
「リアルの友達と繋ながらない」をコンセプトにしたelmy(エルミー)というSNSで募集させて頂いたテーマに沿って、お悩みにお答えさせて頂いております。
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いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?

……はい?

賃貸ですか?
それとも分譲ですか?
上野不動産ではお客様のニーズにあったあらゆる不動産をご紹介できますよ?

あのーお悩み相談は?

(話の前振りに不動産の話が必要なので話を合わせて下さい)

(そういえばこの人、元不動産業者だったっけ……)

あの~引っ越しを考えているのですが……

それはそれは。
ちょうどいい物件が出ているんですよ!
お客様は実に運が良いですね!
【物件A】
・家賃 7万
・某駅から徒歩10分
・1K(20㎡)
・ユニットバス
【物件B】
・家賃 8万
・某駅から徒歩8分
・1K(23㎡)
・風呂トイレ別

さぁ、どちらがお好みですか?

う~ん、風呂トイレ別が良いけど、家賃が8万は少し辛いなぁ……
でも駅から近いのは魅力的だし……

はい、これが1つ目のポイントです。

はい?
なんかポイントありました?

この国にいくつの賃貸物件があると思っているのですか?
例えば君にあった物件と言うことで
・家賃 8万以下
・私たちの会社まで30分
・20㎡以上
で調べてみましょう。

3101件ありました。
ちなみにバストイレ別にしても2025件です。

そんなにあるんですねぇ……

こんなものを一々全部見せていたら、一生引っ越しなんか出来ませんよ。

確かに時間をかけてこの3101件を全部見れば、君に一番合っている一軒を見つけることは出来るかもしれません。
でも、そんなことをしている間にも物件はどんどん入れ替わりますからね。
こちらで、あらかじめ勝手に選択肢を狭めておくのです。

さらにこの2つの物件を比較したとき「家賃が1万高い」ということさえ気にしなければ、圧倒的にBの方がいいのです。
ということは君は「家賃8万円が払えるかどうか」というその1点だけを考えればよくなります。
払えるなら物件B
払えないなら物件A
というようにね。

これは不動産屋として家を売るときの基本的なテクニックの1つです。
最初から選択肢を狭める、と言ったところでしょう。
ただ、やり過ぎるとお客様から不信感を買ってしまうので加減が大事ですが。

はぁ……で、この話が今回の質問と何の関係があるんですか?

一条君。
このご時世、ネットを使えばいくらでも物件など探すことが出来るのですよ?
いくら不動産屋が2つに絞ったからと言って、お客様がそうそう簡単に納得するわけがないではありませんか。

Bと同じ条件で、7万の家ってないんですか?

と言われるに決まっているではありませんか。

まぁ、そうなりますよね。
でもそんなに都合の良い物件……

ありますよ、たぶん。

え!?
じゃあ、最初からそっちを提案すればいいじゃないですか!?

そうすると、今度は今度で「もっと安いのは?」とか「でもフローリングじゃないしなぁ」みたいなことを仰るのです。

キリが無い!

家を買うほどではないにしても、家を借りるというのは大きなイベントです。
人間はどれだけ探したって「もっと良いものは!?」と考えてしまう生き物なのですよ。

まぁ、そうなっちゃいますよね……

でも、それじゃあどうしたら良いんですか?

