週刊 奇妙な日々
strange days weekly
  silverboy club presents


2011年09月24日 22:14      [posted by strange_days_2009]

サービス絶対主義

もう何度か書いたことかもしれないが、ドイツに住んでいた頃、商店は土曜日の夕方には閉まってしまうのが普通だった。日曜日は完全に休み。レストランなどの飲食店とガソリンスタンド付属の売店、キオスクやトリンクハレといった街の売店や駅など例外はあるものの、スーパーやデパートを含む一般の商店は、土曜日の夕方以降と日曜日には営業しないのだ。閉店法という法律がそう定めているらしいのだが、何とものんびりした話だ。

最近の閉店法の運用がどうなっているのかは知らないし、当時もドイツ国内では閉店法が経済成長を阻害しているという意見はあった。ドイツのことをサービス砂漠だと揶揄する声もあって、もっと顧客満足とかサービスとかということに注意を払うべきだと言われてはいた。しかし、余暇を大切にするドイツ人の心情に休日労働はそぐわないらしく、少なくとも10年前までは、日曜日に買い物ができないのは実に当たり前のことだったのだ。

そんな国から帰ってきて驚いたのは、宅配便の配達時間まで細かく指定できる日本の異常な便利さだった。電車が時刻表通りにやってくるのは当たり前で、数分遅れただけで駅のアナウンスは何度も謝り倒してくれる。店員はどんどん慇懃で低姿勢になって行く。この過剰とも言える顧客至上主義、サービス絶対主義はいったいどこからやってくるのか。サービス砂漠は困るが慣れれば日曜日に買い物ができないくらいどってこともなかった。

だれかがお客さまを神さまだと持ち上げたせいか、店員は自分にかしずくのが当たり前だと思っているお客さまがいつの間にかたくさん出現し、彼らに気分よく買い物してもらうことに心を砕く業者が専門のコンサルタントに指導を求めるけったいな世界になってしまった。質の高いサービスといえば聞こえはいいが、そのコストは結局僕たち消費者に全部帰ってくるのだし、店員としてストレスに耐えなければならないのもまた僕たちなのだ。

 



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2011年09月18日 22:06      [posted by strange_days_2009]

米国産牛肉の数奇な運命

牛肉の消費が落ち込んでおり、特に被災県の出荷量は激減して価格も低迷しているらしい。僕はすき焼きもしゃぶしゃぶも焼肉も牛丼も大好きなので、牛肉が安く買えるのは有り難いことだが、酪農家にとっては死活問題だ。もちろんその背景にあるのは放射線の問題で、被災県の牛肉が放射線に汚染されているのではないかという懸念から敬遠する人が多いということだろう。全頭検査していると説明しても分かってもらえないのだろうか。

確かに、子供たちには少しでも懸念のないものを食べさせたい、同じ食べるなら間違いのない西日本産の方がいい、といった気持ちは分からなくもない。しかし、クズ肉を大豆蛋白などの結着剤で成型したサイコロステーキや、牛脂を注入した霜降肉を有り難く食べているような人たちが、今さらセシウムが何だとか言い出すのは滑稽な話。そしてさらに笑ってしまうのは、輸入牛肉の品揃えを強化するスーパーも出ているというニュースだ。

僕の読んだニュースではこの輸入牛肉がどこの国からのものなのかはっきりしないのだが、輸入牛肉といえば、2003年、アメリカで牛海綿状脳症(BSE)の発生が確認され米国産牛肉が輸入禁止になったのは、吉野家の牛丼が販売中止になったことなどもあって覚えている人も多いだろう。日本は禁輸解除の条件として全頭検査を要求したが容れられず、結局生後20ヶ月以下の危険部位が除去された肉のみ輸入を許可するということになった。

僕はやっと吉野家の牛丼が食べられると喜んだのだが、当時も全頭検査をしない以上安全性は保証されないと怒っている人たちはたくさんいた。今、アメリカでのBSEの発生状況や米国産牛肉の輸入条件、消費量などがどうなっているのか僕は寡聞にして知らないが、もしかしてあの頃、米国産牛肉の輸入再開に腹を立てていた人たちと、今、福島県産の牛肉を避けて米国産を買っている人が同じだったりしたら面白いな、とふと思ったのだ。

