リハビリ

    顔面エリアはFGSスコアによって、

    弛緩
    随伴運動を伴わない自動運動
    随伴運動を伴う自動運動
    筋緊張亢進を伴う自動運動

    の4つに分類、それぞれの病期に応じた理学療法を提供する


    Initiation treatment category.
    安静時顔面非対称性が中等度から重度、わずかな動きも起こせない弛緩性麻痺の患者はこのカテゴリに属する。
    ソフトマッサージと自動介助運動(わずかな動きから始める 笑顔を作ったり、ガムを噛むなど大きな動きは避ける)が指導される。


    Facilitation treatment category.
    安静時に顔面非対称となっている軽度ー中等度麻痺(わずかに表情筋の一部を動かすことができる・・・FGS voluntary movement score 2以上かつ随伴運動を起こしていない)の患者はこのカテゴリに属する。
    理学療法は以下の2通り
    ①積極的な表情筋と広頚筋のモビライゼーション
    患者には個別に、筋(特に顔の中央、大・小頬骨筋が重要)を含めた軟部組織のストレッチ方法が指導される。外来フォロー時にストレッチする部位は中央から上下へと対象を広げていく

    ②鏡を利用した神経筋再教育
    患者の表情筋コントロールによって個別に指導する。鏡を前に、左右対称、わずかな動きから始める。ゆっくりと、コントロールされた動きから徐々に表情がはっきりするよう段階づける。
    大切なことはこのようなわずかな動きを鏡を見ながら行うことである。通常、患者は筋紡錘が減っているために深部覚フィードバックを受けにくい。したがってわずかな量の筋をコントロールするには鏡越しに視覚フィードバックを受けることが重要なのである。
    EMGフィードバックを利用した方法も、顔面の対称性を獲得するにあたって利用される。典型的な随伴運動が生じた場合はセンサーが鳴るように設定される。 表情筋の動きが増えていくにしたがって随伴運動も出てきてしまうこと、その随伴運動を認識し、避けるよう教育されることで回復期以降の随伴運動を抑えることが期待できる。


    Movement control category.
    安静時に顔面非対称となっている軽度ー中等度麻痺(わずかに表情筋の全てを動かすことができる・・・FGS voluntary movement score 2以上)、かつ随伴運動が生じている患者はこのカテゴリに属する。
    理学療法は以下の3通り
    ①積極的な表情筋と広頚筋のモビライゼーション
    ②鏡を利用した神経筋再教育
    ③瞑想によるリラクゼーション

    この時期、顔面非対称性の主な原因は随伴運動であって各表情筋の筋出力低下によるものではなくなっている。問題点は共通していて、それは随伴運動が過度になっているという点である。
    したがって神経筋再教育の治療戦略としてはゆっくりと、コントロールされた表情筋の動きを段階づけて訓練するとともに訓練している部位の他のパーツにまで随伴運動が生じないか注意深く進めることが重要である。
    例えば食事、飲水、会話、表情を作る際などに随伴運動が生じてしまう、と訴える患者にはわずかな動きからエクササイズを始めるよう教育する・・・

    WATER_189639_3_En_23_Fig25_HTML


    ・わずかな動きによる左右対称の笑顔を、口輪筋をコントロールしながら練習し、徐々に運動範囲を広げる

    images (1)


    ・顔面中央部の随伴運動をコントロールするときは、その動きを抑制しつつ目をゆっくり閉じるように、と指導する。

    FacialParalysis_tn



    ・広頚筋が動いてしまう場合には、軟部組織のマッサージと、頬骨筋を促通しつつ広頚筋の動きを抑える。そのため「オーバーアクティブ」に頬骨筋を動かすよう練習する。

    その他の随伴運動についても同様、外来フォロー時に如何にして随伴運動を最小限に抑えるか指導する。


    Relaxation category.
    随伴運動と筋緊張亢進のために表情筋が重度に硬くなってしまった患者はこのカテゴリに属する。
    理学療法は以下の3つ
    ①積極的な表情筋と広頚筋のモビライゼーション
    ②鏡を利用した神経筋再教育
    ③瞑想によるリラクゼーション

    運動制限の原因は筋力低下よりも、筋の固さによる。したがってリラクゼーションが主な治療手段となる 随伴運動を起こす筋緊張を解放するために視覚イメージを伴う瞑想を行う。
    例えば随伴運動を抑えるための手掛かりとして「目の周りの緊張を弱くしていきましょう」「口の中でパンパンに膨らんだ風船が、徐々にしぼんでいきます」など・・・
    さらに、我々のクリニックではこのような瞑想をするにあたってリラックスできるような音楽をかけるようにCDを提供している。
    典型的な神経筋再教育は20-40回×2-4セット/日だが頻度は増やしてもよい。
    軟部組織のマッサージは10回×1-2セット/日 
    瞑想によるリラクゼーションは1-2回/日 が目安である

    外来フォローは1-2か月に一回、状態に応じて以上の治療戦略を変更する。

    http://ptjournal.apta.org/content/90/3/391.full

    顔面神経麻痺のリハビリテーション

    顔面神経麻痺のリハビリテーションの治療効果は限られている。したがっていったん何らかの理由で顔面神経麻痺となった場合、患者は自然回復するまで「待つ」ようにアドバイスされることが多い。主な原因はベル麻痺(50%以上)

    顔面神経は四肢における骨格筋のように筋とその働きが1対1対応しない、複合的な運動を提供する。したがってどこか一箇所でも神経分枝で異常が起これば咀嚼、感情表現、発声などに障害が起きる。
    また筋紡錘などの感覚受容器も骨格筋と比べると少ないためにフィードバックを得にくい。訓練効果を得るためには鏡を使う、運動学習など代償手段を取ることになる。

    顔面神経麻痺の伝統的リハビリテーションはマッサージ、電気刺激、表情筋エクササイズなどである。動物実験では、電気刺激には顔面神経の再支配を妨げる、という報告もある。正確なフィードバックを起こし、望ましくないパターンを抑制するように促すのでなければ電気刺激によるバイオフィードバック訓練は失敗に終わるだろう。

    予後は、

    ・患者の85%は3週間以内に自然回復 残り15%は回復に2,3ヶ月を要する。(完全回復、という意味ではない)
    ほぼ6ヶ月がプラトー

    ・麻痺がシビア、他 糖尿、肥満、高血圧 50歳以上 varicella-zoster virusによる顔面麻痺は予後が悪い。



    評価手段として以下がある。リハビリにおいてはこれらの手段を用いて経過を記録すること。

    機能障害
    The Facial Grading System (FGS) http://sunnybrook.ca/uploads/FacialGradingSystem.pdf

    image001


    Nasolabial_fold


    (1) 顔の対称性

    非麻痺側と比較して、

    安静時の目は □左右対称(0点)  □閉じている(1点) □大きく開いている(1点) □まぶたを手術している(1点)

    naso-lablal fild(ほうれい線?)は □左右対称 □消失(2点) □皺が浅い(1点) □皺が深い(1点)

    口は □左右対称(0点)  □口角が下がっている(1点)  □上がっている(1点)


    計算 合計点数×5            点


    Snarl2006


    (2)  自発的な動き
    全くできない(1点)  わずかに動く(2点) 少し動く(3点) ほぼできる(4点) 非麻痺側と同じように動く(5点)

    額にしわを寄せる 
    1  2  3  4  5 

    眼を閉じる
    1  2  3  4  5 

    微笑む
    1  2  3  4  5 

    歯をむき出しにする
    1  2  3  4  5 

    〈唇を〉すぼめる
    1  2  3  4  5 


    計算 合計点数×4            点


    (3)  (2)に随伴運動が出現してしまう程度を評価
    全く生じない(0点) わずかに生じる(1点) 明らかに生じるが顔の非対称性を大きくは損ねない 明らかに生じる/口の複合的な運動を伴い顔の非対称性を大きく損ねる(3点) 

    額にしわを寄せる 
    0  1   2   3 

    眼を閉じる
    0  1   2   3 

    微笑む
    0  1   2   3 

    歯をむき出しにする
    0  1   2   3 

    〈唇を〉すぼめる
    0  1   2   3 


    合計得点      点


    総計 (2)  自発的な動き -  (3)  -  (1)      =        点



    能力障害
    The Facial Disability Index 

    顔面麻痺した部位の運動機能(25点満点)、社会生活(30点満点)を自己評価 


    運動機能(25点満点)

    次の①~⑤について当てはまるものを選んでください

    ・問題なくできる (5点)   ・少し難しい(4点)  ・時々困難(3点)   ・とても難しい(2点) ・顔面麻痺のためにできない(1点) ・ほかの理由で、できない(0点) ・質問事項に適応しない(NA)

    ①食べ物が口からこぼれないよう、ごはんを食べる。 5  4  3  2  1  NA

    ②コップから飲み物を飲む。 5  4  3  2  1  NA

    ③発音できない音などなく、流ちょうに話す。 5  4  3  2  1  NA

    ④(眼が開いたままになってしまい)涙が出たり、乾いたりしない。 5  4  3  2  1  NA

    ⑤歯を磨く。 5  4  3  2  1  NA



    社会生活(30点満点)

    次の⑥~⑩について当てはまるものを選んでください

    ・全くない(6点)  ・たまにある(5点)  ・時々ある(4点)  ・よくある(3点)  ・ほとんどあてはまる(2点) ・常にあてはまる(1点)  *⑥の質問だけ点数を逆転させる ・質問事項に適応しない(NA)


