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2023年09月30日

「くらま会・カラス組」

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       今の美術業界を考える(その998)

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くらま会・カラス組         2023年9月30日
                     
くらま会のカラス組に久しぶりに参加してまいりました。コロナ
で2年中止になり、昨年度はハンドボールの仕事で参加できず、
3年ぶりに新橋演舞場の舞台に立ちました。

久しぶりの銀座の仲間との出場でしたが、コロナの時に増やした
ハンドボールの仕事や、趣味の俳句など色々と増やしてしまった
ために、‘練習の時間が殆どとれず皆様にご迷惑をおかけして
しまったと思っています。

こういう舞台というものは、練習とお稽古が9割です。当日に
演舞場の裏方にいくと、大舞台の方など多くの方がせわしなく
働いてくれていて、改めて世の中というのは多くの人に支えられて
輝く舞台があるのだと実感させてもらいました。

また、来年は100周年ということで華やかにやりたいとの事です
が、やはり何があるかわからないと思ってしまうのも、コロナの
影響なのかもしれません。日常が一瞬にして失われてしまう儚さを
私たちは体験しています。

それと同時に、くらま会が出来るという喜びも味わうことができま
した。当たり前だと思っていたことが、当たり前ではないという事
を知ることで、日々の何気ない生活に感謝するようにもなりました。

からす組に所属させていただいて10年の月日が流れ、それを切っ掛
けに三味線と長唄をならうようにもなりました。日頃、邦楽になれ
親しむことが、カラス組でもお役にたつだろうと思ったからです。
今回、新曲浦島を唄わせていただきましたが、節まわりなど、耳に
なれたものなどがあり、邦楽になじんでいてよかったと心から思い
ました。

銀座の仲間とのご縁も非常にありがたく、当日の打ち上げでは人数
制限もあり、多くの友人をお誘いできなかったのですが、改めて、
共通の友人が多いことを実感し、久しぶりの友人や、お会いしたかっ
た方にもお会いすることが出来ました。

周りの方や、支えてくれる方に感謝しつつ、日々、精進していこうと
思いました。これからも、人生をエンジョイしていこうと思います。

                        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
                       03-3573-7075
 

2023年09月23日

「銀座の画廊巡り」

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       今の美術業界を考える(その997)

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銀座の画廊巡り            2023年9月23日
                     
2009年から実施している銀座の画廊巡りですが、今年で14年
になります。あわせてはじめた、泰明小学校の画廊巡りも同じく
14年です。

泰明小学校の学校説明会では、画廊の特色として校長先生が‘銀座
の画廊巡り‘をご紹介してくださるようにもなっています。
嬉しいことではありますが、私の問題意識としては、それでもまだ
‘銀座の画廊は入りずらい’と言われることです。

私のやっている活動は、ほそぼそとしたものですし、なかなか多くの
方にリーチするものでもありません。途中コロナもあって、画廊巡り
を実施をしていたものの、人数を制限したりしており、今でも、
なんとなく4名まででの開催となっています。

しかしながら、こういう活動は続けることが非常に大切だと思って
います。続けることで、新しく出会った方にも楽しんでいただく、
きっかけにもなりますし、リピーターの方も多くいらっしゃいます。

先日も、ゴルフで知り合った方に‘画廊にいらっしゃいませんか’
とお誘いすると、‘自分たちはこれから高齢者となって、仕事も
セーブするようになり終活を考えているので、高額商品の購入は
控えています。それでも宜しければ伺います‘とわざわざお断り
される方がいらっしゃいました。

日本人らしい、真面目な方だと思いましたが、それだけ画廊という
場所は高額商品を買わされる場所だと思われているのだと思いました。
また、過去にそういう画廊もあったのだろうということも、想像に
固くないのですが、そういうことも全て含めて、もっと画廊という
場所が多くの方の身近な場所になってほしいと心から思っています。

