、この古典部まで連れてこられたのだが。

奉太郎「ただ待つだけだろ、それに目的も無く俺を呼ぶな」

402: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:01:09.36 ID:ZxovJm850
摩耶花「そういえば、卒業生のスピーチってふくちゃんだったよね? 練習とか大丈夫なの?」

……確か、そんな話も聞いた様な気がする。

里志「うーん、最後に笑いを取りたいんだけど……中々良い案が出ないんだよね」

奉太郎「壇上から降ろされる姿が目に浮かぶな」

摩耶花「あはは、それ分かるかも」

える「ですが、去年のスピーチは良かったと思いますよ」

里志「やっぱり普通にやるのが良いのかなぁ」

むしろ、普通以外の選択肢は無いだろう。

403: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:01:42.40 ID:ZxovJm850
奉太郎「それはそうと、去年のスピーチで思い出したが」

奉太郎「誰だったか、卒業生のスピーチの中で大声を出した奴が居たな」

里志「はは、居た居た」

える「や、やめてくださいよ! 思い出すと恥ずかしいです……」

摩耶花「二人共やめなって、ちーちゃんが可哀想だよ……あはは」

奉太郎「そう言うお前も笑ってるじゃないか」

摩耶花「だって、思い出したら可笑しくて……」

える「皆さん酷いですよ、もう……」

笑い疲れたのだろうか、そこで一度会話が途切れた。

404: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:02:16.48 ID:ZxovJm850
摩耶花「……今日で最後だね」

奉太郎「卒業だからな」

里志「楽しかったよ、三年間」

える「……最後じゃありません」

える「また、いつか皆さんで会うんです!」

える「だから、最後ではありません!」

摩耶花「ちーちゃん……」

里志「そうだね、うん」

里志「また会えるさ、きっと」

奉太郎「……まあ、そうだな」

奉太郎「それより、そろそろ行かないと遅れるぞ」

そう言いながら、俺は時計を指さす。

405: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:02:42.87 ID:ZxovJm850
える「もうそんな時間ですか、あっという間ですね」

俺はそのまま、廊下へと繋がる扉に手を掛ける。

摩耶花「にしても、ほんっと折木はいつも通りね」

里志「はは、ホータローが卒業を悲しむなんて、あんま想像できないよ」

全く、失礼な奴らだ。

俺にだって卒業が悲しいと言う気持ちくらいはある。

ただ、あまり考えたく無いだけだ。

進学する大学すら、見事に全員ばらばらと来ている。

もしかすると本当に、こいつら全員と会えるのは今日が最後かもしれない。

……いかんいかん、あまり考えないで置こう。

それより今は、卒業式に集中しなければ。

いつの間にか前を歩く三人を見ながら、俺はそう結論を出した。

406: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:03:14.27 ID:ZxovJm850
思えば。

思えば本当にあっと言う間の三年間だった。

最初は部活に入る気なんて無かった。

姉貴のせいで古典部へと入る事となり、そこで千反田と出会ったんだ。

俺が入部した理由はただ、姉貴に言われただけ。

千反田が入部した理由は、あいつの叔父の件……氷菓の事だ。

里志も入部して、気付けば伊原も入部していた。

そんなあいつらと活動している内に、少しずつ楽しくなってきたのかも知れない。

407: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:03:50.11 ID:ZxovJm850
いや、古典部らしい活動はほとんどしてなかった気がするが……

それでも、千反田が「気になる事」を持ってきて、里志が補足して、伊原が頭を悩ませる。

最初こそ乗り気では無かったが、次第に俺も考える様になっていった。

誰に頼まれるでも無く、最初に自分から考えようとしたのはいつだっけか。

……確か、二年のマラソン大会の時。

あの時、俺は何故自分から考えたのか。

多分、千反田の事を信じていたからだろう。

408: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:04:17.10 ID:ZxovJm850
あれから余計に、千反田の事を意識していたのだ。