    ⑥いつも気分が落ち着いていて、穏やかに過ごせますか  
    はい             いいえ
    1  2  3  4  5  6  NA

    ⑦周りの人から孤立して、独りぼっちになったように感じますか 
    はい             いいえ
    6  5  4  3  2  1  NA

    ⑧周りの人や物にいらだちを感じてしまうことがありますか 
    はい             いいえ
    6  5  4  3  2  1  NA

    ⑨寝ている間に何度も目覚めてしまいますか 
    はい             いいえ
    6  5  4  3  2  1  NA

    ⑩レストランに行ったり家族、友人と出かけることをためらうことがありましたか 
    はい             いいえ
    6  5  4  3  2  1  NA




    以上の2点、FGS FDIから治療カテゴリを4つに分類

    ①initiation
    安静時の中等度以上の顔面非対称性 随伴運動を生じないほどの重篤な運動麻痺が特徴 会話、飲食、感情表現などが困難となる

    この時期は自動介助運動が中心、ただし非麻痺側の顔面筋動員を伴うほどの大きな運動にならないよう注意する。

    ②FACILITATION
    安静時の中等度から軽度の顔面非対称性  わずかに顔面筋を動かすことができる程度なので、運動時はさらに対称性が崩れる。軽度以下の随伴運動あり

    この時期は随伴運動が生じないよう留意しつつ自動運動、抵抗運動(PNFハンドブック もしくは資料の7p参照http://www.pta-kw.com/uploads/facial%20protocol.pdf)を実施

    MOVEMENT CONTROL
    口角を引き上げると額に皺が寄ってしまう、など ある程度の動きができても随伴運動が生じてしまう時期
    顔面筋の神経再教育と過剰に使用してしまう部分をストレッチすることが有効

    RELAXATION
    安静時の顔面非対称性、麻痺筋のスパズムが残っている段階
    抵抗運動よりもマッサージによってリラクゼーションを図る。


    とはいえ、神経再教育で治療効果を得ることは困難 もし、

    ストローで息を吹きながら、水を泡だたせ続ける、歯で唇を覆う、鏡を利用して表情を作る練習をする 同じ音「f」など(f p bなどのようにあごの動きを伴わずに、歯を参加させるような音が望ましい)と同時に;を発音しつづける

    などの方法から随伴運動の抑制+麻痺筋の促通が得られるならば、エクササイズを3-5種類選択×10回 を朝夕続けてもらう。


    ADL指導は以下

    ・心理的、社会的ストレスが治癒を遅らせる。家族や友人に協力を仰ぎ、本人のストレスを取り除くよう協力してもらう。

    ・麻痺が眼に及んでいるならば、直射日光に当たらない、部屋の照明を強くしない、TV、パソコンの画面、エアコンに顔を近づけないよう注意する。読書の時間は短めに、日中はサングラスを、寝るときはアイマスクをかける。



    具体例としてベル麻痺になった女性が動画をupしています。参考になるでしょうか。



    Day 2 「左半分が完全麻痺 眼を閉じることができない。顔がこわばるのでワセリンを塗って寝ている。飲食はどうにかできる」


    1week 「眼球が動くようになった。」


    2weeks 「鍼(による電気刺激)治療に行って4回目、完全麻痺は変わらないが口すぼめは楽になった。」


    3months 「左半分も少し動くようになった。口角がちょっとだけ上がる」


    (寝るときに眼が開かないよう、瞼にテープを張る方法)


    (セルフエクササイズ)


    3.5years 「表情筋のすべてが動くけれども弱いので、非対称になる  ゆっくり休むこと、ストレスを溜めないこと、栄養とビタミンは効果があったと思う。」



    参考文献
    http://www.pta-kw.com/uploads/facial%20protocol.pdf
    http://azizzadehmedia.s3.amazonaws.com/pdf/Facial-Rehabilitation.pdf
    http://ptjournal.apta.org/content/79/4/397.long

    リハビリの介入手段
    脳卒中後リハビリテーションの第一の目的はできるだけ早期に発症前の体力レベルに戻すことである。抗重力筋が働かなければベッドで寝たきりにならざるを得ず、体力および心肺機能の低下も深刻となる。

    第二の目的は脳卒中および心疾患の再発予防である。有酸素運動は血糖値を低下させる、減量、降圧、CRP低下、脂質異常の改善などの効果があるので血栓の生成も予防可能である。

    第三の目的は心肺機能の改善、向上である。年齢、性別を問わず定期的な運動は脳卒中のリスクを減らす効果がある。喫煙、肥満、飲酒、高血圧、高血糖、心疾患の家族歴に関わらず、運動は心肺機能を改善し、結果としてが良好であれば脳卒中による死亡率を低下させる。

    PT,OTを問わず運動負荷時の心拍設定が不十分、すなわち心拍が上がらないほどの低負荷であればトレーニング効果も得られないそこでエビデンスに基づいた介入手段を以下に解説する。


    ①早期の可動域訓練
    全身状態が安定していなくても、発症後24時間以内に可動域訓練をはじめる。許可が出ればさらに起居動作、座位保持、立位、歩行訓錬を開始する。



    ②運動療法
    心肺系トレーニング、筋力トレーニングは筋力および体力が弱くなっている脳卒中患者に副作用を引き起こさないよう慎重に進められるべきである。実際には課題指向型トレーニングも含めて数種類のエクササイズを組み合わせる。(免荷+トレッドミル歩行 筋力トレーニング バランス訓練など)
    脳卒中患者が自分で体力の維持、向上が図れるよう、医師は定期的に評価、治療を行い禁忌事項を定める。
    自力歩行ができない患者にはどのように歩行介助用具を扱うか、専門家が指導する。自力歩行可能な場合は歩行速度、歩行時間が改善できるように進める。下垂足には短下肢装具を適応する。


    推奨される負荷、頻度は以下の通り

    AHA Physical Activity and Exercise Recommendations for Stroke Survivors

    ・有酸素運動

    歩行、トレッドミル、エアロバイク、手と足を使うエルゴメータ、手のエルゴメータ、座るタイプのステッパー
    • Large-muscle activities (eg, walking, treadmill, stationary cycle, combined arm-leg ergometry, arm ergometry, seated stepper)
     
    強度 最大酸素摂取量の 40%–70% または40%–70% %HRR 、50%–80% %HRmax 、borg scale 11-14
    • 40%–70% peak oxygen uptake; 40%–70% heart rate reserve; 50%–80% maximal heart rate; RPE 11–14 (6–20 scale)

    頻度
    1回20~60分、 3–7 d/wk


    ・筋トレ

    内容 大筋群(前腕、肩周囲、胸筋、腹筋、背筋、殿筋、下腿)の筋トレを8種、10-15回/1-3セット
    • 1–3 sets of 10–15 repetitions of 8–10 exercises involving the major muscle groups

    頻度
    2–3 d/wk


    ・柔軟運動
    各関節10-30秒、運動の前後に実施


    一般的な運動中のリスク管理として

    ・最大心拍数(220-年齢)の70%(または)120回/分まで

    ・運動強度は5メッツ(かなりの速歩 に該当)まで

    ・収縮期血圧250、拡張期血圧115mmHg以下



    (参考)
    具体例
    サーキットトレーニングについてのコクランレビュー
    セラピストによるマンツーマントレーニングよりも、集団療法の方が効果あり、医療コストも安くて済む

    ・セラピスト1人につき患者が3人以上、(セラピストの介入はフィードバック、安全管理など)

    ・筋力トレーニングのみ、ADL訓練のみなど一つの目的に特化せずに、バラエティに富んだ内容であること

    ・少なくとも週に3回以上、4週以上続ける

    といった条件を満たすと、発症3ヶ月~5年以上でも歩行速度、下肢筋力、上肢機能、最大酸素摂取能、バランス能力など改善
    Effects of exercise training programs on walking competency after stroke: a systematic review.

    ・時速2kmの設定でトレッドミル上をハーネスで吊られたまま歩く、またはPTが2人がかりで両脇からサポート、歩行訓練をする(患者には長下肢装具などを装着、この際、セラピストは振り出し介助などを行わず、口頭で指示するのみ)と、発症6ヶ月以降でも歩行速度が改善 Effects of exercise training programs on walking competency after stroke: a systematic review.

    ・トレッドミル歩行にて、負荷を徐々に上げていくトレーニングは、ボバースやPNFよりも効果あり Speed-dependent treadmill training in ambulatory hemiparetic stroke patients: a randomized controlled trial.