年をとって、感じるのは芸術とスポーツは生活の必需品であるにも
かかわらず、多くの方が距離感をもって接しているということです。
私は縁あって、スポーツはハンドボールやゴルフ、芸術は絵画をはじめ
として、三味線や俳句など色々と楽しんでいます。それらは、私の生活を
潤してくれており、精神と身体の健康に貢献してくれています。


                        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2023年09月16日

「野呂好彦60歳誕生日」

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       今の美術業界を考える(その996)

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 野呂好彦60歳誕生日         2023年9月16日
              
 全くのプライベートですが、本日は銀座柳画廊の社長の野呂好彦
 の60歳のお誕生日です。いわゆる、還暦になりますが、今まで
 何事もなく夫婦も会社もそれなりに円満にやってきたことに対して
 心から多くのご縁のある皆様に感謝しています。

 私たちが子どもの頃は60歳というとおじいさんというイメージ
 でしたが、今の60歳は人にもよりますが、まだまだこれからと
 いうように感じています。私も殆ど、年は変わりませんので、自分
 の実感からいうと、こんなに未熟なまま年だけとってしまうのか
 というのが正直いった実感です。

 子どもの頃に感じていた60歳と、実際に自分が60歳になって
 感じる60歳とは全く違うものだというものだと思います。
 社会的には、もうリタイアを意識する年齢ですし、余命という意味
 でも死に近づいているのは事実です。最近では、お葬式で友人に
 会うことも増えました。

 しかし、年を取るという事は悪いことばかりでもなく、多くの経験
 を積むことで、少しおりこうさんになる部分もあるかと思っています。
 何しろ、無理をしない。自分の分をわきまえる。未来に対しては、
 自分の興味のある部分を中心に関わっていこうとする知恵が働くよう
 になっています。

 子育てに関しても、ひと段落する年齢です。子どもが社会人になった
 時には、‘あ〜もう学費を払わなくて良いのだ’という達成感のような
 ものも感じました。そして、お弁当づくりや、朝を起こすことなど、
 親としての日々の雑事も無くなると、少し寂しい気持ちもいたしました。
 

 還暦になった野呂好彦さんは、これからどのような人生を歩んでいかれる
 のでしょうか? 仕事もプライベートもパートナーである私としては、
 改めて、彼と向き合うことになるのだと思っています。仕事も一緒、ゴル
 フも一緒、旅行やプライベートも一緒ですので、もう少しお互いの
 別々の時間も必要なのではないかと思っています。

 夫婦といえども、お互いに自立して、それぞれに成長することで、
 互いに認め合い、仲良くしていくことができるのだと思っています。
                        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2023年09月09日

「生誕120年 小磯良平とその周辺展」

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       今の美術業界を考える(その995)

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 生誕120年 小磯良平とその周辺展   2023年9月9日
               於 銀座柳画廊 9月30日まで
                         期間中無休
                    
 明日の9月10日の朝の日経新聞の朝刊に広告をうち、明日から
 9月30日まで無休で銀座柳画廊において、生誕120年 小磯
 良平とその周辺展を開催いたします。

 小磯良平先生と銀座柳画廊は深い縁があり、社長のお父様が小磯
 良平鑑定委員会の委員長を長いこと勤めていたことや、社長の母親
 や妹さんも小磯先生のモデルを務められております。

 というのも、祖父の代から小磯先生とは梅田画廊とのお付き合いが
 あり、そこで育った銀座柳画廊の社長にとって、小磯良平先生は
 子どもの頃から身近な存在だったと伺っています。

 私にとって、小磯良平先生は雲の上の存在の方で、絵画を通して
 しかお付き合いはありませんし、小磯先生を知った時には既に、
 鬼籍に入られておりますし、近代洋画の大作家として認識をして
 おります。

 しかし、それも長い時間がたち、近代日本の洋画が徐々に展覧会
 でも取り上げられなくなり、現代アートが非常に盛り上がっている
 今の時代は、多くの方がびっくりするほど、近代美術の評価は
 下がってしまっていると感じています。

