2009年06月29日

「音声入力」ならば考えたことをもれなく表記できる (NO.115)

は  「音声入力」の魅力は何か?について、このブログでは過去何回も説明してきました。
例えば、 パソコンのキー入力からの解放が最高の魅力 (NO・96)
忙しいは、文書作成ができない理由にはならない       (NO・98)
「音声入力」での文書作成では疲れない           (NO・99)
などです。今迄の一般的な文書作成法である「手書き」法とか「キー入力」法では絶対にできなかったことを、説明したつもりです。

今号では、今までふれなかった「音声入力」のあたらしい特徴を取りあげ、その魅力を説明しようと思います。「音声入力」の魅力を追加することが、今号のテーマです。

 (1)考えたことをもれなく表現できない理由

  皆さんは、考えたことが頭の中に浮かんだので、それを文章の形にして発表しようとつとめます。これが文章をつくる(書く)という作業です。しかし、出来あがった文章を見て、自分の考えていたことより、出来あがった文章の分量が意外に少ないことに気づかれたことはないでしょうか。いや、文章を書いてみると、そのことはいつもおきる現象であると思う人もいるはずです。

 文章作成の技術を向上させるための方法を、古今東西よりいろいろな人が発表してきました。しかし、考えたことが文章作成の過程で消えてしまう原因を追求し、この対策を講じることができれば、どんな文章でもうまく作成できる、と説明した人に私は今まで遭遇しておりません。この原因がよく理解できれば、文章作成の基本問題は解決できる、というのが今号で私が主張するポイントです。

 この現象が起きる原因は、現在の文章作成法にあります。すでに何回もこのブログで説明してきましたが、「手書き」法にしても、「キー入力」法にしても、その方法は「逐一変換方式」です。この方式で文章作成をしている限り、自分の考えを100%文章化することは不可能です。せいぜい考えたことの3分の1とか5分の1ぐらいしか表記出来ないのが普通一般です。それはなぜか。

 「逐一変換方式」は、すでに表記してきた文章を参考にしながら、さらにその先を書き進む方法です。考えたことを文章の形にして書き進み、ある箇所で中断すれば、今まで書き記された文章を見ながらまた次に続く文章を考え、書き足していく方法です。ほぼ全ての方が、この方法で文章作成を実行しています。

 作者が考える作業はきわめて創造的なものです。しかし、今の文書作成法の「キー入力」法によれば、自分の考えを文章化するためには、パソコンのキーを何回もたたかなければ正しい漢字表記の文章が画面上には出てきません。正しい漢字を選ぶためには、考える作業とは全く異質の、正しい漢字を選ぶ作業をしなければなりません。この漢字表記で文章作成をする以上、いつも正しい漢字表記を求めながら、文章作成の作業を続けるわけです。

 この方法の欠陥は、作者が考えていたことが途中の漢字選定のために、考える作業を中断せざるを得ないことです。それは、現実的には瞬間的なことですが、間違いない漢字に変換するために余計な作業をしなければいけません。この結果、この方法の大きな欠陥を二つ示すことができます。

  第一は、余計なキーを打つ必要があることです。もしもひらがな表記だけでよい文章作成でしたら、欧米のタイプライターと全く同様に、一回のキー入力で文章作成は完成です。ところが、私たちは漢字使用を必要とするために、何回もキーを打つ必要があります。これだけでも、利用者に大きな負担がかかります。

  もう一つの問題は、「漢字変換」キーを打ち、正しい漢字表記ができないときは、そこで正しい漢字を選ぶという、考えることとは全く異質の作業をしなければいけないことです。この作業を行うとなると、折角そこまで進行してきた考えを中断せざるを得ません。この点を多くの人が軽視してきたことが、日本人の文章作成能力が向上できなかった元凶です。

  誰もがよく理解しているように、考えることから生まれてくるアイディアとか思いつきは、瞬間的なひらめきですから、考えることを中断すると、その考えはすぐに消滅してしまいます。それだけに、考えが頭の中に浮かんだときは、これをいかに上手に捕獲して、そのすべてを文章化できるようにするかが文章作成上の最大の課題です。しかし、残念ながら「漢字変換キー」を打つことで、考える流れがその場で中断してしまい、再び考えを再現したいとき、肝心の考えの大半が思い出せない、そういう現実を多くの人が繰りかえしてきたのです。

 (2) ピーター・ドラッカー氏の書く技術から学ぶ

  残念なことですが、今のパソコンの前に座ってキーを叩きながら文章作成を行っても、今の多くの日本人が苦しんでいる文章作成をより快適に、楽しく、簡単に生産できる方法は生まれてきません。今までの私の体験から、私は断言できます。では、どうしたらよいのか、です。

  ここで、日本人にもなじみ深いアメリカの経営学者ピーター・ドラッカー氏のアドバイスを引用してみようと思います。2005年2月1日の日本経済新聞の「私の履歴書」にドラッカー氏の連載がスタートしました。その初日の冒頭の記事で、ドラッカー氏は自分の文章作成法について次のように説明しています。

