三笠中央部改造

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三笠中央部の考証その16:通風筒を改装した理由

以前、三笠中央部の考証その2:お手本の模型 で日本海海戦に備えてボイラー室の通風筒(ベンチレーター)の雁首(カウルヘッド)を取り外して仮製の「風取り」を取付けた理由と、機械室のベンチレーターは従来通りとした理由について考えましたが、今回、その理由がわかりました。以下の通りです。

・ボイラー室の通風筒については、敵の砲弾が「風取り」に命中しても爆発せずに通り抜けるような構造にする事によって、被害を受けないようにするため、改装した。

・機械室の通風筒については、戦闘時はファンによる空気の循環ができない(排気口となっている上甲板のエンジン・ハッチを閉ざしてしまう)ため、通風筒の雁首を取り外すと機械室の通風に悪影響が出るため、そのままとした。

艦改装意見C09020234000-36 ベンチレーター
[JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C09020234000- [明治37〜38年 艦艇改装意見1(1)] の第36画像目]
仮製風取りの図です。実際には半円を交差させたような「仮製の風取り」が取り付けられました。

改装意見C09020234000-54
[JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C09020234000- [明治37〜38年 艦艇改装意見1(1)] の第54画像目]
機械室通風筒を従来通りとする理由が書かれています。

プラモデル組立の記録(1)

*** 2011年10月1日追記***
このキットの前部魚雷発射管の穴の位置は、実艦とは異なるらしいことが判りました。
詳しくは、三笠前部の考証その5:前部魚雷発射管 をご覧ください。
***************

正直に言いますと、艦船プラモデルを作るのは久しぶりです。キットが良質でも私の不器用さのために不細工な完成品になるかも知れません。あるいは途中で失敗するかも知れません。その場合は失敗例として参考にしてくださいませ。

キットは『ハセガワ 1/350 戦艦三笠 日本海海戦時』です。

P1010004
(1) 船体パーツを貼り合わせたところ。過去に三笠を組み立てた方たちの記事を参考にして、船体中央部の合わせ目にはプラ板を貼り付け、艦首と艦尾の合わせ目をパテで埋めています。船体内側に取り付けられた5本のビーム状の部品は船体の強度を高めると共に、後から取り付ける副砲の砲身の旋回軸を支える役割も果たします.


P1010005
(2) 艦首部。船体内側の左右に突き出ている「いぼ」のようなふくらみは水中魚雷発射管の孔を表現したものです。「いぼ」の位置が左右対称ではありませんが、設計時の図面を見るとずれているのが正解のようです。


P1010009
(3) 艦尾の状況。艦首と違って艦尾の水中魚雷発射管の穴は左右対称の位置にありますが、これも図面の通りです。


P1010006
(4) キットの穴は真横を向いていますが、実艦の艦首の水中魚雷発射管は少しばかり斜め前方を向いていました。ピンバイスで斜め前に穴を開け直すと気分が出ます。※穴の位置については、「三笠前部の考証その5:前部魚雷発射管」の記事を参照ください。


P4290006
(5) 実艦の艦尾の水中魚雷発射管の穴は少し斜め後方を向いていたので、ピンバイスで少し斜め後方に穴を開け直しました。
三笠の線図に示された魚雷発射管の口の形状とほぼ同じ形になりました。


P4250001
(6) 上甲板の部品を仮組みしたところです。上甲板は前、中央、後の三つの部品に分割されています。船体とのはめあわせは非常に良く、パテを使って埋めなければならないような隙間はありません。また、上甲板の部品同士の合わせ目は艦橋の部品が覆って隠してしまうので、「合わせ目を消す」作業をしなくて済みます。


P5220005
(7) キットの上甲板中央部の部品の上に煙突、通風筒の部品を乗せてみました。残念ながらこの部分は当時の三笠に比べてかなり異なっています。


P5150001
(8) 通風筒の部品を作ります。5mm角のプラ棒を貼り合わせます。


P5150002
(9) 通風筒の折れ曲がった形状を書き込みます。


P5220001
(10) アートナイフややすりで削って形を整えます。
作るべき部品の形状とサイズが決まっていれば、慣れた方なら1日あれば通風筒14本分の部品を作れるでしょう。


kakou_go
(11) 改造のため、上甲板中央部を加工中です。
位置を修正すべきスカイライトとハッチのモールドを切り取り、ウインチの土台のモールドを削り、使わない穴を埋めました。
切り取ったモールド(青枠内)は形を整えて再利用します。
注意)黄色丸の部分は折れやすいので、作業中に力が加わらないように注意が必要です。甲板を改造する人は、気長にゆっくりやりましょう。私はせっかちだったので切り取ったモールドの周囲が傷だらけになりました。


skylight
(12)エンジンハッチの「囲い」とその左右にあるスカイライトを作ります。
[0]  プラ板と角プラ棒で「囲い」を作ります。
[1] スカイライトの台部分は、2mm角のプラ棒の一面をヤスリで斜めに削って作ります。
[2]  薄いプラ板から直径1mmの円(窓)を打ち抜いたものを削ったプラ棒に貼り付けます。
[3]  ランナーをろうそくであぶり、延ばして細くしたものを窓の両側に貼り付けます。
[4]  接着剤が乾いたら延ばしランナーのはみ出し部分を切り取ります。
※実際には、直径1mmの窓では、キットの他のスカイライトの窓より一回り大きいです。他の作り方を考えた方が良かったかも知れません。