 



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2011年09月11日 21:37      [posted by strange_days_2009]

感動のマッチポンプ

今年も24時間テレビが終わった。僕自身はふだんからサッカー中継以外ほぼテレビを見ないので、24時間テレビも当然見ないのだが、まあ、年に一度くらいはそういう祭りみたいなのがあってもいいということか。そういう趣旨なら別にそれがチャリティである必要もないと思うのだが、敢えて人気タレントを動員し、節電のさなかに夜を徹して番組を放送して視聴率を取りに行くためには、チャリティという大義名分もまた必要なのだろうか。

その辺はもう好きにやってもらえばいいし、どういう人がこれを好んで見ているのか知らないが見たい人は見ればいいと思う。ただ、僕が首をひねってしまうのは、この番組で毎年やっている、有名人が24時間マラソンに挑戦するという企画である。調べてみると、1992年の間寛平から20年も続いている伝統ある企画らしいのだが、何でチャリティのためにタレントが何十キロも走る必要があるのか、僕にはどうしても理解ができないのである。

もちろん、人が自ら困難にチャレンジする姿は心を打つ。しかし、そこにはその人が困難に立ち向かい目標を達成することへの強いコミットメントと必然性、内発性があるのが普通である。この企画も間寛平の頃はそうだったのかもしれない。しかし、今では走ることへのタレント自身の内発的必然性はほとんど感じられず、マラソンありき、ゴールの感動ありきで、今年はだれが走るかというだけの「見せ物」に変わってしまっているようだ。

歯を食いしばって走る絵、ゴールして涙する絵、番組としての感動的な絵作りとしてマラソンは重宝なのだろう。しかし、そこには感動の裏づけになる「私はどうしても走らねばならない」という強い動機がすっぽりと欠落しており、いうならば「感動のマッチポンプ」。何もないところに自己目的化した薄っぺらい感動だけが捏造されている感が払拭できない。結局、僕たちの感動はその程度の安っぽいものだと値踏みされているんだろうな。

 



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2011年09月03日 18:32      [posted by strange_days_2009]

ビッグ・ウェイヴ

台風が来ている。ゆっくりとしたスピードで四国に上陸して瀬戸内海を渡り、中国地方を横断して日本海に抜けようとしているようで、あちこちで大きな被害が出ているようだ。台風がやってきて大きな被害を出すのは、まあ、毎年のことではあるが、それだけに治山治水という国家の基本作用の重要さが分かる。それにしても、たまに来て大きな被害を出す天災に、どこまでカネを投じてふだんから備えておくかという判断は難しいものだ。

だが、今日書きたいのはそのことではない。僕がげんなりしたのは、台風で大波が来るのを当て込んでサーフィンに出かけ、波に飲まれて亡くなってしまう人がこの台風でも出たことだ。台風の被害で亡くなる人が出るのは痛ましいことだが、この類の話って、何か大きな台風が来るたびに毎回出てくるんじゃないか。サーファーがみんなこういう人だという訳ではないのだろうが、ニュースを見ているだけでこっちが情けなくなってくる。

映画「ビッグ・ウェンズデイ」を引き合いに出すまでもなく(あれはいい映画だったと思う)、サーファーが一世一代の大波を見逃したくない、あの波に乗りたいと思う気持ちは、理解はできないまでも想像はつく。僕としては彼らが台風の海に漕ぎ出して波乗りを試みるのは好きにしてもらっても別に構わない。そのまま波に飲まれてもだれも救助も捜索もしない、好きでやっているのだから放っておいてもらっていい、ということならば。

だが、実際にはサーファーが台風の海で波に飲まれればなにがしかの対応がなされない訳には行かない。救助や捜索の人が二次被害に遭うことだって考えられる。この際、危険を承知でやる台風の中でのサーフィンなんかについては、遭難してもだれも救助も捜索もしないことにすればいいんじゃないか。その方が、サーファーの人たちも他人に迷惑をかける心配をすることなく、心ゆくまでビッグ・ウェイヴを楽しめるんじゃないだろうか。

 

 



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