2023年03月25日
「名品展」
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今の美術業界を考える(その970)
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名品展 2023年3月25日
銀座柳画廊では毎年2回、3月と9月に名品展を実施しています。
3月はアートフェア東京もある月ですし、多くの方がアートファン
が東京にいらっしゃいますので、約1ケ月近く開催しています。
日経新聞にも広告を出して、今回は本日が最終日です。
先日は日本中がWBCの野球で新聞もテレビも賑わいました。にわか
野球ファンも増えたようです。スポーツとアートとビジネスモデル
は非常に似ていると感じておりますが、その場の熱量は大きく違う
と実感いたします。
美術が大好きな方とスポーツが大好きな方も、あまり交流がないのも
残念に感じています。しかし、美術にしてもスポーツにしても、生活
必需品ではなく嗜好品という部分では同じジャンルだと感じています。
また、必需品ではないからこそ熱狂的なファンがいらして、その熱量
によって、経済効果が変化いたします。
今回の名品展で感じたのは、じわっとではありますが美術ファンは
あきらかに増えてきているということです。また以前と比べると、
自分の目で好きなものを購入される方が増えてきているという事です。
日本人は自己肯定感が低いと言われておりますが、今の若い日本人を
拝見していると、なかなかやるなと思うことが多々あります。
今回のWBCの世界一もそうですが、実は素晴らしい日本人はたくさん
いて、スポーツだけでなく、芸術の分野においても、バレエ、ピアノ、
絵画、映画などあらゆるジャンルで日本人の才能が評価されています。
残念なのは日本人は外国人に甘く日本人に対して厳しすぎると思います。
一歩、海外にでるとなんの根拠もなく自身満々の方に多く出会います。
謙虚であることを美徳とする日本社会では、海外に出るまでに、謙虚
になりすぎて、いざ世界で戦う場面になると存在をアピールすることが
下手になっています。
美術の世界でも、もっと積極的であるべきだと思いますが、日本社会の
中で才能をつぶしてしまっているのではないかと思います。逆に言うと、
日本の平均のレベルが高すぎて、素人のレベルが高すぎるのだと感じて
います。
もちろん世界で通用するレベルというのは、簡単なことではありませんが
関係者がコレクターも、作家も、画商も美術館の学芸員も美術評論家も
全体の底上げと全体の国際化が進めば、日本の芸術のレベルの高さを、
再評価できるものと信じています。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
2023年03月18日
「インドネシア出張報告」
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今の美術業界を考える(その969)
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インドネシア出張報告 2023年3月18日
先週末にインドネシアのバリ島にいってまいりました。東京では
アートフェアで画廊でも名品展を開催している時期ではありました
が、ビーチハンドボールの担当役員として日本から役員派遣が誰も
いない状況は問題だと言われ続け、コロナも少し落ち着きました
ので視察に行くことにいたしました。
今回は第9回アジアビーチハンドボール選手権ということで、女子
は4か国、男子は11か国の参加でした。アジアということですが、
男子はカタール、オマーン、サウジアラビア、クエート、イランと
いった中東勢が多く参加されておりました。
日本のビーチハンドボール選手が国際大会への出場は近年、殆ど
参加もなく、そのために私が派遣されていると実感しています。
日本ではインドア(体育館でのハンドボール)の選手とビーチ
ハンドボールの選手は分かれており、運営も別母体で長年運営され
ています。
色々な言い訳があるのですが、実際にバリ島までやってきて、アジア
連盟の役員の方々とお話をして、朝から大会を見学していると、
状況が飲み込めてまいりました。男子のオマーン、カタールの選手達
を拝見すると、体格が明らかに違い、彼らはインドアの代表選手である
ことが一目でわかります。ビーチハンドボールの技術的、戦略的な
問題は多少あったとしても、身体能力の差はいかんともし難いものが
あることが一目でわかりました。
芸術の世界でも全く同じだと思います。基礎的な事は同じなのです。
表現する手法や考え方が違ったとしても、根本的な基礎的なものは
すべてに共通するという事実は変えられません。アスリートであれば
身体を作ることであり、芸術家であれば感性を磨いて、それを表現
することです。
またアスリートの鍛えられた身体は、あらためて芸術的であり美しい
ものだと思いました。これも長年にかけて作り上げるものであり、簡単
に身体ができるわけでもありません。
そういう意味において、日本が期待されているということは有難い話で
あり、日本人のアスリートの環境を整えることも、私の仕事なのだと、
今回の訪問で自覚いたしました。
アスリートと芸術家は違うように見えても、共通点は多く、彼らの未来
を作ることが今の私の使命なのだと思っています。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
今の美術業界を考える(その969)
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インドネシア出張報告 2023年3月18日
先週末にインドネシアのバリ島にいってまいりました。東京では
アートフェアで画廊でも名品展を開催している時期ではありました
が、ビーチハンドボールの担当役員として日本から役員派遣が誰も
