2010年02月19日

歴史社会学からの学び

東工大・朝日カルチャーセンター・ジョイントコース小林秀雄「本居宣長」を読むに参加します。

講師は、東京工業大学の橋爪大三郎教授

あまりしられていないことですが、東京工業大学には相当数の文系の先生方がいます

理工系の大学の教育には、実は、文系の教育が欠かせないのです

テーマ「小林秀雄「本居宣長」を読む」についてよりも、その周辺の話がおもしろかったので、それについて書きます


社会学はヨーロッパで生まれ、黎明期のマックス・ヴェーバーの業績が大きいでしょうか。

社会学者と呼ばれる人たちは、その日本への導入を行い、今でも新しいヨーロッパの学説を得意顔で紹介する人も珍しくありません

ただし、ヨーロッパでの学説を、そのまま日本に当てはめようとしても、必ずしもうまくはいきません

歴史的、文化的な背景を考えた方がよさそうです


さて、中世から近世のヨーロッパでは、火薬の実用化が大きな社会変革の引き金になりました。

大砲の使用が可能になり、難攻不落だった要塞が、短時間で攻略できるようになりました。

要塞のような城に住んでいる貴族たちは安泰ではなく、脅かされるようになりました。

銃の使用も可能になり、騎士階級は無意味になり、銃を持った農民が台頭しました。

このように、火薬の実用化は、貴族・騎士階級の没落、農民の台頭を意味します。

日本への鉄砲伝来は、1543年種子島にポルトガルからもたらされた、とされています。伝来の年については諸説あるようですが、概ねこの頃です。

日本に技術的に進んだ状態で伝来したため、日本の国土が狭いため、ちょうど戦国時代だったため、いろいろ理由はありますが、日本にはあっという間に広まりました。

徐々にではなく、あっという間に広まったため、鉄砲は農民には、まだ広まらず、ほとんど大名の手にありました。

大名は鉄砲が農民の手に渡るとまずい、ことは、すぐに理解して、わずかだけど、農民の手に渡っていた鉄砲の回収を行ないました。

後に政権を取った徳川幕府は、南蛮貿易自体が、政権側以外にも、鉄砲をもたらし、富をもたらし、体制維持に反する思想をもたらす、ため、禁止します。

さらには、体制維持のため、関所により、空間的な移動を制限し、身分制度により、社会的な移動を制限します。

このように、人々を固定化することが、体制維持には好都合でした。

ところが、戦いがなくなりますので、武士は仕事がなくなる、手柄をあげる場がなくなる、ことになってしましました。

そこで、学問をやる人が増えてきます。

紙の生産性の向上、出版技術の進歩がこれを支えます。

さて、学問は、通常、文字で書かれたものを対象に行なわれます。これは、今も昔も、あまり変わらないようです。

であるならば、文字が伝来する前の時代のこと、は極めて学びにくい、ことになります。

文字が伝来する前の、古代の日本には、書き言葉がなく、語り部と呼ばれる人たちが、古来のことを語り伝えました。

それゆえ、この時代については、後世で文字が伝来してから、伝来した文字により、記述したものです。

さらに、書かれた文字の解釈は、書かれた時代と、それを後に読む時代、では意味が異なります。

それゆえ、書かれた文字の今の意味ではなく、便宜的にその文字を使わざるを得なかった事情、まで考慮して、読む必要があります。


さて、テーマ「小林秀雄「本居宣長」を読む」の周辺で学んだのはこんなかんじでしょうか?

講師の橋爪大三郎先生は、タイムマネジメントはしっかりしている方なのですが、今日は力が入ったのか、時間超過。

大岡山は遠いので、早く出たかったのに、随分遅くなってしまいました。




stake2id at 22:40│Comments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

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