 銀座で商売をさせてもらっている銀座柳画廊は、銀座という町自体
 が近代日本を象徴する町でもあることから、近代洋画の作家の先生
 を応援したいという気持ちを強く持っています。さらに、社長の出
 自でもある梅田画廊で大いに活躍されていた作家の先生ですので、
 生誕120年の節目に何かしたいという気持ちです。

 ささやかではありますが、小磯良平先生を覚えてくださっている方々
 が新聞広告や、このコラムを見て、銀座柳画廊に足を運んでいただけ
 れば良いなと思っています。

 画廊にいることが少ない私ですが、この展覧会期間中はなるべく画廊に
 いる時間を多くとって、来られたお客様と小磯先生のお話をすることが
 出来たら楽しいだろうと今からわくわくしています。

 皆様のお越しをお待ちしています。

                        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2023年09月02日

「荒川修作とマドリン・ギンズ」

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       今の美術業界を考える(その994)

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荒川修作 + マドリン・ギンズ     2023年9月2日
                     セゾン現代美術館
               
今年の夏も、セゾン現代美術館にいってまいりました。暑い東京
から離れて、軽井沢の千ヶ滝にあるこの美術館はお庭もとても素敵
で、年に一度の展示替えというのも潔くて大好きです。

今回の企画は常設に加えて、荒川修作とマドリン・ギンズによる
意味のメカニズム、という展覧会でした。荒川修作氏は1936年に
名古屋で生まれ、1961年にニューヨークに渡ります。
マルセルデュシャンをはじめとする、多くのアーティストとの交流
の中から詩人であるマドリン・ギンズとパートナーとなります。
 
彼女と荒川修作が取り組んだテーマが‘意味とは何か’という問題
を荒川が作品を通して、マドリン・ギンズは言葉を通して追及します。
 
私たちは常に何かを感じ・考えておりますが、その多くは‘言葉’を通
した‘意味’についてです。この二人は、この意味については徹底的
に研究された結果が、この展示された‘意味のメカニズム’という
ものでした。

2007年に、この美術館のオーナーである故・堤清二氏はニューヨ
ークで二人にお会いされています。25年かけて、二人が完成させた
このプロジェクトが‘意味のメカニズム’なのだそうです。

作品は81点の大型平面と、44点のドローイング、写真と模型を加
えて総数127点にも及ぶ大プロジェクトです。

改めて、現代アートはコンセプトに意味があり、それを支えるパトロン
がいて、さらにはそれを鑑賞する場を提供されることで、作品として
命が吹き込まれるのだと思いました。

既に荒川修作氏は鬼籍に入っておられ、応援されていた堤清二氏も今、
この世にはおりませんが、彼らの活動を私たちは、セゾン美術館で拝見
することができるわけです。

かなり哲学的な内容で、今、拝見しても理解することは難しいと感じて
しまいますが、大自然の軽井沢でゆったりとした気持ちでこれらの作品
と向き合うと、少しわかったような気持ちになるから不思議です。

美術品と向き合う時は、心にゆとりが必要なのだと実感したひと時で
した。


                        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2023年08月26日

「ひろしま美術館」

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       今の美術業界を考える(その993)

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 ひろしま美術館            2023年8月26日
               
 20年以上前から、ひろしま美術館に行きたい行きたいと思って
 おり、やっと念願かなって伺うことが出来ました。
 それもハンドボールのおかげで、パリオリンピックアジア予選を
 広島で開催することになり、何度か往復する中で、隙間の時間を
 みつけて拝見してまいりました。

 雨の中、伺いましたが、予想以上の内容でとても嬉しく感じてい
 ます。とくにチケットにもなっているフィンセント・ゴッホの
 「ドービニーの庭」は色も鮮やかで、ロサンゼルスのゲッティー
 美術館にあったものと比肩する内容でした。

