2016年03月07日

東大経済学部吉川洋先生最終講義「マクロ経済学と日本経済」

という案内が来ました。

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吉川洋先生は経済学が専門ではない、「TAK」さんでもよく存じ上げている、高名な先生ですが、実は講義を聴くのは、皮肉なことに、この最終講義が初めてです。

この講義を聴いて、思ったのが、工学、理学を学ぶ学生が大学の初期に、物理学の古典であるファイマンの物理学を学ぶように、経済学の古典、マルクスの「資本論」、ケインズの「一般理論」、シュンペーターの「経済発展の理論」などの古典を読んでおくと、現在の経済を学ぶ基本となる、ということでしょうか

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トマ・ピケティ『21世紀の資本』金融経済と実体経済の格差を利用する 

「論より統計!」大規模データの時代になって、統計が「整備」から「積極活用」に

経済とは、人の行動を予測し、一歩先を行くこと

なども踏まえつつ、伺ったお話をかいつまんでまとめてみます。

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16〜17世紀の重商主義、18世紀フランスの重農主義、18世紀末〜19世紀初めの産業革命の時代を経て、

スミス、マルサス、リカードなどの古典派経済学が生まれる。

当初の経済学は、ウィリアム・ハーベイの心臓・血管を通じた血液循環メカニズム(1628)など、自然科学の影響を強く受ける。

複雑な経済システムが、なぜバラバラの無秩序の陥らないのか?市場、価格を通した予定調和、価格は手旗信号、ただし、価格はいつも正しいシグナルとは限らない、とするワルラス、パレートらの新古典派経済学、19世紀末の「限界革命」

19世紀末頃、GDP等マクロの統計整備が進み、ジャグラーらにより、景気循環ビジネスサイクルの実証研究が進み、ケインズの「一般理論」(1936)が刊行され、マクロ経済学が誕生する。

サミュエルソンは「新古典派統合」を唱えるが、1960年代以降、経済学はミクロ経済学=新古典派経済学、マクロ経済学=ケインズ経済学、の二刀流

1970年代以降、マクロ経済学のミクロ経済学化が進む

ただし、ミクロ経済学は企業や個人の「最適化」には有効だが、それを代表として「相似拡大」してマクロ現象にあてはめようとしてもうまくいかない。

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マクロ経済を理解するには、ミクロの行動を追うよりも、統計物理学的な手法の方が有効。

労働の求人・求職の「確率的」な出会いは総需要により規定される。

ケインズの「有効需要の原理」「総需要」は物理学における温度Tの役割、労働生産性とエネルギー準位

短期だけでなく、長期の経済成長も「需要の飽和」によって規定される

経済成長とは、新しい製品、サービスが生まれて、それらが順次、飽和していくプロセス

一般物価の動きは、個別の物価の相互作用によって決まる。「期待」の役割はマイナー

マクロ経済学は他の学問分野、とりわけ統計物理学の知見・方法論を積極的に取り入れて変わらなければならない。

経済物理学、進化経済学、ネットワーク科学などの新しいマクロ経済学が進化してきている。

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伺ったお話をもとに考えてみます。

太古の昔から、物々効果などを通じて、不足するものは価値が上がり、余剰だと価値が下がる、のような需要と供給のバランス、

あるいは、モノとモノ、サービスの交換をスムーズにするための貨幣、通貨の発明、

など、経済行為はありました。

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トマ・ピケティ『21世紀の資本』金融経済と実体経済の格差を利用する 

大昔から、巨万の富を築いた人は、金融経済で大きな収益を上げ、それを実体経済の消費に使うという「格差」を巧みに活用してきました。

古代の東西貿易では、それぞれの場所では安価だが、よそへ持って行くと高く売れるもの(東洋の塩、コショウ、絹、西洋の鏡などの工芸品)

つまり、安いものを買って、高く売れる場所で売る、ことにより、莫大な利益を上げました。財産である、商品を積んだ船は難破で沈むリスクがありましたが、これを回避するために作られたのが保険です。

江戸時代の両替商は、江戸の金貨、大阪の銀貨、各般の藩札を両替し、手数料で大きな利益を上げました。

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さて、経済、市場の動きを見ていると、自然科学、とりわけ物理学の法則がうまく適用できる場合があります。

ニュートンが発見した慣性の法則、作用・反作用の法則、酸化還元反応、エネルギー保存の法則、万有引力の法則などの自然科学の法則は普遍的に成り立っています。

人間がこれに逆らおうとしてもムダです。むしろ、これを利用することを考えます。

一方、経済原理、市場原理などは、人と人の行い、振る舞いを観測するうちに、みられる現象に過ぎません。

あらゆる現象がそれにしたがう訳でもないし、時代と共に変わっていきます。

このように自然科学の法則と社会科学の法・法則は、同じような名称でありながら、かなり性格を異にします。

自然科学の法則は全体から細部にいたるまで成立しますが、経済の法則は、成り立たない部分、あるいは細部では矛盾があるのは当然です。

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「論より統計!」大規模データの時代になって、統計が「整備」から「積極活用」に

「統計」と呼んでいるものの歴史を振り返ると、その源流は以下のように大きく3つに分けることができます。

1. 国の実態をとらえるための「統計」
2. 大量の事象をとらえるための「統計」
3. 確率的事象をとらえるための「統計」

これらは別々のルートをたどって、19世紀半ば、ケトレー(1796-1874)が社会統計を科学的に作成・分析するために確率論を導入したことで、社会現象・自然現象いずれも数量的にとらえる「統計」として形を整えました。

