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2026年10月03日

「ルーブル美術館展ルネサンス」

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      今の美術業界を考える(その1155)


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ルーブル美術館展ルネサンス      2026年10月3日
国立新美術館               12月13日まで  

 雨の中に切符を購入するのに30分、入場するのに30分並んで
 拝見してまいりました。今回の展覧会はパリのルーブル美術館所蔵
 の作品の中でもルネサンス時期のものを中心に紹介する内容の
 展覧会でした。

 その中でも、メインはダビンチの‘美しきフェロニエール’という
 作品です。さすがに私は並びませんでしたが、この作品の正面から
 見るためだけに、さらに30分以上会場の中で並ばないといけない
 ような状況でしたので、斜めから拝見させていただきました。

 今回の展覧会はルネサンスを象徴する人であるレオナルド・ダ・
ヴィンチから導き出した4つのテーマ ——旅、技法の革新と洗練、
古代へのまなざし、肖像芸術の隆盛—— に基づいて、絵画から彫刻
、版画、素描、工芸まで、多彩な作品を紹介しています。

 ルネサンスといえば、15世紀から16世紀にかけて、人間の主体性
 がより重視された古代ギリシア・ローマの文化に再び価値を見出して
 います。

 旅というテーマにおいても、このルネサンス時期の王様たちは旅を
 しながら生活をされていました。しかし、この旅というものは伝染
 病の伝搬という副産物も生み出しています。

 そして技法の革新と洗練というテーマにおいては、新たに確立された
 活版印刷術が木版画の新たな流行をもたらしました。そして、各地
 で広まった版画は絵画や彫刻の複製に用いられるだけでなく、木版
 画とともに、自立した一つの芸術形式としてデューラーのような大
 作家を生み出すことにもなりました。

 古代へのまなざしのテーマでは文献だけでなく、建築や彫刻も学ぶ
 べき対象として、古代遺跡がのこるローマに多くの芸術家たちが旅
 をするようにもなりました。

 最後のテーマとして肖像芸術の隆盛では、この時期に流行した特徴と
 して、横顔が主流だった肖像画が「四分の三正面観」と呼ばれる、
 人物を画面に対して斜めに配置する肖像形式を発展させました。

 メインの作品となるダビンチの「美しきフェロニエール」は、その
 「四分の三正面観」で描かれており、ルネサンスの肖像画の代表作の
 一つと言っても過言ではないと思います。せっかくなので、展覧会
 の帰りに、今回はカタログではなく、この作品のTシャツを購入して
 みました。

 
        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
03-3573-7075

2026年09月26日

「水滸伝(東京ステーションギャラリー)」

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      今の美術業界を考える(その1154)


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水滸伝                2026年9月26日
東京ステーションギャラリー         11月8日まで

 東京駅にある美術館の東京ステーションギャラリーで開催している
 ‘水滸伝’を拝見してまいりました。 この企画展は中国の4大
 奇書の一つに数えられる武侠小説のひとつを題材にしたものです。
 北宋の時代に長い年月をかけて成立した内容で、この物語は色々な
 アレンジを加えながら、日本にも大きな影響を与えてきました。

 水滸伝の物語や絵柄は江戸時代の歌川国芳の出世作になったとも
 言われています。この展覧会の入り口には、水滸伝を題材にした
 歌川国芳の作品がたくさん並んでおり、見たことのあるような作品
 もたくさんありました。この江戸時代に国芳をはじめとして、水滸
 伝をモチーフに人体をキャンバスに多くの入れ墨をいれた人物が
 描かれたことから、江戸時代に入れ墨が多いに流行ったというのも
 面白い現象だと興味を持ちました。

 また江戸時代には、この水滸伝を範にとり、曲亭馬琴が「南総里見
 八犬伝」を書き下ろし、大ブームになっています。私も子どもの頃
 にNHKで人形浄瑠璃の南総里見八犬伝を拝見しており、影響を受けて
 いると思います。

 また、この作品から王義之の書も展示されておりましたし、北方
 謙三の書かれた小説から作成された連続ドラマ 水滸伝の衣装など
 も展示されておりました。

 また、日本のアニメで‘さいとう・たかを’の描かれた漫画の原画
 などもありましたし、白髪一雄の水滸伝からインスピレーションも
 もらって描かれた大作の展示もありました。

 長い時間をかけて、多くの芸術家や小説家も含めてインスピレーシ
 ョンを与え続けている水滸伝は今も、これからも多くの芸術家や
 表現者の方々が、この作品を題材に作品を作り続けるのだと思いま
 す。 それだけ、多くの方が腐敗した世の中を、正義の心を持った
 人たちが立ち上がり、世の中を変えていこうというストーリーは
 普遍的な題材であり、強い男の人や、義理人情を大切にするという
 考え方が人間の本来そなわった価値観なのだと思いました。