いない状況は問題だと言われ続け、コロナも少し落ち着きました
ので視察に行くことにいたしました。
今回は第9回アジアビーチハンドボール選手権ということで、女子
は4か国、男子は11か国の参加でした。アジアということですが、
男子はカタール、オマーン、サウジアラビア、クエート、イランと
いった中東勢が多く参加されておりました。
日本のビーチハンドボール選手が国際大会への出場は近年、殆ど
参加もなく、そのために私が派遣されていると実感しています。
日本ではインドア(体育館でのハンドボール)の選手とビーチ
ハンドボールの選手は分かれており、運営も別母体で長年運営され
ています。
色々な言い訳があるのですが、実際にバリ島までやってきて、アジア
連盟の役員の方々とお話をして、朝から大会を見学していると、
状況が飲み込めてまいりました。男子のオマーン、カタールの選手達
を拝見すると、体格が明らかに違い、彼らはインドアの代表選手である
ことが一目でわかります。ビーチハンドボールの技術的、戦略的な
問題は多少あったとしても、身体能力の差はいかんともし難いものが
あることが一目でわかりました。
芸術の世界でも全く同じだと思います。基礎的な事は同じなのです。
表現する手法や考え方が違ったとしても、根本的な基礎的なものは
すべてに共通するという事実は変えられません。アスリートであれば
身体を作ることであり、芸術家であれば感性を磨いて、それを表現
することです。
またアスリートの鍛えられた身体は、あらためて芸術的であり美しい
ものだと思いました。これも長年にかけて作り上げるものであり、簡単
に身体ができるわけでもありません。
そういう意味において、日本が期待されているということは有難い話で
あり、日本人のアスリートの環境を整えることも、私の仕事なのだと、
今回の訪問で自覚いたしました。
アスリートと芸術家は違うように見えても、共通点は多く、彼らの未来
を作ることが今の私の使命なのだと思っています。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
2023年03月11日
「山種美術館」
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今の美術業界を考える(その968)
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山種美術館 2023年3月11日
今回は山種美術館のご紹介をしたいと思います。丁度、本日より
5月14日まで「富士と桜〜北斎の富士から土牛の桜まで」という
展覧会が開催されます。
山種美術館とは色々とご縁がありまして、最初に美術館にお伺いした
のは、まだ茅場町に山種美術館があるころでした。山種美術館は
山種証券という証券会社のオーナーが作られた美術館ですので、会社
の近くというか一部に美術館を作られていたのだと思います。
こちらの美術館は日本画の収集で有名でして、当時から素晴らしい
横山大観の数々と、速水御舟の「炎の舞」が大好きで、自宅が近所
なため、度々伺っておりました。
その後、場所を三番町に移され、少し遠くなったので、美術館に行く
足も遠のいておりました。そんな時に、当時の美術館館長のお嬢様で
いらしゃる(現・館長)山崎妙子さんが大学の先輩だということを
知り、慶應を卒業されてから芸大に行き、速水御舟の論文を書かれて
いらっしゃることを、美術業界の先輩から伺っておりました。
当時、館長でいらした山崎富治さんは、アークヒルズクラブのメンバ
ーでもあり、メンバーズパーティなどで、ご挨拶をさせていただいて
おりました。お嬢様が速水御舟の勉強をされていること、将来は美術
館運営に興味を持たれていらっしゃることなどを、富治さんから伺い、
たまたま、大阪の義父ともご縁があるということで、一緒に三番町の
山種美術館に伺い、富治さんから妙子さんをご紹介いただきました。
そうすると、不思議なもので、経営者の勉強会で山崎妙子さんとご一
緒する機会ができたり、大学時代の仲良しが山崎妙子さんと同じサー
クルにいたというご縁で、一緒にご飯を食べるようになりました。
そして、先日も山種美術館にお伺いすると、若手作家も応援している
ことを知り、知り合いの日本画家を山種美術館が応援していることを
拝見して、嬉しく感じておりました。
美術の仕事をしていると、焼きもちと嫉妬が渦巻く世界ではありますが、
人とのご縁を大切にしていると、それがつながっていくのが面白いと感じて
います。はたから見ると、ずるいと思われるような恵まれた環境にいると
感じる方も、その人なりに見えない所で努力をされており、見えない所
で、必ずそれに値する苦しい思いもされているのだと思います。
美術の仕事は華やかに見えるだけに、その部分だけがクローズアップされ
ますが、その分、厳しい思いをされていらっしゃる方が多いのだと確信して
います。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
今の美術業界を考える(その968)
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山種美術館 2023年3月11日
今回は山種美術館のご紹介をしたいと思います。丁度、本日より
5月14日まで「富士と桜〜北斎の富士から土牛の桜まで」という
展覧会が開催されます。
山種美術館とは色々とご縁がありまして、最初に美術館にお伺いした
のは、まだ茅場町に山種美術館があるころでした。山種美術館は
山種証券という証券会社のオーナーが作られた美術館ですので、会社
の近くというか一部に美術館を作られていたのだと思います。
こちらの美術館は日本画の収集で有名でして、当時から素晴らしい
横山大観の数々と、速水御舟の「炎の舞」が大好きで、自宅が近所
なため、度々伺っておりました。
その後、場所を三番町に移され、少し遠くなったので、美術館に行く
足も遠のいておりました。そんな時に、当時の美術館館長のお嬢様で
