①ADLがいつプラトーに達するか?

The Copenhagen Stroke Study.http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7741609?dopt=Abstract


急性期脳卒中患者1197人について
機能回復のスピードは脳卒中の重症度に依存、95%の患者は以下の期間内にADLがプラトーに達する。

 軽度脳卒中 8.5週以内(80%は3週以内)
 中等度脳卒中 13週以内(同 7週以内)
 重度脳卒中 17週以内 (同 11.5週以内)
 最重度脳卒中 20週以内(同 11.5週以内)



トータルで言うと 95%の患者は12.5週間以内にADLがプラトー、80%の患者で6週以内にADL回復がピークに達する。
神経学的回復はADL回復のピークよりも約2週間早い。
すなわち95%の患者は11週間以内に、80%の患者で4.5週以内に随意運動の回復がプラトーに達する。


歩行能力がピークに達するのは、

軽度 4週
中等度 6週
重度 11週


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7811170





*脳卒中の重症度はthe scandinavian stroke scale scoreで層別化してるが、区分法が不明http://www.strokecenter.org/wp-content/uploads/2011/08/scandinavian.pdf
NIHSS日本語版 http://melt.umin.ac.jp/nihss/nihssj-set.pdf
The European Stroke Scale http://www.strokecenter.org/wp-content/uploads/2011/08/European_Stroke_Scale.pdf
などで代用しようと思ったがこれらも重症度分類不明でした。

Canadian Neurological Scale (CNS)http://www.heartandstroke.on.ca/site/c.pvI3IeNWJwE/b.5385163/k.5CDC/HCP__Canadian_Neurological_Scale_CNS.htm
は mild (CNS ≥ 8), moderate (score of 5-7) and severe stroke (score of 1-4)
http://www.sorcan.ca/iscore/cns.html とsevere の幅が狭く、

Orpington Prognostic Scalehttp://www.strokecenter.org/wp-content/uploads/2011/07/Orpington-Prognostic-Scale.pdf http://www.rehabmeasures.org/Lists/RehabMeasures/DispForm.aspx?ID=915も、

軽、中等、重度の3段階に判別しているが重度は5.2以上、worstは15.6point なので5.2point以上を2層に分類すればいいかもしれません。
また、Orpington Prognostic Scale独自の予後予測もできます。
(・Orpington Prognostic Scale3.2以下なら、3か月後にADL自立
・IAD、屋外歩行自立は2.4以下  4.4以上では厳しい。
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11300243)



日本語訳↓

A 運動障害(上肢)
背臥位 肩関節屈曲90度に対して徒手抵抗をかける
0.0=MRC grade 5 (最大抵抗に抗して可動域を維持できる)
0.4=MRC grade 4 (中等度の抵抗に抗して可動域を維持できる)
0.8=MRC grade 3 (重力に抗して可動域を維持できる)
1.2=MRC grade 1-2 (除重力下で肩関節屈曲90度まで動かすことができる)
1.6=MRC grade 0(関節運動が起こらない)

B. 深部覚 (閉眼、セラピストが麻痺側上肢を頭上に保持 母指探しテストをする)
0.0=正確に同定
0.4=かろうじて分かる
0.8=麻痺側上肢をなぞってから同定
1.2=不可

C. バランス能力 (杖、装具などを使用しても良い)
0.0=介助なしに3m歩くことができる。
0.4=介助なしに1分間立位を保持できる。
0.8=介助なしに1分間座位を保持できる。
1.2=座位保持不可

D. 認知機能
Hodkinson’s Mental Test: 1問正解ごとに1点加点.
_____ 1. 年齢
_____ 2. 時刻(1時間単位で分かればよい)
これから住所を覚えてもらいます。あとで聞くので覚えておいてください。
「42番通り」 (日本で言うと国道246号線 とか、日本橋通り など言い換えればいいと思います。)
_____ 3. 病院名
_____ 4. 年齢
_____ 5. 生年月日
_____ 6. 今日の日付:月名
_____ 7. 第二次世界大戦がいつ起きたか? (1939-45)
_____ 8. 日本の首相
_____ 9. 逆唱 (20-1)
_____ 10. 先ほど聞いた住所をもう一度言ってください。

0.0=Mental test score of 10
0.4=Mental test score of 8-9
0.8=Mental test score of 5-7
1.2=Mental test score of 0-4


総計 1.6+A+B+C+D=            


判定:
< 3.2 = 軽度
> 3.2 and ≤ 5.2 = 中等度
> 5.2 = 重度





以下、二木の予測

・70歳以上の高齢者 発症3ヶ月で麻痺がプラトーに達している患者は91%、起居移乗動作は93% 69歳以下なら起居移乗動作には回復の余地がある。

・歩行能力は6ヶ月がプラトー




②ADL自立の可能性

G0000262_0157_0001


mRS 3以上の脳卒中1662例;内訳 moderate mRS 3 in 931 56% severe (mRS 4) in 691 (42%), very severe (mRS 5) in 40 (2%). について、ADLが18ヶ月以内に自立したのは、

mRS 3  63.3% (平均3ヶ月で自立達成)

mRS 4   40.7%  (平均18ヶ月で自立達成)

mRS 5  17.5%   (平均18ヶ月で自立達成)

末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)、DM、脳卒中既往が無ければ有意に回復が見込める http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17485645?dopt=Abstract

つまり初期評価の段階で介助歩行なら、1年半後にADL自立する確率は40%、歩行不能なら17.5%



以下、二木の予測

・入院一ヵ月後までにベッド上生活自立すれば最終的に歩行可能

・発症後2週で起居移乗動作が全介助で①2桁以上の意識障害 ②重度の認知症または夜間せんもう を伴う患者は全介助どまり
(右麻痺の夜間せん妄出現率8.7%に対し、左麻痺では22.5%と3倍 さらにUSN患者では38.1%)






③随意運動の回復はいつプラトーに達するか?

原則として、自然回復は発症後4-6週間http://brain.oxfordjournals.org/content/96/4/675.extract
神経再編成による回復は発症後6ヶ月間 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14681816 以降も回復する例はあるが統計学上有意ではない。



以下、二木の予測

・プラトーに達するのはおよそ2ヶ月 stage3,4の患者はそれまでに装具をつける。いつまでもファシリテーションテクニックに固執しない。




・上肢;4週までにグレード9に到達しなければ、それ以降9以上には回復しない:確率95.5%(相澤病院 CR 2001,4)


ここまで、大体の文献はここから⇒http://www.ebrsr.com/~ebrsr/uploads/B_Principles_of_Stroke_Rehabilitation_(Full_Version).pdf



④合併症発生予測

medium


・自立度が低いことと、呼吸器・尿路感染、不安障害、褥瘡発生は有意に相関

・脳卒中後合併症の好発時期は発症6週以内 頻度が高いのは疼痛と転倒(発症5週間で4人に1人が転倒) 続いてうつ、呼吸器感染、尿路感染
疼痛は転倒に先立って発生する。

http://stroke.ahajournals.org/content/31/6/1223.long


・脳卒中後転倒の予測因子はうつ症状 さらに下肢の麻痺、てんかん等が合併するほど転倒リスク上昇
http://stroke.ahajournals.org/content/33/2/542.full.pdf