       
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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2026年09月19日

「秋の名品展2026」

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      今の美術業界を考える(その1153)


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秋の名品展2026           2026年9月19日
              於 銀座柳画廊 9月23日まで

銀座柳画廊では秋の名品展を開催しています。このシルバーウイ
―クも無休で23日まで開催しています。この展覧会は好評で
すでに何年も継続した開催となっています。

今回はウジェーヌ・ブーダンの油彩画が展覧会の始まる前に、いら
したお客様が購入され、展覧会会期中は陳列させていただくことを
了承して販売させていただきました。

また、島村信之先生がお亡くなりになられて丸2年がたった所でも
ありますので、コツコツと買い集めた作品を版画とともに
一部屋にまとめてご紹介させていただきました。新聞にも掲載した
ため、電話で見もしないで注文を下さるお客様もいらっしゃいました。

この展覧会は売ることも大切ですが、買取強化の目的もあって実施
しております。展覧会に来られた方が、自分の持っている同じ作家
の作品の値段をみて、自分の持っている作品を売りたいと申し出て
くださるお客様もいらっしゃいます。

画廊の仕事は売るだけでなく、買う事も大切な仕事です。絵描きさん
のアトリエから作品をお預かりするだけでなく、市場で購入すること
もありますし、以前、販売したお客様からお預かりして販売すること
もあります。

それとは別に、このような名品展をやっていると自分の持っている
作品を査定して欲しいと言われることも出てきます。

絵の値段というのは、ある意味で生き物ですから市場価格を参考に
買取やお預かりをしています。画家の先生の場合は、発表価格という
ものがあって、作家の先生と相談の上で市場でいくらで売るかを
決めますから、その値段がすぐに変わることはありません。
今回のような名品展での作品は、ほとんどがセカンダリーマーケット
の作品(いわゆる有名な作品)になりますので、絵画の値段を知る
良い機会にもなるかもしれません。

ただし、デパートや他の画廊でもそうだと思いますが、それなりに高額
な作品はお問合せ下さいとなっておりますので、遠慮なくお値段を
お聞きいただければと思います。
        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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2026年09月12日

「奥村土牛」

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      今の美術業界を考える(その1152)


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奥村土牛               2026年9月12日
開館60周年記念特別展2  於 山種美術館 10月4日まで

山種美術館の奥村土牛展を拝見してまいりました。今年、開館60
年を迎える特別展示ということだそうです。何しろ、山種美術館
は土牛コレクション135点を所蔵の美術館ですので、所蔵作品
で企画展を実施するという意味でも特別記念展なのだと思います。

作品集も大変立派なもので、改めて山種美術館と奥村土牛との結び
つきを感じさせるものとなっています。親子3代にわたり、奥村
土牛先生とのおつきあいがあるだけでなく、創立者である種二さん
と土牛先生とのやりとりが紹介されており、心温まるエピソード
が多く書かれています。

改めて、創立者の種二さんが言われていた「絵は人柄である」という
言葉に感動いたしました。私も全くそのとおりと感じていて、
最近の奇をてらったような作品など、人をばかにしたような作品が
評価されていく現代の風潮と私は少しずれているのかもしれません。

商売という意味において、時流には逆らえない所があり、商売人で
ある画商としては、今売れるものも扱わなければいけない事は骨身
にしみておりますが、株の世界で戦っておられた山崎種二さんと
土牛との温かい交流は心温まるものとして受け止めています。

今回の土牛の作品の中で、私が特に感銘を受けたのは、「鳴門」
という作品です。今、画集を拝見しながらこのコラムを書いており
ますが、やはり実物を拝見した時の感動は、画集では得られない
臨場感が作品には表現されておりました。

特に、8月の終わりに瀬戸内海の本物の渦を拝見したばかりですの
で、この「渦」にたいする何とも言えない感情を見事に表現されて
いらっしゃると、しばらくは作品の前で棒立ちになってしまいました。

私は30歳まで絵とは、関わりのない生活を送っておりましたが、
じっくりと美術館で絵画を味わうようになり、絵の前で動けなくなる
経験を何度かしています。

この「鳴門」という作品も、その貴重な経験をさせていただいた1点
となりました。

        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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2026年09月05日

「イーロン・マスク」

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      今の美術業界を考える(その1151)


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イーロン・マスク            2026年9月5日
ウォルター・アイザックソン著 井口耕二 訳    文芸春秋 