    課題志向型訓練
    ・反復課題指向型訓練は上肢、手指機能を改善せず、下肢機能への効果はmodest  慢性期になるとさらに効果減
    Repetitive task training for improving functional ability after stroke.
    (具体的内容はhttp://blog.livedoor.jp/suchan4wd6/archives/6003065.html http://blog.livedoor.jp/suchan4wd6/archives/6362391.htmlを参照)




    ③バランス訓練
    転倒、外傷予防のためにもバランス機能の評価、訓練は欠かせない。転倒高リスク者にはビタミンD、Caサプリメント投与を考慮する。転倒予防の詳細は「新人職員向け脳卒中リハビリマニュアル  転倒予防」 参照

    (参考)
    ・歩行能力の改善に最も重要な決定因子はバランス能力で下肢筋力よりも強い相関があった.(歩行能力ともっともよく相関するのが,麻痺の改善よりも,健側での代償機能も含めたバランス能力) Predicting improvement in gait after stroke




    ④上肢
    70%の脳卒中患者が上肢機能低下を経験し、40%で機能障害が残存する。高頻度に同じ動作を、課題特異的に繰り返す、すなわちCI療法は手関節伸展20度、手指伸展10度以上の自動運動が可能な患者から適応となる。この療法が安全に、患者一人でも行えるよう環境設定をリハチームで共有する。

    (注)CIは非麻痺側が使えないようグローブを施し週に3日、1日5-6時間以上のメニューを10週間続けることで効果が得られる。 
    ただし上肢機能改善のエビデンスがあっても手指機能には効果が認められない さらに発症6ヶ月以降の上肢機能改善にはエビデンスが無い



    三角巾は肩の亜脱臼予防、改善、疼痛軽減などに効果がない 三角筋、棘上筋への電気刺激は亜脱臼、疼痛軽減、運動機能改善に効果あり
    肩痛は外旋可動域の維持によって疼痛発生が予防できる、とのエビデンスがある

    (注)「Evidence-Based Review of Stroke Rehabilitation」によれば上肢リハに効果ありとされているのはFESのみ。CI療法、課題指向型トレーニング、バイオフィードバック、スプリント、イメージ訓練、VR、間歇的空気圧などは高いレベルのエビデンスが得られていないか、否定されている。

    ・Popovic ら(2002)によると、FES などの神経機能代替は、標準的なADL に必要な握り動作や操作機能を劇的に改善、もしくは再構築できる装置である。
    ・急性期の脳卒中においてFES 治療は上肢機能を改善するという強いevidence (Level1a)がある。
    ・慢性期の脳卒中においてFES 治療は上肢機能を改善するという強いevidence (Level1a)がある。

    また重度麻痺は訓練効果が少ないので、代わりに拘縮予防や利き手交換に重点を置く

    ・Nakayamaら(1994)は,入院の時点で尐ししか,あるいは全く運動のおこせない重度の上肢麻痺を呈する脳血管障害患者は,14%が完全に回復するが,30%は部分的に回復するにとどまると報告している.14日後の時点で回復の見られない患者の回復率はNakayamaの報告よりもさらに低くなる.

    ・エビデンスによる多数意見ではBarrecaら(2001)はChedoke-MacMaster Score4以下で定義される回復のとぼしい患者は,拘縮や痛みを最小限にする事に焦点を置いた治療を受けるべきだとしている.Barrecaら(2001)は,感覚や機能障害を伴う重度な運動麻痺の患者では,文献によると,更なる上肢への治療訓練は神経学的に明らかな変化をもたらさないとしている.―エビデンスはこの運動回復ステージの患者への治療介入は意味のある機能的な使用につながらない事を示唆している.

    ・大多数の研究に基づくと,快適さを提供し,痛みをなくし,上肢と手部の可動域を維持する事に焦点を置く事が推奨されている.機能的自立を最大限にするために,運動と感覚障害を持つ患者と介護者は障害されていない上肢と手部で重要な課題や活動を可能にするために代償的なテクニックと環境の適応を指導されるべきである




    ⑤その他
    嚥下 急性期、回復期、維持期を通してエビデンスレベルBは多角的な嚥下障害への介入手段(食形態の変更、嚥下訓練、バイオフィードバック、抗重力筋強化 など)
    嚥下障害は急性期脳卒中において30-60%の頻度 数日から数週間で多くが改善するが、発症一ヵ月後10-20%に嚥下障害残存(CR 2007 7)
    全脳卒中患者の30%に嚥下障害 発症時に嚥下障害が無くても2年間の追跡調査の間に40%が誤嚥性肺炎を起こしていた。(CR 1998,4)

    (参考)
    誤嚥性肺炎
    ・肺炎は死亡原因の8%,そのうち92%は65歳以上の高齢者=高齢者は肺炎による死亡が多い
    新規脳梗塞発症患者全体で7%が入院中に肺炎を生じ,高齢で重症者に多い.
     急性期の誤嚥性肺炎は嚥下機能よりも意識障害による誤嚥が主体で,顕性誤嚥が多い
     慢性期の誤嚥性肺炎は嚥下機能障害が主体で不顕性誤嚥が多い

    脳卒中患者の37~78%に嚥下障害があり,脳幹病変に多い
    嚥下障害があると肺炎発生率は3倍http://mojareha.blog.so-net.ne.jp/archive/c164999-4
    ・65歳以上のPEG患者931人を約468日フォローした。死因の59%は肺炎だった。8人の死は胃瘻に関係するものと思われ、低Alb血症と関連がみられた。PEG患者の2年生存率は50%くらいであった


    バイオフィードバック機器のエビデンスは不明
    麻痺筋への電気刺激は下垂足の改善等に効果があるかもしれない。

    深部静脈血栓は脳卒中患者には半数以上と、頻繁に起こりうる。好発部位は麻痺側の表層や大腿など DVTリスクの高い患者にストッキングを履かせることは効果が無く、抗凝固療法で予防する。



    以上CI療法、イメージトレーニング、フィットネストレーニングなど、要は特異的かつ集中的に練習を繰り返すことが脳卒中後の運動機能回復に効果的( Lancet. 2011 May 14;377(9778):1693-702 )であるが、慢性期でも生き残る唯一のエビデンスは心肺系トレーニング(aerobic exercisesや週に3,4回、6~12週間のresistance exercises等で発症後数年であっても患者の体力、運動能力は改善する。)

    すなわちNEJMで推奨している、AHA Physical Activity and Exercise Recommendations for Stroke Survivorsのメニュー、となる

    脳卒中患者の心肺機能増強を目的とした訓練効果には以下のエビデンスがある。

    ・3回/週、10週間の有酸素運動で最大酸素摂取量 向上

    ・1回1時間を3回/週、12週間の有酸素運動、筋トレ、柔軟運動で最大酸素摂取量と筋力向上

    ・麻痺側の四頭筋、殿筋、足底筋の筋力向上で歩行スピードがUp

    ・2回/週、12週間の下肢筋トレで移乗時間、身体能力、動的・静的バランス能力が改善



    さらに非麻痺側下肢の筋トレに特化した内容を紹介する。

    Hirschbergの運動療法

    ・発病後のリハは特に、高齢者であれば2,3位日以内に始めたい。1週間後では遅い。早期リハビリテーションが必要なのは、とくに重症者と高齢者

    ・心不全や肺炎を合併しても、リハビリができなかった、という例はない。

    ・筋活動を伴う活動的なリハを1時間/日以上行うこと。 関節可動域訓練、座位訓練、体位交換等は訓練効果が小さく、早期リハを行ったことにならない。他、受動的or筋活動をほとんど伴わない/筋収縮を起こさない訓練としてファシリテーション、作業療法、平行棒内歩行訓練、マット訓練、言語療法、心理療法、プーリー、チルトなど。これら受身の訓練を行っているうちに健側の筋力低下が進行する・回復度は脳損傷の部位、大きさ、年齢によって決まるのであって、知覚刺激を上手に与えたら麻痺を改善できるとか、痙性を抑制できるというものではない。

    片麻痺患者健側下肢の筋力は健常者の50~70%に低下している

    ・筋収縮が最大筋力の20%以下になると筋力は低下していく。20~30%以上で筋力強化が可能 麻痺筋を最大収縮させてもせいぜい数%なので麻痺筋を強化するのは不可能

    ・廃用筋萎縮のスピードは、筋力強化の3~4倍 全く動かさないと1週で20%も筋力低下が起きる。

    始めから健側の筋力強化プログラムを入れて、麻痺側、非麻痺側ともに廃用性の筋萎縮を予防する。まずは非麻痺側の筋力強化を優先する

    ・早期リハ例の多くは1~2ヶ月でプラトーに達するが、重症例では4~5ヶ月かかった。重度麻痺だからといって早期に回復不良と結論付けるべきでない。

    ・リハビリは「運動負荷」でなく、健康に不可欠な「運動補給」と考えるべき

    ・歩行不能、監視、介助の場合運動量は明らかに不足している。その場合、起立ー着座訓練を一日100回以上行う。

    ・上肢については予後を見極め、重度の場合は早期に利き手交換(発症3~4週後)を行う

    ・片麻痺手の回復は4週が最大で、3ヶ月までが限度

    ・重度麻痺は6週、軽度麻痺は3週でプラトー

    Feeding Patients after Stroke: Who, When, and How  Ann Intern Med. 2006;144(1):59-60

    米国にて、脳卒中は2050年まで毎年増え続けると予想されている。うち90%は急性期を過ぎて生存、約半数が摂食嚥下機能に問題を抱える、という。
    摂食開始はいつから、どのように開始すればよいか。

    Feed Or Ordinary Diet (FOOD) trialsとは以下の3つの質問に答えるためにデザインされた研究である。
    ①定期的な経口栄養補助食品の摂取は、嚥下障害の無い患者にとって機能予後を改善するか?
    ②早期の経管栄養開始は発症7日間経管栄養を行わない場合と比べて機能予後を改善するか?
    ③PEGと経鼻胃管ではどちらが機能予後を改善するか?

