前回狭山事件関係のネタで書いたが、来年で発生から50年になるという事件だ。筆者含め、たいていの人がリアル感を持てない事件だろう。むしろ狭山事件で連想するのは、ネットで広まった「となりのトトロ」と関連付けられた都市伝説の方ではないか(笑)。

これについてはとっくに様々なサイトで検証がなされており、今さら「もういいよ」かもしれないが、「トトロ」は好きな作品なので自分なりの検証をしてみたい。

アニメ関係の都市伝説としては、昔から「ドラえもんは実は植物人間ののび太の見た夢」や、「サザエさん一家は最終回、飛行機事故で全員死亡し、一家は(それぞれの名前の通り)海へ帰る」といった類の話が語られてきた。
「トトロ」で言えば「トトロは実は死神」「サツキとメイは死んでいた」等の話だろう。これらに共通するのは“一見明るく健康的な作品に不釣合いな死の匂い”だ。

エロスとタナトスというか、そのミスマッチさが、どこか人の潜在意識に訴えるのかもしれない。口には出さずとも、我々は常に死に怯える存在なのだから。それゆえ消えることなく語られ続けるのだろう。言わば「トトロ」もその仲間入りをしたというところか。

その手の都市伝説が流れること自体は、とりたてて目くじらを立てるようなことではない。だが「トトロ」の場合、狭山事件と絡められ「姉妹の幼い妹が誘拐され、バラバラ死体で発見された」等の、事実と違うデマが流布するに至っては、実際の事件の被害者にも、作品にとっても迷惑な話ではないだろうか。

ネットでは、否定派が意見をすると「ジブリ信者はすぐムキになる」等の物言いがされる。筆者は別段ジブリ信者ではないことをお断りしておく。
むしろ宮崎駿監督作品に対しては、複雑な感情を抱いている。作品はもちろん好きだし面白いと思うが、宮崎監督個人は、好きか嫌いかで言えば自分は、好きになれる人物ではない。

なぜあの方は公の場で、ああも名指しで人を批判するのだろうか。一時はインタビューや文章で、失礼ながら、その大人気ない発言を目にするたび、正直不快感を抱いたものだ。もはや“世界の巨匠”なのだから、もっと泰然自若としてればいいものをと思ってしまう(最近はだいぶ丸くなられた?)。

もちろんアニメ業界に対する批判などは、発言力のある方だからこそ、その実態を世間に伝えられたというプラス面もあっただろう。
ただ「未来少年コナン」などを「こんな面白いアニメがあったのか」と、かつて感動した自分にとって、一番ショックだったのはやはり、コミックボックスの手塚治虫追悼特集号に掲載された有名な批判文だ。こちらにほぼ全文が掲載されている。

愛・蔵太の気になるメモ 宮崎駿の手塚治虫批判テキスト全文その他
宮崎駿『手塚治虫に「神の手」をみた時、ぼくは彼と訣別した』 http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20071013/atom01

言ってることは正論である。自分も手塚氏製作の実験アニメは、正直とりたてて面白いとは思えない(苦笑)。アニメーションに半生をつぎ込んできた氏だからこそ、言いたいことは山ほどあったのだろう。
だが「周りは悼む声でいっぱいでしょうけど」と、追悼号に載る文章であることを十分わかっていながらこれを書いたことに、どうしてもヘソ曲がりな“意思”を感じてしまう。しかも相手は亡くなってしまって反論できないのだ。

また、同じ頃「洪水にバケツで水を加える行為」という文章もあった。こちらに掲載。

宮崎駿 「出発点」のアニメ洪水に対する発言を思い出す。 http://d.hatena.ne.jp/kichiki/20020304/miyazaki
“洪水”とは当時のロボットアニメや、おたく文化が形成され出した頃の、今で言う美少女アニメ系の作品のことを暗に指していたのだろうが、そうした作品も好きだった自分としては、クリエーターの発言としてちょっと寂しいものを感じたものだ。

ちなみに上記の「“神の手”~」には、宮崎監督の記憶違いと思われる箇所がある。「ある街角の物語」について「燃えるポスターを軍靴が踏みにじるシーンを見て、すごく嫌な感じを受けた」旨のことが書かれているが、「ある街角~」にそのようなシーンはない。

また、氏が批判する「ある街角~」のラストは、焼け野原のガレキに木の芽が出るシーンで終わるが、それは劇場版「風の谷のナウシカ」のラストシーンに、奇妙なほど瓜二つだ。
machikado







「ある街角の物語」(C)1962 手塚プロダクション

nausica







「風の谷のナウシカ」(C)1984 二馬力・GH

なにもこれをパクリなどと言うつもりはない。単なる偶然の一致だろう。だが「“神の手”~」に見え隠れする、宮崎監督の手塚氏へのアンビバレンツな想いを読むと、やはりどこか潜在的に意識していたものが表出したのではないかと、うがった見方をしてしまうのだが。

「トトロ」の都市伝説について書くつもりが、宮崎監督批判めいた文章になってしまった。都市伝説検証は次回に。