2012年10月22日

お金を使わない新しい経済学〜暮らしに役立つ「マッチングの仕組み〜

東大ホームカミングデイ

では、教授陣の「熱中講義」がありました


大学を卒業しても、学びたい。

いま大学の講義を聞けば、あの頃よりも得るものが多いかも。

そんな卒業生の「学び直し」のニーズに応えるべくはじまった、この「熱中講義」。


今年の熱中授業は、政策研究大学院大学の安田洋祐先生による

お金を使わない新しい経済学〜暮らしに役立つマッチングの仕組み〜

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本年度のノーベル経済学賞「安定配分の理論とマーケットデザインの実践に関する功績」を称えて,ハーバード大学のアルヴィン・ロス教授とUCLAのロイド・シャプレー名誉教授に授与された、というグッドタイミングのせいでしょうか?会場の教室は超満員で椅子を増設するほどです

マーケットデザインについては、安田先生の

市場を創る:マーケット・デザイン入門

がわかりやすいので、そこから抜粋します


市場は、一方では、どんなに困難な環境でも自生的に発生し、政府に抑圧されてもすぐに復帰する「立ち直りが早い」組織である。

しかし、他方では、市場がその潜在力をフルに発揮するためには、「ルール、慣習、制度による支えが必要」なのであり、とりわけ現代経済における複雑な取引を支えるための洗練された市場は、財産権保有などの面で政府の助けがなければ、十全な機能を発揮することができない。

ここにこそ制度設計のための経済学の役割があるというのである。


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・従来の経済学のイメージ:お金、市場、景気、経済成長、神の見えざる手、自由放任、数字がたくさん、机上の空論、現実の役に立たない

・新しい経済学:お金や市場とは関係のない社会・経済現象も分析、自由放任がベストとは限らない、制度設計が必要、学者が考えた制度が現実に応用されつつある

・伝統的な経済学:需要と供給による分析、完全競争市場での個人の最適化行動に基づく需給分析。現実には完全市場は少なく、市場を介さない経済行動も多い

・自然科学:物事が一定の自然法則に従って見える→数理分析可能、社会科学:各人が勝って気ままに行動し、一見すると法則がない→数理分析不能に見えるが、実は可能

・経済学のアプローチ:制度的知識(事実をじっくり調べる)、経済理論(現象の背後にある法則を探す)、経済(学)の法則、各人は自分にとって得になるように「インセンティブにしたがって」行動する




経済を論じる時、市場があることが前提で、市場での需要と供給のバランスで考えるのですが、多くの経済行動を含む社会活動が、市場以外のところで行われます。

例えば、企業、学校など組織内あるいは、組織間の活動も、必ずしも市場を介さないものが少なくありません

この市場を介さない活動を考える特に有効になるのが「ゲームの理論」です


・フォン・ノイマン(1944)社会の問題を分析する「ゲームの理論」:社会現象をプレーヤー、戦略、利得で表現される「ゲーム」に定式化

・ジョン・ナッシュ(1950)ナッシュ均衡:誰も自分だけ行動を変えようとするインセンティブがない(参加者がお互いに最適化を行っている)一般的な条件化で解が存在する

ナッシュ均衡とは、

「ナッシュ均衡」ってなに?

によると、


「相手プレーヤー達の戦略が変わらない時に、自分一人だけ戦略を変えても利得が増えないような戦略の組み合わせ」。

要するに「自分だけ戦略をいじっても得できない」状態がナッシュ均衡なわけです。

逆に言うと、もしもゲームのプレーがナッシュ均衡でないならば、少なくとも一人は戦略を変化させて得をするプレーヤーがいることになります。


・マーケットデザイン(制度設計)ミクロ経済理論で得られた知見をいかして、現実の市場や制度を修正・設計する、理論だけでなく、実験やシミュレーションを通じて事前に実用性の検証を行う

・マーケットデザインの成功に欠かせない3つの要素:参加者の厚み(誰も参加しなければ意味がない)、混雑解消(多くの人の参加を可能に)、安全かつ単純

・様々なマッチング:1対1 結婚、1対多 労働市場、入学試験 、多対多 卸売りと小売


このようにマッチングは、人間生活の様々な分野で日常的に欠かせない事項です。

実際に「周波数オークション」「国債の販売方法」「Google アドワーズ」「研修医マッチング」「臓器交換メカニズム」「公立学校選択制」などに活用されています



・安定マッチング理論:ゲイル=シャープレー・メカニズム、より望ましい相手が残っている可能性ゼロ、自分がマッチできる可能性がある相手の中で最適なパートナー 

・交換問題、トップ・トレーディング・サイクル・メカニズム、自分が手に入れることができる中で最高の商品をもらうことができる


ゲイル=シャープレー・メカニズムのシャープレーは今年度のノーベル経済学賞を受賞しましたが、ゲイルは残念ながらもう亡くなっています

ゲイル=シャープレー・メカニズムは実例で示さないとわかりづらい、と思います

上述の発表用スライドでは、男女3×3の合コンで、できるだけお互いに好みの相手同士とマッチングさせる手法が以下のように説明されています


安定マッチングの求め方

(男性側提案の)GSメカニズム

1. すべての参加者が好み(ランキング)を提出

2. 次の作業をマッチメイカーが機械的に行う

. 各男性が第一希望の女性に一斉にアタック

. 複数の男性からアタックされた女性は、その中でベストの男性を「キープ」(仮マッチ)して後はリジェクト

. リジェクトされた男性が第二希望の女性にアタック

. 女性は毎回ベストな男性をキープ、残りをリジェクト

. リジェクトされる男性がいなくなるまで作業を続ける

3. ストップした段階でマッチング結果が確定!


大昔、フィーリングカップル5対5

という番組があり、ルールは「男女5人づつが相手を選んで、相手も自分を選んでいたらカップル誕生」というものでした。

フィーリングカップル5vs5

にあるように、このルールでは、


・フィーリングカップル5対5でカップルができない確率は28%、1組できる確率は47%、2組できる確率は21%、3組できる確率は0.1%、全員カップルになる確率は0.001%



です。

このルールでは第一希望しか、取り入れられませんが、実際のカップリングでは、第一希望から第三希望、とか、第一希望と第二希望でほとんど差がない、どちらか、なんていう方が現実的です。

これを取り入れられるのが、ゲイル=シャープレー・メカニズムです。

役に立つマッチングの理論『ゲイル=シャープレー・メカニズム』の使い方

を見て頂けば、と思います

ただし、プレーヤーは、

・すべての選択肢を理解して、優先順位を決めている訳ではない

・自分の優先順位をわかっていないことも多い

など、まだまだ課題がありそうです

それにしても、実用的な熱中授業でした




stake2id at 17:04│Comments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

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