  『パソコンは使わないが、長年の経験からかなりのスピードで原稿を仕上げる技術を身につけている。
 まず、手書きで全体像を描き、それを基に口述で考えをテープに録音する。次にタイプライターで初稿を書く。通常は初稿と第二稿は捨て、第三稿で完成。要は、第三稿まで手書き、口述、タイプの繰り返しだ。これがいちばん速い。』

  この内容については、このブログ(NO・19)「どうしたら文章を上手に書けるようになれるか?(1)」においてすでに紹介していますので、詳しくはそのページも読んでみてください。ドラッカー氏の文章作成法の特徴は次の3点です。

  (絃郎鄒にディクテーションを採用し、口述した原稿を活用しています。どんなに速く文章化できるタイプライターを使用していても、自分の考えをもれなく表現するためには、ディクテーションが最適なのでしょう。

 ◆.織ぅ廛薀ぅ拭爾埜狭討鮟颪い討い泙后その使い方は、ディクテーションマシンで録音した原稿を聞きながら、それをタイプライターで文章化していたのでしょう。
 
  初稿と第二稿は捨て、第三稿で完成させる。この文章作成の方法は、考える作業と、出来上がった文章に手をくわえる作業、即ち推敲する作業とを完全に区別して処理していることを示しています。

 このドラッカー氏の文章作成法をよく吟味することで、私たち日本人の文章作成法とはだいぶ違う方法で文章作成をしていることがわかります。特に顕著な違いは、文章作成のプロセスが異なった作業によって構成されていることを、ドラッカー氏は良く見ぬいていることです。ですから、手書き、タイプライター、口述などの方法を、文章作成のプロセスにおいて使い分けているのです。

  これに比べ、私たち日本人が一般的に採用している文章作成法は、「逐一変換方式」による文章作成法です。今まで作成した文章を目で追いながら完全なる文章を完成させながら書き進めていく文章作成法です。この方法では、考える作業も、推敲する作業も、漢字を選定する作業も同時並行的に進行させています。ここには、文章作成のプロセスが異なった作業によって構成されている考えはまったく存在しません。ですから、考えが出てくる場面でも、異質な作業(正しい漢字を選ぶ作業)を平気で行い、考えの創出を中断してしまいます。その結果、考えたことが文章化できないで苦しむのです。

  このドラッカー氏の文章作成法を私たち日本人は学ぶべきかどうかの決め手は、ドラッカー氏が記した最後の部分にあります。ドラッカー氏は、自分が取り入れている文章作成法が『いちばん速い』と結論づけています。私もいろいろ文章作成法の評価基準を考えてみましたが、今こそ、どんな文章を作成する上においても『いちばん速い』法こそ、現代が求めている最高の技術ではないかと思うようになりました。ですから、「音声入力」の方法がどんな方法よりも速く作成できると実証できるように、この技術のレベルアップを図ることに努めていこうと思います。

  ドラッカー氏の文章を読んで私たちが考えなければならないことが、もう一つあります。それは日本人が一般的に採用している「逐一変換方式」での大きな欠陥についてです。

  考えることも、漢字の選定も、文章の推敲も、同時に行ないながら文章作成を進める方法が「逐一変換方式」の特徴です。漢字という複雑な、多数の文字を使用するためには、この方法がベストであると先人は考えたのでしよう。そしてそれが習慣化され、今に踏襲されているのです。しかし問題なのは、誰もこの方法の不合理性を疑問視しないことです。ドラッカー氏の文章作成法と比べただけでも、その生産性が著しく劣ることは歴然としています。

  ドラッカー氏のやり方である、初稿と第二稿はあくまでも草稿(下書き)というアイディアは、日本人の文章作成法には基本的には欠けております。日本人の文章作成は、初稿から完全原稿を目指して作成するように取り組んでおります。日本語ワープロの使い方にしても、まさにその方法に準拠した態勢をとっております。これがために、パソコンの前に座ってキーを叩いても、文章がなかなか新しく創出できないのです。ところが、ドラッカー氏の方法は、最初は完全なる文章作成を目指しておりません。まず行う作業は、ドラフト(下書き)作りなのです。

  ドラッカー氏の推薦する文章作成法は、要するに、口述(音声入力)で文章の下書き(草稿)を作成することです。この音声原稿を聞きながら、ドラッカー氏はその操作を得意とするタイプライターを駆使して文章化作業を行うのです。この方法で初稿ができれば、第二稿はもう推敲の作業になります。いわゆる校正作業を行うことで、完全原稿ができるわけです。この方法が、いかに優れた文章作成法かを、私は「音声入力」法を実践した結果、納得できるようになったのです。

  私たちが今まで採用してきた「逐一変換方式」での文章作成法がいかに非効率で、無駄な作業をしてきたかを、「音声入力」の文章作成法を知ることによって、よくくわかるようになりました。ドラッカー氏はさりげなく自分の文章作成法のノウハウを示してくれましたが、ここに秘められたメッセージは日本人にとってはきわめて意味のある、重要なる情報を提供していると感じます。

