2013年12月14日 11:49
[posted by strange_days_2009]
■ 「伝え方」の技術
横浜Fマリノスの中村俊輔選手がJリーグの年間最優秀選手賞を受賞したのを見ていた。プロサッカー選手としてはもはやベテランだが、今季は骨惜しみしない献身的な働きと確かな技術、戦術眼で横浜を牽引した。今季の横浜の躍進はひとえに中村のおかげと言っていい。文句のない受賞だ。
だが、いただけなかったのは中村のスピーチである。内容はどうでもいい。ただ、張りのない声でぼそぼそと、切れぎれに話す、定まらない視線、表情にもメリハリがなくたまにバツの悪そうな照れ笑いが混じる、聴衆に開かれた「スピーチ」の体をなしていないのだ。
それはプレゼンターの佐藤真海と比べればはっきりする。佐藤のスピーチも決して流麗という訳ではないし、手許の原稿を読んでいるのもはっきり分かるのだが、姿勢や視線の配り方、表情、発声、抑揚など、聞き手に何かを伝えようと働きかける意識が明快に伝わり好感が持てた。
中村を殊更に悪く言うつもりはないが、日本を代表するサッカー選手としてあちこちでコメントを求められたり、人前に出たりする機会のある人間として、このコミュ障の大学生みたいなスピーチはいかにも情けない。大勢の前で話すのが苦手なのかもしれないが、それは言い訳にできない。
なぜならスピーチの巧拙は性格の問題ではなく技術の問題だからだ。話す内容は事前に用意できる。そして話し方は訓練で身につけることができる。佐藤はおそらくオリンピック招致のスピーチのために専門家の特訓を受けただろう。公人がプアなスピーチしかできないのはそれ自体恥ずべきことなのだ。
だが、中村を責めるのは酷かもしれない。だいたい僕たちは人に何かを伝える訓練みたいなものを受けてこなかったのではないかと思うのだ。コミュニケーションが個人の性格とか得手不得手、好き嫌いに任されてきた結果がこの中村のコミュ障的スピーチなら、僕たちは「伝える」ことをもっと真剣に考えた方がいいのかもしれない。
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そうだったんですか。中村俊輔氏のコメントはスポーツニュースのコーナーで、ちらっと見た程度でしたが、確かに、そんなに堂々とは、していませんでしたね。
私が、今、とっても気になるのは、中田元選手辺りから始まった気がする「なんとか だと思うし〜なんとか、なんとかだと思う」の様な感じで、言いたい事が、通常2行の場合でも、無理矢理『 し〜 』で、つなぐ言い方です。前半と後半が、あまり合っていない場合も多くあります。たぶん、テレビなどで、コメントを途中で切られないための工夫の気がするのですが、そう言った点では、彼等も工夫している気がします。
Posted by 荒川水路 at 2013年12月14日 21:53
そういえばビジネス文書の書き方研修の講師から、「しりてが」は使うなって言われました。
「〜し」「〜り」「〜て」「〜が」で、本来終わるべき文章を相互の関係があいまいなままつなげて行ってはいけないと。
Posted by Silverboy at 2013年12月21日 21:36
「スピーチの巧拙は性格の問題ではなく技術の問題」というご指摘に賛成です。かくいう私はアガリ性ですが、スピーチは練習を重ねてきたので、何とかできます。
ただ、中村選手の魅力は、やればできるはずのスピーチ訓練を放棄して、永遠のコミュ障ボーイであろうとする、頑なさにあるのではないでしょうか?
何か、別のインタビューで「もっと大きな声でお願いします」と指摘されているのを見ましたが、本人は開き直ってる風でした。ふん、これが俺なんだから、とでも言いたげに。
よくも悪くも社会化されずに、フラジャイルのままでいるからこそ、ファンタジックなボールを蹴れるというのは、身びいきが過ぎるでしょうか。というか、なんかスピッツの歌詞みたいでしょうか。
Posted by チャボ at 2014年01月22日 21:30
なるほど、あのサッカー技術は社会性と引き換えに手に入れたものだったのかもですね。慧眼です。
Posted by Silverboy at 2014年01月29日 22:52