それでは、その答えを含めて、今回の回答に入らさせて頂きましょう!
【回答】
ご質問誠に有難う御座います。
まずご質問者様に、今のご質問者様のお悩みは決して珍しいものではない、ということをお伝えしたいと思います。
これは先ほどのように引っ越しの物件探しで考えてみると分かりやすいことでしょう。
人は重大な選択をするときに無数に選択肢があると「より良いものはないか」と永遠に悩み続けるもので御座います。
例えば物件であれば「家賃7万、駅近くで広い部屋」という条件でお部屋を探しに来た方も、いざその条件に該当する物件が見つかると
「でもお風呂がちょっと汚いなぁ」というようにあら探しを始めるもので御座います。
重大な選択をするとき、過剰なまでに慎重になってしまうのは当然のこと。
たかだか引っ越し程度でもそうなのですから、彼氏を決めるときに慎重になるのは言うまでもありません。
ですので、どうかご安心くださいませ。
ご質問者様のお悩みは決して特別なものではなく、人間であれば誰しも当然持っている防衛本能のようなものであると言えるでしょう。
しかし、引っ越しの件でも分かるように、慎重であり過ぎるといつまで経っても決断をすることが出来ません。人生の時間は有限なのですから、どこかで必ず決断をしなければならないのです。
今回は、この「決断」をするために必要な考え方を3つ、ご質問者様にお伝えさせて頂きたいと思います。
1つ目は「幻想の1位に取りつかれてはいけない」ということ。
スポーツであれば、明確な順位付けは非常に簡単で御座います。
100m走であれば11秒で走れる人よりも10秒で走れる方が優れていますし、世界で一番早いのは現時点であれば9秒58の記録を持つウサインボルト選手であると誰でも簡単に判断することが出来るでしょう。
ですが現実世界の多くは「明確に順位がつけられる」ということの方が稀で「なんとなく上の方」とか「どっちかと言えば下」というような曖昧な判断がせいぜいであり 「明確にこっちの方が上」と言えることはそうそうあり得ないのです。
例えば家賃10万円の物件と家賃5万円の物件を比較したとき「どちらの方が安いか」ということであれば、確かに明確に誰でも判断をすることが可能でしょう。
しかし「どちらに住みたいか」となれば話は別。
家賃10万の家は、10万円とは思えないほど広くて立地も良いかもしれませんし、家賃5万円の家は5万円でもぼったくりだと言いたくなるような物件かもしれません。
選択肢がたったの2つであってもこれほどまでに判断は難しいのですから、選択肢が1000も2000もあるような状況であればいうまでもありません。仮に全ての物件を見たとしても、それでもなお「一番優れている物件」がどれか、などそうそう分かりはしないのです。
ですので「全部を見て、一番良いのを選ぶ」というのは2つの意味で幻想に過ぎないと言えるでしょう。
1つ目の意味は「そもそも全部を見ることが時間的に不可能」
2つ目の意味は「仮に全てを見ても、判断することが不可能」
つまり「数ある中から一番良いものを選ぼう」という発想は、一見すると正しいものの、非現実的な理想論に過ぎないのです。
それでは実際にどうすればいいのかという話になりますが、私は「上位20%」に入る選択肢であれば十分である、と考えております。
例えば物件の候補が1000件あった場合、上位20%というのは200件の物件が該当します。
そしてもし自分が見つけ、気になった物件が「上位200件」に入ると感じたら、それで決めてしまって問題ない、ということ。
1位を決めるのは困難でも、上位20%に入る程度の物件かどうか判断するのはそこまで難しいことでは御座いません。
そして、また物事というのは上位になればなるほどその差は僅差になり、現実的にはほとんど変わりがない、ということも重要でしょう。
例えば100mの世界記録はウサインボルト選手の9秒58で御座いますが、世界2位の記録はタイソンゲイ選手の9秒69で御座います。その差はわずか0.11秒。
確かに陸上の世界であれば、そのわずか0.11秒の差はとんでもなく大きな差であり、0.01秒のために何年ものトレーニングをする世界であるのでしょう。ですが、我々一般人にとって0.11秒という差は、わずかな差であり無いものと考えても問題ないのです。
引っ越し先選びの場合でも言えることですが、この世界には「他を圧倒的に出し抜く存在」などそうそう存在しません。
1000件のうち、1位の物件と200位の物件の差など、せいぜい家賃が1000円違うとか、広さが1㎡違うとか、駅前での距離が20m違うとか、その程度の差でしかないのです。それならばその多少の差を気にせずに物事を決断してしまった方が間違いなく建設的であると言えるでしょう。
2つ目は「時間」という概念を忘れてはいけない、ということ。
例えば家賃が8万円の物件に納得が出来ず、丸2日かけて同じ広さで同じ立地の7万9000円の物件を見つけたとしましょう。
日本人の平均生産性は1時間に約4500円(生産性は時給とは異なります)
丸2日かけたとしたら1日8時間労働として4500×16=72000円
つまり毎月1000円得をするために72000円の損失を出しているのです。この損失を家賃の差で埋めるためには丸6年もの月日がかかってしまいます。
もちろん丸2日かけて、結果的に見つからないということもあるでしょうから、期待値で計算をしたら6年をはるかに超える年月が必要で御座います。
決断が遅い、というのはそれだけすでに「最高の決断」を必ず逃している。
