2017年01月09日

熊本地震調査から、耐震技術への提言

昨年1年を振り返ると、4月に熊本地震、夏に東北豪雨、年末に糸魚川の大火、と大きな災害がありました。

日本の建築技術は優れたものでありますが、上記のような大きな災害があるたびに、いくつかの課題が浮かび上がってきます。

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熊本地震について、元・耐震技術者の視点から




耐震工学とは、過去の地震被害を踏まえ、その被害を防ぐ対策を行い、その対策の有効性が検証され、また、新たな被害が指摘され、その対策を行う。その繰り返しだったりします。


と書いたとおりです。

図13


平成28年度「国土技術政策総合研究所 講演会」

「過年の地震被害に重ねる2016年熊本地震による建築物被害」

に計14次の被害調査結果を踏まえて、被害調査事例だけでなく、今後の耐震技術への提言がなされているので、見てみることにします。


熊本地震について、元・耐震技術者の視点から

に書いたように、「TAK」さんは元・耐震技術者で、現・耐震技術者ではありません。基準、考え方が現行のものと一致しない場合もあることは予め、お断りしておきます。

図1


さて、地震は太古の昔からあり、そのたびに人々、建築物は被害を受けてきましたが、科学的な検証、対策がなされるようになったのは、明治以降でしょうか?

明治時代の横浜地震、濃尾地震が科学的な検証、対策の始まり、関東大震災で水平震度法のような耐震設計が世界で初めて提案されました。

東南海、南海地震が話題になっていますが、前回の東南海地震は昭和19年、南海地震は昭和21年と戦中戦後の混乱期に起きました。地震は人間の都合、国際情勢など考慮してくれません。

図2


1978年の宮城県沖地震で、仙台など、都市が被害を受けた地震であり、建築物、橋梁、ライフラインなどの人工物の被害のメカニズムが明らかになりました。

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その結果として、新耐震基準(1981)が作成され、これについては、その後の阪神大震災、東日本大震災でも有効性が確認されています。

1995年の阪神大震災では、新耐震基準(1981)に加える形で、2000年に「仕様の明確化」がなされました。

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また、阪神大震災では、地震発生後3〜4日後に、通電火災が相当数あり、地震による停電後の、通電再開について、必ず、一度ブレーカーを落とす、など、地震後の対応についての教訓もありました。

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東日本大震災では、津波への対策があらためて指摘されることとなりました。

ただし、工学は津波に対して、新耐震基準のような明確で、わかりやすい対策基準は提示していません。と言うか、技術的、経済的に現実に即した、有効な対策が提示できないのが実情です。

高さ20mの防潮堤を数kmにわたって、莫大な費用を支出してつくる、ということにはコンセンサスが得られていません。

一方で、東日本大震災では、津波被害により、耐震上の課題が埋もれてしまった感もあります。

ただ、免震設備、エスカレーター、天井など設備の被害も明らかになってきました。

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さて、4月14日21時26分頃、熊本県熊本地方で発生したM6.5の地震『平成28年熊本地震』が「余震」で、16日午前1時25分ごろ、熊本県熊本地方を震源とするM7.3の強い地震が「本震」とされました。わずか1日半の間に震度7、6強、7の地震を経験することとなりました。

図4


そのため、現地入りした、先遣調査隊が震度7の本震を経験することとなりました。

その結果、震度7、6強の地震に何とか持ちこたえていた建築物が、その後の震度7の本震で壊滅的に破壊してしまうことが報告されました。

図6


建築物の被害と、建築年度、新耐震基準(1981)、2000年「仕様の明確化」を見ると、建築年数の新しさも重なり、新耐震基準(1981)、2000年「仕様の明確化」後の建物の被害が少なくなっています。

図7


施工の不良による被害は当然として、基準通りに、適切に施工したにもかかわらず、被害事例があります。今後の検討が待たれます。

図14


新耐震基準(1981)では、

・建物供用中に何度か遭遇する、中地震に対しては、ほぼ被害がないこと

・建物供用中に1度遭遇するか、どうかの、大地震に対しては、ある程度の被害は仕方ないが、倒壊・崩壊はせずに、人命被害は出さない

図10


ことが求められます。

東日本大震災、熊本地震のマンション被害を見ると、構造躯体としては大きな問題はないものの、非構造壁に大きな被害があり、補修では難しく、結局、立て直さざるを得ないものが多くあります。

図8


耐震基準は、取りあえずクリアしているものの、人々の意識としては、東日本大震災、熊本地震のような大地震であっても、マンションについて、人命の確保は当然として、ある程度の補修をして住み続けたい、というのが本心ではないでしょうか?

図11


耐震基準強化などは、すぐには難しいかもしれませんが、住宅等級など対応が必要かもしれません。

図9


ところで、1995年の阪神大震災の前後から、地震動を逃がしてしまう、建築物に免震装置の設置が進んでいます。

ところが、東日本大震災、熊本地震では、免震装置自体の被害がいくつか報告されています。

免震装置自体の設置の耐震性確保が求められていますが、免震マンションに住んでいるからと言って、大地震に対して安全、とは限らないことに注意が必要です。


取りあえず、現時点の資料からまとめてみました。




stake2id at 21:41│Comments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

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