 (3)誰にでも文章作成はすらすらとできる

  ここで本題に戻ります。今回、「音声入力」法の魅力として紹介した方法は、
  「キー入力法」ではなかなかむずかしい、考えたことをもれなく表記する方法を実行しただけで、誰もが文章作成を簡単にできるようになります。これが結論です。

  その具体的な使用例として、ピーター・ドラッカー氏の文章作成法のノウハウを借用させてもらいました。繰り返しますが、『手書きで全体像を描き、それを基に口述(ディクテーション)で考えをテープに録音する。次にタイプライターで初稿を書く。通常は初稿と第二稿は捨て、第三稿で完成。要は、第三稿まで手書き、口述、タイプの繰り返しだ。これがいちばん速い』

  このドラッカー氏の文章作成法を私の「音声入力」法では次のように形を変えて説明したいと思います。『作成する文章の要点をメモ書きします。それを基に、デジタル・ポケットメモ(DPM9620)に向かって口述いたします。このDPMは携帯可能ですから、私の場合、外に出てこの口述作業を行うケースが一般的です。
  通常は初稿と第二稿は下書きでして、第三稿で完成するようにしています。』

  この方法で毎日の日記作成を4年半、このブログ作成を約3年間、続けております。この「音声入力法」を習得できたおかげで、今なおこのような文章作成の仕事を続けることができています。私の経験から、この新しい文章作成法ならば、どなたでも簡単に文章作成が可能であると確信いたします。要するに、自分の考えたことをもれなく音声原稿としてレコーダーに録音さえすれば、それを基に文章の草稿ができあがるわけですから、それに手を加えていく方法で、今までの厄介で、複雑な文章作成法とまったく違う方法で、簡単に文章が作成できるのです。


この記事へのトラックバックURL

この記事へのコメント
音声による文章作成に興味があり、いつもたのしく拝見させて頂いております。
さて石田さんとドラッカーさんに反論するようで申し訳ないのですが、
文章作成において機能分散させて、それぞれ分業した方が帰って早い、という意見に少し違和感を感じましたので、コメントしました。
以後、私の感想ですので、気を悪くしないで聞いてください。
(長いので分割コメントします)
文章といっても日常では様々な種類があり、より会話に近い部分では、
石田さんがいうところの「逐一変換方式」でOKと考えています。

文章の種類を、会話〜一番堅苦しい論文まで、分類してみると、
 会話⇒‘記⇒⊆蟷/作文⇒ビジネス(報告書/提案)⇒そ駟/論文
といったところでしょうか。
ただ最近では⊆蟷罎良分が、電子的な手紙(eメール)となり、順番も、
 会話(chat)⇒eメール⇒日記(Blog)⇒作文⇒ぅ咼献優(報告書/提案)⇒ソ駟/論文
に変化していますね。

ここで、それぞれの文章の書き方の違いを分析してみると、
(1)〜日記(Blog)までは、2ステップでOKです。「逐一変換方式」
  1.思いつく
2.書く(頭の中で言葉を選んで、文章に組み立て、記述(漢字を選ぶ)

(2)作文以降は、起承転結や文章の構成、表現を考えますので、
 ドラッカー方式だと6ステップとなります。
1.思いつく
2.描く(イメージを下書き/言いたい結論を構成する部品を配置)
3.録音(それぞれの構成について、さらに思うことをしゃべる)
4.転記(なにも考えずしゃべったことを記述する)
5.推敲(記述した内容を眺めて、入替えたり/表現を変えたり/
   どう伝えるか考える)
6.自分が納得する文章を完成させる。
Posted by Narara at 2009年07月02日 01:49
石田さんやドラッカーさんが推奨するように、0聞澆(2)の方が早いのかもしれません。
しかし、〜日記(Blog)くらいまでは、通常は書こうとする文章に推敲まで考えないで、お気楽に頭に浮かんだ思うがままを、ただただ文章にする「逐一変換方式」で良しと感じます。
ステップも2回と少ないですし、流行の携帯電話のeメールの場合、書こうとする言葉を選ぶだけで文章が書けるように学習機能があります。
(変換では無く、表示された言葉の番号を選ぶだけ)

あくまでも感想ですので、要は使い分けでは無いかと思います。
石田さんの推奨するやり方を決して否定している訳では無く、期待を込めて拝見させて頂いています。
私自身も、ブログ作成にドラゴンスピーチを使ってみたり、外出時に携帯電話に思いついたことを録音して、あとから文章化してみたり、模索中です。
頭のなかで思っていることを写真のように切り取って、一瞬で目の前に文章となれば良いですね。
長々とすみません。石田さんの今後のテーマのネタにしてもらえれば、楽しく拝見させてもらいます。
それでは失礼いたしました。
Posted by Narara at 2009年07月02日 01:50
NARARAさま、ごめんください。

 わたくしのブログにコメントをいただき、ありがとうございました。頭で考えたことを文章化するときのプロセスに関して異論あり というご意見は貴重です。大変に興味深く読ませていただきました。

 音声入力の方法で、これこそベストと確信できる方法が完成しましたら、是非その方法を発表してみてください。そのためなら、私のブログのページを利用できるご便宜もはかりますから、その節は、お知らせください。
Posted by 石田 民雄 at 2009年07月05日 10:20