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2026年04月04日発行
柳画廊

『大西茂 写真と絵画』

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      今の美術業界を考える(その1129)

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大西茂 写真と絵画           2026年4月4日
              東京ステーションギャラリー            
 
 先週末、展覧会の最後の日に東京駅にあるステーションギャラリー
 で開催していた「大西茂 写真と絵画」展を拝見してまいりまし
 た。

 私がこの作家に興味を抱いたのは、もともとこの方は数学者で
 位相数学(トポロジー)を学ばれていて、その学問を応用した
 独自の方法論で写真と絵画による表現を探求された方だからです。

 日本における芸術家のイメージは、いわゆる文系的なロジカル
 思考と真逆な方が多いという印象ですが、実際に芸術の世界を
 見渡してみると、ピアノなどの音楽は明らかに数学的ですし、
 カンディンスキーの絵画なども、数学的な要素を絵画から感じ
 とることができます。日本にも感性に訴える芸術だけでなく、
 理性や論理性に訴える芸術を追求する人がいるに違いないと個人
 的に思って、探していたところ、この方に出会ったという印象です。

 まだ、作品を初めて拝見して、カタログを購入して読み込んでいる
 ところなので、彼がやろうとしていた仕事の全容を私は把握しきれ
 ておりません。また、数学の理論を写真や絵画で表現しようと
 すると抽象絵画になるのは当然だと思っています。
 
 まただからこそ、日本の市場において理論を抽象絵画から読み解く
 という作業を好んでされる方がまだまだ少ないのが実情なのだと
 私は理解しています。数学から出発した芸術活動は、私の想像通り
 カメラという機械を通して、その技術と自分の思想をどのように
 融合させるかという試みを作品の上で展開しています。
 位相学というと、難しそうに聞こえますが、形の本質を研究する
 数学です。一言でいうと、壊さずに変形できるなら同じ形といえる
 というものです。たとえば穴が一つという意味で、ドーナッツと
 浮き輪は同じと考えるということです。

 そうした考えから表現をしていくと、カメラから絵画に移行するのは
 表現の自由度をあげるために、当然の帰結なのだと思います。

 さらに発展して考えていくと、もし大西茂が現代も生きていたとしたら
 このAIが発達した時代において、彼の考え方は非常に進歩的であり、
 これから生きていく私たちの社会にたくさんのヒントが作品の中に隠さ
 れていると私は思います。これから大西茂について、研究を深めたいと
 思っています。良い機会を与えていただいた東京ステーションギャラ
 リーに感謝したいと思っています。

 
         
                       文責  野呂洋子
                       銀座柳画廊
                       http://www.yanagi.com
           03-3573-7075