「水循環基本法」が今国会で成立の見通しということで、似たような記事ばかりですが―

①外資の森林買収に対抗 水循環基本法、今国会成立見通し
2013.6.18 00:42 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130618/plc13061800450001-n1.htm
国内の水資源の保全を目的とする「水循環基本法案」が17日、今国会で成立する見通しとなった。与野党が同日の衆院国土交通委員会理事懇談会で金子恭之委員長の提案として18日の提出を確認した。同日午後の衆院本会議で可決され、参院に送付される。 

水源地となる森林が中国資本などに相次いで買収されていることを受け、政府に必要な法整備を求めているのが柱。国内の水資源を「国民共有の貴重な財産」と位置づけ、首相が本部長を務める「水循環政策本部」を内閣に設置し、7省庁にまたがる水資源を一元管理することを明記した

案は、超党派の議員連盟「水制度改革議員連盟」が策定を進めていた。自民、民主両党は昨年の通常国会への法案提出を目指し、各党に呼び掛けて準備を進めてきたが、衆院解散などに伴い見送っていた。


②水資源法案が衆院可決 政府に保全責務
2013/06/18 13:49 共同通信
http://www.47news.jp/CN/201306/CN2013061801001716.html
衆院は18日午後の本会議で、国内の水資源を保全するための「水循環基本法案」を全会一致で可決した。外国資本による水源地や周辺地域の買収、乱開発に対抗し、政府や自治体が保全策を講じる責務を明記した。与野党は週内にも成立させる方向だ。

本会議に先立つ衆院国土交通委員会で、金子恭之委員長による国会提出を決定。

法案は、水を「国民共有の貴重な財産」と位置付け、政府に必要な法整備や財政上の措置を求めた。内閣に首相を本部長とする「水循環政策本部」を設置し、水関連行政を総合的に推進。水資源保全に向けた基本計画策定を政府に義務付けている。


③水循環基本法案衆院通過…外国資本の乱開発規制
6月18日(火)22時15分読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130618-00001044-yom-soci
国内の水源地や周辺環境の保全を目的とした水循環基本法案が18日、衆院本会議で全会一致で可決された。今国会中に参院で可決、成立する見通しだ。 

同法案は、外国資本による水源林の買収や乱開発で水資源に悪影響が及ぶことを防ぐよう、政府に規制などの対策を取ることを求めている。水資源の保全・管理に関する権限や予算が複数省庁にまたがっていることから、全閣僚が参加する「水循環政策本部」(本部長・首相)を設置し、政府として一体的に施策を進めることも定めた

国や自治体に対して、河川流域の管理に当たり連携・協力することや、周辺住民の意見を反映するための措置を講じることも求めている。

同法案は超党派の議員連盟が策定を進め、提出に向けて準備を進めていた。

 

④水循環基本法案 与野党合意、成立へ
2013/6/18日本経済新聞 朝刊
与野党は17日の衆院国土交通委員会の理事懇談会で、水循環基本法案を金子恭之委員長の提案で18日に衆院に提出する方針を確認した。国内の水源地や周辺地域の乱開発を防止し、環境保全を目指す。同日午後の衆院本会議で可決し、参院に送る。与野党は今国会の成立で大筋合意している

①②③の記事を読むと、「外国資本」による水源林の買収や乱開発を防ぐため、まるで外資を排除するための基本法制定のように受け取られます。

果たしてそうなのでしょうか。 

水循環基本法案(衆議院;議案一覧)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g18301039.htm

 この法案は、外資を規制する法ではなく、外資であろうとなかろうと、乱開発で水資源に悪影響が及ぶことを防ぐよう、政府や自治体等に規制などの対策を取ることを求めたものです。

法案を作成した水制度改革議員連盟によると、 

■「水循環基本法の主なポイント」水制度改革議員連盟
https://2012nakagawa.sakura.ne.jp/mizugiren_02/summary.html
さらに、関連する個別法の改正や新たに制定をすることで
水の管理は河川流域を単位として統合的に地域主権的に行うべきであると考えます。上流の森林や農地から下流の沿岸部までを構成する地方公共団体は、流域圏として相互に協力し統合的に管理できるようになります。

現在、テレビや新聞等で報道されておりますが、世界的に水の資源価値が高まる中で、外国資本を含め取水を目的とした水源地の無秩序な土地買収に歯止めをかけることができます。また、各自治体においても企業や個人の取水に規制をかける根拠となり、水源保全につながるものと考えます

とあり、日本企業・国民だけでなく、外資も規制できますよ、ってことです。 

当然、日本の水源地や森林を買収して乱開発を企んでいる外資を排除する効果はあるでしょう。同時にそういったよからぬことを企む日本の企業(や日本人)も公平に規制されるということです。 

本法案のキモは、法案作成にあたった超党派の「水制度改革議員連盟」の顧問(元代表:現代表は石原伸晃)である中川秀直氏のブログが一番分かりやすいと思います。

■「水循環基本法案」について
2012年04月13日中川秀直氏ブログ
  

~この水循環基本法案は、将来にわたって水の恩恵を享受できるよう、健全な水循環を維持回復するための施策を包括的に推進していく必要があるという視点に立ち、水循環に関する施策を総合的かつ一体的に進め、ひいては我が国の経済社会の健全な発展と国民生活の安定向上に寄与することを目的としたものです。
この目的を達成するために、水循環基本法案は3つの大きな柱を中心に構成されています。

