杉山茂樹のBLOGマガジン

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  • [プロフィール]
  • 静岡県出身。東京都在住。AB型
  • スポーツライター
  • 得意分野はサッカーでヨーロッパが厚め
  • W杯は82年のスペイン大会以降、9大会連続現地取材
  • 五輪も夏冬併せ9度取材
  • テーマは「サッカーらしさ」「サッカーっぽさ」の追求
  • 愛称はスギッチ。サッカー番長。スタジアム評論家
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悪いモノを悪いと言えないメディア。かくもストレスフルな日本サッカー界

 五輪のオーバーエイジ枠に、藤春廣輝、塩谷司に続く3人目の選手として興梠慎三が決定したとのニュースを知ったのは、ユーロ2016取材中だった。

 素直に納得できた人、期待に胸を膨らますことができた人は、どれほどいただろうか。オーバーエイジ問題は、観戦のモチベーションに大きな影響を与える重要な要素。エッと肩すかしを食った気分に襲われた人は多かったはず。しかし、その空気が世の中に伝播することはなかった。表だった騒ぎはなにも起きなかった。

「しなやかさと、野性味を繰り返し発揮し続けられるタフさがある。ポストプレーも、裏へ抜け出すプレーも、引いた相手に対しても、カウンター攻撃にも適応できる。リオ五輪で間違いなく攻撃のバリエーションを増やすことができる選手。身体能力の高い相手にも、彼のしなやかさは効果を発揮するはず」

 とは、手倉森監督が語る興梠選出の理由だが、そのコメントをそのまま掲載するメディアが何と多いことか。その言い分に全面的に従ってしまった。早い話がそうなる。少なくとも意見が分かれる案件だ。大袈裟に言えば、候補者は限りく存在した。よって興梠でオッケーだとしても、独自の見解を加える必要がある。批評性ゼロ。為政者に対してあまりにも従順だ。重要案件を物わかりよく、右から左へ素通しする行為、簡単に納得することほど好ましくないものはない。サッカーへの愛を、僕はそこに全く感じない。

 まず「?」から入る。とりあえず問題視してみる。突っ込み所はないものかと首をひねってみる。メディアの役割はそこにある。とりわけサッカーは、その必要が大ありな、正解が見いだしにくいスポーツ。何事も意見が割れがちな競技特性こそが、面白さ、魅力なのだ。世界で最も人気を集める大きな理由の一つに他ならない。

 突っ込めば、その分だけ盛り上がる。喧々囂々の議論に発展する。世界を見渡せば、サッカー好きはたいがいお喋り好きで、そのコミュニケーション力にサッカー人気は支えられている。

 なぜ興梠なのか。オーバーエイジ問題で、盛り上がることができなかった日本。メディアの責任は大きいと見るが、そもそも、その気質がサッカーに適していない。日本サッカーの普及発展を妨げている大きな要素になっている。

 監督が「攻撃的サッカーだ」と言えば、それに従い、そのサッカーは攻撃的だと、何の疑いもなく報じようとする。これは、浦和レッズのペトロビッチ監督とメディアの関係だが、これでは言った者勝ちだ。監督の発言を、フィルターを通さず、そのまま世間に宣伝してくれるメディア。為政者にとっては都合のいいカモだ。

 サッカー専門誌はその昔、もう少し食い下がったものだ。サッカーD誌とサッカーM誌の時代だが、両者の比較では、D誌の方がよりうるさい存在だった。ファンはいまよりサッカー的な香りを味わうことができていた。

 物わかりがよすぎるというか。真面目でなくなったというか、一生懸命でなくなったというか。

 セカンドステージ最下位。年間通算順位17位。降格圏をさまよう名古屋グランパスは、久米社長と小倉監督がホームページ上で不成績を謝罪した。だが、その後の試合でまた敗れたため、今度はファンに向けて説明会を開くのだという。

 今回の名古屋グランパスに限った話ではない。帰路につかずスタジアムに居座ったり、選手、監督が乗るバスに迫ったりするサポーターに、社長、監督が直接頭を下げ、涙ながらに謝罪するケースを、Jリーグではよく見かける。

 僕の知る限り、これは日本特有の現象だ。欧州では見たことも、聞いたことがない。凋落著しいミラン、インテルでさえ、起きそうもない話だ。ウェッティ。センチメンタル。浪花節的なドロドロとした世界を見る気がするが、いつも気になるのは、こうした場合の地元メディアの立ち位置だ。

