2020年03月08日

相当遅くなったけど野村克也氏の訃報に寄せて

ヤクルトスワローズを応援していた時期がありました。池山、広沢、デシンセイとかいて監督関根さん。勝てないけどホームランか三振か、みたいな感じで楽しくやってる姿にどことなく憧れみたいなのがあったのかもしれません。そして同時に、このチームが勝つ、優勝することもないだろうなーと、思ってました。ところが野村監督就任からチームはガラリと変わり、リーグ優勝を果たします。ID野球、ですな。
それで気が付いた。確かに楽しくやってるのもいいけど、実はやることやったら勝てるんじゃないか。「弱い」事実にあぐらをかいて勝つための努力を放棄していただけなんじゃないか。
人事を尽くして天命を待つ、てなことを申します(落語か)。確かに勝負事、運もあるでしょう。しかしやれること全部やって、その上で初めて運がどうだと言えるんじゃないか、とも思うわけで。
何よりね、「頑張る」って意外と格好いいし、目も当てられない集団が変貌する様は単純に面白かったし。


…だから今になってもサガン鳥栖だー、秋穂みのりだー、言い続けてるワケですが(笑)


何より、すべての弱者と敗者の希望の星であった野村克也氏のご冥福をお祈りします。








秋穂「…大体、前から少し気にはなってたんだけどさ?」
藤田「ハイ」
秋穂「あんた、闘将だのスピリッツだの言われてるのって、どう思ってる?」
藤田「…そう評価する人はいるのかな、程度です」
秋穂「じゃなくって、」
つ「あーあーもー、なんか空気淀んでるぞ!?そういえば、」
神谷「(…つかさ、こういう空気読むの上手くなってるのねえ)」
翠川「(そりゃそうだよ、じゃなきゃ代歩とかと付き合えない)」
つ「実はさっき、小百合からメール来てまして」
岡野「小百合って天宮?だよね?今代理人やってる」
南「そうですよ、お子さんも手が掛からない年になったから、って」
神谷「え、アイツ結婚してたん?式とか呼ばれてないんだけど!」
つ「…小百合、神谷さんがどうしても捕まらないってボヤいてましたよ…」
神谷「え、そうなん…あははー、こいつぁ失敬」
翠川「お子さん、って子供いるんだ」
つ「ウチの未来と同い年ですよ。中学2年」
南「未来ちゃんとお友達なんだよね?」
つ「ええ、まあ。家族ぐるみに付き合いっていうか」
小早川「…あの子、天宮さんに似て賢いですけど、」
つ「未来も大概だけど、あの子もねえ…小百合大変だなあ」
神谷「何よ、そんなスゴイ子なん?」
小早川「こないだ、自作のスケボーに乗ってカッ飛んでるの見ましたよ」
翠川「運動神経はいいのか。でも危なっかしそうだねえ」
小早川「しかもそのスケボー、後ろからジェット噴射してました」
神谷「はああ!?」
翠川「由香ー、あんたが仕込んだの!?」
岡野「いやいや、そこでみんな一斉に私を見るな(笑)」
南「天宮学美ちゃん、かあ…そこから持ってくるか…」


   
 

その年、秋穂の復帰後6連勝で一時的に降格圏を脱出したスプリングサンズではあったが、その絶好調は長く続くものでもなくーなにより秋穂はその連勝の後、試合出場が著しく不規則に、あるいは出場しても短時間で終わる事が多くなったー、降格圏間際を彷徨うシーズンとなる。そしてその状態は最終節までも続き、この試合を引き分け以上で終えなければ降格、という事態に追い込まれていた。

対戦相手はいわきガナーズ。今季久々の昇格を果たし、そしていわきもまたこの試合に勝たなければ降格、という状態。
いわきより順位が下のチームは既に降格が、また春日より上位は残留が決定しており、この一戦の結果のみが両チームの行く先を分ける。
そして当然のことだがいわきの勝利と春日の分け以上はこの試合で同時に満たされない。つまりはー



死闘



が、予想された。










この日秋穂は3試合ぶりのスタメン。そして試合前の練習が始まる寸前 、秋穂は背後、いわきの方から声をかけられて振り返る。


「よお、元気みゃあか」
「るりか!あんたまだここにいたのねえ」
「まだいた、とか!それはお互い様だぎゃ」


彼女は山本るりか、元スプリングサンズに在籍した経験のあるDFである。
高さ強さと、それに加えて速さも持ち合わせるCBとしては稀有の存在であり、その素質、ポテンシャルだけを取れば代表はおろかワールドクラスも夢ではないー秋穂はそう見ていたのだが、

致命的なことに本人にやる気がなかった(笑)