 この美術館をたてられた母体となるひろしま銀行の方は、原爆を
 落とされたこの地の人々に心の復興を成し遂げたいと、ひろしま
 銀行100周年の記念事業として地域への貢献を目指して建設さ
 れたと伺っています。その思いは、東京からきた私にも強く感じ
 るものでしたし、改めて、ひろしまという場所が日本の製造業の
 中心地であり、そのためアメリカが最も破壊したい場所だった
 ことを理解しています。

 印象派を中心とする西洋絵画は、バブルとバブルの崩壊を経て、
 価格はうなぎのぼりになっている状況で、資産価値としても購入
 当時の軽く10倍以上にはなっています。かたや、日本の近代
 美術はというと、日本の経済と同じかそれ以下の状況で、10分
 の1かそれ以下という惨状です。

 画商としては、色々なことを‘ひろしま美術館’から感じるわけ
 ですが、ひろしまという地にこの美術館があることの重要性を強く
 感じています。設立者の思いも含めて、心の復興と、幸せという
 ものは数字で表しづらく、外からはわかりづらいということです。

 美術の仕事をしていて、日本でとくに強く感じるのは現代アート
 と過去の美術品とのつながりです。韓国も日本と近い感性があり、
 新しいものがより良いもので、古いものは捨ててしまえという価値観
 です。日本では、捨ててしまえとまではなりませんが、価格的な価値
 が新しいものより低くなることは事実です。

 欧米では、古いものの価値をより高く評価するノウハウがありますが、
 日本の古いものは、伝統芸能も含めて、その価値を高める努力が少ない
 ように感じています。

 あらためて、ひろしま美術館にきて、美術品の価値を高めていくことが
 私たち美術商に課せられた使命なのだと自覚いたしました。

                        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2023年08月19日

「軽井沢安東美術館」

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       今の美術業界を考える(その992)

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軽井沢安東美術館           2023年8月19日
               
 軽井沢の大賀ホールの目の前に藤田嗣治だけの美術館として設立
 された東美術館に行ってまいりました。

 藤田嗣治だけの美術館ということで、収集されてきた安東ご夫妻は
 ご自宅の壁を長年、藤田の絵で癒されてきたことから、美術館に
 こられるお客様にも、自宅にいるようなくつろいだ気持ちで藤田
 の作品を楽しんでほしいとのことです。

 また、今年の夏の期間には、藤田の描いた戦争画も陳列されている
 ということで拝見してまいりました。藤田嗣治という人物は、非常に
 興味深い人物で、エコールドパリと言われる時代に、パリに最も
 愛された日本人画家として有名です。当時はピカソよりも評価は高く、
 時代の寵児として戦前のパリで成功した数少ない日本人画家の一人
 です。

 その藤田嗣治の父親は軍医として非常に厳格な方であったと藤田は
 告白しておりますが、実は藤田嗣治の父親の軍医としての上司は
 森鴎外というご縁もあり、藤田嗣治の父親が息子が画家になりたいと
 言っていると上司に相談した時に、森鴎外も小説家として軍医を
 辞めるべきかどうかと悩んでいた時期と重なり、大いに励まされた
 と言われています。

 そのこともあり、藤田の父親は藤田嗣治の画業を応援するだけでなく、
 息子の藤田を一人前の画家として尊敬していたようです。また、戦争画
 を描くきっかけも、当然、父親の影響も大きかったと思いますが、藤田
 嗣治は陸軍美術協会理事長に就任して、戦地を訪問するなどして、
 多くの戦争画を手掛けています。また、言葉も英語とフランス語が
 喋れることから終戦後にはマッカーサーとも面談している写真が残って
 います。

 戦後ニューヨーク経由で1949年に渡仏してから、二度と日本に戻る
 ことなく1968年に亡くなられています。軍医の父親をもち、戦争に
 大きな影響を受けた藤田嗣治ですが、芸術家としての人生を全うし、最後
 まで創造的な活動を続けておりました。父親を尊敬し、父親に認められる
 事を誇りとしながらも、最後は敵国であったフランスという国の国籍を取得
 し、フランス人の芸術家として亡くなった藤田嗣治の心境は、自分の芸術を
 認めて評価してくれる国が自分の居場所であることを物語っているのだと
 思います。