いらしゃる(現・館長)山崎妙子さんが大学の先輩だということを
知り、慶應を卒業されてから芸大に行き、速水御舟の論文を書かれて
いらっしゃることを、美術業界の先輩から伺っておりました。
当時、館長でいらした山崎富治さんは、アークヒルズクラブのメンバ
ーでもあり、メンバーズパーティなどで、ご挨拶をさせていただいて
おりました。お嬢様が速水御舟の勉強をされていること、将来は美術
館運営に興味を持たれていらっしゃることなどを、富治さんから伺い、
たまたま、大阪の義父ともご縁があるということで、一緒に三番町の
山種美術館に伺い、富治さんから妙子さんをご紹介いただきました。
そうすると、不思議なもので、経営者の勉強会で山崎妙子さんとご一
緒する機会ができたり、大学時代の仲良しが山崎妙子さんと同じサー
クルにいたというご縁で、一緒にご飯を食べるようになりました。
そして、先日も山種美術館にお伺いすると、若手作家も応援している
ことを知り、知り合いの日本画家を山種美術館が応援していることを
拝見して、嬉しく感じておりました。
美術の仕事をしていると、焼きもちと嫉妬が渦巻く世界ではありますが、
人とのご縁を大切にしていると、それがつながっていくのが面白いと感じて
います。はたから見ると、ずるいと思われるような恵まれた環境にいると
感じる方も、その人なりに見えない所で努力をされており、見えない所
で、必ずそれに値する苦しい思いもされているのだと思います。
美術の仕事は華やかに見えるだけに、その部分だけがクローズアップされ
ますが、その分、厳しい思いをされていらっしゃる方が多いのだと確信して
います。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
2023年03月04日
「春花園BONSAI美術館」
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今の美術業界を考える(その967)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
春花園BONSAI美術館 2023年3月4日
到知という雑誌を購読しており、3月号で盆栽作家の小林國雄さんの
インタビュー記事を拝読して感動いたしました。その記事の中に、
東京で春花園BONSAI美術館を私財を投じて作ったとあり、行って
みたいと思いました。
たまたま大学の理工学部のゴルフ仲間で、最近お父様を亡くされ、
お父様の経営されていた会社も継いだのですが、お父様が大切に
されていた、たくさんの盆栽が残されていて困っているというお話
を伺っていたので、その友人にお願いして大学の同級生の仲間と
BONSAI美術館に行ってまいりました。
その友人は盆栽には全く興味がなかったようで、初めはお父様が
懇意にされていた盆栽の専門家にすべて売却することを考えて相談
されたようです。すると、その方からは‘お父様の供養だと思って、
49日まではご自分でお世話をされたらいかがですか? お世話の
仕方はお教えいたしますから。‘ということで、お水のあげ方など
を教わり、49日の間、盆栽のお世話をしている間に、お父様が
お世話をしていた盆栽に愛着がわき、今では自分と会社の社員にも
お願いして毎日、盆栽の世話をされているようです。
今回、お伺いしたBONSAI美術館は、その友人の家の近くではあります
が、彼も行ったことはなく、一度行ってみたいと思っていた美術館
だったようです。彼のお父様は埼玉の盆栽屋さん2軒にお世話になって
おり、友人は小林國雄さんをご存じなかったようです。
冬のまだ肌寒い中、この美術館に伺うと外国人の方が多くおられま
した。小林さんを慕って、弟子となる外国人の方々が住み込みで働い
ていらっしゃるようです。日本人が興味をなくし始めている盆栽を
評価しているのは外国人なのだと、少し残念な気持ちがいたしました。
美術館で盆栽の説明を伺っていると、友人がたくさんの盆栽を持って
いるという話から、お名前を聞いたことがあると言われておりました。
ご主人の小林國雄さんが外出先から戻るのをお待ちして、お話をさせて
いただくと、やはり友人のお父様のことはよくご存じで、ご自宅にもお伺
いしたことがあると言っておりました。
改めて、全ての仕事は人の縁によって成り立っていると実感いたしました。
きっと、私の友人は盆栽を通じて、ご存命の時には知らなかったお父様の
ことを、これから知ることになるのだと思います。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
今の美術業界を考える(その967)
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春花園BONSAI美術館 2023年3月4日
到知という雑誌を購読しており、3月号で盆栽作家の小林國雄さんの
インタビュー記事を拝読して感動いたしました。その記事の中に、
東京で春花園BONSAI美術館を私財を投じて作ったとあり、行って
みたいと思いました。
たまたま大学の理工学部のゴルフ仲間で、最近お父様を亡くされ、
お父様の経営されていた会社も継いだのですが、お父様が大切に
されていた、たくさんの盆栽が残されていて困っているというお話
を伺っていたので、その友人にお願いして大学の同級生の仲間と
BONSAI美術館に行ってまいりました。
その友人は盆栽には全く興味がなかったようで、初めはお父様が
懇意にされていた盆栽の専門家にすべて売却することを考えて相談
されたようです。すると、その方からは‘お父様の供養だと思って、
49日まではご自分でお世話をされたらいかがですか? お世話の
仕方はお教えいたしますから。‘ということで、お水のあげ方など
を教わり、49日の間、盆栽のお世話をしている間に、お父様が
お世話をしていた盆栽に愛着がわき、今では自分と会社の社員にも
お願いして毎日、盆栽の世話をされているようです。
