2020年01月14日

1/13、虹野さん誕生日に間に合わなかったネタ(笑)

藤田「先輩、お言葉ですけど」
翠川「ん、藤田ちゃんがなんかあるってよ?みのり」
秋穂「何よこんな時に」
藤田「鈴音さんとは長いお付き合い、なんですよね?」
つ「だねえ、なんだかんだクラブ創設以来、って事でしょ?」
秋穂「まあ、腐れ縁でもあるけど(笑)」
藤田「…失礼ながら、お友達は選んだ方がいいと思います」
牧原「コラ」
秋穂「ゆっこ!」
牧原「あんたさあ、なあに目上に意見こいちゃってくれてんのよ!?」
星乃「落ち着いて、牧原さん。文脈的に牧原さんのことじゃないです」
牧原「あ、そなの?」
藤田「…」
秋穂「たくさあ、ゆっこ!こんなとこでイキナリ立ち上がったら食べ物落ちちゃうじゃない、ねえ」
藤田「…」
神谷「鈴音に何か言われたんだ?」
翠川「分かり易過ぎるねえ、この子は」
谷崎「まあ、それが若さってもんで」 
藤田「オランダ戦の後で取材受けて、その時に」
秋穂「鈴音はあんたを評価してたと思ったけどな?なんか悪く言われた?」
藤田「…あの試合に関しては…お褒め頂いたんですが」
ち「?ならいいんじゃないの?それとも、自己評価とは違ってた?」
藤田「評価は…いろいろな見方がありますし、試合は結果が全てなんで気にしてないんですけど、」
秋穂「あのね、アンタ何言いたいのかホント分かんない。ハッキリ言いなさいハッキリ」
藤田「…離れなきゃいけないって。先輩から」
翠川「…」
神谷「…なるほどね」
つ「まあ、そうかなって気は、ね。秋穂さん、お酒進んでないですよ」
秋穂「んー、どうも今日は…ね」
藤田「え、何なんですか何でみんな納得してるんですか!?」
秋穂「そりゃそうでしょ」

ゆっくり、秋穂はコップを置くー





 

     

「…カッコよくもなかったし、ステキ!って感じでもなかった、かな…」


秋穂はゆっくり呟き、リアクションを予想していなかった藤田は驚いてそちらを見る。
その時秋穂の目線は遠くを見ていたが、その先にある何かを見ているような、そんな気がした。


「…いたんですね…」
「そりゃ、ね」


秋穂は頭の後ろで両手を組んで、つと空を見上げる。


「正直パッとしない人。なんか鈍臭いっていうか」
「でも」


おずおずと藤田は切り出すー


「好きだった…?」
「んー、まあ…そう、なるのかな」


ふいと口を突いて出たその言葉に、秋穂は我ながら驚かされる。この想いは死ぬまで誰にも明かさないだろうーそう決めていたからだ。
その禁が破られてしまったのは、もう過去の事として整理出来ているのか、それとも藤田に心を許してしまったからなのか?秋穂には判断が付かなかった。 



「私にも先輩がいてね、」



問わず語りに秋穂は口を開くー 



「今、あんたが私を先輩、って呼んでるじゃない?」
「…ええ、まあ。やっぱ先輩ですし」



藤田は何の迷いもなく言うのだが、高校も違うしそもそも秋穂はSSSユース出身でもないしで、厳密に言うと二人の間に先輩後輩の関係はない。
チームの先輩後輩、とは言えたが藤田は他のチームメイトに対して「先輩」と呼んだことはないから、案外先輩という存在に何らかの憧憬を持っているのかもしれなかった。

「あの頃の先輩はこんな気持ちだったのかなあ、とかよく考えるよ。この頃」 
「どんな方だったんですか?」
「もう、すごい人」

言って秋穂は笑う。


「あんたは私を先輩って言ってなんかヘンに持ち上げてるけど」
「持ち上げてるんじゃなくて事実そうなんですってば!」
「…その比じゃなくて、本当にすごい人だった。全然敵わないーそんな人だった」


聞きながら藤田は脳裏に疑問符を浮かべている。好きだった先輩、はカッコよくもなくてステキって感じでもなくて、でも敵わないくらいすごい?
秋穂は無言になった藤田の顔を見ると吹き出した。


「ああ、ああ…混乱する言い方だったね」
「え?どういう事なんです?」
「先輩は2人いんのよ。男子と女子と」


そう聞いて藤田も察する。


「なるほど、トライアングルシチュエーション、ってヤツですね!」
「何それ…ってああ、三角関係、か」


秋穂としては肩をすくめるしかない。確かに人物の配置と、秋穂の心情としてはそうなるのだが、結局秋穂はその想いを面に出さないまま2人の卒業を見送り、自身も別の人生を歩むとーそう決めたのだから。


(とはいえ)


結局クラブで合流していたりするので、人生というのはままならないものだ、と思いもする。
藤田が何かに気付いたように身を起こした。


「って待って下さいよ、それって先輩が身を引いた、ってことですか!?」
「え?ああーそうなるのかなあ」
「…私もそういう経験が豊富ではないのでどうこう言えたスジではないんですけど、」


藤田はすごく言い辛そうに口を開く。


「…先輩はそういうことで絶対引かない人かと思ってました」
「今の私からは想像も付かない?」
「正直言って、そうです」


相手を問わず誰にでも面と向かってハッキリ物を言い、主張を曲げないー良くも悪くもそのイメージが強い。だから藤田にとって秋穂の言葉は過去の事とはいえ意外だった。


「誰だって年月を経れば変わるもんよ。あんただって小学校の頃とは別人だし」
「そこは成長、と言って欲しいなあ」
「ん、まあ」


秋穂は一つ伸びをするー



「ハッキリしてるのは、ずっと同じままで年を取る人間なんていない、って事」
「はあ」



頷きながら、藤田の表情に納得の色はなかった。



「…それで、本当によかったんですか?」
「どういう事?」
「いつも言ってるじゃないですか。最後の1センチ1ミリを詰めろ、笛が鳴り終わるまで脚を止めるな」
「…言ってるね」


秋穂はくすくす笑うー


「その先輩が、好きな人を諦めたっていうのは納得行かないです」
「んー…まあ…そう、なっちゃうねえ」


あるいは、身を引いても構わない程度の想いでしかなかった、とも




いや、それは絶対に違う




(…)




違うはずだ。想いの強さだけなら、それは確かにあった、けれど。






ーあの二人の間に割って入れるとはーとても思えなかった。





(でも、それだって言い訳でしかない)





結局、あの時の自分はいろいろなものから逃げ出したのだ、と今更に思い知る。
その経験と後悔とが今の自分を作ったのだ、とも。



「それはさ。今の私からは想像も付かないかも知れないけど」
「はい」
「…逆なんだよ」
「?」


疑問符を顔中に貼り付けて呆然とする藤田の額を秋穂は軽く弾く。


「あいた!」
「ごめんごめん(笑)…でも、」



秋穂はベンチから立ち上がり、振り返るー



「そういう経験があったから今の私があるんだ、って考えてみてよ」



結局のところ、現在の自分は過去の自分の選択に規定されるしかなく、であれば同様に。
未来の自分とて現在の自分からしか導かれない。

未来の自分をより良くしたいのであれば、現在を懸命に進めるしかない。

半ば諦観にも近いのだが、その考え方が秋穂を安らかにしたのも事実だった。



      


 

steve600 at 22:29│Comments(0) 秋穂 | SSSユースの人たち

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