2009年05月14日

杉並区立和田中学校・前校長で大阪府知事特別顧問の藤原和博氏のお話です

コミュニケーション力の低下は、人材育成の分野でも共通した問題になっています。

これは、高度化・複雑化し、変化の激しい今の時代に必要となっている「情報編集力」を高める教育が、子どもの頃から十分に行われていないからであり、同じ問題を抱える社会人が増えるのも当然だと、藤原氏は考えています。

藤原氏は、コミュニケーション力を低下させている理由として、次の2つを挙げました。

(1)超便利社会

店内に入って何かを買って出てくるまで、一言も発しなくてもすむコンビニエンス・ストア。コンビニは一種の「自動販売機」だと藤原氏は言います。

かつては、お菓子一つ買うのにも駄菓子屋のおばさんとあれこれ交渉したりして、子どもたちが大人とコミュニケーションする必要がありました。

今の私たちをとりまく環境はますます高機能化、インテリジェント化してきています。人が望んでいるものを先回りして、「あなたはこれが欲しいんじゃないですか」と聞いてきます。能動的にコミュニケーションをする機会が失われているのです。

社会がどんどん便利になっていくことは止められない流れだという理解を踏まえて、どうやって子どもたちのコミュニケーション力を向上させるかが重要です。

(2)正解主義

現代の子どもたちには「正解主義」の呪縛があります。正解がわからなければ発言しません。このため、活発なコミュニケーションが成立しにくいのです。

藤原氏は、「修正主義」を提唱しています。修正主義とは、とにもかくにも頭に浮かんだことを口に出してみる。そして仲間と議論を繰り返して、考えを無限に修正していき、自分自身、および周囲が納得して受け入れられる「納得解」へと到達するというものです。

子どもたちが正解主義に囚われてしまう原因は学校にあります。学校とは、基本的に正解を教える場所です。小・中・高とずっと正解を詰め込むことばかりをやってきた結果、子どもたちはどんなことにも正解があるという勘違いをしてしまうのです。

就職活動において、自分にとってどの会社が「正解」かを考えて会社選びをしてしまう。その結果、入社早々、3カ月くらいで「この会社はちょっと違う、正解じゃなかった」とあっさり辞めてしまう。

会社で働くということは、変化する会社と、変化する自分との間でぎりぎりのベクトル(方向性)合わせをし続けることです。常に変化する状況の中では唯一絶対の正解はありません。その都度その都度、最適な解、つまり納得解をすり合わせるのが働くということです。

結婚もまた同様です。意見が合わないからといって簡単に別れてしまうのではなく、子どもを含め、変化していく相手(夫、または妻)と自分との間で意見を戦わせながら、やはりぎりぎりのベクトル合わせをし続けるのが結婚生活なのです。


低下してしまったコミュニケーション力を向上させるため、藤原氏は、以前から「情報編集力」の重要性を訴えてきました。従来の学校が教えてきた、正解をすばやく答えられるスキル、すなわち「情報処理力」だけでは不十分だと考えているのです。そして、情報処理力と情報編集力の違いを、藤原氏は、ジグソーパズル=情報処理力とレゴブロック=情報編集力の違いにたとえて説明してくれました。

ジグソーパズルでは、あらかじめ決まった図柄(答え)を完成させることが重要です。しかし、自分の好きな図柄を創作したり、図柄を途中で変更することはできません。

一方、レゴブロックは組み合わせによって自由に新しい形をいくらでも生み出せます。正解がないので一人ひとりが世界観を持たなければできません。

20世紀の成長社会は、「長生きできて、平和で便利で安全な国」というジグソーパズルの図柄(ビジョンや目標)を完成させるため、みんな一緒にがんばる時代でした。この時代に必要とされたのは情報処理力です。図柄が事前に与えられていたからです。

しかし、20世紀にめざした図柄がある程度実現した今日、すなわち21世紀の成熟社会では、みんな一緒ではなく、それぞれ一人ひとりが自分なりの世界観を持ち、様々な要素を自由に組み合わせて、新たな図柄を生み出すことが求められています。そこで、情報編集力がますます重要になってきたというわけです。

情報編集力は、要素(正解)をたくさん覚えるのではなく、自分が持っている知識、経験、スキルといった内側の要素、さらに、他者が持つ知識、経験、スキルといった外側のスキルも借りて、柔軟につなぎ合わせることがポイントです。したがって、情報編集力は、わかりやすく「つなげる力」とも言い換えることができます。

情報編集力を構成する主な要素は、コミュニケーション力、論理的思考力、プレゼンテーション力の3つ。こうしたスキルを鍛えるために有効な方法のひとつが、藤原氏が開発した「自分プレゼン術」です。

自分プレゼン術は、わかりやすく言えば「自己紹介」です。自分の特徴を一言でわかりやすく説明する「キャッチフレーズ型」や、様々な質問を投げかけながら、相手と自分の共通点を探し出していく「Q&A型」などいくつかの方法があるそうです。





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