    その結果
    ①嚥下機能に問題の無い患者が通常食+経口栄養補助食品をはじめたからといって6ヵ月後の機能予後は改善しない また患者の8%で副作用、すなわち低栄養、高血糖などになったため早期にトライアルが中止された。
    ②早期に経管栄養開始しても、機能悪化や死亡を招かない、というベネフィットは7日後開始のグループと比べてわずかに1%
    ③PEGが経鼻胃管を上回るベネフィット無し

    という結果であった。また早期経管栄養開始グループは嚥下性肺炎リスクの増加と関連しなかったが消化器官出血リスクが2-3倍になってしまうことが分かった。

    以上の結果から
    ・経口栄養補助食品が機能予後を改善するわけではないが、低栄養の患者にはおそらく利点があると思われる。

    ・水分補給の開始には少なくとも7日間かけて患者の嚥下機能を診るべきである。

    ・PEGと経鼻胃管のベネフィットは変わらない ならば安全に嚥下できない患者にはまず2,3週間の経鼻胃管を行いその後でPEGを検討する。
    ハイリスクな患者にとって、PEGは死亡率を低下させる、というデータもある。

    急性期において嚥下機能がすぐに評価できない場合は、水分や電解質などを点滴静注しつつ嚥下機能検査の結果を待つ。
    http://annals.org/article.aspx?articleid=719271




    もとの文献が8つなのでそれぞれ読んでみました。データが相反するものもありますが、まとめると上記の結果になるようです。

    Heart Disease and Stroke Statistics: 2005 Update. Dallas, TX: American Heart Association; 2005.
    (冒頭統計の話なので省略)

    Swallowing function after stroke: prognosis and prognostic factors at 6 months. Stroke. 1999; 30:744.-8
    嚥下機能評価は全脳卒中患者に行われるべきである。特に嚥下造影検査(VF)は誤嚥リスクを判定する上で欠かせない。

    Routine oral nutritional supplementation for stroke patients in hospital (FOOD): a multicentre randomised controlled trial. Lancet. 2005 Feb 26-Mar 4;365(9461):755-63.
    嚥下機能に問題の無い、栄養状態良好な脳卒中患者に、通常の病院食に経口栄養補助食品を追加してもメリット、デメリット共にはっきりしない。

    Effect of timing and method of enteral tube feeding for dysphagic stroke patients (FOOD): a multicentre randomised controlled trial. Lancet. 2005; 365:764.-72
    早期の経管栄養(経鼻胃管またはPEG)は死亡率、死亡リスク、機能予後悪化を低下させる。一方でPEGは経鼻胃管と比べてアウトカム不良である傾向

    Effects of admission hyperglycemia on mortality and costs in acute ischemic stroke. Neurology. 2002; 59:67.-71
    脳梗塞急性期の高血糖(血糖値130 mg/dL以上と定義 患者の40%に該当 女性、糖尿病または心不全既往に多い)は在院期間は延びなかったが30日、1年、6年後の死亡率悪化と関連 

    Meta-analysis: protein and energy supplementation in older people. Ann Intern Med. Ann Intern Med. 2006 Apr 4;144(7):538.
    経口栄養補助食品は低栄養の入院高齢者の死亡率減少と、栄養改善に寄与

    Randomised comparison of percutaneous endoscopic gastrostomy and nasogastric tube feeding in patients with persisting neurological dysphagia. BMJ. 1992 May 30; 304(6839): 1406–1409.
    PEGは経鼻胃管と比して栄養吸収、体重増加、死亡率低下、といった点でメリットがある

    A randomised prospective comparison of percutaneous endoscopic gastrostomy and nasogastric tube feeding after acute dysphagic stroke BMJ. 1996 Jan 6;312(7022):13-6.
    早期のPEG造設(CI発症2週間)は経鼻胃管と比して死亡率低下、栄養状態改善
    .



    安全に嚥下できるかどうか? ここで推奨しているのはVFですがDynamedによれば食道造影、内視鏡で検査する方法もあるようです。
    さらにエビデンスレベル1に「the Gugging Swallowing Screen GUSS」があります。http://intl-stroke.ahajournals.org/content/38/11/2948.full
    評価用紙 http://www.donau-uni.ac.at/imperia/md/images/department/kmp/publikationen/guss_e.pdf

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    (クリックで拡大表示)


    ・評価前に姿勢コントロールを評価 少なくとも60度ギャッジアップ座位を保持できれば検査開始
    ・意識レベル、湿性嗄声の有無、唾液嚥下テストを評価 (5点)
    ・固形、半固形、液体 3種それぞれの嚥下状態、ムセ・流涎の有無・声の変化(+なら減点)を評価 (各5点=15点)

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    ・合計得点(計20点)によって食形態を決める。
      20点 通常食
      15-19点 軟らかい食材やムース状の食材(注:軟菜、キザミ食に該当)
      10-14点 離乳食・幼児食 液体にはすべてトロミをつける(注:嚥下食に該当)
      0-9点  食事は禁忌 STが詳細を評価
      


    嚥下テストを調べてみると水のみテストと唾液嚥下テストの2つが信頼性が高いようですが、その2つを合計して層別化しています。
    (注:)と書いたのは、病院食の形態で言うと何に該当するか、STの先生に聞いてみた結果です。
    GUSSでは唾液嚥下ができなければ中止ですが、唾液嚥下が失敗しても水を飲めるケースも多々あるそうで、あまり実用的ではないらしいです。
    またここにあるように19点以下の患者には本来ならVF検査をしたほうが良い、とのことでした。

    実際には唾液、水飲み、フードテストなどいくつか検査して総合判定するそうです。

    その他の検査についてリンクを張っておきます。
    http://www.emec.co.jp/swallow/09.html

    脳卒中後の治療方法について、Bobath,PNF法など促通手技は効果がないことが分かっています。
    ・Bobath,PNF,古典的治療法の成績を比較 Bobath,PNFで歩行不能者が有意に多かった。歩行を遅らせて痙性を抑制しようというBobathの方法にしても、治療前後のflaccid,low,normal,high,spasticの割合は3者で変わらなかった。(Dickstein)
    ・入院期間は古典的治療群の方が、Bobathよりも有意に短かった。(Lord)、(Stern)


    ・ボバースアプローチが他の治療アプローチより優れていないという強いエビデンス(Level 1a)がある。
    ・・・LanghammeとStranghelle (2000) やPatel ら(1998) 2つの最近の報告では,回復的アプローチが,アウトカムの改善なしで,リハビリ入院期間が増加したとしている(Figure 9.1)。LanghammeとStranghelle (2000)(PEDro=8)は,ボバースアプローチ(治療的アプローチ)とMotor Relearning Programme(MRP)の比較したRCTを実施し,その研究において,MRPで入院期間の短縮と,運動機能の改善という結果をもたらしている。運動機能やADLパフォーマンスにおける改善があるにも関わらず,Lennonら(2006)は,ボバース理論を用いた治療を受けても正常な運動パターンは回復されないと報告している。Patelら(1998)の非ランダム化比較研究(評価レートなし)の場合では,回復的アプローチによって入院している患者の人数が実際に増加したと示唆している。http://www.kio.ac.jp/~a.matsuo/index.html


    これに対して三好正堂医師はHirschbergの提案する運動療法を勧めています。

    ・発病後のリハは特に、高齢者であれば2,3位日以内に始めたい。1週間後では遅い。早期リハビリテーションが必要なのは、とくに重症者と高齢者
    ・心不全や肺炎を合併しても、リハビリができなかった、という例はない。
    ・筋活動を伴う活動的なリハを1時間/日以上行うこと。
     関節可動域訓練、座位訓練、体位交換等は訓練効果が小さく、早期リハを行ったことにならない。
    他、受動的or筋活動をほとんど伴わない/筋収縮を起こさない訓練としてファシリテーション、作業療法、平行棒内歩行訓練、マット訓練、言語療法、心理療法、プーリー、チルトなど。これら受身の訓練を行っているうちに健側の筋力低下が進行する。
    ・回復度は脳損傷の部位、大きさ、年齢によって決まるのであって、知覚刺激を上手に与えたら麻痺を改善できるとか、痙性を抑制できるというものではない。
    ・片麻痺患者健側下肢の筋力は健常者の50~70%に低下している。
    ・筋収縮が最大筋力の20%以下になると筋力は低下していく。20~30%以上で筋力強化が可能 麻痺筋を最大収縮させてもせいぜい数%なので麻痺筋を強化するのは不可能
    ・廃用筋萎縮のスピードは、筋力強化の3~4倍 全く動かさないと1週で20%も筋力低下が起きる。
    ・始めから健側の筋力強化プログラムを入れて、麻痺側、非麻痺側ともに廃用性の筋萎縮を予防する。まずは非麻痺側の筋力強化を優先する。
    ・早期リハ例の多くは1~2ヶ月でプラトーに達するが、重症例では4~5ヶ月かかった。重度麻痺だからといって早期に回復不良と結論付けるべきでない。
    ・リハビリは「運動負荷」でなく、健康に不可欠な「運動補給」と考えるべき
    img_column0301

    (麻痺が重度であっても4週以内に歩行が自立するであろうというものです。私たちの経験では、確かに麻痺が重度でも3~6週で歩けるようになる方がほとんどなのです。http://www.asagi-hospital.or.jp/column/column03-01.html)

    ・歩行不能、監視、介助の場合運動量は明らかに不足している。その場合、起立ー着座訓練を一日100回以上行う。
    ・上肢については予後を見極め、重度の場合は早期に利き手交換(発症3~4週後)を行う
    ・片麻痺手の回復は4週が最大で、3ヶ月までが限度
    ・重度麻痺は6週、軽度麻痺は3週でプラトー

    ROM、作業療法、座位訓練、さらには平行棒内歩行でさえも運動したことにならない、とにかく健側下肢をスクワットで鍛えましょう、という提案であり国内発表ではあるものの、実際に効果が出ています。http://ci.nii.ac.jp/els/110001847633.pdf?id=ART0002011756&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1332674562&cp=

    Hirschberg法は歩行自立を最終目標にするので、麻痺の治療よりも健側下肢の筋力強化に重点をおきます。歩行自立を課題とする、課題志向型アプローチともいえるでしょう。また再現性が高い方法なので誰が何処で、いつの時代にやっても同様の効果を得られます。「〇〇先生の~テクニックを習得しないと治せない、治せないのは自分のテクニックが足りないからだ」ということはありません。医師など他職種には理解不能な専門用語を使うこともありません。
    「筋収縮を起こさない限り回復はありえない」とする、非常にシンプルかつリハビリの基本となる考え方だと思いました。

