真生会富山病院 後期研修医ブログ

3年目、4年目の後期研修医たちの日常をチョコチョコ書いています。 涙あり笑いありで、4人で励まし合って、日々診療に励んでおります。

先日の遷延性低血糖の患者さんは、高インスリン血症であることが判明しました。
どうやら処方されていたライゾデグ(持効型インスリン + 超即効型インスリンの合剤)を不適切に使用していたことが原因のようです。

前回、遷延性低血糖にトリフリードが有用かどうかは、①果糖がエネルギー源として速やかに利用できるかどうか、②血中に入った果糖(フルクトース)に血糖値を上げる力があるかどうかが、論点となりそうです。

①フルクトースは肝臓で、ジヒドロキシアセトンリン酸と、グリセルアルデヒド-3-リン酸に代謝され、解糖系に入るようです。(シンプル生化学 改訂第6版)
従って、基本的にフルクトースは、グルコースに変換されないまま、解糖系に入るようです。
②当院で使用している血糖測定器は、グルコースオキシターゼという酵素を用いて、グルコースから過酸化酸素を作り出し、その値を測定することで、血糖を測る仕組みのようです。フルクトースはこの酵素の基質にはならないため、血糖測定器では測定されません。

従って、フルクトースは、通常の血糖測定器では測定できないが、解糖系を介してエネルギー源として使用される、ということです。どうやらフルクトースも有用なようですが、遷延性低血糖のように頻回なモニターが必要な状態で、わざわざ測定しがたいものを用いる必要はない、ということになるでしょう。

持続静注をせざるを得ない状況であれば、5%ブドウ糖液に、50%糖液を混注し、15%ブドウ糖液を作成し、ビタメジンを加えた上で持続静注するか、電解質に配慮するならば、3号液に10%分の糖を混注し、持続静注するのが良いと思われます。


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 大塚製薬から販売されている、トリフリードという輸液は、10.5%複合糖加維持液という輸液で、浸透圧比は約2.6です。3号液にブドウ糖を混注して作る輸液とは、加えられている糖が異なります。ブドウ糖が半分、もう半分は果糖とキシリトールだそうです。7.5%ブドウ糖加維持液と比して、含まれているエネルギーが多く、10.5%ブドウ糖加維持液に比して、血糖値を乱す作用が少ないため、作成された輸液のようです。(添付文書より要約)
 先日、遷延性低血糖の患者さんが、当院に入院しました。遷延性低血糖の患者さんの血糖維持に、トリフリードは使ってもよい薬剤なのか、それとも、15%ブドウ糖液などを、別に作成して用いるべきかどうか、考えることとしました。
 トリフリードに2番目に多く含まれる糖である、果糖がエネルギー源として速やかに利用できるかどうか、また、血中に入った果糖に血糖値を上げる力があるかどうかが、論点となりそうです。
 長くなってきたのと、資料が手元にないので、続きは次回に記載します。
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1.ショック患者診断の為のRUSH

ショックは、循環血液量減少性、拘束性、心源性、血流分布異常性に大別される。

2007年に開発された、治療に主眼を置いたショックの原因鑑別の為の超音波検査がRUSHである。

超音波で見るべきところの頭文字を集めて、HI-MAP(Heart, IVC, Morrison'Pouch(e-FAST), Arota, PTX)のチェックを行う。

RUSHでは、病歴から鑑別疾患を考え、優先すべきプローブを選択するが、通帳はコンベックスプローブが使用される。

Heartは、傍胸骨長軸像・心尖-四腔断面像の2か所で評価する。

評価すべき内容は、Size(右室負荷所見の有無:右室が左室より大きい、McConnell徴候(右室自由壁の動きが、心尖部に比して乏しい、D-Shapeの有無)、Sac(心タンポナーデの有無:特に左室外部にあるエコーフリースペース、心臓の動きで形を変えること)、Squeeze(左室の壁運動能:EF,収縮時に心筋が太くなるか, 僧帽弁前尖は心室中隔にぶつかるか)である。四腔像でどれが右室か分からなくなった場合、解剖学的に三尖弁が僧帽弁よりもより心尖部側についていることをメルクマールとする。

この時に、真正のPEAか、心室の壁運動能が残存しているのかを評価することもでき、蘇生の有用性の評価につながる。

IVCは大まかに径(1.7cm以上かどうか)、虚脱の程度(50%以上の虚脱があるかどうか)で評価する。

E-FASTは、既にHeartを検索しているため、モリソン窩、脾周囲、膀胱周囲にエコーフリースペースが内科検索すればよい。

大動脈は、腹腔動脈の分離部(seagull signを目印とする)から、総腸骨動脈に分岐する部分までを検索する。腹部大動脈瘤が発見された場合、他のショックに至る疾患が発見されるまでは、腹部大動脈瘤破裂として対応する。

気胸の有無は、肋間部で深部に動いているもの(肺)が観察できるか、左右でチェックすればよい。

慣れると2分程度で施行でき、ショックの病態を絞り込むことが出来るため、極めて有用と考える。

 

2.命に係わる深部静脈血栓症発見の為の2-point study

深部静脈血栓症診断の為の下肢超音波検査は、一肢で約30~40分かかる上に熟練を要する検査であり、救急で行うのは現実的ではない。肺血栓塞栓症は9割が下肢の深部静脈血栓症より発生しており、命に係わる深部静脈血栓症は、大腿静脈または膝窩静脈で検出されると言われている。従って、大腿静脈、膝窩静脈の2点を検索出来れば、かなりの致死的な深部静脈血栓症を同定できることになる。

エコープローブは、体表を検索するプローブを用いる。

大腿静脈は、大腿動脈穿刺に用いる鼠径部周辺で確認する。大腿動脈は、すぐに浅大腿動脈と深大腿動脈に分岐し、大腿静脈は大伏在静脈を分岐した後、浅大腿静脈と深大腿静脈に分岐する。大腿静脈~浅大腿静脈/深大腿静脈分岐部までを検索出来ればよい。エコープローブに圧力を加えて、静脈が完全に虚脱出来れば、その部位には血栓はない。膝窩静脈は患肢の股関節を45度屈曲、90度外転、外旋し、膝関節を45度屈曲する。プローブを膝関節部に後ろから易しく当てれば、膝窩静脈が同定できるはずである。

非常に簡便な方法であり、救急の現場で使用したい検査である。


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