2011年03月02日

谷口吉生氏設計「フォーラムビルディング」のこと/新建築2011.3月号より

数日前からツイッターのタイムラインで話題になっていた、谷口吉生氏設計の「フォーラムビルディング」を新建築でようやく見ることができた。誰もが「ディテールが凄い」と言う。ワクワクしながらページをめくっていく。

建築は青山通りに面して建つ、地上
12階地下2階のオフィスビルである。新建築の写真を見ただけではあるけれど、近くにある建築と比較しても特別高いものではなく、そして平面的にも大きな訳ではなく。しかし最も特徴的なのは、そのスレンダーなグリッドで構成された外観だろう。グリッドの見付け幅は410。グリッドのピッチは3,600。オフィスビルというプログラムにしては、非常に細やかなグリッド構成だと言えるだろう。しかも日本人的には、とても「伝統的」な寸法体系とも言える。

そしてここで重要なのは、このグリッドを構成しているのが柱・梁だ、ということ。地上
12階建てで、しかも鉄骨造ということは耐火被覆も必要で、かつステンレスパネルを仕上げに使った状態で見付が410なのである。そこでディテールである。まず柱は鉄骨のφ273.1で肉厚が驚きの48ミリ!梁はBH(ビルドH)で2752751255!それらに耐火被覆を施した上で、仕上げパネルを410ミリで納めているのである。ディテールは徹底していて、梁上の雨水を外部側に垂れ流しにしないようにアルミパンチングとした上で、下部にパンを設けて柱パネル内部に通してあるφ33の竪樋に流すという構成。アルミサッシュは、その見付寸法を柱パネル内部に納められ、新規押出形材で防火設備の個別大臣認定をも取得した上でトリプルの高透過耐熱強化ガラスという徹底ぶり。確かにこれほど開口部が大きければペアガラスでもなくトリプルっていうのも分からなくはないけれど、それにしても凄過ぎる。

意匠的にもうひとつ気になるのは、外部仕上げとなっている「ステンレスパネル ビーズブラスト仕上げ」。ビーズブラスト仕上げは屋内で使ったことはあるけれど、外部で使うとどういう見えをするのだろう。光の当たり方によっては、にぶい鏡面仕上げのように見えるだろうし、角度によってはマットなグレーに見えるのだろう。こればかりは現地で実際に見てみないことには分からないことだろう。
410ミリのグリッドは本当にスレンダー。この開放感は内部から体験してみたいなぁ。

この建築、確かにプロポーションも良く、スレンダーで上品。コア部分や法規的な部分をクリアするのも、とてもスマートに解いている。構造的に不利である丸柱を用いているのも、サッシュや竪樋のことを考えると理解できる(書き忘れたけれど、柱・梁の仕口部分も壮絶な架構となっている!)。しかし、これほどまでの建築を実現させるのに、どれほどのコストが掛かっているのかが気になる。新建築で写真を見ただけでは、おそらく「とてもシンプルなオフィスビル」と見てしまう人もいると思う。一般の人も同じような感想を持つだろう。しかし、近くに並ぶ建築に比べてると、ヘタをすると倍以上のコストが掛かっているのではないだろうか。そして穿った見方をすれば「これほどのコストを掛けて一体何を実現させるのが出来たのか」という問を立てるとどうなるのだろうか。「素材・光・プロポーション」などというのは、実は社会や一般の人にとっては、実はどうでも良いことである可能性もある。


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