今回、お伺いしたBONSAI美術館は、その友人の家の近くではあります
が、彼も行ったことはなく、一度行ってみたいと思っていた美術館
だったようです。彼のお父様は埼玉の盆栽屋さん2軒にお世話になって
おり、友人は小林國雄さんをご存じなかったようです。
冬のまだ肌寒い中、この美術館に伺うと外国人の方が多くおられま
した。小林さんを慕って、弟子となる外国人の方々が住み込みで働い
ていらっしゃるようです。日本人が興味をなくし始めている盆栽を
評価しているのは外国人なのだと、少し残念な気持ちがいたしました。
美術館で盆栽の説明を伺っていると、友人がたくさんの盆栽を持って
いるという話から、お名前を聞いたことがあると言われておりました。
ご主人の小林國雄さんが外出先から戻るのをお待ちして、お話をさせて
いただくと、やはり友人のお父様のことはよくご存じで、ご自宅にもお伺
いしたことがあると言っておりました。
改めて、全ての仕事は人の縁によって成り立っていると実感いたしました。
きっと、私の友人は盆栽を通じて、ご存命の時には知らなかったお父様の
ことを、これから知ることになるのだと思います。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
2023年02月25日
「クリスチャン・ディオール展」
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今の美術業界を考える(その966)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
クリスチャン・ディオール展 2023年2月25日
夢のクチュリエ 東京都現代美術館5月28日まで
東京都現代美術館で開催している、お洋服のクリスチャン・ディオ
ール展に行ってまいりました。女性でしたら、誰でもうっとりとする
内容なのだと思います。
たまたま、今年のお正月にパリにいく飛行機の中で「ミセス・ハリ
ス、パリへ行く」という映画も拝見しており、イギリスでお手伝い
をされている女性がお金をためて、パリのディオールにオートク
チュールの洋服を作りに行く話で、ヨーロッパの女性がいかにディ
オールに憧れているのかを実感する内容でした。
この展覧会の入り口で、クリスチャン・ディオールの最初のキャリア
がギャラリストであったことにも驚きました。ピカソやダリなどの
アーティスト達と付き合い、紹介されていたことを知りました。
クチュリエ(オーダーメードの仕立ての洋風)として大成功された、
クリスチャン・ディオールがジャポニズムの文脈なのだと思いますが
日本が大好きだったことや、日本にも来日されて日本文化に触発され
て仕事をしていたことにも驚きました。
さらには、個人的な話にはなりますが、私の母親が杉野ドレスメーカー
学院に通っていて、色々なデザインの服で賞をとっていたと母から自慢
されたのを覚えているのですが、そのデザイン画がディオールを真似
したのではないかと思うくらい、人物の描き方や、服の描き方が似て
いるのに驚きました。間違いなく、私の母親はディオールに大きく影響
を受けたのを感じました。
また、展示の仕方もとても素敵で、服を題材に紹介映像も作成されて
おり、一度はこんな洋服を着てみたいと、ドキドキさせてくれる内容
でした。最近は年を取ったせいか、着たい洋服があまりないと感じて
おりましたが、クリスチャン・ディオールの服はあまりにも素敵で、
女性であるのならば、一度は着てみたいと思うのではないでしょうか?
しかし、そこには大きな落とし穴があって、洋服というのは痩せていな
いと格好よく着こなすことができないという問題が残っています。
今回の展覧会を拝見して、改めて今年は痩せるぞ! と誓った展覧会に
なりました。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
今の美術業界を考える(その966)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
クリスチャン・ディオール展 2023年2月25日
夢のクチュリエ 東京都現代美術館5月28日まで
東京都現代美術館で開催している、お洋服のクリスチャン・ディオ
ール展に行ってまいりました。女性でしたら、誰でもうっとりとする
内容なのだと思います。
たまたま、今年のお正月にパリにいく飛行機の中で「ミセス・ハリ
ス、パリへ行く」という映画も拝見しており、イギリスでお手伝い
をされている女性がお金をためて、パリのディオールにオートク
チュールの洋服を作りに行く話で、ヨーロッパの女性がいかにディ
オールに憧れているのかを実感する内容でした。
この展覧会の入り口で、クリスチャン・ディオールの最初のキャリア
がギャラリストであったことにも驚きました。ピカソやダリなどの
アーティスト達と付き合い、紹介されていたことを知りました。
クチュリエ(オーダーメードの仕立ての洋風)として大成功された、
クリスチャン・ディオールがジャポニズムの文脈なのだと思いますが
日本が大好きだったことや、日本にも来日されて日本文化に触発され
て仕事をしていたことにも驚きました。
さらには、個人的な話にはなりますが、私の母親が杉野ドレスメーカー
学院に通っていて、色々なデザインの服で賞をとっていたと母から自慢
されたのを覚えているのですが、そのデザイン画がディオールを真似
したのではないかと思うくらい、人物の描き方や、服の描き方が似て
いるのに驚きました。間違いなく、私の母親はディオールに大きく影響
を受けたのを感じました。
また、展示の仕方もとても素敵で、服を題材に紹介映像も作成されて
おり、一度はこんな洋服を着てみたいと、ドキドキさせてくれる内容
でした。最近は年を取ったせいか、着たい洋服があまりないと感じて
おりましたが、クリスチャン・ディオールの服はあまりにも素敵で、
女性であるのならば、一度は着てみたいと思うのではないでしょうか?