 ファンがストレスを溜めてしまうのは、メディアがファンとクラブとの間に立てていないからだ。問題点をあぶり出そうとせず、クラブ、監督の言い分を右から左に流そうとする。悪いモノを悪いと言えないメディアの体質が、ファンに悪いガスを溜めさせている。そのガスを抜く役割を果たしていないのだ。クラブにとって都合の悪い記事、ファンの留飲を下げるような記事を書くメディアはほとんどない。

 そうこうしているうちにチームは降格圏。しかしお尻に火がついてもなお、批評性の低い報道に終始する。まるで他人事のように事態の推移を見守る。

 リオ五輪本大会のサッカー競技を、大手ブックメーカーの一つであるウイリアムヒル社はこう見ている。

 ブラジル、アルゼンチンドイツ、メキシコ、ポルトガル、コロンビア、アルジェリア、デンマーク、ナイジェリア、韓国、スウェーデン。日本の名前が出てくるのはこの次、12番目だ。日本語のサイトもあるので、発見できないはずはない。

 日本のメディア関係者も例外ではない。初耳だという人はかなりおめでたい。というか、この仕事に向いていないと思う。たいていが見て見ぬ振りをしている。盛り下がる話をするのは辞めようと、あえて伏せている。視点の提供を避けている。それで「メダル獲得だ!」と騒ぐ行為はかなり愚かだ。そして一方で、興梠問題をスルーする。とてもじゃないが、僕には健全な国には見えないのだ。 

【メルマガ】ロペテギ新監督は停滞するスペインを蘇らせることができるか?

 ポルトガルの優勝に終わったユーロ2016。アウトサイダーと目されたチームの
頑張りが目立った反面、成績上位を予想されたチームは、軒並み期待を下回る内
容だった。簡単に言えば、強いチームがなかった。フランス、ドイツ、スペイン
は大会前3強と言われた。フランスには地の利があり、ドイツは2年前のW杯優
勝国だ。そして3連覇を狙ったスペイン。

 フランスは準優勝したが、優勝チームの器ではなかった。賢さに欠けた。ドイ
ツも2年前(2014年ブラジルW杯)から進歩がなかった。スペインに代わりド
イツの時代が到来か。大会前に漂っていたそうしたムードは、薄らいだ感じだ。
とりわけ、新戦力に乏しい印象がある。

 イングランド、ベルギー、イタリア、クロアチア。3強を追う第2グループも迫
力不足だった。イングランドの駒不足は目に余ったし、ベルギーは反対に有力選
手を擁したが、攻守のバランスが悪く、サッカーの質も低かった。イタリアは相
変わらずサッカーが守備的で、安定的に力を出せなかった。唯一、合格点をつけ
られるのはクロアチアになるが、6試合目(準決勝)、7試合目(決勝)を戦う
に足りる総合力に欠けた。

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日本サッカー停滞の根源。日本人監督のレベルが上がらないのはなぜか

 2014年ブラジルW杯にギリシャ代表監督として臨んだフェルナンド・サントス監督。ユーロ2016を制したポルトガル代表監督は、そのグループリーグの第2戦でザックジャパンと対戦している。退場者を出し10人になりながら、引き分けに持ち込んだことは記憶に新しい。

 代表チームのみならず、ギリシャのクラブチーム(AEKアテネ、パナシナイコス、PAOK)でも彼は、采配を振るった経験がある。

 F・サントス監督に限った話ではない。国外で活躍するポルトガル人監督の話だ。昨季のチャンピオンズリーグに出場した監督は4人。そのうちベンフィカのルイ・ビトーリアを除く3人は海外組(モウリーニョ=チェルシー、ビラスボアス=ゼニト、マルコ・シルバ=オリンピアコス)だ。一昨季はそれらに加え、レオナルド・ジャルディム(モナコ)、パウロ・ソウザ(バーゼル)もいた。ヌーノ・エスピリト・サント(バレンシア→ポルト)、ビクトル・フェレイラ(フェネルバフチェ)、ジョルジェ・ジェズス(スポルティング)など、他にも欧州の上位クラブで監督を務める人物は数多くいる。

 ポルトガル人監督といえば、モウリーニョ。それ以外の監督は、その大きすぎる名前の影に隠れがちだが、いまやポルトガルはよい監督の宝庫と言える。ユーロ2016を前にポルトガルに好印象を示していた僕だが、活きのいい監督が多いことも、それを後押しする要素だった。

