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2023年01月14日発行
柳画廊

『西洋アートのビジネス史』

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       今の美術業界を考える(その960)

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 西洋アートのビジネス史        2022年1月14日
            高橋芳郎 著     DeiscoverBP

 社長が兄のように慕っている画商さんの一人で翠波画廊の高橋
 芳郎さんが書かれた著書です。非常によく勉強されている画商さん
 で、一匹オオカミ的な所もありますが、とにかく本をたくさん
 読まれている方ですので、知識が豊富でお話が楽しい方です。

 今までにも何冊か本を書かれておられますが、今回の本は私に
 とって、とても勉強になりました。タイトルにもなっております
 が、西洋アートのビジネス史とある通り、西洋美術史の中で、
 高橋さんの、この著書を拝読すると何故、日本の美術が西洋美術の
 文脈にのりづらく、価格という面においてもワールドワイドに
 通用しないのかが、クリアに理解できました。

 村上隆さんが書かれた「芸術企業論」でも、西洋美術の文脈にのら
 なければ美術品の価格が世界に通用することは難しいことを説明
 されておりましたが、高橋さんは画商の立場から書かれておりました
 ので、私には非常にわかりやすく、すんなりと頭の中に入っていき
 ました。

 高橋さんの主張に大きく共感しているのは、芸術の側面には「審美
 的価値」と「社会的価値」と「経済的価値」の3つがあり、それらが
 相互に作用しあって芸術としての価値が形成されているというもの
 です。

 ビジネスマンは経済的価値ばかりを見ようとしますし、老舗の画廊や
 日本の画壇と言われる方々は審美的価値ばかりを評価しています。
 歴史や社会へのインパクトも含む社会的価値は長坂真護さんのように
 ガーナのごみ問題をアートの力で解決するという主張に、彼の作品に
 経済的価値を生み出す新たな手法も出てまいりました。

 色々なことを考えさせてくれる良い機会となりました。画商という
 仕事は、店によって全く違うビジネスをしていることを改めて考え
 させられました。高橋さんのおっしゃるように、バランスをとることの
 大切さと、自分は画商という仕事を通じて、社会に何を残していくのか
 言葉で説明できることが、これからの画廊が生き残るうえで非常に重要
 であることを改めて学ばせていただきました。

 美術の深淵な世界にご興味のある方は、美術史も含めて非常に勉強になる
 1冊だと思います。
  
  
 
                         
                      文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075