メールマガジン/ブログ - 最新情報

2022年09月10日発行
柳画廊

『夜行』

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

       今の美術業界を考える(その943)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
夜行                 2022年9月10日
              森見登美彦 著   小学館文庫
                      
 先日、初めてふらりと画廊に来られたお客様が、この本の中に
 柳画廊という名前が度々でてくるので、やってきましたと言われ
 ました。ベストセラー作家でありながら、恥ずかしくも森見登美彦
さんという著者を存じ上げておらず、今回、この「夜行」という
書籍を楽しく拝読させていただきました。

 確かに、この本では京都の柳画廊という画廊が要所要所にでてきて
おり、話の展開の中では岸田道生という銅版画家の「夜行」という
作品を中心にストーリーが進められています。

 話のテンポが良く、描写も挿絵などは全くない文字だけで、非常に
 美しい情景をイメージさせてくれる著書で、非常に楽しく拝読いたし
 ました。ファンタジー系のSFといった本で、読後感としては、
 恐ろしいというよりは、不思議の国に連れて行ってもらったような
 感覚が残ります。

 画廊に来られた方は、この本の大ファンらしく「聖地巡りです」
 とおっしゃっていたようです。もともと画廊という場所は入り
 ずらい場所とも言われておりますが、このような本を読むと、
 ますますミステリアスな場所のような気がします。しかし、それで
 足を運んでくださるわけですから、著書の森見さんには感謝です。

 普段、私の読む本は非常に乱読ではありますが、実用書だったり、
 ビジネス書だったり、その時のベストセラーだったりと、乱読
 ではありますが、久しぶりに空想の世界に連れて行ってくれる本
 を読んだように思います。32万部も売れるというのも、わかる気が
 します。

 本も重要な芸術です。文字を通して、作家の世界観を作り上げて
 ファンを囲い込むことができます。絵画の場合は、ある意味、一瞬
 ではありますが、小説の場合は最後まで読ませるスキルが必要かと
 思います。この「夜行」も一気に読むことが出来、その不思議な世界
 を頭の中で体験するのは非常に知的好奇心をくすぐられるものでした。

 この森見登美彦さんの描かれる小説の世界は、独特のものがあり、
 どうやら柳画廊は他の本にも出てくるようです。この方の絵画に対する
 興味や見方も学ぶところがあり、他の著書も読んで、森見さんの世界の
 理解を深めようと思っています。

                         
                      文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
03-3573-7075