2017年01月29日

ある対談記事より、続きの続き

秋山『やはりあれですか、秋穂選手引退の契機としては…、怪我が長引くことに加えて、巷間噂されるように後を託せる後継者たる、藤田選手台頭による部分が大きい、と?』
秋穂『うーーーーーーん…』
藤田『な、何でそこで言い淀むかな!?』
秋穂『…いやね、誰が誰の後継者とかね?そういうのって違うかなって』
藤田『あんだけ頑張って、結果も結構出してる方ですよ、私って!何ですか、やっぱゴール数ですか!?』
秋穂『あ、気にしてたんだ?いや、ちが…』
藤田『でも、ボランチってのはチームのバランスを取るのが何より、それこそ命懸けてでもって言ったじゃー』
秋穂『だあから聞きなって』
秋山『…あのう、普段からこういう感じなんですか?その…お二方の会話って』
秋穂『今日は大人し目かな、第三者いるし』
藤田『だって相手が先輩でも誰でも物怖じすんな!って。年上だから、とかキャプテンだから、とか言ってたら後で困るのはチーム全体で、それはボランチの責任だ!って』
秋穂『…そういう言い方は多分してないと思うんだけどなあ…』
秋山『こりゃ『秋穂メモ』かなんか持ってそうなイキオイですねえ』
秋穂『何ニヤニヤしてんですかみど…じゃないや秋山さん』
藤田『ありますよ秋穂メモ!今は寮に置いてますけど、見ればいつ言われたかまで特定可能です!!取って来ましょう!!』
秋山『ああ、別に疑ってる訳じゃないし話が逸れるんで結構ですよ藤田選手。ダッシュの構えいらないんで』
藤田『…はい』

 

「…」

離れたところで打ち合わせを続ける高学年組を横目に見ながら、秋穂は周囲に車座に座らせた急造チームメイトたる少女達を見下ろし、にっこりと笑いかける。…が、その笑顔を向けられた少女達の表情は一様に硬く、重かった。

「よし!じゃ、まずポジション決めようか?悪いけどキーパーは私ね?フォワード、やりたい人!」 

言って秋穂はしたっと手を挙げ、軽く舌を出す。

「って、私キーパーやっちゅうねーん?…はは」 
「…」 

何らかの決意を秘めた表情で立ち上がったのは美浜ちよ、この子も比較的古株である。

「ぽ、ポジションは!…みんなのことをよく見てる秋穂選手が決めた方がいいと思います!!」 
「なるほどねえ」 

あからさまにほっとした顔をしてちよはもう一度体操座りに戻る。やはり年上、しかもクラブのバンディエラとも目される人物に意見を述べるのはひどくストレスだったらしい(笑)

自主性を重んじたかったからあえて希望を募ったが、確かにちよの言にも一理ある。
軽く秋穂は頷いて、もう一度周囲を見渡した。

「じゃあ、みんなの希望も聞いた上で私が決めるね?改めてここやりたい!得意!自信アリアリ!…って子は、」 


やはり誰も手を挙げない。 


「…どうしたのみんな?まるで勝てるわけない、って顔だよ?」 
「だって」 

膝に埋めていた顔を上げ、唇を尖らせて離れた高学年組を指差したのは龍崎薫で、先月からサッカー教室に来るようになった新顔だ。


「勝てるわけないもん、あんなの。カノンお姉ちゃんめっちゃ上手いし、桜お姉ちゃんはめっちゃ脚早いし、今日から来てるあの、六番の子?」 


薫は軽く目元を拭う。


「カノンお姉ちゃんより上手かった!あんなの、勝てるわけないよ…」 
「なるほど、ねえ」 

まあ、気持ちは分かる。殊にこの年代では一歳の年の差はそれでなくても深刻な体格差に繋がるし、その上にテクニックやスピードでも劣る、と知っていれば尚更だ。ふうむ、と秋穂は口の中でもう一度呟くとにこやかに、あくまでもにこやかに。薫に近付くとしゃがみ込んで目線の高さを合わせる。目に見えて薫は怯えた表情を作り、内心で秋穂は軽く傷付いた(笑) 


(…そんなに怖いのかなあ、私) 


「薫ちゃん、私達が今からやるのはサッカーだよ?かけっこでもサーカスでもない」 
「でも…」 
「まあ、さ?やるだけやってみない?勝てるわけない、んなら負けたってもともと、だよね?」 


まだ薫は口を尖らせたままだったが、そこで声がした。


「勝てます!!」



 ちょうど背後から聞こえたその声に秋穂が振り返ると、立ち上がっているのにしゃがみ込んでいる自分よりやや高いだけの美浜ちよの、これ以上ないドヤ顔があった。







「…へ、へえ、ちよちゃん?」

あまりに自信満々なその表情に秋穂は精神的に数歩後ずさったのだが、ちよはといえばそんな秋穂にはお構いなし、口を開く。


「考えてみたんです。この敵味方22人の中で誰が一番なのか?それは秋穂さん!」


わざわざ、びしっとか人差し指で秋穂を指差しかねない勢いだった(笑)


「ボール取ったら秋穂さんに戻して、そっから突破して貰えば!」
「それ、いい!いい考えでやがります!!」


丁寧なのかぞんざいなのかイマイチわからない口調(笑)で同意するのが市原仁奈。この子も二ヶ月ほど前から来出している新顔。


「ていうか秋穂さん、わざわざキーパーだ、って言ってるのは攻め上がりを隠すための策でやがりましたか!?」



おお、とか軽く感嘆のどよめきが周囲から上がりー秋穂は苦笑せざるを得なかった。



  





 

steve600 at 20:49│Comments(2)TrackBack(0) 秋穂 | チャレンジリーグの人たち

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この記事へのコメント

1. Posted by Bucchii   2017年01月30日 07:02
おつかれさまですー
いやあWみのりの対談面白いっすねえ(笑)
おかげさまでこちらの方もキャラ固めができて、今後上手く回せそうな気がしています。

ゆっこの時もそうでしたが、こちらの思い付きで出したキャラがこの場所で命が吹き込まれるというのを見るのはとても嬉しくて楽しくて大感謝です。

続きも期待していますねー
2. Posted by 捨井   2017年01月30日 13:41
あ、どうもお疲れ様です。
コメントありがとうございます。

うーん、「命を吹き込んで…」とかいうとすごく聞こえがいいんですが、自分でキャラクターを作れない、とゆーのが致命的でもあるよなー、とも感じていたりはして…、まあ、上手く閃いてくれればなんとか、みたいな感じではあるんですよね…

こちら的には新しいキャラ作れないので、過去の時系列の人達にケリを付けたいな、とは感じています。つかさとかつかさとかつかさとか(笑)

と、いうところでそれでは。

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