そして気付けば、好きになっていた。

ずっと一緒に居たかった。

あいつは俺に無い物を沢山持っていた。

そんなあいつを見ているだけで、俺は幸せだった。

……千反田のパーソナルスペースの狭さには未だ慣れないが。

慣れないとは言った物の、不快に感じている訳では無い。

ただ、少し照れ臭いって感じだろう。

しかし、それも今日で……

409: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:04:46.85 ID:ZxovJm850
里志「ホータロー?」

奉太郎「ん、どうした」

里志「どうしたって、そう聞きたいのはこっちだよ」

里志「卒業式が終わってから、ずっとそんな調子じゃないか」

奉太郎「ああ、まあそうだな」

奉太郎「すまんな、それで何か用か?」

里志「うん、千反田さんが探してたみたいだよ」

奉太郎「……そうか」

里志「いつまでもこうして学校に居られる訳じゃ無いし、会ってきたら?」

奉太郎「いや……もう少し、部室にいる」

里志「そうかい、なら僕はお手洗いにでも行こうかな」

奉太郎「ああ」

頬杖を付きながら返事をする。

数十秒後、気配で里志が部屋から出て行ったのが分かった。

410: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:05:29.58 ID:ZxovJm850
何分だろうか、しばらくそのままの姿勢で窓の外を眺めていた。

里志が出て行ったときの時計と今現在の時計によると、三十分は経ったかもしれない。

三十分? ここからトイレまでは十五分あれば十分往復出来る筈だ。

なら、何でまだ戻って来ないのだろうか。

そう思ったとき、丁度扉が開く。

来た奴の顔を見て、里志が戻ってこなかった理由がすぐに分かった。

411: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:06:53.75 ID:ZxovJm850
える「探しましたよ、折木さん」

奉太郎「別に隠れていた訳でも無いがな」

奉太郎「俺に何か用だったか?」

える「酷いですよ、最後くらい挨拶させてください」

最後……か。

さっきは最後じゃないとか言っておきながら、結局は自分もそう言ってるでは無いか。

多分、千反田自身がそう思いたくなかったから出てきた言葉なのだろう。

わざわざそれに、突っ込むことはしなかった。

奉太郎「そうだったな……場所、変えるか」

える「ええ、そうですね」

える「では、また屋上でもどうでしょうか」

俺は千反田の案に、黙って頷いた。

412: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:07:34.07 ID:ZxovJm850
~屋上~

屋上に出ると、流石にまだ冷たい風が体を刺す。

手すりがある所まで歩き、下を眺めた。

既に帰り始めている生徒がちらほら居て、校門の左右に並んでいる桜がそれを見送る。

そんな卒業式の日にぴったしな光景が、目に入ってくる。

える「どうでしたか、古典部は」

奉太郎「ま、終わってみれば楽しかったな」

える「ふふ、そうですか」

奉太郎「そう言う千反田はどうだったんだ?」

413: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:08:00.97 ID:ZxovJm850
える「私ですか」

える「私は、本当に良い人達と出会えました」

える「三年間、楽しかったですよ」

奉太郎「はは、だろうな」

える「ふふ」

千反田が楽しく無かったと言ったら、どんな顔をすればいいのか分かったもんじゃない。

だから、俺の予想通り楽しいと言った時には自然と俺も笑っていた。

える「あの、折木さん」

414: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:08:26.43 ID:ZxovJm850
奉太郎「ん?」

える「あの約束は、守れそうでしょうか?」

奉太郎「前に言っていた奴か」

える「はい、そうです」

奉太郎「そうだな、なんとか大丈夫そうだ」

える「そうですか」

奉太郎「千反田の方はどうなんだ」

える「私、ですか」

える「今の所はですね、大丈夫です」

奉太郎「……そうか」

える「ですが、あまり一緒に居ると約束を破る事になりそうです」

奉太郎「なら、そうだな」

奉太郎「……今日の所は帰ったらどうだ」

415: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:10:09.41 ID:ZxovJm850
素直に言えない自分が、少し嫌になる。

