書籍「反骨の絵師 歌川国芳」を読了したのでとりあえず。

  • author: su_da_chi
  • 2008年02月12日

反骨の絵師歌川国芳 (1972年)

書籍「反骨の絵師 歌川国芳」飯沢匡・著 筑摩書房・刊を読了。
上のamazonリンクに出てますが、これは1972年発刊の本。
最近「侠風むすめ」「あだ惚れ」の国芳一門シリーズを読んでいるので、その参考資料にならないかな?と思って古本で買った本です。
国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ (小学館文庫 か 4-2 国芳一門浮世絵草紙)

あだ惚れ (小学館文庫 か 4-3 国芳一門浮世絵草紙 2)


結論から言うと、そんなには参考にならなかったかもしれません(^^;;;
実はタイトルだけで買ったもので、中身を勝手に学術書っぽいものかと思ってたのですが、実際は「天保の戯絵」という戯曲(この本の大部分を占めます)、「屏風の裏」と題された屏風の裏に描かれた大胆な春画文化についてのエッセイ、「反骨の絵師・国芳」と題された3本の国芳にまつわる事柄を考察したエッセイで構成されている。

戯曲も面白かったんですが、エッセイ部分が私の期待していたものだったことと、実際にそちらが読み応えがあって面白かったので、こちらからとりあげる。
本全体の1/3に満たないボリュームではありますが...。

そもそも著者の飯沢匡氏自体をよく知らんかったのですが、伊沢修二氏の甥っ子になるんですね、どうでも良い事実かもしらんですが...。
後編のエッセイで語っていらっしゃいますが、自らも武家の家の出身でありながら、武士視点からの江戸時代考証から脱却して、この天保時代の浮世絵文化を、春画も含めて捉えなおすべきだ、という考え方が、何かとても説得力がある。
国芳の風景画が過小評価されているのは、外国人による分析によるものであって、そういう外国人からしか評価されないのはおかしい、もっと浮世絵についての研究を深めるべき、という意見に非常に納得。ただ、これも1970年代の話なので、今はもうちょっと評価されているのではないかと思っているんだけれど、どうなんだろう??
あと、春画に関しても、1970年代当時は、けしからんポルノグラフィであって研究対象ではない、という感じに、戦中の風紀を経て、なかなかきちんと評価されてなかったそうで、これも今はどうかわかりませんが、私が国芳の本が欲しいな〜と、この本と共にタイトル買いした本は、国芳の春画本でした(^^;(これも艶本だと思ってなかったのだ)そんなこともあるので、研究されている人も増えているんじゃないかな?とちょっと思います。
この1970年代というのは、まだまだ戦後の思想統制の影響下だったんだな、というのを肌で感じられるので、この本そのものが、近代歴史的な資料としても読めるような気がします。
あと、1961年が国芳没後100年だった、という事実も驚きです。
国芳という人は、それほど古い人ではなかったという風に感じます。
国芳の弟子の流れを継ぐ人(鏑木清方氏)もまだ尊命だったそうで、この1970年代当時に、国芳研究をされていた、著者をはじめとする方々が、この時点で資料を集めてくださったことが非常にありがたく感じます。たった100年前のことなのに、間に戦争があったりして、すでにかなりの歴史の分断があったようですし...。なかなか国芳の文章で残った資料も少ないと書いてあります。

あと、ほかに面白かったのは、当時の状況。前に挙げたフィクションの国芳シリーズでも刺青については、まさに粋なものであったり、とても魅力的なものとして描かれているわけで、何で?と思うわけですが、それを著者は、武士の切腹への憧れであったり、有り余る町人パワーの発露であったり、同じ理由で妖怪画なども喜ばれたのでは?と意味付けてあったりして面白い。
何となく、当時の状況に思いをめぐらすと、説得力のある説のように感じます。自分たちの祖先のことですから、何となくですが、ありうるのかな?という気がします。でも、そうであるとしたら、粋である、というステイタスって結構複雑で味わい深いものがありますね。

こんな感じで学者さんというわけではないのですが、著者の著者なりの調査研究と、予測が書かれていて、なかなか読み応えがありました。
また、他の国芳関連の著作も読みたくなりました。
とりあえず「奇想の系譜」は読んでみる予定です。
奇想の系譜 (ちくま学芸文庫)



さて、他には、戯曲「天保の戯絵」について。
戯曲というのは、実際の芝居を見ないとなかなかわかりづらい面白さがあると思うのですが、何となく、面白そうな話ではありました。
これには登鯉ちゃんは出てきませんが、国芳の弟子や国貞との確執の話やらが描かれており、中でも「源頼光公館土蜘作妖怪図」が出来上がるまで、国芳が意図的にこれを描くまで、これの解釈についても描かれている。非常にわかりやすい。
...それにしても。
遠山の金さんがシッカリ出てきてたり、弟子が猫を弔う金で遊び、猫を川に捨てるエピソードとか、何となく「侠風むすめ」に出てきた物語と重なる部分がところどころ出てきます。
これがもともと実際に底本があって同じになっているのなら納得なんですが、この本を読んでみたら「侠風むすめ」の評価がちょっとだけ下がってしまいました(^^;
でも、実際「侠風むすめ」は少々国芳の話にとらわれすぎた感じがあって、次の「あだ惚れ」の方が国芳から離れた感じに伸び伸びしているので、ま、1冊目だから仕方ないか、という感じに思っておきましょう☆
(国芳について知りたい私としては、1冊目の方が勉強になるんですが、作品としては2冊目の方が進化している感じ)

これも、実際に演じられる機会があれば観てみたいですね。
ひととおりの国芳の人生観というのがわかりやすいと思いますし。

1970年代に発刊された本ではありますが、基本はそんなに古く感じません。なかなか読み応えがあって面白かったと思います。
国芳の絵も少しですが口絵に数点掲載されていてポイントになる重要なものはわかりやすくなっていますし。
読み始めた時は、国芳その人について知りたかったのに、戯曲でちょっとがっかりしたんですが、エッセイまで読んでみたら、結果として戯曲も含め、しっかり期待に充分応えてくれた本だと思いました。

なかなか面白かったです。

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