2024年08月31日発行
柳画廊
『府中市美術館・吉田遠志展』
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今の美術業界を考える(その1047)
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府中市美術館 2024年8月31日
吉田遠志展 9月6日まで
恒例として、私の両親の多磨霊園のお墓参りの後に、府中市美術館
にいってまいりました。作家は、吉田博の息子であり、父親から
油彩画を学んでいます。
2021年に上野の東京都美術館にて吉田博展を拝見していて、その
時の感動をまだ覚えていたので、その方の息子さんの展覧会をするのは
流石、府中市美術館だと思っておりました。
絵画というのは作者の生きざまが作品に表現され、にじみ出てくる
ものだと思っております。吉田博も晩年に木版画に取り組まれ、数多く
の名品を残されておりますが、息子さんの吉田遠志さんも、木版画の
技法を取得されて1970年代にはアフリカへ渡り、野生動物などを
題材とした作品を多数制作されています。
私が非常に感銘を受けたのは、吉田遠志さんの次の言葉です。
「食物連鎖と共存共栄 肉食動物と草食動物のバランスが問題で、これ
が自然界の法則である。私がわかりいいことばでいえば「共存共栄」と
いうことである。両方がいるから両方ともやっていける。適度に栄え
ていられる。共存共栄という言葉の方が、弱肉強食より野生動物の世界
の説明より適切である。強いから食べているんじゃない。弱いから食わ
れるのでなく、弱いかもしれないけれども、それはそれで生存する必然性
を備えているから、そこにいる。だから(野生動物は弱肉強食の世界)
という表現は正確ではなく、説明にもなっていない。」
素晴らしい言葉ではないでしょうか? まさしく今の時代に必要な考え
方であり、自然界は微妙なバランスを取りながら共存共栄をしており、
今の人間は、その自然界のバランスを崩しているのではないかと感じて
います。画家というのは、独特の感性で世の中の真実を自分なりに咀嚼
して表現しているのです。
吉田遠志さんの、みてきたアフリカの大自然での微妙なバランスは、今の
世界に必要とされる大切なメッセージが込められていて、亡くなられて約
30年たった今、彼の見てきた世界、彼の伝えたかった世界観が、現代に
生きる私達に、大切なことを教えてくれているのだと思います。
府中市美術館は都心から離れた美術館ではありますが、図書館も非常に
充実されていて、カフェのランチも美味しく、展覧会も知的刺激を大いに
うける内容のものが多く、休日にゆっくり過ごすにはお勧めです。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075
今の美術業界を考える(その1047)
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府中市美術館 2024年8月31日
吉田遠志展 9月6日まで
恒例として、私の両親の多磨霊園のお墓参りの後に、府中市美術館
にいってまいりました。作家は、吉田博の息子であり、父親から
油彩画を学んでいます。
2021年に上野の東京都美術館にて吉田博展を拝見していて、その
時の感動をまだ覚えていたので、その方の息子さんの展覧会をするのは
流石、府中市美術館だと思っておりました。
絵画というのは作者の生きざまが作品に表現され、にじみ出てくる
ものだと思っております。吉田博も晩年に木版画に取り組まれ、数多く
の名品を残されておりますが、息子さんの吉田遠志さんも、木版画の
技法を取得されて1970年代にはアフリカへ渡り、野生動物などを
題材とした作品を多数制作されています。
私が非常に感銘を受けたのは、吉田遠志さんの次の言葉です。
「食物連鎖と共存共栄 肉食動物と草食動物のバランスが問題で、これ
が自然界の法則である。私がわかりいいことばでいえば「共存共栄」と
いうことである。両方がいるから両方ともやっていける。適度に栄え
ていられる。共存共栄という言葉の方が、弱肉強食より野生動物の世界
の説明より適切である。強いから食べているんじゃない。弱いから食わ
れるのでなく、弱いかもしれないけれども、それはそれで生存する必然性
を備えているから、そこにいる。だから(野生動物は弱肉強食の世界)
という表現は正確ではなく、説明にもなっていない。」
素晴らしい言葉ではないでしょうか? まさしく今の時代に必要な考え
方であり、自然界は微妙なバランスを取りながら共存共栄をしており、
今の人間は、その自然界のバランスを崩しているのではないかと感じて
います。画家というのは、独特の感性で世の中の真実を自分なりに咀嚼
して表現しているのです。
吉田遠志さんの、みてきたアフリカの大自然での微妙なバランスは、今の
世界に必要とされる大切なメッセージが込められていて、亡くなられて約
30年たった今、彼の見てきた世界、彼の伝えたかった世界観が、現代に
生きる私達に、大切なことを教えてくれているのだと思います。
府中市美術館は都心から離れた美術館ではありますが、図書館も非常に
充実されていて、カフェのランチも美味しく、展覧会も知的刺激を大いに
うける内容のものが多く、休日にゆっくり過ごすにはお勧めです。
文責 野呂洋子
銀座柳画廊
http://www.yanagi.com
03-3573-7075