今日の所は、なんてよく言えた物だ。

千反田は、今日帰ったらすぐに神山市を出ると言っていた。

それを見送っても良かったが、多分大勢の人が来るのだろう……詳細は知らないが。

その大勢の中の一人になるのは、あまり気が進まなかった。

える「……そうですね」

千反田も、その言葉を否定する事はしなかったが。

える「それでは、ここが私達のお別れの場所ですね」

千反田は優しく笑い、そう言った。

奉太郎「……俺は、もう少しだけここに居る」

える「分かりました」

える「さようなら、折木さん」

416: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:10:42.70 ID:ZxovJm850
奉太郎「……」

屋上から、千反田が出て行った。

本当に、何とも呆気ない終わり方であった。

俺は不思議と、落ち着いて居たと思う。

何度か頬を風が叩く。

日は傾き始め、後1時間もすれば暗くなっているだろう。

俺達生徒達は、最終下校時刻までは残っていいとの事を伝えられていた。

なので、いつも見る放課後より残っている人数は多かった様に見える。

俺は少しだけ、視線を下に移す。

417: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:11:13.78 ID:ZxovJm850
友達と話している生徒、学校内を歩いて思い出に浸る生徒。

そんな中に一人、見知った姿を見つけた。

……千反田えるだ。

あいつは屋上に居る俺の方を向くことは無く、ゆっくりと校門に向かって歩いていた。

心無しか、いつもより歩く速度は遅いように見える。

丁度半分くらい歩いた時、俺は思わず苦笑いをしてしまう。

知っていたのだ、この光景を俺は。

418: ◆Oe72InN3/k 2012/12/26(水) 18:11:40.84 ID:ZxovJm850
そう、一年と少し前、あの公園で見た光景だ。

あの時は、まるで桜道を歩いている姿の様に見えた。

そして今。

校門までの道を彩る桜の間を、千反田は歩いていた。

それを見て、俺はゆっくりと口を開く。

奉太郎「ありがとう、千反田」

その声は、恐らく……届いてはいなかった。


第34話
おわり

428: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 17:51:09.57 ID://szuPu50
奉太郎「ええっと、明日は来れそうか? 無理なら家まで行くが」

里志「うーん、大丈夫かな。 何とか時間は作れそうだよ」

奉太郎「そうか、なら20時に公園で会おう」

そう言い、携帯を切る。

高校の時や大学の時には別に、無くても特に問題は無かったが……仕事を始めてからは俺も携帯を持つようにしていた。

気付けば、千反田と別れてからもう7年が経とうとしていた。

俺はそこまで変わっていないと思う。

里志も、伊原も。

あいつらは未だに付き合っているらしい、そろそろ結婚の話も出ているみたいだが……詳しい事はあまり知らない。

429: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 17:51:47.49 ID://szuPu50
やはり、学生時代は呑気な物だったと今更ながら思う。

あの時も随分と時間を早く感じた物だが、仕事を始めてからそれを更に感じる様になっていた。

暑いと思えば寒くなっていて、新しい年が始まったと思えば一年が終わっている。

俺は未だに神山市に居て、里志や伊原も地元に残っていた。

あいつらとは未だに、月に1回くらいは顔を合わせている。

三人で飲みに行く時もあれば、本当に数分話しただけで別れる時もある。

社会人なんて、こんな物だろう。

明日もまた、仕事だ。

俺は疲れた体を横にし、ゆっくりと目を瞑った。

430: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 17:54:18.19 ID://szuPu50
一日の仕事が終わり、帰路に付く。

家の近くまで来た時、スーツのポケットの中で携帯が揺れているのに気付いた。

ポケットから取り出し、携帯を見る。

ディスプレイには、見知った名前が表示されていた。

奉太郎「里志か? どうした」

里志「ああ、良かった。 やっと繋がった」

奉太郎「今帰っている所だ、それでどうした」

里志「そうかい、悪いんだけど」

里志「時間を勘違いしててさ、もう公園に着いちゃったんだよね」

高校時代はよく遅刻していたのに、社会人になってからは早く着くと来た物か。

これも、反動なのだろうか。

431: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 17:54:47.45 ID://szuPu50
奉太郎「あー、分かった」

奉太郎「丁度家に着くところだし、鞄を置いたらそのまま行く」

里志「助かるよ、ついでに温かい飲み物とか」

言い終わらない内に電話を切る。

余計な注文を付けるな、全く。

奉太郎「くそ、着替える時間も無いな」

そう一人声を漏らし、俺はあの公園へと歩いて行った。

432: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 17:55:31.22 ID://szuPu50
~公園~