    Lancetより、寿命は延びたけれども、それではこれから健康に老いていくためにはどうしたら良いか?という問題提起です。
    What is it to grow old?
    http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2961431-7/fulltext?elsca1=Twitter-aeging&elsca2=T&elsca3=EditoriaL


    カナダの Mike Evans 医師は健康について、とても分かりやすく学べるビデオを製作していました。

    http://www.bmj.com/podcast/2012/04/20/235-hours-change-behaviour

    内容をざっと紹介すると・・・
    ・最も健康に良い影響を与えるのは何か?エクササイズ=歩行である。
    ・あなたの24時間はソファに座ってTVを見ているか、座って仕事をしているか、寝ているかだろう。
    ・"Aerobics Center Longitudinal Study" によれば最も死亡リスクが高いのは、タバコでもなく、高血圧でも肥満でも、糖尿、コレステロールでもなく「運動不足」であった。肥満と運動不足は最も悪い組み合わせ

    ・エクササイズが薬になるのならどの程度、頻度、強度が必要か? それは1日30分程度、テニスや犬の散歩、階段を昇るなどの軽い運動でよい。
    日本の研究では10分以下の歩行では効果なし 11-20分の歩行で12%、21分以上の歩行で21%の高血圧者に血圧低下がみられた。さらに10分加えると、もう12%の参加者で血圧が低下した。
    別の研究ではエクササイズで88%の参加者に心血管の血流状態が維持できたのに対して、ステント留置では効果が70%だった。

    ・TVをみることも病気の要因になる。ヒポクラテスは「歩くことこそが、人にとって最高の薬」と言っている。
    ・あなたは仕事や子育てで忙しいと言うかもしれない。でもあなたが寝たり座ったりしている時間を23と1/2時間に減らせませんか?

    =1日30分でいいから運動しましょうね、と逆説的に締めています。

    こちらも似たような内容です。
    http://well.blogs.nytimes.com/2012/09/05/the-benefits-of-middle-age-fitness/?smid=tw-nytimeshealth&seid=auto

    ブレスロー博士の「1日30分運動説」はここでも支持されているのでした。

    関連情報を追加します。
    ①75歳以降の高齢者について、禁煙や運動などの健康習慣を続けるほど長生きした。
    http://www.bmj.com/content/345/bmj.e5568
    http://www.bbc.co.uk/news/health-19421818
    http://www.independent.co.uk/life-style/health-and-families/health-news/healthy-living-benefits-over75s-8098914.html

    ②ストレスが死亡率の上昇と関係する
    https://aspara.asahi.com/blog/medicalreport/entry/Lkb7W0eahZ
    http://www.bmj.com/content/345/bmj.e4933


    (Mike Evans 医師がストレスについて、レクチャーしているのでこちらも紹介します。)
    ストレスにはnegative sideと positive sideがある。negative sideに対処する最もいい方法は薬でも、ダイエットでもステント治療でもなく、「思考方法を変えること= 認知行動療法,
    mindfulness techniquesなど」 出来事は10%、それをどう捉えるかが90% 考え方を変えることができるのは他人ではない、あなた自身である。


    ③カロリスについて、従来の「カロリー制限が寿命を延ばす」を否定する結果が出る。通常の量の餌を与えたサルと餌が食べ放題のサルとでは寿命や健康状態に違いなし。
    (・・・食事制限というのは、運動をしない場合に選択するもので、どんどん運動するのであれば運動量に応じた、十分な栄養量を摂ればいいのだと思います。)
    NIH study finds calorie restriction does not affect survival http://www.nih.gov/news/health/aug2012/nia-29.htm?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter

    http://www.npr.org/blogs/thesalt/2012/08/30/160266307/subtracting-calories-may-not-add-years-to-life

    http://www.latimes.com/health/boostershots/la-heb-calorie-restriction-aging-one-mans-story-20120830,0,2733609.story?track=rss&utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter&dlvrit=53001

    栄養について、「アミノ酸と生活習慣病」女子栄養大学出版部 によるとBCAAがアクチン、ミオシンの主成分でこれがないと筋肉損傷時の修復もできない大切な材料のようです。
    アミノ酸と生活習慣病―最新アミノグラムで探る「いのち」の科学
    クチコミを見る

    ・筋肉タンパク質を構成する必須アミノ酸のうち、約35%はBCAA BCAAは運動時のエネルギーとなり筋肉の損傷を防ぎ、筋肉増大の下となる。
    ・アクチン、ミオシンの主成分はBCAA 筋肉は損傷と回復の繰り返しで発達するが、その時に材料となるBCAAが無いと筋肉の修復が十分に行われない。
    ・BCAAの他、グルタミンも同様の働きをする。アルギニンは成長ホルモンの分泌に関与、さらにNOを介した血管拡張作用、マクロファージを活性化する。
    ・神経伝達物質のアミノ酸は全て非必須アミノ酸 興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の30-50%はBCAAに由来する。


    BCAAは必須アミノ酸だから食べないことには体内で十分に合成できません。ということはあらかじめ筋トレの前にBCAAやサプリメントを取り入れたらよいのでしょうか。
    江戸時代にはもちろん、サプリや筋トレなどあるはずも無く、ジムや鉄アレイや舗装された道路が無い環境を、わずかな栄養素(しかも低タンパク・低脂質・高糖質 …玄米のおにぎり・梅干・味噌大根の千切り・沢庵など)で1トンと80kgを3人で押したり↓
    photo_2

    60㎏の米俵を五俵も背負ったり↓
    p1020211

    していたhttp://syokutokenkou.cocolog-nifty.com/blog/cat12611585/index.htmlのだから、現代の栄養学や筋トレが本当に正しいのだろうか?という疑問が残ります。薬についても同様です。

    このチャートを再度取り上げます。
    「素人でもできる健康情報の信頼性を判断するためのフローチャート」

    ①具体的研究に基づいているか。 ・・・体験談は鵜呑みにできない、ということ

    ②研究対象はヒトか 実験動物や培養細胞で効果があっても人間に当てはまるとは限らない。 

    ③学会発表か、論文か 学会発表は審査が甘く提出した原稿が拒否されることはほとんど無い

    ④定評のある医学専門誌に載った論文かhttp://www.metamedica.com/news2002/howto08.html

    ⑤研究デザインは「無作為割付臨床試験」や「前向きコホート研究」か http://koujiebe.blog95.fc2.com/?mode=m&no=1980&cr=4c88b7e37eb36b2f7b7cb5fc58a9971d

    ⑥複数の研究で支持されているか


    岡田正彦著「検診で寿命は伸びない」によれば、以下の事実は前向き研究で明らかになっています。

    ・血液を固まりにくくする、とされているアスピリンは調節が難しくコントロールは不可能に近いこと、プラセボと比べて寿命に全く差が無く、しかも出血しやすい、という副作用がある
    ・同じくワーファリンにも飲んでも飲まなくても寿命に変わりなし
    ・長い年月にわたって降圧剤を飲み続けると心筋梗塞、自殺、事故で死亡する割合が高くなる。副作用でコレステロール値や中性脂肪を上げてしまう。
    ・アリセプト 効果なし

    よく処方されているこれらの薬は効かないどころか副作用というおまけまでついているのです。
    さらに前向き調査から検診を受けても寿命に変わりは無く、検査値を薬で下げても寿命は伸びないのでした。
    メタボにしても日本ではメタボとされる基準こそが最も健康な群なのに、健康の基準値を下げて無理やり病人を作り出し、病院と製薬会社を儲けさせていることを記事に書きました。http://blog.livedoor.jp/suchan4wd6/archives/5912861.html
    福島原発事故後、食品の放射能汚染基準値を大幅に緩和してしまったことも何度も取り上げました。

    薬、検診、メタボ、放射能・・・ 製薬会社、病院、食品業者が儲かるためにいずれも厚労省が認可したり基準値を自由に決めているのです。
    船瀬俊介「クスリは飲んではいけない?」には、製薬企業が政府やマスコミのスポンサーなので「政府は薬物乱用には警鐘を鳴らしているのに同様の中毒作用を持つ市販薬、処方薬の批判はタブーにされている」と書かれていました。
    クスリは飲んではいけない!?
    クスリは飲んではいけない!?
    クチコミを見る

    東電が政府、マスコミのスポンサーであった構図と一緒です。

    ・メタボ検診は健康人を病人に仕立て上げて薬漬けで儲けるのが狙い。製薬会社がガイドラインを作って医師に多額の寄付

    muscle20

    高血圧、メタボなど…指針作成医9割へ製薬企業から寄付金

    高血圧、メタボリックシンドロームなど主要40疾患の診療指針を作成した国公立大学医学部の医師の約9割が、その病気の治療薬を製造、販売する製薬企業から、寄付金を受領していることが、読売新聞社が国公立の50大学に情報公開請求したデータでわかった。
     48大学のデータを基に、がん、高血圧、糖尿病、ぜんそくなど主要な病気の指針40種類について、作成に携わった医師延べ276人の寄付金の受領状況を調べた。その結果、87%にあたる240人が、指針ができた年までの3年間に、それぞれの病気の治療薬を製造、販売する企業から、教官または所属講座あての寄付金を受領していた。
     寄付金額は、生活習慣病関連の指針で特に多く、今春から始まる国の特定健診・特定保健指導の基になる「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」(05年作成)の場合、作成委員会メンバーのうち国公立大の医師11人全員に、02~04年の3年間で、高血圧などの治療薬メーカーから計約14億円の寄付があった。
    (2008年3月30日03時03分 読売新聞)

