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2024年12月21日発行
柳画廊

『完売作家』

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       今の美術業界を考える(その1063)

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完売作家              2024年12月21日
            中島健太著  CCCメディアハウス

 先日、クリスマスアートフェスタのパーティでコレクターの方から
 この本をご紹介されて拝読させていただきました。
 中島健太さんは、永善堂画廊さんで9年ほど前に拝見させて頂き
 ました。そのころから、完売作家として名前をとどろかせており、
 ご活躍を拝見しておりました。

 今回、著書を拝読させていただいて色々と思うことがありました。
 私としては、一番、好感を持ったのは元々バスケットやアメフト
 のキャプテンをされるほどのアスリートだったということです。
 私自身も高校時代までアスリートでしたので、若い頃に運動を
 真剣にされた方は、どの分野に進まれてもそれなりの結果を出す
 可能性があると信じています。というのは、身体を追い込む経験
 は若い頃でないとできませんし、その時につけた体力と集中力は
 どんな仕事をする上でも非常に役に立つと実感しているからです。

 あと、ご自分に正直なところも好感が持てました。女性にモテたい 
 とか、絵を売るために色々な事を考えているということを言葉に
 して伝える勇気も若いからこそと思いました。美大の時に、売れる
 絵を描くことはパン画といって、教授陣から揶揄されたという
 くだりがありましたが、私の母親も絵の世界を目指していて、よく
 パン画という言葉を出しておりました。

 芸術を志すためには清貧でなければいけないという価値観は今の
 現代社会では通用しないのは明らかです。それどころか、中島さん
 を含む、若い世代の考え方は美術業界に限らず、どの業界においても
 すでに常識が違うのではないでしょうか?

 大切なことは、美術業界が発展することが一番重要なことであって、
 自分の主義を通すことではないと思っています。もちろん、私も
 それなりに、この業界に長く携わっており、画商という立場でこの
 著書を拝読すると、違和感を感じる部分は多くあります。
 しかし若い作家が自分の頭で考えて、行動して、少しでも美術業界を
 よくしていくために行動することは、褒めることであっても批判をし
 てはいけないと思っています。

 社会というのは、行動しなければ結果はついてきません。中島健太
 さんは、自分の作品は海外向きではなく、日本国内向きだということも
 冷静に分析されていらっしゃいます。

 自分のことを知り、チャレンジを続ける姿勢を見習いたいと思います。

 
 
              
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075