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1. 国の実態をとらえるための「統計」

古来、為政者は、徴税、兵役などのために、その支配する領域内の実情をできるだけ正確に把握する必要がありました。

19世紀のフランスの統計学者モーリス・ブロックは「国家の存するところ統計あり」という言葉を残しています。こうしたことからも、統計が国家経営に欠かせないものとして発展してきたことは容易に理解できます。

古代エジプトでは紀元前三千年にピラミッドを建設するための調査が行われたことが知られていますし、ローマ帝国では初代皇帝アウグストゥスの治世の頃に、人口や土地を調べる調査(Census)が行われました。今日、国勢調査のことを「人口センサス」と呼ぶのはその名残です。

日本でも、住民を登録して課税するために670年に最初の戸籍、庚午年籍を作成したり、また後世では豊臣秀吉が同じく課税のために、大規模な太閤検地を行ったことが知られています。

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2. 大量の事象をとらえるための「統計」

イギリスのジョン・グラント(1620-74)によってその道が切り開かれました。

グラントは、当時たびたびペスト禍に見舞われていたロンドンで、教会の資料を基にした死亡統計表を分析し、一見偶然とみえる人口現象に規律性のあることを明らかにしました。

彼はまた、当時200万人と考えられていたロンドンの人口について、様々なデータや観察を通じて38万4千人と見積もり、限られた量のサンプルデータを注意深く観察することで全体の人口に関する推測が可能になることを示したのです。

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3. 確率的事象をとらえるための「統計」

サイコロ賭博のように偶然に左右されるギャンブルとの関わりの中から産み出されました。

「標本空間」の基本的な考え方は、16世紀にサイコロ賭博やトランプゲームにおける偶然の仕組みを数学的に研究したイタリア人カルダーノ(Geloramo Cardano 1501-76)によっています。

パスカル(1623-62)とフェルマー(1600年代初頭-1665)は期待値、推定、検定、標本理論など確率論の基礎をつくり、18世紀に入り、ベイズ(1702-61)、ラグランジュ(1736-1813)、ラプラス(1749-1827)といった一流の数学者たちの研究を経て大成します。


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経済とは、人の行動を予測し、一歩先を行くこと


「ゲームの理論」が提案されてから、実験経済学、行動経済学と呼ばれる学問が生まれました。

円安のマイナス効果、アメリカ景気回復で独り勝ちで、国際経済金融はどうなる?




・市場は「売り」と「買い」が交錯している時が山場。全員が買うと「終わり」

・実際の値、そのもの、よりも、実際の値と予想の差が大事。


と書きましたが、市場の動き、例えば、GDPの成長率、アメリカのダウ30、雇用統計などについて、

人々は予測を行い、その予測を経済活動に織り込みます。

すなわち、GDPの成長率、アメリカのダウ30、雇用統計が発表されるときには、その動き、上昇、下落などは

ある程度、織り込み済みの経済活動を行っています。

しかし、実際には、予測と実際には「ずれ」があります。

それゆえ、経済指標値が発表された時には、予測と実際には「ずれ」により、人々は大きな経済の動きを行うことになります。

人々がどういう行動を取るか、予測し、その一歩先を読んだ行動を取ることができれば、

例えば、株価の上昇、下落、為替の円安、円高などを事前に予測し、値が動く前に、売買を行えば、利益を上げることができます。

もちろん、この「読み」が難しいのは、もちろんです。


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短期的な経済行動は、人の行動を予測し、一歩先を行くことにより、先んじることができますが、中長期的な経済行動は、「需要の飽和」により規定されます。

中国回復傾向、原油安も底打ち、で世界的に回復傾向の中、日本はマイナス金利で混乱、で世界経済はどうなる?


住宅金利も下がったので、住宅を買いやすくなる、月々の返済が軽くなる、などのメリットがあるのでは、と考えられますが、解約手数料を払ってでも、現在のローンを解約し、新しいローンを組んだ方が安くなる場合、はもちろんメリットがあります。

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ただ、新規の場合、住宅価格がバブル期を超えて高値を付けており、今買うのはどうか、という感がします。

今後、少子高齢化がさらに進み、首都圏以外は、大阪圏も含めて、人口が減少しており、空家率が上がっています。

中長期的に考えれば、2020年東京オリンピック以降は、住宅価格は下落、と考えるのが相当では、ないでしょうか

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従来のガス田、油田に比べ、固い岩盤に閉じ込められていて、これまでは採掘不可能と考えられていた、ガス、石油が、採掘技術などの進歩により、採掘が可能になった、というものです。推定ではアメリカのシェールオイルの埋蔵量はサウジアラビアを上回るのでは、と言われています。

原油価格を決定してきた資源国ロシア、OPEC諸国から、アメリカに価格決定が移ったことを意味します。

また、エネルギーの石油代替が進む中、自動車だけはガソリンを使わざるを得なかったのですが、電気自動車、燃料電池自動車の開発、実用化が進む中、石油の占める位置はますます軽くなっていきます。

原油価格について、短期的な変動はあったとしても、中長期的には、需要が減っていく方向で、安値に安定しそうです。


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本当に勉強になった最終講義でした。

吉川洋先生の今後のますますのご活躍を期待しております。




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