勿論、短絡的に物事を決断しろ、と言っているわけでは御座いませんが、決断が遅いということはそれだけで既に致命的なまでに損をしているということをどうかお忘れなきよう願います。
「時は金なり」ということわざが御座いますが、私の感覚ではこのことわざは明確に間違っていると言えるでしょう。
時は金などというものでは到底買うことができないほど貴重である。
そのことをどうかどうか選択の際にはお考え頂ければと思います。
なお、今回は話を分かりやすくするために、わざと大きな数字である生産性を使いましたが、時間をかけることで失うものはお金だけでは御座いませんので、ご注意くださいませ。
さて、最後に3つ目のお話をさせて頂きましょう。
ここまでの2つは「他にもっと良いものがあるという考えは危険である」というお話で御座いましたが、それを理解してもなお、決断が出来ないという方の方がずっと多いことでしょう。
ですので、最後の1つは「決断をする方法」で御座います。
これは非常に簡単で御座います。
「自分を追い込むこと」
引っ越しの話を考えてみましょう。
今のご時世、ネットでいくらでも物件を探すことが出来るのです。そしてネット専門の仲介業者に電話をすれば、何も店舗に行かなくとも引っ越しの契約することは可能で御座います。
それでは何故、いまだに駅前の高い物件を借りてまで「不動産屋」が存在しているのか。
端的に言えば、彼らは「お客様を追い込むために」存在しているので御座います。
追い込むため、というと非常に言い方が悪くなりますので、少し表現を変えさせて頂きましょう。
そもそもネットの不動産屋さんでお客様が引っ越し先を決めることが出来ないのは「期限」が無いからと言えます。
仮にネットでいい物件を見つけても「もっといい物件が出るかも」と思い、そう簡単に引っ越しを決断することは出来ません。そのままズルズルと先延ばしになってしまい、結局引っ越しが出来ないことでしょう。
しかし、街の不動産屋に足を運ぶと、良くも悪くもあの手この手で物件の契約をするように圧力をかけてきます。
「仮契約入れました」とか
「内見しましょうよ」とか
とにもかくにもお客様に「断りにくい空気」を作ることこそが不動産屋さんの仕事であると言っても過言ではありません。
このように言うと不動産業界が非常にヤクザな商売のように感じてしまうかもしれませんが「お客様の決断をサポートする産業」であると言うと分かりやすいでしょう。ダイエット産業に旋風を巻き起こしたとある企業だって構造としては変わりません。
さて、不動産選びであれば「業者」に頼むだけで、簡単に自分を追い込んでもらえるわけですが、恋愛であれば業者に頼むと言うわけにもいかないでしょう。
業者に頼むという方法以外で、自分を追い込まなければならないのです。
ご質問者様の場合、このまま何も手を打たないでいると、不動産選びと同じように「もっといい人がいるのでは」と考えて、今のその男性のことを好きではなくなってしまうことでしょう。
なんとかしてそうなる前に、男性との関係を何かしら進展させなくてはなりません。
付き合う前に「本当にこの人のことが好きなのか?」なんていう哲学的な悩みをしていたら、間違いなく100%最終的には「本当に好きというわけではない」という結論になってしまいますが、逆に一度付き合ってしまえば多少の欠点には目をつむれるもの。これはまさに引っ越しと同じで「住めば都」と言ったところでしょうか。
ですので、もし今、その男性が気になっているのであれば、なんとしてもその哲学的な問いが「NG」という結論を出す前に、進展をさせる必要が御座います。
一番簡単な方法は、仲が良くお節介な友人に「私は彼のことが好き、そして付き合いたい」と言ってしまうことでしょう。
そのお節介な友人が勝手に話を進めてプレッシャーをかけてくれるはずで御座います。引っ越しで言うところの不動産業者でしょう。そういった存在は「決断をする」という状況においては非常に有り難い存在で御座います。
ご質問者様が物件を選ぶときに「でもフローリングじゃないし」と言うように、男性に対して「でも顔がちょっと……」言ったとしても、そのお節介な友人は「でも性格はぴったりじゃない!」と煽ってくれることでしょう。
こういう存在を作ることで自分を追い込み、決断をする。
これこそが私がご質問者様にお伝えできるアドバイスで御座います。
さて、人間は基本的に「悩んだらNO」という決断を下す生物で御座います。
そして恋愛において、相手に対して「悩まない」ということはあり得ません。どんな相手であっても1つくらいは欠点があるもので御座います。
通常であれば「欠点とは言え、許せる範囲」であることがほとんどなのですが、これが「付き合う前」であると些細な欠点でも不安になってしまうもの。それは仕方がないことでしょう。
ですが、それではいつまで経っても永遠に付き合うことは不可能であると言わざるを得ません。
どこかで「えい!」と不確定な闇の中にジャンプをしなければならないのです。
そんなとき、1人でジャンプをすることはあまりにも怖く、難しいでことしょう。
そんな勇気があれば誰も困りはしないのです。
ですので、自分が飛ぼうとしたそのとき、隣で「大丈夫だよ」と支えてくれる人が必要であるのです。
その人は「いいから飛べ!」と多少きつく急かしてくることも御座いますが、それは我々にとってありがたい存在であるということを忘れてはいけません。
何でもかんでも「もっと他に良い人いるよ!」とか「慎重に選んだほうが良いよ!」と甘言を掛けてくれる方が有り難いわけではないということをどうかお忘れなきよう願います。