S T U D I O T & Y

創業41周年を迎えた老舗のシルバージュエリーブランド。

カテゴリ: 村田高詩


*だいぶ間が空いてしまいましたが…3/10投稿の北海道編からの続きです。



国鉄を辞め、生まれ育った北海道を出て、布団と画材とわずかな衣類だけを背負い汽車で上京した父。

国鉄時代に貯める筈だったお金は結局貯まらなかった。貯金はほとんどない。

先ずは、一足早く上京していた知人のアパートに転がり込んだ。

札幌のデッサン教室で知り合った翼夫(ヨクヲ)さんは桜ヶ丘に六畳一間の部屋を借りていた。

六畳一間。

ヨクヲさんもよく転がりこませてくれたものだと思う。

ヨクヲさんはマネキン会社「七彩」の試験採用中だった。遅れて上京した父は、自らもこの試験採用に無理矢理潜り込んだ。

(*七彩=今年で創業73年を迎える老舗かマネキンメーカー。初代社長の向井良吉氏は彫刻家でもあった。)

試験採用期間は半年。

マネキン会社で働きながら、日々画廊を回った。

ときわ画廊、田村画廊、シロタ画廊、ルナミ画廊、南画廊、東京画廊、南天子画廊、村松画廊、荻窪画廊

60年以上経った今でも父の口からは当時の画廊の名前が次々と出てくる。

その大半は、今はもうない。

村松画廊で父は、のちに世界的な現代美術家として活躍する真板雅文さんに出会う。

下駄履きに風呂敷というこ汚い格好で画廊巡りをする父を真板さんは面白がり、何かと面倒を見てくださったと言う。


七彩での半年の試用期間はあっという間に終わり、父とヨクヲさんは不採用となった。

「油粘土でマネキンの試作やらされたんだけど、筋肉質で不細工なのが出来てなこりゃダメだと思ったよ。金内は道連れでクビになったようなもんだな」

と父は笑った。

六畳一間に押しかけられた上に道連れにクビになるとはヨクヲさんもとんだ災難である


七彩をクビになった後、父とヨクヲさんは横浜港で沖仲仕(おきなかし)をして食いつないだ。

沖仲仕とは

港に着いた貨物船からの荷下ろしや荷揚げをする人のこと。朝、指定された集合場所に行くと、手配師が居て、必要な人数だけトラックに乗せられて現場に運ばれる、要は日雇い労働者である。


船は、憧れの国の匂いを運んできた。

ゴミ箱に捨てられたカチカチになったフランスパン。麻袋からこぼれたカカオ豆やコーヒー豆。


沖仲仕の日は沢山ポケットのついた服を着て行って、床にこぼれた豆やカチカチのパンをポケットいっぱいに詰めて帰った。



住込みの新聞配達もして、個展を開く為の資金を貯めた。

一年間かけて貯めた個展資金を持って、父はある画廊に予約申し込みに行った。

その日受付にいたのは、武蔵美を出たばかりの笹山由美子(後の母)だった。

持って来たお金を払おうとしたが、見つからない。

部屋に置き忘れたのか、と思い寮に戻って探したが見つからなかった。

その日の夕方から同僚が消え、それきり帰って来なかった。


一年間の蓄えを全て失った父は、友人知人から借金をしてなんとか個展の申し込みをした。

村田高詩22歳、笹山由美子21歳。

そんな風にして二人は出会った。

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【北口店通信】


RSW01-TYCH ¥10,800税込

商品紹介記事作成の度に注視―観察―発見をしています。

T&Yのスイングリングは三種類あって全てにTYアローでおなじみのチャーム(TYCH)がセットされているのですが支店に置いてあるのが、僕、というか男性には試着出来ない小ささ(8号)だったので詳しくみてませんでした。

ふと、小指なら嵌まるな…‥とつけてみたら――立体造形センスに強い既視感と愛着を覚えます。

この「人間の三次元空間認識力の限界」に挑戦しているような複雑な面のとり方(どこがどことつながっているかぐるっと回してみても僕の認識力では頭の中で再構成できません)、その複雑さを最小のパラメタで描くような滑らかな線。

これは「T&Yのデザインといったらこれ」と僕に刷り込まれているBGEG01の要素ではないですか。複雑に割った面を融合させて表面全てを曲面に構成しなおしたのがBGEG01だともわかります。

これは。これはイーグルなの?それとも曲線の美しさを突き詰めたらイーグルの抽象へと収斂したの?