奉太郎「よう、久しぶり」

里志「確かに、そう言われて見れば……顔を合わせるのは久しぶりかもね」

奉太郎「だな」

奉太郎「ほら、お礼を期待しておく」

俺はそう言い、途中で買っておいたコーヒーを里志に渡す。

里志「お! さすがだよホータロー」

里志「四月とは言っても、夜になるとまだ寒いから助かったよ」

433: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 17:56:09.60 ID://szuPu50
奉太郎「早く来すぎなんだよ、お前は」

奉太郎「高校の時からそれだったら、伊原を怒らせる事も少なかっただろうな」

里志「はは、そう言われると参っちゃうね」

ベンチに腰を掛けている里志の横に、俺も同じ様に腰を掛けた。

奉太郎「それで、頼んでおいた物は?」

里志「ああ、ちゃんと持って来たよ」

里志「何で直接摩耶花に頼まないで、僕を経由するのかが分からないけどね」

奉太郎「あいつと直接話したら、何て言われるか分からんからな」

奉太郎「この年になっても怖い物は怖いんだよ」

里志「はは、それこそ直接は言えない事だ」

そう言い、里志は持っていた袋を俺に手渡す。

434: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 17:56:49.59 ID://szuPu50
奉太郎「悪いな、伊原にも礼を言っておいてくれ」

里志「了解」

里志「あ、それでその袋なんだけど」

奉太郎「ん、使うのか?」

里志「ご名答、摩耶花が使えるから取っておいてってうるさくてさ」

奉太郎「あいつもすっかり年を取ったな……同棲ってのは大変そうで」

里志「あはは、間違いないや」

俺は袋の中にある物をポケットに仕舞い、袋を里志に返す。

里志「それじゃ、僕はそろそろ帰るよ」

奉太郎「ああ、わざわざすまんな」

里志「いいさ、それより最後にひと言いいかな」

奉太郎「ん?」

435: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 17:57:18.43 ID://szuPu50
里志「期待しているよ、ホータロー」

里志はそう、高校時代俺によく言っていた言葉を使った。

奉太郎「さいで」

俺は素っ気無くそう返し、里志に片手を挙げる。

それを見た里志は、ゆっくりと公園から出て行った。

俺は一度ベンチを離れ、神山市を一望できる場所へと移る。

にしても、あいつのせいで随分と時間が余ってしまった。

全く、余計な事をしてくれる奴だ。

前より少しだけ暖かくなった夜風を浴びて、俺は心の中で愚痴を吐いた。

436: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 17:57:46.78 ID://szuPu50
その時、ふと背後に気配を感じる。

ああ……これはあれか。

前言撤回と言う奴だろう。

奉太郎「早かったな」

俺は振り向かず、そう言った。

437: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 17:58:51.86 ID://szuPu50
~7年前・卒業式の日~

屋上から、千反田の後姿を見ていた。

俺は気付き、千反田に小さな声で礼を言った。

ありがとうと、気付かせてくれてありがとうと。

もし、この光景を見ていなかったら俺は一生気付かなかったのかもしれない。

それを気付かせてくれたのは、やはりあいつだった。

あの日、一年前の冬の日。

俺は「さようなら」と言って離れて行く千反田に声を掛ける事が出来なかった。

438: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 17:59:41.47 ID://szuPu50
何故、と言われると俺にも分からないが……恐らく、省エネの結果だろう。

我ながら、笑えてきてしまう。

だが、そんな省エネ主義を俺は最後まで捨てられなかった。

あの日も、そして今も。

あの時から違うとすれば、そうだ。

今、千反田に声を掛けずに後悔するのと、声を掛けてこの気持ちをどうにかする事と、どちらが結果的に省エネになるか……そう考えている事だろう。

俺が出した答えは、後者だ。

今ならまだ、間に合う。

幸い千反田はいつもよりゆっくりと歩いている。

なら、俺が急げばまだ……間に合う筈だ。

439: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:00:20.37 ID://szuPu50
そこまで考え、俺は急いで屋上から降りる。

