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2024年11月30日発行
柳画廊

『イタリア田中の響きー田中昇展』

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       今の美術業界を考える(その1060)

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イタリアの響きー田中昇展      2024年11月30日
執行草舟コレクション 戸嶋靖昌記念館

 額賀真理子さんにお誘いを受けまして、半蔵門にある戸嶋靖昌記念
 館で開催されている田中昇展を拝見してまいりました。こちらの
 展示会場は株式会社日本生物科学という執行草舟社長が個人的に
 集められた作品を会社のワンフロアを使って紹介する場所となって
 おります。完全アポイントメント制でして、額賀真理子さんが
 アポイントをとってくださってご案内してくださいました。

 この田中昇さんの作品は額賀さんが長年所有されていた作品を執行
 社長が引き受けられ、今回展示をされているとのことです。
 執行草舟社長は、もともと全く無名の戸嶋靖昌画伯と出会い、応援
 し、その残された作品の保管・維持・展示をされています。
 戸嶋靖昌氏はただの無名作家なのではなく、本人の主義主張として
 若い頃から評価されていたにも関わらず、自分を貫き通した孤高の
 画家というのが実態です。

 今回はその、戸嶋靖昌画伯と田中昇画伯の2人展のようなものでした。
 お二人とも存じ上げない作家でしたが、実際に作品を目の前にすると
 圧倒的な存在感に驚きました。画商として感じたのは、本物の画家で
 ありますが、商売するのは難しいという事でした。

 誤解を恐れずに言うと、佐伯祐三や鴨井玲がやろうとした仕事の先を
 いっている画家ですが、時代の先に行き過ぎて、作品も深すぎて、
 簡単に理解するのは難しい作品なのだと思います。色合いも暗く、
 人づきあいも難しく、今回のような機会がなければ出会う事もなかっ
 た画家だと思います。

 田中昇さんの作品も、戸嶋さんの作品も、拝見させていただいて、
 出会ってしまったというのが正直いった感想です。また理解を深める
 ために、執行草舟さんの「憂国の芸術」という書籍も拝読させて
 いただき、その内容の奥深さにさらに感銘を受けました。ご本人が
 武士道が好きとおっしゃる通り、気骨のある日本人男性という印象
 を受けました。執行社長のコレクションというのは自分の信念を
 通じて、自分の価値観とあう芸術家を支援するという姿勢を貫かれ
 ており、金額的な評価ではなく、自分の思想と共鳴する作品をコレ
 クションしていくという姿勢に感銘を受けています。

 画家の評価はコレクターが決めると常々思っておりますが、まさしく
 執行草舟社長はそれを体現されているコレクターなのだと思います。

 この展覧会は11月30日まで、また戸嶋靖昌画伯の作品は常に拝見
 できるようになっています。

 
 
 
              
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075