例えば同じく春日に在籍した小野寺桜子などは身長や速さでやや劣るものの、負けん気が強く対戦相手にも動じずファウル上等でぶつかり、また勝てなかった後などは怒り狂いながらも次はどうする、を模索し、実践してきたがるりかにはその心理的傾向がなくーそれはそれでミスを引きづらないDFには大事な要素ではあったがー、向上心のないところに成長はない。同時期に活躍した二人でありながら、片やほぼスタメンを務めハーレンジャパン常連ともなった小野寺に対し、山本はどうしてもバックアップという立場にならざるを得ない。
いわきに移籍した後は主戦CBを長く勤めていたが、DFの選手寿命はやや長いとはいえそろそろキャリアの終わりも見えてこようか、という年代である。 そして、秋穂キャプテン時代に多く蹴られた(笑)選手の一人でもあった。


「…今日はスタメンか」
「ええ、お陰様で」 
「べつにお陰も何もねえぎゃ…」


るりかは目を落として秋穂の脚を見る。


「…その脚…」
「なあに言ってんの、全然平気。無駄な事言ってる場合じゃないでしょ、そっちも」
「違えねえ」

二人は笑い、どちらからともなく手を差し出す。


「…いい試合を」
「どちらにとってもいい結果、があればいいけどな…」
「ま、こればっかりはね」
「あ、そうそう、 試合終わったら時間あるみゃあか?」


やや神妙になったるりかに、秋穂も居住まいを正す。


「…こういう試合の後だと難しいかもだぎゃ、メシでも一緒に」
「 …辞めるの?」


るりかは苦笑する。


「おみゃあは察しがいいというか、なあ!…ああ、名古屋に帰る。もう潮時だぎゃ」
「そうか…手は抜かないからね、それでも」
「知っとるぎゃ、んなこと」


もう一度笑ってるりかは人差し指で秋穂の額を突く。


「…ラストゲームはおみゃあとやりたかったからなー」
「なあに、蹴られた復讐に削りにでも来る?」
「そんなんじゃねえぎゃ」


るりかは言ったきり黙り込んで、もう一度手を出す。


「まあ、おみゃあの脚がどうだろうとー出て来る以上は止めるし削るしかねえぎゃ」
「…」


秋穂は声を潜める。


「…そんなに明白にわかる…?」
「おめえ、こっちが何度蹴られたと思うとるぎゃ?」


言ってるりかは軽く秋穂の後頭部を叩く。


「秋穂みのりの、走りと蹴りのモーションはそりゃあもう焼き付いとるぎゃ。ま、他人の、しかもパッと見にはわからんみゃあが」
「そ、そっか」
「ま!何度でも言うが、出て来る以上容赦はしねえ」
「望むところ。そっちこそ試合終わってベソかいてんじゃないわよ?」
「言ってろ!」


るりかは笑って手を振り、仲間たちの元へと戻る。秋穂は何となくその場に立って空を見る。雲ひとつない晴天ではあるが、もう晩秋とあってそろそろ風も肌寒い。




そして、その数メートルほど後ろでー




秋穂に声をかけようとしたが、るりかと会話中だったためタイミングを逸し、話し終わるまで待とうーそう決めて、結果として二人の会話を聞いてしまった藤田みのりもまた、青白い顔でその場に立ち尽くしていた。
















「先輩!なにボヤッとしてんです!!」


背後から肩を叩かれ、振り返ると藤田が満面の笑みで立っている。


「たあく余裕だなあ。今日のこの試合、残留がかかってんですよ!」


内容は重いが、藤田の口調に憂いや陰、緊張の類は見えない。見えない、のだがー



(プレッシャー感じてるわね…)


秋穂はそう察する。そもそも、藤田はいつも試合前にこうまで陽気に喋る方ではない。となれば、内心を押し殺してそう振る舞っているーということだろう。
もっとも、藤田の内心には別の緊張があったーなどとはこの時の秋穂には知る由もない。



「ま、ちゃちゃっと勝って!試合後は祝杯と行きましょう!!」
「あ、それ無理。先約あってね」
「ええー!あんまりっすよ先輩ー」 


からからと藤田は笑い、秋穂と別れてシュート練習に混ざりに行く。



(…先輩に、無理させられない)


一条が軽く転がしたボールに藤田は駆け込み、脚先を思い切り叩き付ける。
ボールは風を巻いてゴールネットに突き刺さった。その軌道を見送って藤田は頷き、振り返ると満面の笑みで秋穂に向かってガッツポーズ。秋穂も苦笑して音の出ない拍手をした。



そして死闘の幕が開くー 


    

steve600 at 02:56│Comments(0) 秋穂 | SSSユースの人たち

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