    ・「日本版メタボの基準を作った張本人は、日本肥満学会と日本動脈硬化学会を牛耳ってきた松澤佑次である。彼が2003年度まで教授を務めた大阪大学医学部・第二内科(現在の大学院医学研究科分子制御内科学)に対する奨学寄付金を調べると、2000年度から05年度まで六年間で、8億3808万円で、そのほとんどが製薬会社の寄付金だった。ずば抜けて多いのは三共(現在の第一三共)の1億1600万円。この会社は日本で最大シェアを持つコレステロール低下薬(メパロチン)の製造・販売で年間2000億円を売り上げている」
    ・インフルエンザワクチンは年間3000万本近くも製造される、巨大利権 ワクチンを打っても喉や鼻に抗体ができない=効かない インフルエンザ流行前に希望者全員にワクチンを接種するのは世界でも日本だけ
    ・タミフルやリレンザなど抗ウィルス薬を投薬してもインフルエンザには無効(アメリカ疾病対策センター)。にも関わらず全世界売り上げの75%を日本で消費している。
    ・毎年がん死亡とされている34万人のうち8割、27万人は抗がん剤の副作用で亡くなっている。
    ・白血球ががん細胞をやっつけるのに、抗がん剤は真っ先に白血球を攻撃する。病気にならないためには白血球を働きやすくすることが大事 そのために身体を温め、空腹にする。(石原結実)
    ・戦前戦後180mmHgだった高血圧の基準は2000年、170に引き下げられ04年に140、そして08年メタボ検診基準では130にまで引き下げられた。ハードルを下げたのは日本高血圧学会
    ・世界中に名だたる製薬会社は降圧剤の開発に余念が無い。日本の薬の売り上げトップは降圧剤 70歳以上の2人に1人は服用している。高血圧治療を受けた人は受けなかった人よりも5倍も死亡率が高い。脳梗塞のリスクは3倍 
    ・世界で最も売り上げの多い薬は抗脂血剤 コレステロールは240-260と高めの方が長生きするのに、130~140mg/dlが正常とされてしまったために飲まなくても良い人たちが無理に薬を飲まされている。
    ・BMI 35以上、最高血圧180mmHg以上、中性脂肪500mg/dl以上、空腹時血糖126mg/dl以上は疾患発生の危険があるという科学的根拠 さらにメタボの基準であるBMI 25、最高血圧130、中性脂肪150、空腹時血糖100は死亡率が最も低く健康 薬で無理にやせれば却って癌になりやすい。
    ・医学部では治療法を教えない。製薬会社に覚えのいい教授がガイドラインを作り、卒後は厚生省のお墨付をもらったガイドラインを頼りに治療している。(安保徹)

    (新潟大学大学院免疫学・医動物学分野 教授 安保徹 インタビュー動画 30分過ぎあたりから、ミトコンドリアが育ちやすい様に、解糖系が嫌うように身体の内部環境を整える、という話が面白いです。 ①仕事のように身体を温める ②酸素を取り入れるために深呼吸する ③野菜、海草などでカリウムを摂取する ④感謝して生きる)

    薬を飲めば飲むほど病院と製薬会社が潤います。
    薬や検診、人間ドックは厚労省、製薬会社、医者の儲けのためにあるのであって私たちのためにあるのではない、ということです。

    筋が傷害を受けたときどうやって元通りになるか、或いは筋トレで筋力Upするメカニズムが知りたいと思いまとめてみました。

    ・人間の身体の大部分は心臓よりも下にあるから、心臓のポンプ作用だけで全身の血液循環を促せない。自力歩行でミルキング効果=筋肉ポンプが促され全身、脳への血流が増える。
    ⇒脳に大量の酸素、栄養が送り込まれるので脳は活性化する。
    ・脳が活性化すると前頭前野は脳全体に神経細胞の活動を促す。このときNGF(神経細胞を成長させる作用があるたんぱく質)が分泌される。

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    ・筋原線維が集まって筋線維ができ、普段はグルグルとらせん状のようになっているのが、疲れがたまると引っ張られて緊張したままになり少しの衝撃で切れやすくなる。
    ・筋肉の線維が切れると傷口を守ろうとして周辺の筋肉が硬くなる。=防御反応
    この反応によって循環障害が起きる。循環障害が続くと嫌気的代謝となり乳酸が蓄積する。
    乳酸が溜まるので筋肉はより硬くなる。
    ・硬くなる部分は日が経つと移動する。これは患者が気になる部分を叩き、その衝撃で新たな患部が出来るから。
    (久野信彦「老筋力」祥伝社)

    老筋力
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    筋原線維、つまりはフィラメントは疲れると緊張が高くなり、そのために切れやすい=筋損傷を受けやすいようなのですが何故疲労で緊張するか?はよく分かりませんでした。細胞を作るのにタンパク質は重要なわけで、そもそもどのくらい細胞はタンパク質でできてるか、その種類などよく知らないので、永田和宏「タンパク質の一生」岩波新書 をまとめてみます。
    タンパク質の一生―生命活動の舞台裏 (岩波新書)
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    ・食品として摂取したタンパク質をアミノ酸にまで分解し、再びアミノ酸を継ぎ合わせてタンパク質を作り出すサイクルこそが生命活動の根本
    ・人の細胞の数は約60兆個 1ミリの100分の1程度の細胞の核の中にあるDNAを引き伸ばすと1.8mにもなる。
    ・人の体内にあるDNAを一直線に継ぎ合わせると1000億キロm これは太陽と地球を300往復できるくらいの長さ
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    ・一つの細胞の中には約80億個のタンパク質があり、常に分裂と生成を繰り返している。もっともアクティブな細胞で一秒に数万個
    ・アクチン、ミオシンは筋肉だけでなく、多くの細胞の中にもあって、細胞そのものの運動を担っている。またアクチンは細胞の形を保つ、柱や梁のような働きもする。
    ・タンパク質とは、「アミノ酸が一列につながったもの」アミノ酸を作る原子は酸素・炭素・硫黄・水素・窒素の5種類に限られる。
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    ・アミノ酸はアミノ基とカルボキシル基をもった化合物の総称で、その基本構造はどのアミノ酸も一緒 ただし「側鎖」という少しづつ構造の違った枝を持ち、この違いで個々のアミノ酸の性質が異なる。
    ・20種類のアミノ酸は「ペプチド結合」と呼ばれる結合様式で継ぎ合わされて一本のひもでつながっていく。DNAの遺伝情報はアミノ酸を一列に並べる、その順序である。
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    ・アミノ酸は20種類、10個のアミノ酸が組み合わせてできれば20の10乗で10兆通り、多くのタンパク質は100から500個程度のアミノ酸がつながって出来ているから、作られる得る種類は20の500乗通りにも及ぶ。
    ・細胞が細胞であるためには2つの条件が必要 一つは膜で囲まれた、独立した存在であること もう一つは自分の情報を元に、自分のコピーを作れること
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    ・核以外のものを細胞質という。細胞質は細胞内小器官(オルガネラ)とそれ以外(サイトゾル)とに分かれ、タンパク質の生成には小胞体というオルガネラと、サイトゾルが重要
    ・小胞体では非常に活発にタンパク質が合成されるので小胞体内タンパク質濃度が高い。
    ・ミトコンドリア(一つの細胞に100-2000個存在)はもともと人とは違う生物、バクテリアで自分自身の遺伝子を持ち内部で独自にタンパク質を作り勝手に分裂する。酸素を利用して細胞内エネルギーであるATPを作るが、効率的に生き残るために人の体内に住み、共生(ミトコンドリアは宿主にATPを供給、宿主はお返しにミトコンドリアの生存に必要なタンパク質を供給)したと考えられている。
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    ・生物は糖や脂質など様々な高分子物質を作り出しているが、DNAには書き込まれていない。DNAが持っているのはこれら糖や脂質を作り出すために働いているタンパク質(多くは酵素)の情報である。
    ・DNAはアデニン、グアシン、シトシン、チミンという4つの塩基がつながった構造をしており、二本の鎖がそれぞれ向かい合う。つまり一方の鎖で一個の塩基が決まればそれに向かい合う塩基は自動的に決まり、結果的に同じ情報を反対向きに蓄えている。これは一方の情報に何らかの異常が起こっても、もう一方の鎖が正しい情報を修復できるように、情報を二重に保存して正確に親から子へ情報を伝達する戦略でもある。
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    ・RNAは一本の鎖で出来ている。従って何か異常が起きると参照すべき相対鎖が無いので修復が出来ず、全く違った遺伝子になってしまう。
    ・DNA情報を鋳型にしてRNAに伝えるのが転写 核膜孔を通ってサイトゾルに移送され、塩基配列をアミノ酸配列に翻訳する。
    ・mRNAの持つ塩基情報は4種類、ここからアミノ酸20種を作るために、三つの塩基情報を一つの情報として読む(4×4×4=64)ことでアミノ酸情報を得ている。この三つ一組の暗号をコドンという。
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    ・リボゾームはこの暗号を読みとってそれに対応するアミノ酸をつなげる。
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    ・アミノ酸をつないでポリペプチドというひもを作っても、そのままでは単なる紐でしかない。機能をもつためには、それが折りたたまれて3次元の構造を作ることが必要で、それをフォールディングという。
    ・生成途上のポリペプチドが正しく作られるようにフォールディングをアシスト、その成熟を助けるのが分子シャペロンというタンパク質
    ・例えばHSP70は細胞が高い温度(40度以上)にさらされると誘導されるシャペロンである。
    ・腫瘍組織は正常組織に比べて低栄養、低ph、低酸素状態である。腫瘍組織の血管は未熟なので血流によるクーリングの効果が弱く、温度が高くなりやすい。温熱療法でがん細胞のタンパク質を熱変性させようとしてもストレスタンパクが守るので、その効果を弱めてしまう。
    ・インスリンは低分子タンパク質 血中1mlに70-120mgのブドウ糖があるように調節されている。
    ・肝硬変、肺線維症(間質性肺炎が進行したもの)、動脈硬化、ケロイドなど線維化疾患はコラーゲンが異常にたまる病気 HSP47はコラーゲンの合成に関わるシャペロンなので、この働きを抑制させる研究が病気の治療法として期待されている。
    ・タンパク質の寿命は数分から、ミオシンやヘモグロビン、目のレンズを作るクリスタリンなどのように数十日から数ヶ月の寿命を持つものまである。
    ・タンパク質に限らず、細胞も一年経つと身体を構成する90数パーセントの細胞が入れ替わる。
    ・神経幹細胞からは日々何千という細胞が作られるが大部分は壊れてしまう。
    ・T細胞は例外で、いったん壊れたら再生しない。
    ・ネクローシス、壊死が細胞の事故死なら、アポトーシスは細胞の自殺 カズパーゼというタンパク質分解酵素が細胞の死を誘導する。
    ・遺伝病と神経変性疾患はタンパク質合成と密接に関係している。
    遺伝子変異によるタンパク質の機能喪失の例としてフェニルケトン尿症、血友病、白内障(クリスタリンのフォールディング異常で水晶体が濁る)、糖尿病(インスリン遺伝子が突然変異する場合がある)、
    神経変性疾患としてはアルツハイマー、パーキンソン、ALS,プリオン病、ハンチントン舞踏病など 神経幹細胞が神経細胞を新生はするが、大部分の神経細胞はある年齢以降はほとんど増えず死んでいく一方である。したがって神経細胞に突然変異が起こるとその変異を抱えたまま長期間生存しなければならず重篤な神経変性疾患として症状が現れる。どれも原因は遺伝子から作られるタンパク質が異常なフォールディングをして凝集体を作るために神経細胞が死んでしまうという点で共通している
    ・ハンチントン舞踏病はハンチンチンというタンパク質の異常が原因で起こる。 ハンチンチンの中でグルタミンが繰り返し並ぶ(グルタミンリピートという)と凝集体を形成しアミロイドという線維構造を作って成長する。その伸長に比例して脳の萎縮も強く、発症年齢も若く現れる。
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    (AB 黄色蛍光タンパク質で可視化したグルタミン150回リピートのハンチンチン このような凝集塊を持った細胞は、アポトーシスによって死ぬことになる。)
    ・神経細胞以外の細胞でもポリグルタミンの凝集は起こるが、ポリグルタミンタンパクの毒性で細胞が死んでも、それ以外の細胞の増殖で組織再生できる。神経細胞の場合はほとんど再生が期待できない。
    ・プリオン病の場合はDNAが全く関係しない。BSEに感染した牛を食べるだけで、すなわちタンパク質が細胞に入り込むと感染が始まる。熱にも強く、少しでもプリオンが入り込むとすでにあるプリオンタンパクを巻き込んでどんどん勝手に増殖、変性する。
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    ・アルツハイマーはアミロイド前駆体(APP)が特定の場所で切断されると凝集、アミロイド線維を形成して神経細胞のアポトーシスを起こす。
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    ・プリオン病もアルツハイマーもタンパク質の不安定性のためにタンパク質の凝集体を作り、それが細胞に毒性を与えている。フォールディングや品質管理が破綻した病気はもともと身体の一部を構成しているタンパク質なのでその治療法が難しい。がん細胞も細胞本来の機能を喪失している以外は普段の細胞と変わらない。他から進入してきた細菌を殺す、という治療法は使えない。