階段を駆け下り、廊下を走り抜ける。

途中で先生らが何か言っていたが、関係無いだろう。 今日でこの学校とはおさらばだ。

上履きのまま、昇降口を飛び出す。

千反田は……居た。

丁度、あの日と同じ距離だろうか。

あの時は届かなかった声、今は……

奉太郎「千反田!」

ゆっくりと歩いていた千反田の足が、止まった。

440: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:00:49.59 ID://szuPu50
千反田が振り返るのも待たず、俺は続ける。

奉太郎「待っているから、お前が戻ってくるのを!」

奉太郎「何年でも! 何十年でも!」

奉太郎「だから、だから必ず戻って来い!」

ありったけの声を出して、そう千反田に俺は言った。

千反田は振り返り、先ほどよりも少しだけ足早に俺の方へと向かってくる。

顔は伏せられていて、表情は見えなかった。

俺のすぐ目の前まで戻ってきた千反田は、ゆっくりと口を開いた。

441: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:01:35.27 ID://szuPu50
える「……ずるいです」

える「……折角、約束を守れそうでしたのに」

える「そんな事を言われてしまっては、守れないじゃないですか」

そう言うと、千反田は顔を上げた。

千反田は、今にも泣き出しそうな顔をしていて……

える「本当に、ずるいですよ」

そう言った。

奉太郎「……すまん」

奉太郎「だけど、どうしても伝えないと駄目だったんだ」

俺はまともに千反田の顔を見れず、視線を外したまま言う。

442: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:02:03.08 ID://szuPu50
える「ふふ、ありがとうございます」

そこでようやく千反田の顔を見れて、あいつは……とても嬉しそうに、笑っていた。

俺はそれを見て、また口を開く。

奉太郎「なあ、千反田」

える「はい、何でしょう」

奉太郎「お前が向こうで頑張っている間、俺も沢山勉強する」

奉太郎「足りない物なんて、沢山ありすぎるしな」

える「はい」

奉太郎「それで、もう2年くらい前になるか」

奉太郎「俺が始めて、傘を持った時の事だ」

443: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:03:00.26 ID://szuPu50
える「生き雛祭ですね」

奉太郎「ああ」

奉太郎「あれが終わった後、千反田は話してくれたよな」

える「ふふ、覚えていますよ」

奉太郎「一つは、商品価値の高い作物を作ることで、皆で豊かになる方法」

奉太郎「もう一つは、経営的戦略眼を持つことで生産を効率化し、 皆で貧しくならない方法」

奉太郎「だったな」

える「ええ、そうですね」

奉太郎「千反田は、後者を諦めて前者を選んだ」

える「はい」

444: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:03:26.60 ID://szuPu50
奉太郎「その、後者の方だが」

奉太郎「……俺が修めるというのはどうだろう?」

ようやく、言えた。

たったこれだけの事を言うのに、一体何年掛かったのだろう。

える「あ、あの。 折木さん、それって」

奉太郎「千反田、俺と」

そう言おうとした時、千反田が声を出して制した。

える「ま、待ってください!」

える「あの、まだ心の準備が……」

445: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:03:52.22 ID://szuPu50
奉太郎「あ、ああ」

える「……少しだけ、時間が掛かりそうなので」

える「また、次に会った時まで待っていただいてもいいですか?」

奉太郎「構わんさ、いくらでも待つ」

奉太郎「ついでだし、その時までにはもっと良い言葉を考えておく」

える「ふふ、楽しみにしていますね」

奉太郎「ならそうだな」

奉太郎「千反田は必ず戻ってくる、俺はその時までに良い言葉を考えておく」

える「では、それが私達の約束ですね」

446: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:04:19.38 ID://szuPu50
奉太郎「ああ」

