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2016年05月07日発行
柳画廊

『近代洋画』

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        今の美術業界を考える(その630)

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近代洋画                 2016年5月7日
 
今年の軽井沢に入るときに、軽井沢の近くの場所でしたので
 事前にお客様にお断りをして母親と娘を連れて近代洋画の作品を
納品をさせて頂きました。

 伊藤清永先生の作品を納めてきたのですが、今では業界の人以外は
 ほとんど忘れられた作家になってきているのは非常に残念です。
 そのお客様は先代からコレクションをされていらっしゃるので目が
 肥えていらっしゃいます。伊藤清永先生は、ルノワールに影響を受け、
 日展の理事長も務められ、文化勲章もとられた30年前の日本のトップ
 の洋画家です。それが、たかが30年という時間の経過で値段も大きく
 下がり、知名度も大きく低くなっていることに洋画商の一人として
 努力不足を痛感しています。

 しかし、絵画の力というのは金額だけではかることができないことを
 お客様のお宅に納品させていただいて、その空間に収めた時に改めて
 再確認させていただきました。一流の絵画には、空間の空気を変える
 力を持っています。画廊という空間で、同じ絵画を拝見するのと、
 お客様のお宅にお持ちして、作品をかけた時に、空気が劇的に変化する
 のを拝見するのは画商冥利につきると感じています。

 とくに今回は娘も一緒でしたので、その現場を娘も同じように感じて
 くれて、一枚の絵が空間の空気を変える現場を同じように感じてくれた
 ようです。さらに、そのお客様のリビングには平野遼の作品が掛かって
 おりました。私がたまたま、その作家を存じていたのが嬉しかったようで、
 それ程、近代洋画の作家の知名度というのが落ちているのが非常に残念
 に感じられました。

 今の美術業界は、現代アートと古美術が美術専門雑誌にはよく取り上げられる
 こともあって、近代美術にスポットがあたりませんが、改めて近代美術の力を
 お客様から教えて頂く機会を頂いたと思っています。社員教育も含めまして、
 次世代に日本の近代絵画について、もう一度、丁寧に伝えていかなければいけ
 ないと感じています。そのためには、展覧会も含めまして近代作家の紹介を
 銀座柳画廊は積極的にしていこうと思っています。生きている現代の作家は
 必ず近代作家の影響を受けているのも事実です。その文脈も併せて紹介できる
 画廊になりたいと思っています。

                                     文責  野呂洋子



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