                        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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2023年08月12日

「植物と歩く」

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       今の美術業界を考える(その991)

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植物と歩く              2023年8月12日
             練馬区立美術館  8月25日まで
               
NHKの朝ドラ、らんまん を拝見しており、すごい人がいるものだ
と感心してみておりました。そのような時に、画廊にふらりと、
銀座柳画廊で取り扱っております有田巧先生がいらっしゃいました。
東京の八王子の奥の方に住んでいらっしゃるので、「何か東京で
面白い展覧会でもやっているのですか?」 とお伺いすると、「
練馬区立美術館に行ってきた」とおっしゃるので、「企画内容は
どのようなものですか?」と聞きました。その時に、有田先生が
「NHKの朝ドラでやっている牧野冨太郎の標本画の原本と植物標本
を見に行ってきたんだよ。」とのことでしたので、私もすぐに
行こうと決心いたしました。

練馬区立美術館は、なかなか渋い美術館で、学芸員の見識の高さが
伺われるというか、個人的な私の趣味とあう内容の企画をされてい
ます。よくいえば、通好みの美術館だと思っています。

練馬区立美術館で牧野富太郎関連の展覧会をするということは、この
地に牧野富太郎が晩年30年ほど住んでいたという事に由来していま
す。

テレビドラマに出ている通り、牧野富太郎が石版画で出版された「
大日本植物誌」は学術的な内容はもちろんのことですが、あたかも
植物画の版画集のようで、素晴らしい植物画がそこにはありました。
以前、三菱一号館美術館で岩崎家の足跡を辿る展覧会をされた時にも
感じたのですが、当時の日本人の見識の高さ。学問に対する情熱。
世界を知って、日本を世界にしらしめたいという熱意が伝わり、そ
れが、今回もですが高知の方だったということに感銘しています。

私の推測ですが、ジョン万次郎という方は日本に帰国した後、高知に
いらっしゃったと伺っておりますし、ジョン万次郎に触れた方たちが
大いに世界に目を向けたのではないかと思います。また、高知という
土地と時代が世界に目を向ける日本人を生み出したのだと思います。
植物に一生をかけた仕事を拝見しに、練馬区立美術館に足を運ぶことを
おすすめします。そこには、植物学者としてだけではなく、確かな目で
植物を書き上げた、画家としての牧野富太郎にも出会えると思います。

改めて、才能というものは情熱によって育てられるもので、天は2物も
3物も人に与えるものだと思います。
 

                        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
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2023年08月05日

「ディヴィッド・ホックニー展」

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       今の美術業界を考える(その990)

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 デイヴィッド・ホックニー展      2023年8月5日
           東京都現代美術館  11月5日まで
               
 東京都現代美術館で開催されているディビッド・ホックニー展を
 拝見してまいりました。驚いたことに、まだ現存作家ということで
 新作もあったことに感動いたしました。昨年、東京国立近代美術館
 で開催されたゲルハルト・リヒター展でも現存作家ということで
 驚きましたが、今回の大作家であるディヴィッド・ホックニーも
 現存であることに驚くとともに、日本で展覧会が出来ることに、
 日本も文化国家の一員になってきたように感じて、とても嬉しく
 思います。

 銀座柳画廊では 創業間もないころに、デイヴィッド・ホックニー
 の代表作ともいえるホテル・アカトランの版画を扱ったことがあり、
 とても誇らしく感じています。30年近くまえに、既に大作家で
 あったデイヴィッド・ホックニーが今も現存で活躍されている事に
 大きな感動を覚えています。

 80歳を過ぎた作家でありながら、表現する内容は一貫するものが
 ありますが、その媒体はiPadを使った映像作品もあり、さらに巨大な
 作品の戸外作品も発表されておりました。その創作意欲というか、
 チャレンジ精神には心から尊敬いたします。