    タンパク質は20種類のアミノ酸から作られ、その種類はおおよそ5~7万種類と推定されていること、その一生は短く数分から、一日にタンパク質のうち2から3パーセント、180から200グラムが古いものから新しいものに変わっていることが分かりました。ミオシン、アクチンはその中でも比較的寿命が長いようですがそれでも数ヶ月で筋も新陳代謝を繰り返しています。

    「アミノ酸が連なったポリペプチドのヒモが取り得る立体構造の場合の数は膨大であることがわかる。たとえば、アミノ酸が2個並んだジペプチドが取り得る構造が3通りとしてもアミノ酸が101個並んだら3の100乗という天文学的な場合の数になるのだ。この膨大な中から1秒も経たずに一つの天然構造(自由エネルギー最小の状態)にフォールディングが起こる」
    「この複雑さにより、アミノ酸配列がわかってもタンパク質の立体構造をコンピューターで正確に予測するのは今でも難しい。世界中の計算科学者がタンパク質の立体構造予測コンテストを行うくらいなのである」
    田口英樹のサプリメントより


    タンパク質の生成、品質管理、輸送システムなどの中でも、特にフォールディングに関わるところは興味を持って読みました。その殆どはフォールディングしても失敗作として壊してしまうそうです。
    筋線維(骨格筋細胞)は数千個の細胞からなる、巨大細胞です。

    ・筋原線維が集まったものが筋線維(骨格筋細胞) 骨格筋細胞の肥大はフィラメントの数が変わらず、それぞれのフィラメントが太くなることで筋原線維の収縮力を増やす。
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    (池田和正「トコトンわかる基礎神経科学」オーム社)
    トコトンわかる図解 基礎神経科学
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    ・細胞核内のDNA情報はmRNAに転写、mRNAのミオシンやアクチンのアミノ酸配列情報はリボゾーム内でたんぱく質の一次構造に、分子シャペロンは一次構造を三次構造に変化(フォールディングという。)させミオシン、アクチンなど筋線維を構成するたんぱく質を合成する。
    ・ミオシン、アクチンは集積してフィラメントを作る。
    ・たんぱく質の合成量が減れば筋線維は萎縮する。
    ・筋が肥大するには筋線維が肥大する方法と、筋線維が筋サテライト細胞が増殖することで線維の数が増える方法の2つがある。(望月久「筋再生と理学療法」PTジャーナル 2009.7)

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    ・筋小胞体はカルシウムイオンを貯え、小胞体から漏れ出したカルシウムがトロポニン(長いアクチン分子に点々と配置されている、カルシウムイオンと結びつくレセプター分子)につくことでミオシンとアクチンの滑り込みが始まる。
    ・筋線維のほぼ中央には運動神経が分布 運動神経終末は指を広げるようにして指先を筋線維に食い込ませ、シナプスを作る。
    カラー版 細胞紳士録 (岩波新書)
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    筋の新陳代謝としては筋線維=タンパク質とサテライト細胞から骨格筋細胞への再生という二通りの方法があります。骨格筋細胞には通常の細胞とは比較にならないほど多くのタンパク質=ミオシン、アクチンが集まっており「ほとんどタンパク質でできているんじゃないか」と思えるほどです。

    ・人体の質量40%を筋肉が占める。
    ・筋は中胚葉から作られる。まず筋芽細胞 線状に配列、融合して筋管 筋管が成長して筋線維=細長い一つの多核細胞 融合しなかった筋芽細胞はサテライト細胞となって筋線維の周囲に残る。

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    ・サテライト細胞はいつでも筋になることのできる予備軍 断裂などの障害、トレーニングの後などに新たな筋線維を再生する。
    ・サテライト細胞は環境、運動に応じて遅筋にも速筋にも変われるだけの柔軟性がある。

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    ・断面積は同じでも機能的断面積は羽状筋の方が平行筋(紡錘状筋)よりも大きい。力が出せる代わりに大きく、速く収縮できない羽状筋は伸筋に、力は出せないが、速く、大きく収縮することの出来る平行筋は屈筋に多い。
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    ・伸筋は動きの速さや大きさより力を重視したローギア 屈筋は力より動きの速さや大きさを重視したハイギアにデザインされている。
    ・従って伸筋トレーニングでは大きな筋力を 屈筋トレーニングでは広い可動域を重視する。
    ・トレーニングをすると筋線維は遅筋型へと変化 廃用では速筋型に
    ・平滑筋はフィラメントの配列が不規則 太いフィラメントが比較的自由に動き回れるので伸び縮みに適している。
    (石井直方「筋肉学入門」講談社)

    筋肉学入門――ヒトはなぜトレーニングが必要なのか?
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    フィラメントの配列を活かして伸筋、屈筋のトレーニング方法を変えると、細胞肥大=フィラメントを太らせるのに有効なようです。
    またフィラメントも細胞も新陳代謝を繰り返すわけだから、ミオシン、アクチンフィラメントがより多く、正しくフォールディング⇒成長⇒輸送されるために分子シャペロンに働きかける方法もあるだろうという予想はつきます。これがHSP70を活かした筋トレなのだろうと思いました。

    もう一つ、筋が再生するにはサテライト細胞が骨格筋細胞に変わる必要があります。
    詳しくはhttp://blog.livedoor.jp/suchan4wd6/archives/5904179.htmlに書きました。

    1 アポトーシスとは

    病気の原因は外から来るもの(外因)と身体の内にある因子(内因)に分けられる。外因の代表的なものは怪我(外傷)だが、他にも放射線、紫外線など物理的なもの、大気汚染、薬剤など化学的なもの、細菌、ウィルスなど生物学的なもの、また栄養不足、酒、タバコ、運動不足などの生活習慣も外因と言える。
    内因の代表的なものは遺伝。
    これらを細胞レベルでみると細胞の表面、細胞膜は脂質でできており膜には細胞の内外を連絡したり必要な物質のやり取りをするための機能を持ったたんぱく質分子(レセプター、受容体)が浮かんでいる。