しかし、そこには大きな落とし穴があって、洋服というのは痩せていな
いと格好よく着こなすことができないという問題が残っています。
今回の展覧会を拝見して、改めて今年は痩せるぞ! と誓った展覧会に
なりました。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
2023年02月18日
「ソーシャルメディアと経済戦争」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今の美術業界を考える(その965)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ソーシャルメディアと経済戦争 2023年2月18日
深田萌絵 著 扶桑社親書
IBM時代の同期の友人から薦められてこの本を拝読いたしました。
絵画ビジネスとは、かなり違う点ではありますが現代アートも
この流れに沿っているものとして、非常に納得のいく内容でした。
この著書は、ぜひ、‘はじめに’と‘グレートリセット’の章を
読むだけでも価値があると思います。今、世界で行われている
経済戦争の状況が非常にわかりやすくまとめられておりますし、
私が気になっていたダボス会議が提唱しているグレートリセット
について、‘グレートリセット’という題の本も拝読いたしました
が、深田さんの書かれた数ページの内容の方が、簡単に分かり易く
まとめられておりました。
今、世界で行われていることはグローバリズムという名のもとに、
IT技術を駆使した世界統一監視システムを作ろうとしている事で、
国家という概念は消えていき、全ての人々が国民、市民ではなく
なりただの消費者になっていくことをおし進めているのがグレート
リセットということになります。
こういうと身も蓋もありませんが、実際に進行している事実なのだと
思います。「グローバリスト」と呼ばれる思想は「世界を一つの思想
で運営する」ということです。問題なのは、グローバリストは「人権
を保護しろ」と口にするけれども、それを国民国家に「勧告」する
だけで、人権にかかるコストは国が支払っています。さらに日本も含め
アメリカでも移民問題は、海外からやってきた移民に社会保障を人権
保護の観点から与える(フリーライド)させることで国の財政がひっ迫
しているということです。
現代アートの世界をこの文脈で拝見するとよくわかります。高額な
現代アートの作家たちは、このグローバリストの思想の方々に支援
されている作品であり、作品を拝見すると芸術による違いというよりは、
根底に流れる思想が同じであることを感じます。世界中のアートフェア
に参加して、国が違っても、同じものばかりが並んでいるように見える
のは、グローバリズムの思想におもねっている作品だからだと私は理解
しています。
本当の意味で、世界がサステナブルになるためには中小企業が元気に
なることだと私は思っておりますし、世界中がひとつの思想でまとま
っていくことは、管理する人にとって都合が良いことですが、地球
にとって本当によいことかどうか、もう一度、考えなおした方が良い
ように感じています。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
今の美術業界を考える(その965)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ソーシャルメディアと経済戦争 2023年2月18日
深田萌絵 著 扶桑社親書
IBM時代の同期の友人から薦められてこの本を拝読いたしました。
絵画ビジネスとは、かなり違う点ではありますが現代アートも
この流れに沿っているものとして、非常に納得のいく内容でした。
この著書は、ぜひ、‘はじめに’と‘グレートリセット’の章を
読むだけでも価値があると思います。今、世界で行われている
経済戦争の状況が非常にわかりやすくまとめられておりますし、
私が気になっていたダボス会議が提唱しているグレートリセット
について、‘グレートリセット’という題の本も拝読いたしました
が、深田さんの書かれた数ページの内容の方が、簡単に分かり易く
まとめられておりました。
今、世界で行われていることはグローバリズムという名のもとに、
IT技術を駆使した世界統一監視システムを作ろうとしている事で、
国家という概念は消えていき、全ての人々が国民、市民ではなく
なりただの消費者になっていくことをおし進めているのがグレート
リセットということになります。
こういうと身も蓋もありませんが、実際に進行している事実なのだと
思います。「グローバリスト」と呼ばれる思想は「世界を一つの思想
で運営する」ということです。問題なのは、グローバリストは「人権
を保護しろ」と口にするけれども、それを国民国家に「勧告」する
だけで、人権にかかるコストは国が支払っています。さらに日本も含め
アメリカでも移民問題は、海外からやってきた移民に社会保障を人権
保護の観点から与える(フリーライド)させることで国の財政がひっ迫
しているということです。
現代アートの世界をこの文脈で拝見するとよくわかります。高額な
現代アートの作家たちは、このグローバリストの思想の方々に支援
されている作品であり、作品を拝見すると芸術による違いというよりは、
根底に流れる思想が同じであることを感じます。世界中のアートフェア
に参加して、国が違っても、同じものばかりが並んでいるように見える
のは、グローバリズムの思想におもねっている作品だからだと私は理解
しています。
本当の意味で、世界がサステナブルになるためには中小企業が元気に
なることだと私は思っておりますし、世界中がひとつの思想でまとま
っていくことは、管理する人にとって都合が良いことですが、地球
にとって本当によいことかどうか、もう一度、考えなおした方が良い
ように感じています。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
2023年02月11日
「エゴンシーレ展」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今の美術業界を考える(その964)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
エゴンシーレ展 2023年2月11日
ウイーンが生んだ若き天才 東京都美術館 4月9日まで
東京都美術館で開催しているエゴンシーレ展に行ってまいりました。
先週、お伺いした佐伯祐三と人物像がかなりダブるところがあり、
涙涙で拝見いたしました。
若いころから才能を認められるものの、28歳でスペイン風邪で
亡くなられています。またその3日前には妊娠中の奥様を同じく、
スペイン風邪でなくされています。ウイーンという美術の世界の
ど真ん中にあって、このような天才が生まれ、今でいうコロナの
ようなスペイン風邪はヨーロッパの人口の半数近くがかかり、3分
の1の方がお亡くなりになられたという世界的な疫病に翻弄された
ことでも、多くの方の共感を得た画家なのだと思います。
改めて芸術家という職業は人生そのものが作品なのであって、作品
の評価の中で、順風満帆の人生を歩んだ画家の作品は才能があっても
なかなか評価されるのが難しいのではないかと思ってしまいます。
もちろん、作品そのもののクオリティーや、技術、考え方、その時代
の空気を画家がどのように咀嚼して、それを画面に閉じ込め、
同世代の人をはじめ、時代を超えて共感を得ることが出来るのか?