奉太郎「それより、時間は大丈夫なのか?」

える「まだ少しありますが、準備もあるのでそろそろ……ですね」

奉太郎「ああ、分かった」

奉太郎「気を付けてな、いつか絶対戻って来い」

える「はい! その約束は、必ず守りますね」

そう言うと、千反田は振り返り、校門に向かって歩いて行った。

少しだけ離れた所で俺は一つ思い出し、口を開く。

奉太郎「千反田!」

千反田はもう一度、振り返った。

奉太郎「またな!」

それを聞いた千反田は、一瞬だけ驚いた様な顔を見せて、次の表情は……

今までで一番、綺麗な笑顔だった。

447: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:04:46.47 ID://szuPu50
~公園~

そして今日、千反田が神山市に戻ってくると聞いた。

俺達はこの7年間、やり取りはほとんど無かった。

多分、声を聞けば会いたくなるし、手紙を交わせば話したくなるからだろう。

それでもずっと、実際の距離は果てしなく遠いが……千反田との距離感は、感じなかった。

戻ってくると聞いたのが先月の事で、里志に頼んでおいた物はようやく今日準備が出来たと言った所である。

タイミングはまあ、悪くなかったが。

448: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:05:13.15 ID://szuPu50
える「折木さんの方こそ、早いですね」

奉太郎「俺はまあ、少し前まで人と会っていたからな」

える「む、浮気ですか?」

奉太郎「……俺が里志と浮気しているとでも?」

える「それは……想像したくないですね」

奉太郎「だろうな」

える「福部さんでしたか、懐かしいですね」

奉太郎「7年ぶりだからな」

える「折木さんは随分と、変わりましたね」

奉太郎「そうか? 里志や伊原にはそんな事、言われないんだけどな」

える「ずっと一緒に居ると、変化には気付きにくいんですよ」

える「私からしたら、随分と変わられました」

449: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:05:42.34 ID://szuPu50
奉太郎「ほう、どんな感じに?」

える「何と言うか、そうですね」

える「仕事に疲れたサラリーマン、と言った所でしょうか……」

奉太郎「悪かったな、スーツで」

える「ふふ、冗談ですよ」

奉太郎「さいで」

そこで一度会話が途切れた。

吹く風はどこか、心地良い。

奉太郎「……久しぶり」

える「お久しぶりです、折木さん」

450: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:06:21.04 ID://szuPu50
奉太郎「約束は、守ってくれたみたいだな」

える「当たり前です、私にとっては何より大切な約束でしたから」

える「ずっと、会いたかったです」

奉太郎「俺もだよ、千反田」

優しく、千反田を抱き締めた。

える「これから、忙しくなりますよ」

奉太郎「分かってる」

える「私は、少し心配です」

奉太郎「大丈夫だ、ずっと勉強してきたしな」

える「ふふ、それは期待できますね」

451: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:06:48.91 ID://szuPu50
奉太郎「あ、そうだ」

俺はそう言い、千反田から一度離れる。

える「どうかしましたか?」

奉太郎「千反田は約束を守ったからな、俺の番だ」

える「あ……はい、ちょっと待ってください」

える「すいません、少し緊張してしまって」

奉太郎「気にするな、待つのには慣れてきたからな」

える「む、それはちょっと酷いです」

える「なので、もう大丈夫です」

452: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:07:22.36 ID://szuPu50
奉太郎「はは、そうか」

奉太郎「……千反田」

える「……はい」

俺はポケットに入れていた小さな箱を取り出しながら、その言葉を千反田に言った。

奉太郎「-----------」

その瞬間は確実に、人生で一番嬉しくて。

幸せで。

待ち遠しくて。

緊張して。

素晴らしくて。

暖かくて。

最高な瞬間だった。


第35話
おわり

える「古典部の日常」


454: ◆Oe72InN3/k 2012/12/27(木) 18:10:57.44 ID://szuPu50
以上で最終話、終わりとなります。
今回を持ちまして
える「古典部の日常」
本編は完結となります。

乙ありがとうございました。

453: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 18:10:53.55 ID:mjPtpK8K0
乙でした。7年連絡なしって、凄いですね。約束守るの、想像以上に大変だったろうな。
プロポーズはどういう言葉に代わったのかなあ、と野暮なことを考えつつ、お疲れ様でした。

463: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/28(金) 01:54:11.23 ID:8C9p0Wz90
乙。
前回と同じ轍を踏まなくてよかったね。

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