_
(13) エンジンハッチの「囲い」にキットから切り取ったモールドを加工してはめ込みます。その艦尾側にプラ板とのばしランナーを使ったハッチを付けます。
「囲い」の左右には先に製作したスカイライトを配置します。このスカイライトの窓の数は図面によって異なります。明治四十四年までに撮影された写真では、窓は片舷で2つに見えますので、その通りに作りました。

「囲い」の回りに突き出しているトゲのようなものは、ホーサーリールらしきものをつり下げておく支え金具です。金具の数はもっと多いと思われますが、取りあえず写真を見て確実と思われる箇所にだけ付けました。取り付けるリールのサイズにあわせて金具を追加するつもりです。

「囲い」の屋根部分については確認できる写真を持っていませんが、図面とキットのモールドがほぼ一致しているので、このモールドを手直しして使いました。

後マストの直後にあるスカイライトは、上述の写真にその蓋の一部が写っていて、キットのモールドと同じ3つに分かれた構造のように見えますので、キットのままとしています。


_-1
(14) 自作した部品と一旦切り取ったモールドを上甲板部品の上に並べました。やはり加工精度が悪く、水平垂直を出すためのすりあわせが必要です。
黄色の丸は、構造がまだ不明で、部品を作っていない所です。
(1) はその下にある「賄い所」の煙突かも知れません。
(2) は通気筒と遁気筒と他の何かを兼ねた物があったようですが、どういう形をしていたのか判っていません。
(3) のスカイライトは、キットのモールドではフタが前後(首尾線)方向に開閉する形ですが、当時の写真を見ると艦の左右方向に開閉するものだったようです。窓の数が図面によって異なっているので調査中です。
(4) 前部ボイラー室の2つの吸気筒に挟まれた箇所には、ボイラー室への入口がありました。ロッカーのような箱型の形のようです。その屋根には、開閉式のスカイライトがあったようです。

実は、6月初旬にここまで出来たのですが、そこから先に進んでおりません。仕事が忙しくなったことと、(自分にとっては)目新しい資料がいろいろ手に入ったのでそちらを読んでおります。

三笠中央部の考証その2:お手本の模型

三笠模型中央部考証

記念艦みかさの中に展示されている模型をお手本にするにあたって、中央部の造りをチェックしてみます。

・通風筒
(1) 前缶右舷通風筒
(2) 前缶左舷通風筒
これらの通風筒は、前部艦橋シェルターデッキの下から四角い筒の形で立ち上がり、途中で斜め後上方に折れ曲がった後、上向きに曲がっていることがわかります。
 
(3) 中缶右舷前部通風筒
(4) 中缶左舷前部通風筒
(5) 中缶右舷後部通風筒
(6) 中缶左舷後部通風筒
これらの通風筒は、四角い筒が上に伸びる途中ですぼんで円筒に変形していることがわかります。
 
(7) 後缶右舷前部通風筒
(8) 後缶左舷前部通風筒
これらの通風筒は、四角い筒が途中から外舷方向・斜め上に折れ曲がった後、上向きに曲がっています。
 
(9) 後缶右舷後部通風筒(写真では見えません)
(10) 後缶左舷後部通風筒
写真ではよく見えませんが、これらの通風筒は四角い筒が途中から前方に少しだけ斜め上に折れ曲がった後、上向きになっているようです。  四角い筒の上に少し位置をずらした形で円筒が接続されていたようです(2011年10月26日修正)。
 
(11) 機械室右舷前部通風筒
(12) 機械室左舷前部通風筒
写真ではよく見えませんが、これらの通風筒は四角い筒が途中から斜め後方、そして外舷寄りに緩やかに折れ曲がった後、上向きになっています。
 
(13) 機械室右舷後部通風筒
(14) 機械室左舷後部通風筒
写真ではよく見えませんが、これらの通風筒は、後部艦橋シェルターデッキの下から四角い筒の形で立ち上がり、途中から斜め前方、そして内側寄りに緩やかに折れ曲がった後、上向きになっています。
これらの通風筒の上部には、キセルの口のような「雁首」が載っています。雁首によって、通風筒に雨や波しぶきが入るのを防ぐ事が出来ます。また、この雁首の口の向き変える事によって取り入れる空気の量を調整する事が出来ます。
 