まだ55歳という世界的な有名人の傍に2年間、影のようについて
周り、この本を書き上げたという分厚い著書を2冊拝読いたしました。
そもそも、インタビューした先も、本人の父親、母親、兄弟、従兄
からはじまり、社員や取引先など、辞めた社員も含めて別れた妻や
秘書、敵と思われる方にも取材されています。会議にも同席し、
電子メールや各種書類も拝読されたとのことです。

何より驚くのは、イーロン・マスク本人がこの書著が刊行される前
に内容を全くチェックしていないということにも驚きました。

ですので、この本から得られるイーロン・マスクは、あくまでも
著書であるウォルター・アイザックソンという方の主観が入って
おり、私が感じたのは、イーロンの取材を通して、イーロンの
ファンになった方だとも思いました。

しかし、この文章を読む限りにおいては、イーロンマスクという世界
で最も影響力のある大金持ちは、私利私欲よりも世界の発展に1ミリ
でも貢献しようとして、本気で自分が生きている間に人類を火星に
送り届けることをミッションとして感じている人なのだということは
真実なのだろうと思いました。

また多動症というか自分も認めるアスペルガー障害の生きずらさを
ビジネスの上で強みに変えた方でもあり、高度成長期の時期に働いて
いた父親を持つ私からすると、昔の日本人はスペースXやテスラの
ような働き方をしており、エコノミックアニマルと呼ばれていました。

ですから、業績を伸ばす会社はイーロンのようにエコノミックアニ
マルのように働く集団であることは今も変わらないのではないかと
感じてしまいました。今の日本を含む先進国ではそれが難しいから
こそ、差別化されているのだと感じました。
女性関係に関しても、色々と問題というか変わった趣味を持たれて
おりますが、こちらは私には関係のないことですので、読み飛ばし
ました。宇宙とAIに対する関心は、私も大いに共感する部分があり、
AIが高度に発達することで人類を滅ぼすのではないかという恐怖に
対して、イーロンはAIとともに成長するニューラリンクという会社
を設立して、人間の脳に直接チップを内蔵して、考えるだけで、AI
とコミュニケーションをとり情報をやりとりすることを実行されて
います。

地球と人類の未来に対してコミットされているイーロンマスクの今後
は、私にとって目を離すことが出来ない一人となりました。
  

        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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2026年08月29日

「ニューヨークの藤田嗣治」

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      今の美術業界を考える(その1150)


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ニューヨークの藤田嗣治      2026年8月29日
軽井沢安東美術館       2027年1月11日まで 

軽井沢の安東美術館で開催しているニューヨークの藤田嗣治という
企画展示を拝見してきました。こちらの美術館は藤田嗣治を中心に
作品展示をする美術館で、非常に珍しい美術館だと思います。

そもそも一人の作家に絞って企画展示をしようとすると、企画を
考えるのが非常に難しいにもかかわらず、この美術館では次々と
興味深い展示を拝見させてもらっています。

その中でも、今回の‘ニューヨークの藤田嗣治’は私にとって、
とても勉強になり刺激的なものでした。私の大好きな安東美術館
所蔵の‘猫の教室’1949年作 の作品も、このニューヨーク
時代に描かれたものです。

藤田嗣治は戦争画を描いたことで、その後、日本の画壇との距離を
感じて戦後はパリに戻ることを決意するものの、敗戦国となった
日本からはなかなか渡航がかなわなかったようです。そうした中で
言葉が出来たことから戦後、GHQの関係者との通訳などをした事
から帰国したGHQ関係者からのオファーでニューヨークの美術学校で
絵を教える非常勤講師のような職を得て、ニューヨークに渡ります。

そのニューヨーク滞在中の1949年11月にマシアス・コモール
画廊にてニューヨーク滞在中の作品を発表され、大成功をおさめて
います。その時に描かれたのが、動物を擬人化したシリーズである
‘猫の教室’やポーラ美術館所蔵の‘ラ・フォンテーヌ頌’などが
あります。この2点が同時に展示されるのは、実にポール・ペトリ
デス画廊での個展以来、76年ぶりとのことです。

10ケ月のニューヨーク滞在を経て、パリに戻った藤田は有名な話
ですが日本には二度と戻ることはありませんでした。時代に翻弄され
ながら、世界で活躍された藤田嗣治氏の人生は日本人のスケールを
大きく超えたものだと思います。

私の個人的な感想としては、語学にたいする柔軟性もあると思います。
外国語だけでなく、日本語もあまりしゃべらない日本人絵描きが多い
中で、日本語と英語だけでなくフランス語も操ることのできた藤田は
大きなアドバンテージがあったと思います。