    ある物質が体内にやってきて(外因)、細胞に影響を与える場合その情報が細胞内に変化を起こさせるかどうかはレセプターの有無や多少という内因が結果を左右する。
    また、この後に起こる細胞内の変化にはそれを抑制する因子と促進する因子がある。このいずれかを出すのも内因である。

    例えば糖尿病が起きる仕組みについて。インスリン受容体にインスリンがくっつくと、糖分が細胞内に取り込まれる。糖尿病はインスリン受容体が働きにくい、受容体の数が少ない、受容体の感受性に異常があってインスリンを感知できない、といった理由で細胞に取り込まれなかった糖が血液中をグルグルめぐることで糖が尿に漏れ出て「糖尿」になる。

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    血液内に糖分が増えるとたんぱく質と結びついてAGEなどの物質に変わる(糖尿病検査に用いられるHbA1cも糖とたんぱく質の結合物)。AGEは血管の内皮細胞を傷害したり血管壁にある膠原線維を硬くしたりして動脈硬化を促進する。特に毛細血管レベルに障害を起こすので網膜症、神経症(末梢神経を養う毛細血管の障害)、腎臓病などになる。
    血管が詰まることによって起こる心筋梗塞や脳梗塞も糖尿病が危険因子となる。
    また、糖尿病になると感染症にかかりやすく、治りにくくなる。高い糖分がばい菌に栄養になることに加えて高血糖による浸透圧の変化やそれによる脱水、白血球の機能異常も関係する。
    足先の壊疽は神経の障害によって感覚に鈍くなり怪我に気づかなくなる⇒傷を治すために必要な物質を毛細血管が運んで来れない、という要因で起こる。
    血管は全身を巡るのでさまざまな臓器の障害や組織の異常を引き起こす。


    これらの傷害について、細胞は元の状態に戻れない(非可逆性)くらい傷つくと(傷害)傷害因子が持続的に加わった結果、死に至る。死に方には二通り、自殺と他殺がある。

    ・他殺の例 血液が通わなくなるとその先が腐って死んでしまう(梗塞)

    ・自殺の例 オタマジャクシの尻尾は切り取らなくても勝手に無くなる。あらかじめプログラムされた細胞の死 これをアポトーシスと言う。

    生きている身体の中で細胞や組織が死ぬ(壊死)と、細胞質は壊れ、細胞膜が敗れて中身が流出し炎症反応を起こす。
    一方アポトーシスは細胞が小さな欠片に砕け散り、マクロファージにより速やかに片付けられ炎症反応は起きない。

    アポトーシスは計画された細胞の死だが、本来起こるべきアポトーシスが起きないと有害細胞が除去されないで増え続けてしまう。その代表的なものが癌 
    癌の発生にはがん遺伝子とがん抑制遺伝子が複雑に関与する。免疫システムから生き残った癌細胞がアポトーシスを起こすように誘導できないと無制限に増殖を始める。

    反対に、アポトーシスが亢進して正常な細胞がたくさん死んでしまう疾患がある。例:アルツハイマー

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    (脳の中にβアミロイド蛋白という特殊なタンパク質が沈着することで神経細胞のアポトーシスが誘発され、神経細胞が死んで脱落していく。進行すると脳全体が萎縮する。)


    2 組織を修復する仕組み


    細胞が死んでしまっても他の細胞が分裂して補えば元通りになる。

    例えば血管再生について
    血管を作るときは「新しい血管が必要」というシグナルが血管新生促進因子がマクロファージや白血球から出される。
    シグナルが血管の壁に届くと、血管内皮増殖因子を受け取った内皮細胞が血管の外に芽を伸ばすため血管の壁に穴を開ける。
    内皮細胞の周りには基底膜、さらに周皮細胞や結合組織に囲まれ始め新しい血管が出来る。


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    新生の際は余計なところに枝を出さないように制御する必要がある。そのときはアポトーシスのスイッチを入れて新生血管を消去する。

    臓器や組織には結合組織という細胞同士を結びつけて組織の構造を保つ役目をする組織がありこの中に線維組織や血管、リンパ管がある。
    傷が出来ると結合組織の中にある線維芽細胞(欠損部を穴埋めし、かつ小さくする材料、膠原線維を作り出す細胞)が反応して肉芽組織(①いらないものを片付けるマクロファージ ②輸送路として増生する毛細血管 ③線維を作る線維芽細胞 の3つを含む組織)の増生が始まる。

    このような臓器、組織の再生能力はそれを構成している細胞が細胞分裂を繰り返せるかどうかにかかっている。細胞は一般的に分化(細胞が特別な形や機能を持つようになること)するほど再生能力が低くなると考えられている。したがって分化した細胞を増やすのであれば外・中・内胚葉系の手前の状態にある細胞=組織幹細胞(体性幹細胞)に働きかける必要がある。
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    幹細胞は、肝細胞、膵臓細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、血管内皮細胞、心筋細胞などに分化、成熟する

    また老化によっても細胞の再生能力が衰える。これに関わるのが染色体の末端についている特別な塩基の繰り返し構造=テロメア
    細胞分裂の際に遺伝子の複製が行われるたびに塩基の繰り返し構造が一つ失われていき、テロメアが無くなれば分裂できなくなる。
    テロメラーゼはテロメアを伸ばすことの出来る酵素で、もし細胞がテロメアを使い切ってしまう前にテロメラーゼでテロメアを作ってやれば、その細胞はまた分裂を繰り返すことが出来る。

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    (ここまで 田村皓一 「よく分かる病理学の基本としくみ」 秀和システム より)


    3 サルコペニア

    サルコペニアは筋細胞のアポトーシスである。以下定義、説明を転載する。

    サルコペニア(Sarcopenia)とは,骨格筋・筋肉(Sarco)が減少(penia)していることです。狭い定義では加齢に伴う筋肉量の低下1),つまり老年症候群のひとつです。筋肉量は30 歳ごろがピークであり,その後は加齢とともに低下します。一方,広い定義では,すべての原因による筋肉量と筋力の低下を意味します2)。70歳以下の高齢者の13-24%,80歳以上では50%以上に,サルコペニアを認めるという報告があります1)。

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     サルコペニアは高齢化が進む日本で,深刻な健康問題となり得ます。例えば四肢体幹の筋肉,嚥下筋,呼吸筋のサルコペニアが進めば,それぞれ寝たきり,嚥下障害,呼吸障害となります。いずれもリハビリテーションの重要な対象です。寝たきりと嚥下障害の原因疾患の第1位は脳卒中ですが,第2位はサルコペニアだという仮説もあります。海外ではサルコペニアへの関心が高まり,『Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle』という雑誌も創刊されましたが,日本での関心は低いのが現状です。

    「筋肉は健康のバロメーター  サルコペニアを知ろう」 若林秀隆
     
    http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02920_02

    また、老化骨格筋ではアポトーシス核が顕著に増加している、との報告もある。
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    「小胞体ストレス(細胞内外からのストレスにより小胞体内部に変性タンパク質が蓄積することにより生じるシグナル)がアポトーシス核増加の誘導因子となる。」
    (緒方 知徳 「老齢性筋萎縮におけるアポトーシスの誘導と小胞体ストレスの活性化」 上原記念生命科学財団研究報告集, 22(2008)


    特徴
    速筋線維に著しい筋萎縮(不活動の場合は遅筋線維)、神経原性の病理的変化、下肢の筋力低下が著しいことなど(阪井康友「サルコペニアと筋力強化」PTジャーナル2009、7)
    要因
    低栄養:慢性的低栄養は筋たんぱく質を分解し筋肉の喪失を起こす。体重から脂肪を除いた除脂肪体重(LBM)が低下すると免疫能が低下し、肺炎などの感染症を起こしやすくなる。LBM30%以上低下で歩行困難
    α運動神経数の減少:60歳を超えると急激に運動ニューロンは変性と脱落を生じる。
    酸化ストレス:老化した筋は酸化ストレスを受けやすい。ミトコンドリアDNA(ミトコンドリアの機能低下によって速筋萎縮)など修復作業はHSPが請け負うが、HSPも加齢により機能低下する。
    体液性の因子:成長ホルモンやインスリン様成長因子(IGF)など筋肉量に影響するホルモンが加齢と共に濃度が低下する。免疫能の低下により身体は慢性的な炎症反応を来たす。それにより炎症性サイトカインが筋肉の異化作用を亢進、サルコペニアに至る。
    (阪井康友「サルコペニアと筋力強化」PTジャーナル2009、7)
    他、筋線維数の減少、活動性の低下などが挙げられる。


    指標
    下腿三頭筋周囲径、血中ビタミンD濃度低下などがある。(鈴木隆雄「アンチエイジングと生活習慣」PTジャーナル 2009、10)

    サルコペニアとしての筋萎縮は加齢と共にゆっくりと進行するのに対して廃用性筋萎縮は比較的短期間で引き起こされる。(後藤 勝正 「宇宙環境暴露および老化による骨格筋の萎縮」宇宙航空環境医学 Vol. 44, No. 2, 49-58, 2007 http://www.sasappa.co.jp/online/abstract/jsasem/1/044/html/1110440201.html)また、廃用性筋萎縮はサルコペニアの外因である。

    ここまでのまとめ
    年を取れば、(放っておいたらなおのこと)細胞はどんどん死んでいく。少しでも食い止めるためには細胞が受精卵から分かれて各胚葉系から最終段階まで分化する手前、幹細胞に働きかける。例えば赤血球は細胞分裂しないが造血幹細胞に働きかければ増やすことが出来る。(②に続く。)

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