 先月にマチス展を拝見したときにも、年老いて大きな病気をしても
 尚、新しい芸術表現にチャレンジされる生き方に感銘を受けましたが、
 同じような感動を、ディヴィッド・ホックニーからも感じます。

 偉大な芸術家というのは、年老いて身体が衰弱していっても尚、
 精神的な向上心が強く、芸術に対しての向上心を失わないことが
 共通しているのだと確信いたしました。

 デイヴィッド・ホックニーにおいても、晩年になり旺盛な創作活動
 と、作品の表現において挑戦的な試みを実施されていることが画面
 から伝わってくることに感動しています。

 美術の仕事をしていて実感するのは、死ぬまでが仕事であり、最後
 の最後まで、死の間際まで自分をあきらめない姿勢が大切である事を
 教わっています。歳をとることは、できないこと、衰えることが多い
 中で、芸術家という生き方は、最後まで人間は成長することが出来る
 ことを教えてくれるだけに、非常に厳しい仕事でもあることを実感
 させてもらっています。
 

                        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
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2023年07月29日

「今泉篤男と美術」

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       今の美術業界を考える(その988)

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今泉篤男と美術            2023年7月29日
            米沢市上杉博物館  8月20日まで
               
 山形県の米沢市にある上杉博物館に行ってまいりました。目的は
 銀座柳画廊を立ち上げた時から応援している島村達彦先生の作品
 を拝見するためです。

 2004年にお亡くなりになられて、その後、2008年に銀座
 柳画廊で追悼展を実施させていただいております。その後、もう
 一度、展覧会をさせていただいておりますが、銀座柳画廊としては
 多くの方に忘れられないように、もう一度、島村達彦先生の奥様
 がご存命の間に展覧会をしたいと思っています。

 ご遺族の方の意向というのは、著作権者でもありますし、無視する
 わけにはいきません。奥様が歳をとられ、展覧会に対して躊躇されて
 いるために、時々お電話などをさせていただき様子をお伺いさせて
 いただいております。

 奥様からすると、島村先生の作品はわが子も同然です。さらに、今泉
 篤男氏は、近代美術を世の中に広めた偉大な美術評論家であり、島村
 先生からすると、自分の画業を世の中に広めてくれた恩人でもあるわけ
 です。今泉篤男氏は美術業界に大きな影響を与えた美術評論家であり、
 初代国立近代美術館館長、初代京都近代美術館館長、そして文化勲章
 の選考委員も務められ、美術評論家協会を創立された、日本の近代
 美術の発展に大きな役割を果たされた方です。

 島村達彦先生は、よく生前に今泉先生のお話をされておりました。
 今泉先生の晩年には一緒に生活もされていたようです。その中で、
 今泉先生の人との付き合い方なども学ばれたようです。また、今泉
 先生も、団体展に所属していない島村先生を山口薫氏に紹介し、島村
 先生は画業に関して、山口薫先生に教わることもあったようです。

 そのような深い関係のある今泉先生の生前の仕事を紹介する展覧会を
 山形の米沢市上杉博物館で実施されておりましたので、実際に伺い
 島村先生の奥様にもご報告させていただきました。

 この展覧会には島村先生の奥様も写真の提供や資料の提供などで多大
 な協力者として名前を連ねておりました。奥様としては、敬愛する
 ご主人様の展覧会を銀座柳画廊で実施することに対し、非常に慎重な
 考えをお持ちです。社長を筆頭に私たちも、島村達彦先生に対する
 尊敬の念は強く、こつこつと市場に島村先生の作品が出品されると
 長年にわたり買い集めております。

 亡くなられた作家の展覧会を実施するには、新しい作品が出てまいり
 ませんので、コレクターからまとめて買い取るなり、市場からこつこ
 つ買い集めなければ展覧会は実施できません。

 これからも粘り強く、奥様とコミュニケーションをとりながら、近い
 うちに島村達彦先生の追悼展が実施できるように頑張ります。
 

                        
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075
 


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