勿論、その理由のひとつにフランス人女性との結婚もあげられると思
います。郷に入れば郷に従えという言葉通り、藤田嗣治の生き方その
ものが、芸術や哲学を語るのに充分に値するものなのだと思います。
  

 
        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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2026年08月22日

「瀧口修造」

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      今の美術業界を考える(その1149)


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瀧口修造               2026年8月22日
書くことと描くこと
アルチゾンミュージアム      2026年10月4日まで 

アルチゾンミュージアムで瀧口修造の作品展示をやっているという
ことでしたので、拝見してまいりました。私にとって、瀧口修造
という方は美術評論家で、年々か前にBunkamura Museum でミロ展
をされたときに、やりとりの書簡を拝見して、面白い方だな、、、
と思っておりました。

この方は小林秀雄さんとも、同人「山繭」を通じてご縁があり
文章を通じてシュルレアリスムを日本に紹介した方でもあります。
小林秀雄さんも、日本に印象派を紹介した方として有名ですが、
この瀧口修造氏もシュルレアリスムをはじめとして、ダダイズム
やアンドレ・ブルトンなど、多くの海外の芸術家を日本に紹介
された方でもあります。

そういう方が描いた作品163点をアルチゾン・ミュージアムが
所蔵されているというので、拝見してまいりました。予想した
とおり、抽象絵画であり、サブタイトルに「書くことと、描くこと」
とあるように、言葉ではない人に伝える方法として描くことを
実行されたのだと思いました。

ご本人は1920年代にシュルレアリスムの影響のもとに詩作を
はじめ、1930年代から戦後にかけて、ポール・セザンヌから
同時代に至る美術についての施策と著述を重ねていく瀧口は「書く」
ことが中心でした。
その瀧口が1960年代に入ると、本人が「デッサン」と称する
造形作品の制作を始められ、今までは私も含めて、瀧口修造氏の
「書く」仕事を中心に拝見したものを、「描く」仕事を初めて
拝見する機会となりました。

抽象絵画でもありますので、評価はまだまだこれからですが、何
しろ今までは殆ど人の目に触れることの少なかったものですから、
あれだけの思想を持たれた方の作品にどのような評価が加わって
いくのか楽しみでもあります。

個人的には多くの人の影響を感じ取れる作品となっておりますが、
評価に関してはこれからも若い方々の反応を楽しみに、市場で
どのように評価されていくのかを期待したいと思っています。

  

 
        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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2026年08月15日

「高島野十郎展」

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      今の美術業界を考える(その1148)


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高島野十郎展             2026年8月15日
渋谷区立松濤美術館         2026年9月6日まで   

 渋谷区立松涛美術館に高島野十郎展を拝見しにいって参りました。
 この展覧会は今年の6月に大阪で拝見しようと思っていたところ、
 飛行機の時間の都合で伺えず、残念に思っておりました。作家の
 ことはあまりしらず、ただポスターで蝋燭の絵が気になって、
 行きたいな、、、、と思っていて、よく作家のことも知らない
 まま拝見してまいりました。

 行ってみて、拝見して想像以上の内容で圧巻でした。絵だけでなく、
 この高島野十郎という方の人生そのものにも、興味を持ちました。
 作品からは、明治の方かな??? と思っておりましたが、それは
 その通りで、作品の質といい、生き方といい、芸術家らしい生き方
 をされた方なのだと改めて思いました。

 私のような仕事をしていると、絵の力だけで作品が残るのは難しい
 と思っています。それを伝える方がいて、初めてその作品の良さ
 が伝わるのだと思います。

 この高島野十郎さんも、この時代の絵描きの御多分にもれず、裕福
 な家の5男として生まれ、生涯独身で過ごされました。人づきあい
 が悪いとも言われたようですが、そんなことはなく、多くない親しい
 方々と長く親密なお付き合いをされています。所謂、画壇という
 所に所属せず、絵描きではなく自分と感性の合う方とお付き合いを
 されていたようです。

 特に、私の気になっていた蝋燭の作品はオークションデータで調べ
 ると、サムホールの小さな作品でも2000万円以上で落札されて
 いて驚きました。風景画などでは8号から10号くらいで200〜
 400万円くらいですので、無名とは言えない作家であることが
 わかりました。

 ただ、私が知らなかっただけという無知をこちらのコラムで報告して
 いるような形になりましたが、良いものは良いのだと嬉しくなりまし
 た。また、この蝋燭という作品は生前に販売したこともないそうで、
 野十郎さんが、この人にと思った方に差し上げていらっしゃったよう
 です。

