マイケル・ブース
寺西のぶ子 訳
亜紀書房  2013

巻末の筆者紹介によると、ブース氏は、イギリスのトラベルジャーナリスト、フードジャーナリスト。
フランスの有名料理学校コルドンブルーで一年間修業するなど、あくなき食への好奇心を持つ人物、だそうだ。
えー、でも、イギリスって、先進国中で断トツに食文化の乏しい国だよね。
かの国人の味覚の遅れや非グルメ文化は、先祖代々DNAに組み込まれているんじゃ・・・
など、斜にかまえた、恐いもの見たさで読み始める。

どうやら夫婦そろって好奇心旺盛らしく、6歳と4歳の坊やを連れ、東京→北海道→京都・大阪→福岡→沖縄→東京と、各地でマンスリーマンションやら京都の町家などを利用しつつ、三ヶ月間にわたる長期滞在。
その間、ある程度事前の情報や紹介などを駆使しつつ、それでも現地では予定外の事態に見舞われたりしながらも、土地土地の食を味わいつくし、食を通して日本の文化や歴史や人との出会いを、イギリス人特有のヒューモアと若干の隠し味的アイロニーを交えて綴った食道楽道中記。
たとえば、季節感とか出汁とか、あるいは醤油や味噌、酒などの作り方や地域性などなど、日本人なら特に系統だって学習する場はなくとも、とっくに耳にしているような事柄を、まったく無知な外国人向けに噛んで含めるように解説してある文章を読むと、なんだか、こそばゆいような、だけど、ああ、そういえばそうだったなと改めて新鮮、というほどでもないが、受け止めたり。
尾上部屋では、把瑠都が、相撲の型を見せながら、子どもを相手に気前よく転がってくれたり・・・
札幌のラーメン横丁では、サンキューくらしか言えないおばちゃんが子どもにトンボを手渡したり、市場では幅1メートルもあるようなキングクラブを手に持たせてくれたり・・・
筆者が、大人限定の懐石や有名料理学校訪問などへ出かける際は、子どもたちは喜んで奥さんに連れられてポケモンランドへ出かけたり・・・
筆者が子ども達にすすめても、頑として受け付けない料理があったり、逆に、予想外にハマる料理があったり・・・
筆者一人の訪問だったら単なる食レポになるところを、一家で出かけたからこそ、行動が制限された点もあったろうが、幅広い、奥行きのある、食を通しての日本文化体験記になっていた。

昨年、書店で並んでいるのを見たが、大枚をはたく気になれず、図書館予約を数ヵ月待ちで、ようやく順番がきた。
やや長いが、翻訳で日本、それも、いまさら的な事柄を紹介されるという、奇妙なこそばゆさ付きで面白く読めた。