なお、日本海海戦時には(1)から(10)の缶室(ボイラー室)の通風筒の雁首はありませんでした。代わりに鉄線をアーチ状に曲げた枠に帆布を取り付けて作った仮製の「風取り」が取り付けてありました。これでは、空気の取り込みの効率が悪くなったり、雨や波しぶきが入ってきて不便と思われます。
実際には、缶室には給気用のファンがありますので、雁首が無くても必要な空気を取り込むことが出来ました。雨水や波しぶきは我慢したようです。
缶室の雁首を外した明確な理由は判りませんが、敵弾が命中した場合に危険な破片となって飛び散る類の物を出来るだけ減らしたかったのではないでしょうか?(※2011/01/31追記:その理由が判明しました。三笠中央部の考証その16:通風筒を改装した理由 をご参照ください)
一方、(11)から(14)の、機械室(エンジン室)の4つの通風筒の雁首は付いたままでした。機械室には通風用に十分な能力のファンが取り付けられていなかったので、空気の流れをなるべく良くするために雁首をそのまま付けていたのではないかと考えます。
 
・灰捨装置
(a) 模型では再現されていませんが、この位置(通風筒の前)に缶室から出た灰やゴミを捨てるための装置がありました。 ASH HOIST(アッシュ・ホイスト)と呼ばれ、ボイラー室から灰を入れたバケツが上がってくる場所です。上がってきたバケツは、上甲板で待ち構えた水兵さんが取り外し、頭上に設置されているレールにぶら下げて舷側にある「スカッパー」まで運び、バケツの中味を海に捨てます。図面で見ると、ASH HOISTはこの場所を含めて5つ設置されていました。
なお三笠には、ASH HOIST の他に、缶室から灰と海水を混ぜてポンプで圧力をかけて水線上まで揚げて舷外に投棄する設備が付いていました。
 
・蒸気捨て管
(b) 煙突に沿って上に伸びている細い管です。不要な蒸気を逃がす管です。前部煙突の後、後部煙突の前後にも取り付けられています。
 
・ジャッキ・ステー
(c) 煙突の外周に沿った輪のような部分です。煙突周りで作業をする時の足場となります。ただし、日本海海戦時にはこのジャッキ・ステーは取り付けられていなかったようです。
 
・スカート?
(d) 煙突の根元にあるひさしのような部分です。四角錐の裾のような角張った形をしています。現在の記念艦やハセガワのキットではこの部分は円錐の裾のように円くなっています。しかし、図面や三笠の海戦時の被害図にも四角い物として描かれていますので、この模型の角張った形が正解と思われます。
 
・テラス? 
(e) 写真では何もありませんが、この部分、前缶通風筒の直後から前部煙突の間のボートデッキの高さには、屋根というかテラスというようなものがありました。左右のボートデッキをつないでいたようです。図面ではバルサ製の筏  救命筏※ が置いてあります。
日本海海戦時にもこのテラスのようなものはあったようです。バルサ製の筏  救命筏 についてははっきり判りません。このブログのトップの写真を拡大してみると、問題の場所に白く塗られた筏のような物があるように見えますが、単に印刷の網点の具合でそう見えているだけかも知れず、微妙なところです。
(※ 2011年8月17日訂正。三笠の断面図では、この筏に "BALSA LIFT RAFT" と記されています。しかし、木材のバルサを使ってはいないようです。(BALSAには一般的に「救命筏」という意味があります))

三笠中央部の考証その1

ネットでは、プラモデル・キットや横須賀の記念艦みかさの中央部の造りが実際と異なることが指摘されています。
ハセガワの1/350 三笠(日本海海戦版)について見てみますと、キットをそのまま組み立てると、
hase_mikasa

こうですが、実際は下のような造りだったようです。

2011年9月24日追記:
下の写真の中で、中缶室前部通風筒の形(途中でやや前にせり出している)は誤まっていると思われます。
実際には真っ直ぐ上に伸びていたようです。
詳しくは新しい記事「三笠中央部の考証その21:中缶前部通風筒の形(前)」以降をご覧ください。


(下の改造例では、通風筒の上部はまだ出来ていません。)
hase_mikasa_after


この改造には、記念艦みかさの中に展示されている模型が参考になりました。これは、昭和36年5月27日にみかさの修理復元工事完成を記念して浦賀船渠株式会社ならびに石川島播磨工業株式会社から寄贈されたものです(模型製作所:日新産業有限会社)。
 mokei

中央部をよく見ると,通風筒の根元は四角くて、途中で折れ曲がりながら円筒に変化している事がわかります。
また、煙突の根元にスカートのようなひさしがあるのですが、これが丸くなく、四角いことがわかります。
 mokei_mid

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