 没後50年ということですが、多くの明治、大正、昭和を生き抜いた
 作家の相場が没落していく中で、画壇ではおおくの活動をされてこな
 かった野十郎氏が、こうやってスポットライトを浴びていることに
 日本の美術界の奥深さを感じています。
        
                       文責  野呂洋子
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2026年08月08日

「カフェに集う芸術家」

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      今の美術業界を考える(その1147)


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カフェに集う芸術家           2026年8月8日
印象派からゴッホ、ロートレック、ピカソまで
三菱一号館美術館         2026年9月23日まで   

 三菱一号館美術館に行って参りました。都心の銀座の近くにある
 美術館なので、近くて助かります。またこの日は偶然に梅田画廊
 の社長にも会場でお会いして、皆さん勉強しているんだな、、、、
 と思いました。

 この展覧会は、エコール・ド・パリと言われたパリのサロンである
 カフェにスポットライトをあてて展示をされています。というのも
 19世紀半ば以降、パリにはカフェやキャバレーが次々と誕生
 しました。そして、その場所は単に飲食を供する場所ではなくて、
 芸術家たちの交流場所であり文化の発信地として機能していたの
 です。

 若きモネやルノワールたちが、マネを慕ってモンマルトル周辺の
 カフェ・ゲルボワに集まり、その繋がりから印象派が生まれたこと
 は良く知られています。
 「パリの頭脳」とも称され芸術性を売りにしたキャバレー「シャ・
 ノワール(黒猫)」では、画家リヴィエールによる洗練された影絵
 芝居が人気を博しました。ゴッホと同じ画塾で学んだトゥールーズ
 =ロートレックはカフェ・コンセール(ディヴァン・ジャポネ)や
 キャバレー(ル・ミルリトン)の常連となり、出演ダンサーや歌い
 手たちを次々と描き、一世を風靡いたしました。

 今回の展覧会は三菱一号館が所蔵するトゥールーズ・ロートレック
 の作品と、印象派を中心とするコレクションを持つ ひろしま美術館
 の作品群で行う特別展です。

 パリのカフェ文化から生まれた芸術家たちを追うことで、その当時の
 時代背景や、エコール・ド・パリといわしめたパリの様子を絵画や
 ポスターを通じて知ることが出来る展覧会です。
 私たちの馴染み深い作品も多く拝見することができ、今はもうなく
 なってしまった古き良きパリを思い起こすことができると思います。

 パリに憧れた多くの日本人も、この時代のパリに憧れていたのだと
 思います。
 
        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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2026年08月01日

「藤田嗣治パリを歩く」

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      今の美術業界を考える(その1146)


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藤田嗣治パリを歩く           2026年8月1日
清水敏男 著                   東京書籍

 藤田嗣治の取引のご縁から、清水敏男さんという藤田嗣治の研究者
 のご紹介を頂き、ご著書を拝読させていただきました。
 藤田嗣治に関する本は何冊か読んでおりますが、この本は今まで
 読んだ本の中でも秀逸でした。

 清水さんは直接、藤田嗣治とお会いしたことはないようですが、今
 は亡き、最後の奥様の君代夫人とはやりとりされており、藤田の
 足跡を丁寧に追われた内容となっています。

 この本自体が、2021年に刊行されたものですし、本の内容も
 清水氏が藤田の足跡を追ってパリを歩きながら回想されたものと
 なっておりますが、若い頃からの藤田の研究のエッセンスが随所
 に現れており、深い考察の上で、藤田の目で見たパリを丁寧に
 描いています。

 また、藤田が亡くなられたのがスイスのチューリッヒの病院なの
 ですが、そこに対する考察も藤田のパトロンのご縁であることを
 初めて知りました。

 銀座柳画廊で扱っている多くの日本人画家もパリに住んだり、パリ
 の風景に影響された方が多くいらっしゃいます。そして、言葉には
 いたしませんが、彼らの中には藤田嗣治に対するライバル心のよう
 なものを少なからず持っていることを感じます。

 エコールドパリと言われた、世界中の画家を魅了し引き寄せたパリ
 という街で画家として成功するということが、当時では世界で成功
 するという意味と同義語だったことがよくわかります。

 現代におきかえると、そのパリという街の魅力がかなり薄れてしま
 い、ニューヨークが芸術の都になっているように感じますが、それも
 商業的な芸術であり、私にとっても古き良きパリを今でも残して
 いるのはギャルリーためながさんだけではないかとひそかに感じて
 います。

 芸術の世界も覇権が西洋から東洋に移ると言われている中で、藤田
 嗣治はまさしく、その架け橋となる芸術家の一人だと思います。
 
        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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