 いい監督が多い国はサッカーが強い。活きのいい監督が多い国は勢いがある。ユーロ2016におけるポルトガルの優勝に、僕は必然を感じる。事実この優勝は、F・サントス監督の選手の使い回し術なしに語れないわけで、国としての総合力の勝利といってもいい。

 監督のレベルと選手のレベルは比例する。もっと言えば、メディアの力、ファンの力、協会の力、Jクラブの力等とも深く関係する。いわゆるサッカーを構成する要素は、連鎖しあう関係にある。ひとつだけ突出しているものは本来ない。もし選手の力が突出していたとしても、それ以外が、足を引っ張る要素であるならば、低いレベルで均されることになる。その国のサッカー界のレベル、すなわちサッカー偏差値は、思いのほか上がらない。

 審判の力、解説者の力、実況の力、もっと言えば、選手を取り巻く代理人の力とか、スタジアムの見やすさとか、サッカーを構成する要素は枚挙にいとまがないが、監督の力は中でも大きなウエイトを占める。日本人の監督は、日本人の選手のレベルを押し上げる役を果たしているのか、それとも日本のサッカー偏差値の足を引っ張る側にいるのか。

 日本代表監督を務められそうな日本人監督が見当たらないという時点で、日本人監督は理屈的に、日本人選手に負けていることになる。欧州で活躍する選手は何名かいるが、監督はゼロ。言葉の壁が高そうなのは監督の方だが、ポルトガル人監督が、言葉の壁が高そうなギリシャで活躍する姿を見せられると、言葉の問題も言い訳に聞こえる。

 選手と監督。偉そうなのは監督だ。選手の動きをチェックし、スタメンを決定する。立場的に監督は優位にある。サッカーを構成する要素としても、監督は選手に優位に立っていた方が、丸く収まる。選手のサッカー偏差値が54だとすれば、監督のそれは最低55ないと格好がつかない。代表監督の候補に外国人監督の名前しか挙がらないのは、そうした理由からだ。53の人間が54を指導すれば、54の側から舐められても不思議はない。

「選手のレベルと監督のレベル。高いのは選手。間違いない」とは、現役時代に語った小倉隆史の弁だ。そして彼は、そのことの矛盾についてハッキリ口にしていた。早い話、日本人の監督はもっと勉強する必要があると述べたわけだが、監督になったいまなお、その言葉を覚えているだろうか。彼が監督を務める名古屋グランパスはいま、年間勝ち点16位。降格圏内にいる。不成績をすべて監督のせいにするつもりはない。駒不足甚だしい中、監督を受けてしまった苦労を味わっている最中に見える。監督としての筋は悪くないと思うが、レベル、偏差値となると高い数字は出せない。いまの名古屋の成績を急上昇させようと思えば、選手の偏差値を大きく超える監督でなければ難しい。だが、少なくとも日本人には適任者が見当たらない。95、96年にその監督を務めたベンゲルのような人材は。

 日本人監督のレベルが上がらない理由。考えられるのは、その引退後のあり方だ。将来、指導者になりたいのなら、一からキチンと勉強すべきなのだが、その必要性を感じている元選手は少ない。その大抵が芸能事務所に所属し、芸能的な仕事をこなそうとする。それがスタンダードになっている。小倉もその1人だった。軽妙なトークを武器に、テレビ等々への出演を果たすことが、仕事そのものになっていた。直接仕事にならない現場、契約しているテレビ局が中継しない試合会場には、日本代表戦であっても、ほとんど顔を出さなかった。

 これでは消費されるばかりだ。引き出しの中身が、遠くなりつつある自身の現役時代の経験のみでは、その希薄さに気付かれてしまう。

 解説者、評論家。肩書きは立派だ。しかし、ジャーナリストのような取材活動はできていない。即現金化されない地道な活動には積極的ではない。

 こちらには、彼らから、「文章を書いても儲からないし……」と言われてしまった経験もある。書いたり、メモしたりせず、手ぶらで観戦して、どれほど記憶に留めておくことができるだろうか。喋るだけでは、忘れるのも早い。オリジナルな言葉でサッカーを語れない。ライターには確実にそう見える。

 ユーロ2016。日本のテレビは、現地生中継は最後の数試合だった。ラスト1週間を迎えた頃、解説者もその他スタッフと一緒に日本からやってきた。実際に喋る試合に合わせてやってきたわけだが、そこに無駄は一切なかった。地道さもなかった。大会を通して取材できるメディアパスを保有しているのなら、なぜ単身でもっと早く来ないのか。僕なんかはそう思ってしまう。それではタレントと何ら変わらない。まさに芸能界のノリだ。

