どういうことかというと、漫画家の西原理恵子氏が、毎日新聞の2007年9月7日の記事(「おかあさん」という、著名人が母を語るという連載)の中で、こんなことをいったんですね。

長いけど引用します。
<サイバラ流「手抜き育児のススメ」。男たちよ、心して聞くべし>
食育なんて、ホント、女をばかにしてる言葉だと思う。家でご飯炊かないことをすごく悪く言うでしょ。そういうのって、大抵、男が言ってる。朝、一杯のみそ汁作るのに、どれだけ時間かかるか。インスタントでいいんですよ。

 晩ご飯は私が作りますけど、週2回くらいは外食してます。子どもは「え〜」って嫌そうだけど、「お母さんは一日家にいたから」って。私の料理は「景気良く炒める」。ピーマンとかニンジンとか「食べなさい」って、星形にするより、細かく切ってガッと炒めたらいい。勉強と礼儀作法は「外注」です。小4の息子は夏休みの午前中2時間だけ塾で算数を習ってました。礼儀は、息子が空手教室、娘はバレエ教室で習ってます。

 勉強、生活、食事って、全部面倒みてたら、そりゃ殴るのも無理ないよ。それで「きょうもつい子どもを怒ってしまった」って夜に落ち込む。そんなことやめて食育なんて無視しましょうよ。


で、これがけっこう反響を呼んで、賛否両論が毎日新聞に寄せられているそうです。
母を語る 「サイバラ流子育て」反響特集/1
母を語る 「サイバラ流子育て」反響特集/2

私は、この記事を掲載された朝刊で読んでいたんですが、読んだ瞬間、

さすが西原理恵子、いいこと言う。

ワタシ、一生懸命育児してまーす、みたいなヌルイ育児話を垂れ流す凡百の作家・漫画家に比べて、このリアリズムの迫力はどうよ。

キップの良さに惚れた!


って感じだったんですが、反発した人も多いようです。

反発する人の意見は、こんな感じ。

「最初に感じたのは『荒っぽい内容だなあ』ということです。料理は大ざっぱに作ればいいように考えておられるようですが、やはり手間のかかった料理ほど愛情がこもっているのではないでしょうか」


全然、議論がかみ合ってないと思いますね。
私が思うに、西原氏も、食事に手をかけることが意味が無いとか、無駄だとか、そんな風には思ってない。ただ、もっと大事なことがある、と。
(彼女が何が最も大事だと思っているか、は、彼女の漫画を読めば自ずと感じられると思いますが。)

「食事も勉強も大事だけど、大事なことなら全部できるわけじゃないんだ!だったら、出来ないことは出来ないと堂々とするさ!」
と言っている人に対して、
「食事は大事ですから、大事なことはやりましょう」
と言っても、何の意味も無い。

以下、育児だけに限らず、職場においてもそうですが・・・

「大事なことだから、しなければならない」「するべきことだから、しなければならない」なんてことは、誰でも言えるわけです。ハッキリ言って、ひとつも頭を働かせなくても言えることで、もっとハッキリ言えば、何も言っていないに等しい。

「大事なこと」「するべきこと」が全てできる幸せな環境など世の中にあるのか?

なんにせよ、物事が動いていく現場では、いくつもの「大事なこと」いくつもの「するべきこと」の中から、「本当に大事なこと」と「絶対にするべきこと」を選び出して・・・つまり、大多数の「大事なこと」と「するべきこと」を切り捨てるギリギリの判断をしながら、前に進むわけです。

個別の事象を取り上げて、「これもこれも大事なことだから捨ててはいけない」というのは、現場の修羅場から離れた安全圏にいる者の気楽な言葉でしょう。←職場でいえば無能な上司とかね(苦笑)
で、そういう気楽な言葉を真に受けて、たくさんの「大事なこと」に追い詰められていく弱い立場の人間がどれだけ多いか。
思い当たることはありませんか、みなさん?

西原氏が攻撃したのは、食育そのものではなく、安全圏から局所的な正論を放つことで、現場の母親達を追い詰める無責任な「男」の性根なのだと思います。

(きけろ)

追記
西原理恵子氏の「食育なんて女をばかにしてる言葉」発言について思う。について思う。