というのが大きな仕事なのだと思います。
ですから生まれた時代というのも実は非常に重要で、戦争体験を持つ
作家の評価が高いのは、そういうことなのだと私は理解しています。
いつの時代にも、画家といわれる人は多く存在いたします。その中で
自分の絵に対する強烈な思いを、どれだけ多くの人に伝えることが
仕事なのだと思っています。
エゴンシーレという作家も、若いころから絵に対する興味は強く、
16歳の時に特別に許されて最年少でウイーン美術アカデミーに入学
しますが、そのアカデミーの考え方の枠に収まりきらずにアカデミー
を去ります。そこで当時の絶大な権威を持つ画家のクリムトに目を
かけられ、評価されることで若いころから才能を発揮いたします。
コレクターにも恵まれ、個展も開き、結婚もしてその直後に戦争に
招聘され、時代に翻弄されます。
28歳という若さで、世界的な評価をつかむ鍵となる美術館での
展覧会が決まったところにスペイン風邪で亡くなるというドラマティッ
クな人生は、世界中の美術ファンをとりこにしたのは間違いないと思い
ます。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
今の美術業界を考える(その964)
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エゴンシーレ展 2023年2月11日
ウイーンが生んだ若き天才 東京都美術館 4月9日まで
東京都美術館で開催しているエゴンシーレ展に行ってまいりました。
先週、お伺いした佐伯祐三と人物像がかなりダブるところがあり、
涙涙で拝見いたしました。
若いころから才能を認められるものの、28歳でスペイン風邪で
亡くなられています。またその3日前には妊娠中の奥様を同じく、
スペイン風邪でなくされています。ウイーンという美術の世界の
ど真ん中にあって、このような天才が生まれ、今でいうコロナの
ようなスペイン風邪はヨーロッパの人口の半数近くがかかり、3分
の1の方がお亡くなりになられたという世界的な疫病に翻弄された
ことでも、多くの方の共感を得た画家なのだと思います。
改めて芸術家という職業は人生そのものが作品なのであって、作品
の評価の中で、順風満帆の人生を歩んだ画家の作品は才能があっても
なかなか評価されるのが難しいのではないかと思ってしまいます。
もちろん、作品そのもののクオリティーや、技術、考え方、その時代
の空気を画家がどのように咀嚼して、それを画面に閉じ込め、
同世代の人をはじめ、時代を超えて共感を得ることが出来るのか?
というのが大きな仕事なのだと思います。
ですから生まれた時代というのも実は非常に重要で、戦争体験を持つ
作家の評価が高いのは、そういうことなのだと私は理解しています。
いつの時代にも、画家といわれる人は多く存在いたします。その中で
自分の絵に対する強烈な思いを、どれだけ多くの人に伝えることが
仕事なのだと思っています。
エゴンシーレという作家も、若いころから絵に対する興味は強く、
16歳の時に特別に許されて最年少でウイーン美術アカデミーに入学
しますが、そのアカデミーの考え方の枠に収まりきらずにアカデミー
を去ります。そこで当時の絶大な権威を持つ画家のクリムトに目を
かけられ、評価されることで若いころから才能を発揮いたします。
コレクターにも恵まれ、個展も開き、結婚もしてその直後に戦争に
招聘され、時代に翻弄されます。
28歳という若さで、世界的な評価をつかむ鍵となる美術館での
展覧会が決まったところにスペイン風邪で亡くなるというドラマティッ
クな人生は、世界中の美術ファンをとりこにしたのは間違いないと思い
ます。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
2023年02月04日
「佐伯祐三展」
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今の美術業界を考える(その963)
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佐伯祐三展 2023年2月4日
東京ステーションギャラリー 4月2日まで
東京駅の東京ステーションギャラリーで開催している佐伯祐三展に
いってまいりました。想像していた以上に内容の濃いもので、涙が
でるほど感動いたしました。
FBにそのことを書くと、「展覧会で涙を流されるなんて、私には
ありえないことです」と同業者の方に書かれましたが、「いえ、
そういう意味ではなく、佐伯祐三さん、かっこいいんです。こん
なにかっこいい人が評価されたとはいえ、30歳でお亡くなりに
なられ、その6日後に6歳の一人娘が同じ結核で亡くなられたと
あり、奥様の気持ちを思うと涙がでちゃったんです。」
とお返事をすると、「理解できました」とお返事がまいりました。
絵画の理解というのは、よく絵をみて理解できないなど言われる事
がありますが、今の例のように事実の積み重ねの上で、現代アート
の言葉を借りるならば文脈の上に作品が存在するのであって、作家
のリアリティに迫ることで、絵画の理解が深まることは当然の事だと
思っています。
1898年から1928年の30年の人生を絵を残すことで、これ
だけの影響力を持った佐伯祐三さんは凄い画家だと思います。生まれ
も大阪の大きなお寺さんの息子さんですし、東京芸大の受験も、本人
は「落ちた」と言っていてもふたを開ければ4番目の成績で合格された
と言われています。結婚も学生時代に恋愛結婚ですし、その後のパリ
留学も実家に支援されて実現しています。
さらには、留学先のパリではヴラマンクの所に里美勝蔵さんに連れて
いかれると「このアカデミック!」と怒声を浴びせられたとのことです
が、そこから大きな成長を遂げ、ル・サロンに出品した作品は入選
した上に、ドイツ人のコレクターに購入されたと記されておりました。
また、パリの街並みで絵を描いていると、歩いているパリの画商に認め
られるというシンデレラストーリーまでありました。
見た目も才能も、家族にも恵まれて、日本でもパリでも評価をお若い
時から得ていたにも関わらず、30歳という年齢で亡くなられたと
いう悲劇が多くのファンを魅了していることは間違いないと思います。
佐伯祐三の短い一生を追いながら作品を拝見すれば、涙が出てくる事
は間違いないと思います。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
