先日公開されたポケモンGOは世界的なヒットとなりつつあります。

新しい形でのゲームということで皆様の注目も高いことでしょう。

今回はポケモンGoとラブホテルの関係と問題についてお話させて頂きたく思います。






 
【路上駐車とラブホテル】

私の勤めるラブホテルの前の道路は駐停車禁止の道路で御座いますが、現実問題として路上駐車をされる方は少なくありません。


実は、ラブホテルは皆様が思っているよりもずっと「路上駐車」に対して厳しい考えをもっております。


たとえ短い時間であっても、決して路上駐車を許しません。


これは何も「ラブホテルは正義感が強い」 というような問題ではなく、経営的な問題で路上駐車を許さないのです。


と言いますのも、ホテルの前に車が止まっていると、お客様が非常にお店に入りにくいのです。


「車の中に私立探偵がいるのではないか」「人に見られるのは恥ずかしい」「奥さんが自分の浮気の調査をしているのではないか」など理由は様々ですが、少なくともラブホテルの前に誰かがいるとお客様はお店に入りにくい。



そのため私たちは路上駐車を許さないのです。




ところで 


最近、人気のポケモンGoですが、もしも私のホテル近辺に人気のポケモンや、珍しいアイテムが配置されたらどうなるでしょうか?


私はこの問題をかなり切実に考えております。


端的に言って、もしラブホテル街に「お客様ではない方」が集まってしまったら、我々の仕事は崩壊しかねません。


人が入り口付近に集まっているホテルを利用したいと思うお客様はいらっしゃらない。


どうにかして対策をしなければならないと考えています。




しかし、ラブホテル産業とは反対に、お店の前に人が集まらなければ、お店が破たんしてしまう産業も少なくありません。


たとえばコンビニエンスストア。


コンビニエンスストアの売り上げは、そのコンビニが面している道路の通行人数に比例することが多いそうです。


もちろん例外や、競合などの関係で比例しない場合もあるようなのですが、基本的には店の前の道を歩く人数で売り上げが決まるとのこと。



例えば、駅から住宅街までの道が二本あったとしましょう。


AルートとBルートの二本。


これまではAルートで帰る方が1000人。


Bルートで帰る方が100人だったと致します。


もしAルートとBルートに距離の差があまりないのであれば、ポケモンGoの仕組みによっては、これまでAルートを使っていた方が「レアアイテムがあるからBルートで帰ろう」と思うかもしれません。


そうしたら、Aルートにある商店はどうなるか、そこまで難しい問題でもないでしょう。 





ここで悪しき心の持ち主がいたら、何を考えるか予想をするのは難しいことでは御座いません。


例えば、自分の嫌いなお店の付近から、レアなアイテムを無くすとか。


例えば、嫌いな奴の家の目の前にジムを作るとか。


例えば、自分の好きな店にレアアイテムを設置するとか。




ゲームを通じて、多くの人間の移動を操作できるということの恐ろしさを、私は皆様にお伝えしたいのです。 


私は何も「ポケモンGoが悪だとか」「ポケモンGoをやるな」とかそういうことを言うつもりは全く御座いません。


しかし、もしこのゲームが大規模に長期間普及をすれば、それはゲームを通じて人間の行動を管理できる、操作できるということではないのでしょうか。


もちろん100人中100人をゲームによって操作を出来るとは思いません。


しかし、10人か20人かは分かりませんが、一定以上の割合の人間の行動を、人間の動線を、操作できるということは、街というものの構造を、ゲームが支配するということなのです。 


さらに言えば、人間の動線を支配するということは、人間の行動を支配するということ。


その力を持ちかねない企業が存在するということが、個人的にはかなり恐ろしい。





しかし、重ね重ねになりますが、私はポケモンGoが悪だと言うつもりは全く御座いません。


ツールに善悪は無いのです。


人間がそれをどう使うかということにのみ善悪があるのではないでしょうか。



それに間違いなく面白いゲームだと思いますし、ユーザーに求められているのも間違いありません。


否定をするつもりは全くないのです。



さて、私は任天堂やGoogleが、位置情報ゲームでそういった悪しき行動をするとはそこまで思ってはおりません。


そういう能力を手にすることはあっても、彼らがそれを実際に行使するかと言えば、行使しないのではないかと思っています。


「この2つの企業はそういう悪しきことをしない企業である」と私が思っているという理由も御座いますが、利で考えても、そこまで露骨にはやることはメリットがないと考えているので、そう推測しているのです。


しかし、どのような意図でこのゲームを作ったにせよ、このゲームには街の構造を、人間の行動を、管理してしまう恐れがある。


たとえ、彼らにそれを悪用する意図がないにしても、強大な力を持つということは、それはとても怖いことなのです。




とは言え、仮にポケモンGoが運営をやめたとしても、これだけのヒットをしたのですから、同じようなゲームが出てくることでしょう。


その流れは止められません。


ユーザーもこのようなゲームを求めていたのですから、その流れを止める必要ないでしょう。


ですので、本当に繰り返しになりますが、私は「ポケモンGoは悪」とか「やめろ」というつもりは全くないのです。



私がお伝えしたいことは2つだけ。


1つ目は、このゲームは「人の行動」「人の移動」を操作、管理する力がある。そしてそれはお店を潰すことも、人を狂わせることもできるということ。

 

そして、2つ目。


それは「誰もこの問題に言及していないことが怖い」ということ。


ポケモンGoの前にイングレスというゲームが御座いました。


内容はほぼ同じと思って頂いて問題御座いません。


このイングレスというゲームもGoogleが作っていたのですが、実は先ほどのラブホテルの問題はイングレスの頃から懸念していた問題で御座います。


そのときは色々考えた結果「この程度なら気にしなくていい」と思っておりました。


 しかし、一昨日から街を歩いていると「この問題は懸念しなくてはいけないかもしれない」と強く思うようになりました。


何度もお伝えしますがGoogleや任天堂が悪いことをしていると言っているのでは御座いません。


ですが、たとえ悪意がなくとも、こちらを潰せる者が存在するのならば懸念をしなければならない。


少なくとも私はそう考えております。


しかし、一昨日からポケモンGoに対しての批判はたくさん御座いましたが、私と同じようなことを大々的に問題視している方があまりにも少なかったので、このようにコラムを書かせて頂きました。


もしかしたら、この問題はたいした問題ではないかもしれません。


実現しない問題かもしれません。


しかし、それを誰も問題視していない、ということが非常に危険なのではないかと私は思います。


嫌な奴と思われても、誰かが問題提起をしなければいけないと思ったのです。




それでは皆様、お車や自転車にお気をつけて、マナーとルールを守りながら、楽しいポケモンGoライフをお過ごしくださいませ。