〇まず、水は、国民共有の貴重な財産であり、公共性の高いものであるという「水の公共性」であります。

〇二つ目に、河川の流域は、総合的かつ一体的に管理されなければならないという「流域の総合的管理」であります。

〇最後に、行政の縦割りの弊害を排除するために総合調整機能を持った「水循環政策本部」 を内閣に設置するということです

http://www.nakagawahidenao.jp/blog2/%E7%A7%98%E6%9B%B8%E3%81%B2%E3%81%97%E3%82%87/%E3%80%8C%E6%B0%B4%E5%BE%AA%E7%92%B0%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%B3%95%E6%A1%88%E3%80%8D%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/ 

 
また、過去の中川氏のインタビュ-記事や、議連設立当時の記事を読むと、外資が森林を狙う、とかなんとかという話でなく、水管理行政の構造改革を目指したものであることが分かります。 

■「縦割りを排し、水循環基本法の制定を」中川秀直・元官房長官
http://globe.asahi.com/feature/090525/side/02.html
国内では水管理行政の縦割りを排し、海外では息の長い支援策を講じよう――。各省庁に所管が散らばる50本近い水関連法を束ねる「水循環基本法」の制定を目指すのが、自民党の中川秀直・元官房長官だ。日本にとって、国内外それぞれの課題はどこにあるのか、なぜ基本法なのか、を聞いた。~2009年5月8日、東京都内の個人事務所で(中略)

―― 日本の水管理について、公と民の役割分担をどう考えていますか

中川私が重視しているのは、今後の上下水道の施設更新と高度な浄化施設の新規導入です。巨額の必要資金をどう調達するか。問題はこの1点です。 

私は民営化も有力な方法だと考えています。しかし、公共性の高い地域独占事業を、利益追求が目的の民間企業の委ねるとしたら、何らかの公的関与が必要になるでしょう英国などは、思い切った事業の広域化を進め、その後、公的な関与の道を確保した上で完全民営化を断行しました。(中略)

―― 02年の水道法改正で包括的な民間委託が認められ、外資が参入し始めました。どうみていますか

中川外資でも、適切な公的関与のもとで正しい経営システムが構築されているなら、決しておそれる必要はありません。恐れるべきは、がんじがらめの日本の縦割り体制の中で、次のあるべき姿が見えないまま互いに足を引っ張り合い、制度改革が進まない事態が発生することです。そこに外資が無秩序に参入してくれば、事態は混乱するでしょう。政策的な検討を大胆に行うべきです

―― どこに問題があるのでしょうか。 

中川国土交通省は、水資源開発のダム、洪水防止の高い堤防、汚水処理の下水道。厚生労働省は、人口が集中する都市の上水道。農水省は農業用水、経産省は工業用水、環境省は水質汚濁の防止……。所管が分かれる中、巨額な資金が投入され、揺るぎない縦割り行政が構築されました。 

この縦割りが「循環する水」を分断し、「生命(いのち)の水」を守るための障害になってきています。水にかかわる法律は、少なくとも50本はある。しかし、所管省庁がバラバラで、全体をカバーする統一の考え方や計画はない。これでは、国民の「生命の水」を適正に管理することなど不可能です。日本は、水に関する技術では一流といわれますが、制度面では遅れています。 

―― 解決のために何をしているのですか

中川:昨年、こうした状況に危機感をもった超党派の議員や専門家たちで「水制度改革国民会議」を創設しました。(以下略)

 

■(ゼミナール)水ビジネスの将来(2) 日本の水事情 多くの官庁関与、「主体」見えず
2010/6/2 日本経済新聞 朝刊
~日本の水事業は、取水から排水まで様々な根拠法に基づき、省庁間の縦割り行政で事業が実施されている。この体制は1957年の「水道行政3分割」に端を発する。その後、水道法、工業用水道事業法、下水道法が相次ぎ成立。上水道は厚生労働省、工業用水道は経済産業省、下水道は国土交通省などの所管となった。

この3分割体制は高度経済成長期の急速なインフラ整備には力を発揮し、前述の上水道に加え、工業用水道は61年比で約5倍と供給量が大幅に増加。下水道は84.8%の汚水処理人口普及率(いずれも08年)と、日本の水インフラは整いつつある。

これらの事業は、総務省所管の公営企業の枠組みで地方自治体が運営している。一方、水源である河川や湖沼は国土交通省、農業用水は農林水産省、排水に関する規制は環境省と、多くの省庁が関与しているため、国として水事業全般を統括する主体が見えにくい状況にある。

日本の水事業は、3事業で40兆円を超える債務を抱える中、少子高齢化による需要の減少や高度経済成長期に集中的に整備された施設の巨額の更新投資といった大きな問題への対応を迫られている。 

この問題の解決には、官民連携の促進や事業の広域化などの処方せんと、それを国全体で推進する体制が必要になる。この点、「水循環基本法(仮称)」の制定実現と抜本的な水行政改革を推進する超党派の議員連盟が今年2月にできるなど、少しずつ前向きな動きが出てきていることは注目されよう

 

■水循環基本法の変遷
2012 みずのほしみずのはなし
http://www.aqua-sphere.net/es/ws/junkan/j120202.html
(これまでの法案のいきさつが分かりやすく書かれているブログです)

中川氏が「国内では水管理行政の縦割りを排し、海外では息の長い支援策を講じる」と言っているように、海外支援についても法案に明記されています

国際的な連携の確保及び国際協力の推進
国は、健全な水循環の維持又は回復が地球環境の保全上重要な課題であることに鑑み、健全な水循環の維持又は回復に関する国際的な連携の確保及び水の適正かつ有効な利用に関する技術協力その他の国際協力の推進に必要な措置を講ずるものとすること。(水循環基本法より)”

 この法案に、いつから外資の森林買収話がくっついたのかよくわかりませんが、外資云々はあんまり本筋じゃないように見えます。

というか、むしろ「外資の森林買収に対抗」みたいな報道の仕方は、法案の本質を誤解させているように思うのですが―