今の美術業界を考える(その963)
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佐伯祐三展 2023年2月4日
東京ステーションギャラリー 4月2日まで
東京駅の東京ステーションギャラリーで開催している佐伯祐三展に
いってまいりました。想像していた以上に内容の濃いもので、涙が
でるほど感動いたしました。
FBにそのことを書くと、「展覧会で涙を流されるなんて、私には
ありえないことです」と同業者の方に書かれましたが、「いえ、
そういう意味ではなく、佐伯祐三さん、かっこいいんです。こん
なにかっこいい人が評価されたとはいえ、30歳でお亡くなりに
なられ、その6日後に6歳の一人娘が同じ結核で亡くなられたと
あり、奥様の気持ちを思うと涙がでちゃったんです。」
とお返事をすると、「理解できました」とお返事がまいりました。
絵画の理解というのは、よく絵をみて理解できないなど言われる事
がありますが、今の例のように事実の積み重ねの上で、現代アート
の言葉を借りるならば文脈の上に作品が存在するのであって、作家
のリアリティに迫ることで、絵画の理解が深まることは当然の事だと
思っています。
1898年から1928年の30年の人生を絵を残すことで、これ
だけの影響力を持った佐伯祐三さんは凄い画家だと思います。生まれ
も大阪の大きなお寺さんの息子さんですし、東京芸大の受験も、本人
は「落ちた」と言っていてもふたを開ければ4番目の成績で合格された
と言われています。結婚も学生時代に恋愛結婚ですし、その後のパリ
留学も実家に支援されて実現しています。
さらには、留学先のパリではヴラマンクの所に里美勝蔵さんに連れて
いかれると「このアカデミック!」と怒声を浴びせられたとのことです
が、そこから大きな成長を遂げ、ル・サロンに出品した作品は入選
した上に、ドイツ人のコレクターに購入されたと記されておりました。
また、パリの街並みで絵を描いていると、歩いているパリの画商に認め
られるというシンデレラストーリーまでありました。
見た目も才能も、家族にも恵まれて、日本でもパリでも評価をお若い
時から得ていたにも関わらず、30歳という年齢で亡くなられたと
いう悲劇が多くのファンを魅了していることは間違いないと思います。
佐伯祐三の短い一生を追いながら作品を拝見すれば、涙が出てくる事
は間違いないと思います。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
2023年01月28日
「黒と白展」
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今の美術業界を考える(その962)
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黒と白展 2022年1月28日
ヴァロットン 三菱一号館美術館 1月29日まで
画廊の隙間の時間を見つけて、最終日の近くに三菱一号館美術館
で開催しているヴァロットン展を拝見してまいりました。木版画
で、黒と白のポスターが気になっていて、必ず行こうと思っていた
展覧会です。
スイス生まれのヴァロットン氏は、1865年から1925年
にパリで活躍された画家です。黒一色のその世界は独特の世界
観をもち、同時代に活躍されたロートレックや日本の浮世絵など
にも影響を受けたのは間違いないと思います。
今回の展示は、三菱一号館が映像なども導入し、ヴァロットンの
作品がデザイン性に富んでいるということと呼応するように展示
の方法も普段とはちがって、デザイン的というか個性的な展示を
されておりました。
掘り出された人間ドラマと書かれているように、描かれている男女
のシーンはなまめかしく、人間模様を想像させるような作品が多く
残っています。
もうひとつ、私が興味をもったのは、このヴァロットンの作品には
多くの画家やデザイナー、漫画家なども影響を受けているのでは
ないかということです。非常にデザイン的な作品をつくる彼の作品
を拝見していると、なぜか‘のらくろ’の漫画を思い出しました。
黒と白の世界にデザイン性とストーリーを感じさせるヴァロットン
の世界は、非常にインパクトが強く、昨年からこの展覧会には
いかなければとずっと思っておりました。
美術の世界は理屈ではなく、何か心にひっかかり気になるという事が
非常に重要で、私にとって全く知らなかった作家ではありますが、
今回、三菱一号館でご縁をいただき、これから色々とヴァロットンの
情報が入ってくるようになるのだと思います。
もしかすると、このように展覧会を拝見してコラムを書くことで、近い
将来、ヴァロットンの作品を購入する機会もでてくるかもしれません。
それが画商という仕事の面白いところであり、ご縁と知識が仕事に繋
がる楽しい世界だと思っています。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
今の美術業界を考える(その962)
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黒と白展 2022年1月28日
ヴァロットン 三菱一号館美術館 1月29日まで
画廊の隙間の時間を見つけて、最終日の近くに三菱一号館美術館
で開催しているヴァロットン展を拝見してまいりました。木版画
で、黒と白のポスターが気になっていて、必ず行こうと思っていた
展覧会です。
スイス生まれのヴァロットン氏は、1865年から1925年
にパリで活躍された画家です。黒一色のその世界は独特の世界
観をもち、同時代に活躍されたロートレックや日本の浮世絵など
にも影響を受けたのは間違いないと思います。
今回の展示は、三菱一号館が映像なども導入し、ヴァロットンの
作品がデザイン性に富んでいるということと呼応するように展示
の方法も普段とはちがって、デザイン的というか個性的な展示を
されておりました。
掘り出された人間ドラマと書かれているように、描かれている男女
のシーンはなまめかしく、人間模様を想像させるような作品が多く
残っています。
もうひとつ、私が興味をもったのは、このヴァロットンの作品には
多くの画家やデザイナー、漫画家なども影響を受けているのでは
ないかということです。非常にデザイン的な作品をつくる彼の作品
を拝見していると、なぜか‘のらくろ’の漫画を思い出しました。
黒と白の世界にデザイン性とストーリーを感じさせるヴァロットン