「シンプル」を複雑に組み合わせたその組み合わせを選択するセンスが生み出す象形の流麗さがT&Yデザインの最大の特徴の一つであることは間違いないのですが、ここまでの普遍さに到達しているとまでは思ってませんでした。

この指輪が実際イーグルを表しているかどうかは重要ではありません。朋未さんに確認してみることもあえてしませんでした。村田高詩の持つ美がイーグルの高度な抽象化と一致したのだという解釈が可能なくらいの極みが指輪という――それもこういってはなんですがそこまでメインではない――アイテムの一つに結晶している、ただそれだけなのです。

 村田高詩の曲線に特徴があることはなんとなく気がついていました。それらの「なんとなく」な特徴が、RSW01を手に持ち感覚することで高い次元で支店にディスプレイされる作品群に浮かび上がってみえるようになりました。まるで異なる周波数分離フィルタを与えられた様に(「緑」しか認識できなった人が青と赤の色が見えるようになった等)今ではカウンター越しにケースのアイテムに目を向けるだけでも、曲線が浮かび上がってみえるのです。

映画「マトリックス」終盤で主人公が覚醒することで視覚情報=世界の「意味」を理解するというシーンがあります。かたや世界、かたや一デザイナ作品群と規模こそ大きく異なりますが世界は世界、僕の身に起こった事もそれと同一です。 「なんか難しい様に書いてるけど、単に作家性がやっと少しわかったって事でしょ」。 その通り。その興奮を高揚感をそのまま文にぶつけてみました。半年後に読み返して「恥ずかしい!死にたい!」とのたうちまわる自分がまざまざとまぶたに浮かびますが、構わぬ殺せ。冷静になったらこの感覚は二度と文章化出来ないため、思いついたことの垂れ流しの記事とさせて頂きます。

リングの形状がイーグル、又はイーグルと共通のシェイプの延長にあるとすればパーツを取り付ける穴が開いているのは「くちばし・頭部」にあたると言えます。この穴を他のスイングリングRSW02,03と同じ向きにすれば丸カン一つだけを間に挟む事でTYチャームを他二種と同じ様に正対させる事が出来た筈です。RSW01ではわざわざ丸カン二つを繋げ穴の捩れを解消しています(丸カンを偶数個使うか、直に取り付けない限りチャームは90度捩れてしまう)。「くちばし部」のデザインが先にありきな事がわかります。

このRSW01ほど角度を変えるごとに様々の表情を見せ高いレイヤーでメッセージを伝えてくる指輪は今まで紹介したものにはありません。同時にこののちに既存のアイテムを再観察すればさらなる発見があるのではと期待もします。

僕みたいに偏執的に深読みするもよし、ひたすらに表面の美しさを楽しむもよし。指輪というカテゴリに留まらず40thイーグルバングルと同じくT&Yを象徴する作品と言える存在です。

それで結局試着写真は無いのかって?あります。続きにご期待あれ。


photo & text by shige-kun


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「唐草、彫っていく時に迷いが出ちゃう時があるんですよね…」と哲。

「そういう迷いは、そのまま出しちゃった方がいいんだよ」と、父。


ああ、「つくる」って、そうだなあ…と、私。


photo & text by Tomomi 

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店頭にディスプレイしていた村田高詩セットアップ(SUTM048)のトップを、お客様のご要望でひと回り小さいサイズに替えて作ったもの。

珍しい白のホワイトハートの中でも更に希少な円筒型のものを使っています。

すりガラスのような白と赤、そしてターコイズ。

これからの季節に映える色合いです。


NC03/NEGS01 ビーズセットアップ

¥27,432-税込



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1月半ばにインフルエンザに罹ってからしばらく外出を控えていた父。

昨日は年明け初の出勤日となりました。

純金×純銀唐草トップを見ながらカンカンガクガク。

「#村田高詩history がなかなか好評ですよ」

と言うと、「へえ〜…」と不思議そうに、しかし満更でもない様子でした。

唐草談義のあとは、高詩青年の上京後の話を聴きました。

ここからがかなり激動で、面白く、当時の空気を追体験しているような気持ちになり。

ともかく道のりはまだまだ長そうです。


photo & text by Tomomi 

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