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2024年12月14日発行
柳画廊

『トプカプ宮殿博物館』

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       今の美術業界を考える(その1062)

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トプカプ宮殿博物館          2024年12月14日
出光美術館 名宝の競演     2024年12月25日まで

 出光美術館がビルの立替計画に伴う休館を予定しているため、
 この展覧会が休館前の最後の展覧会ということで、足を運んで
 拝見させていただきました。再開の時期や、休館中の活動は
 未定とのことです。

 さて、今回の展覧会は日本とトルコ共和国が外交関係を樹立して
 100周年を迎えた本年に、トプカプ宮殿博物館に所蔵される
 至宝、ならびにトルコ・イスラーム美術博物館の名品、そして
 出光美術館所蔵の中国・日本陶磁やトルコ陶器を紹介する展覧会
 となっています。

 改めて、日本とトルコの友好の歴史は古く、今回の展覧会には彬子
 女王も展覧会のご紹介文を寄稿されておられました。日本の皇族の
 方が積極的に文化外交をされることは素晴らしいことで、彬子女王
 はそのお役目を専門知識をもって引き受けていらっしゃる事は、いち
 美術商として、とても嬉しく思っています。

 さて、長く繁栄をつづけられたオスマン帝国の君主が居住されていた
 トプカプ宮殿ですが、地理的にも東洋と西洋の中間地点でもあり、
 シルクロードを通じて、西洋と東洋の文化が出会う場所としても
 長年大きな意味を持っていたと感じています。

 その中で、中国の陶磁器や日本の古伊万里などの所蔵も多く、類似
 した作品をトプカプ宮殿と出光美術館が所蔵しており、それらを
 対比させながら作品を拝見することができるのは、とても勉強に
 なりました。あらためて、ヨーロッパに日本の古伊万里が輸出され
 ていることを実感できましたし、中国の景徳鎮の作品も世界中から
 愛されて、日本でもヨーロッパでも収集家に所蔵されている事を
 拝見させてもらいました。

 また、中国や日本の陶磁器に影響を受けて、トルコのタイルや陶器
 が制作されていることも当時の作品から感じることができました。
 ヨーロッパの影響とアジアの影響を両方強く受けているという事
 なのだと思います。

 歴史というものは権力者によっていくらでも書き換えられる
 ものですが、美術品という作品は嘘をつくことができず、当時の
 状況をそのまま今の私達に伝えてくれる真実の証言者だと思って
 います。

 今回の展覧会はトルコと日本の権力者が同じものを愛でてきた証を
 拝見するものであり、固い文化交流の絆を再認識するものになっている
 と思います。しばらく、休館とのことですので、12月25日まで
 多くの方が足を運ばれることを願っています。

 
              
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
03-3573-7075