の世界は、非常にインパクトが強く、昨年からこの展覧会には
いかなければとずっと思っておりました。
美術の世界は理屈ではなく、何か心にひっかかり気になるという事が
非常に重要で、私にとって全く知らなかった作家ではありますが、
今回、三菱一号館でご縁をいただき、これから色々とヴァロットンの
情報が入ってくるようになるのだと思います。
もしかすると、このように展覧会を拝見してコラムを書くことで、近い
将来、ヴァロットンの作品を購入する機会もでてくるかもしれません。
それが画商という仕事の面白いところであり、ご縁と知識が仕事に繋
がる楽しい世界だと思っています。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
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03-3573-7075
2023年01月21日
「京都出張報告」
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今の美術業界を考える(その961)
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京都出張報告 2022年1月21日
先週、ロータリークラブのご縁で、京都清水ガストロノミーヴィ
レッジというイベントに参加してまいりました。もともと食べる
ことが大好きな私としては、京都で有名シェフのお料理が食べら
れるという事だけでも、行きたくなるわけですが、今回はその上
にアート的な要素も加え、ロータリークラブの仲間がやっている
西村兄弟キモノ店さんや、京都の清水焼朝日堂さんとのコラボ
レーションでした。
シェフは坂本健さんと、福山剛さんという素晴らしいイタリアンと
フレンチのシェフをお招きして、それぞれのお皿に合わせて朝日堂
さんがお皿を作るという凝りようでした。素晴らしいお皿とお料理
に感動いたしました。
ロータリークラブの仲間の着物の会でもありますから、東京から着物
を着てお伺いいたしました。40名限定のイベントでしたが、着物で
参加されている方の人数が少なくて、少し寂しく感じました。改めて、
日本で着物を着る人が少なくなっているのだな、、、という思いを
強くいたしました。
今回、とても勉強になったのは参加したテーブルにロータリーの
友人のお父様と同じ席にしていただいたことです。西村兄弟キモノ
店ておいう名前のとおり、お兄様が京都でお店をされていて、妹
さんが東京で着物店をしています。それを京都の呉服屋のお父様が
応援しているということで、お父様の言葉にぐっときました。
「私たちがバブルの時に、呉服商として商売させていただいた時の
努力が足りなかったために、子どもたちに苦労をさせている。自分
はどうなろうと、子ども二人が兄弟で着物屋をしていることを嬉し
く思っているし、彼らが苦労しているのは自分のせいだと思って
いる。彼らのやり方を尊重して、自分は応援したいと思っている。」
ということでした。今回、販売されている着物にはNFTを付けて
販売するという新しい試みを実施しており、そのNFTの作業も私の
所属するロータリークラブの仲間が実施しておりました。
古いものを伝えていくためには改革と革新が常に必要であり、それを
邪魔するのではなく応援する側にまわる存在が非常に貴重だと思いま
した。美術の世界でも、老害にならないよう、邪魔をするのではなく、
応援する側に立とうと改めて心に誓った京都出張でした。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
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03-3573-7075
今の美術業界を考える(その961)
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京都出張報告 2022年1月21日
先週、ロータリークラブのご縁で、京都清水ガストロノミーヴィ
レッジというイベントに参加してまいりました。もともと食べる
ことが大好きな私としては、京都で有名シェフのお料理が食べら
れるという事だけでも、行きたくなるわけですが、今回はその上
にアート的な要素も加え、ロータリークラブの仲間がやっている
西村兄弟キモノ店さんや、京都の清水焼朝日堂さんとのコラボ
レーションでした。
シェフは坂本健さんと、福山剛さんという素晴らしいイタリアンと
フレンチのシェフをお招きして、それぞれのお皿に合わせて朝日堂
さんがお皿を作るという凝りようでした。素晴らしいお皿とお料理
に感動いたしました。
ロータリークラブの仲間の着物の会でもありますから、東京から着物
を着てお伺いいたしました。40名限定のイベントでしたが、着物で
参加されている方の人数が少なくて、少し寂しく感じました。改めて、
日本で着物を着る人が少なくなっているのだな、、、という思いを
強くいたしました。
今回、とても勉強になったのは参加したテーブルにロータリーの
友人のお父様と同じ席にしていただいたことです。西村兄弟キモノ
店ておいう名前のとおり、お兄様が京都でお店をされていて、妹
さんが東京で着物店をしています。それを京都の呉服屋のお父様が
応援しているということで、お父様の言葉にぐっときました。
「私たちがバブルの時に、呉服商として商売させていただいた時の
努力が足りなかったために、子どもたちに苦労をさせている。自分
はどうなろうと、子ども二人が兄弟で着物屋をしていることを嬉し
く思っているし、彼らが苦労しているのは自分のせいだと思って
いる。彼らのやり方を尊重して、自分は応援したいと思っている。」
ということでした。今回、販売されている着物にはNFTを付けて
販売するという新しい試みを実施しており、そのNFTの作業も私の
所属するロータリークラブの仲間が実施しておりました。
古いものを伝えていくためには改革と革新が常に必要であり、それを
邪魔するのではなく応援する側にまわる存在が非常に貴重だと思いま
した。美術の世界でも、老害にならないよう、邪魔をするのではなく、
応援する側に立とうと改めて心に誓った京都出張でした。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
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