 そうした気配が外国の解説者、評論家にはない。彼らはまさに監督予備軍に他ならない。日本人の解説者、評論家とは雰囲気が違う。芸能人色は皆無。この差は大きいと僕は見る。日本のサッカーのレベルを押し下げている最大の要素のようにさえ見える。

 選手と監督はまったく別種の職業だ。異なる努力をしなければ、日本のサッカー偏差値アップに貢献するような、よい監督にはなれない。いまのこの状況が崩れないと、日本のサッカー界はよくならないと僕は思う。

【メルマガ】多くの選手を使いまわしたポルトガル。手倉森監督が参考にすべき方法論とは

 何を隠そう大会前、僕は、優勝はどこかと訊ねられれば「ポルトガル」と答え
ることにしていた。フランス、ドイツ、スペイン、イングランド、ベルギー、イ
タリア、ポルトガル、クロアチア……とは、ブックメーカーがつけた順番だが、
正直、どのチームにもピンと来なかった。「ポルトガル!」は「買う」なら狙い
目のチームという意味だった。 

 重視したのは過去の戦績だ。ベスト8(1996年)、ベスト4(2000年)、準
優勝(2004年)、ベスト8(2008年)、ベスト4(2012年)。安定感は群を
抜く。順番的にそろそろ来てもいいチームと考えた。ギリシャに優勝をさらわれ
た2004年は不運といえば不運。天の配剤に従えば、運が巡ってきても不思議は
ない頃だ、と。

 ユーロ本大会に出場する24チームは、チャンピオンズリーグ(CL)本大会に
出場する32チームより差のない間にひしめいている。実力伯仲だ。本命サイドの
フランス、ドイツ、スペインには、CLのバルサ、R・マドリー、バイエルンほど
の力はない。それ以外の国が優勝する波乱の目は十分あり。本命サイドより穴を狙
う方が大会の特質に合っている、と。

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アフリカのチームに瓜二つ。フランス代表が“格好悪かった”理由

 ユーロ2016は、最後にまたひとつ美しい敗者を誕生させそうなムードだった。決勝戦。C・ロナウドが怪我で担架に担がれて退場した瞬間、ポルトガルの勝利を予想した人はどれほどいただろうか。いなかったと思う。

 勝敗への興味は、すっかり失われようとしていた。エンタメ性についても同様。C・ロナウドのいないポルトガルを、開催国フランスが容赦なく攻め立てる姿を見て、胸が弾むことはなかった。

 スタッド・ドゥ・フランスを埋めたフランス人も、心なしか応援のトーンを下げたように見えた。彼らはけっこう正直な反応をした。C・ロナウドが担架に乗せられ退場していくシーンでは、温かい拍手を浴びせかけ、スーパースターに対し敬意を表していた。

 大幅な戦力ダウンを強いられたポルトガルが、どこまで粘るか。どれほど美しい姿を披露できるか。関心はその1点に絞られていた。

 ところが、ポルトガルはこちらの予想を大きく覆した。延長後半4分、交代出場のエデルが放った一撃で、美しい敗者ではなく勝者に輝いてしまった。

 美しい敗者ならぬ美しい勝者に。

「勝つ時は少々汚くてもいいが、敗れる時は美しく」とは、いまはなきクライフの言葉だが、これは敗者のあるべき姿を謳ったもの。勝者のあるべき姿について語ったものではない。「汚くてもいいが」は、美しいを引き立たせるための表現になる。

 勝者は強者とほぼ同義語。美しいという感じではないが、弱者が勝者に輝くと、美しさを伴う。ユーロとポルトガルで想起するのは、ユーロ2004ポルトガル大会決勝で、地元ポルトガルを破りまさかの優勝を飾ったギリシャに僕は、それを少し感じた。美しいサッカーを見せたわけではないが、痛快劇の主役として世の中を仰天させた。その時、引き立て役に回ったポルトガルが12年後の舞台で、まさかの勝者に輝くとは。

 一方、準優勝に終わったフランス。美しき敗者にもなれなかった。C・ロナウドをラフプレイで退場に追い込んだ時点で、世の中のファンを敵に回すことになった。試合の興味を半減させたという意味で罪は大きいが、肝心なサッカーそのものの魅力にも欠けていた。

 僕らの年代には、フランス代表にいいイメージを持っているファンが多くいる。80年代、プラティニを中心に展開したパスサッカーの影響だ。82年スペイン大会、86年メキシコ大会でフランス代表はいずれも準決勝で敗退したが、その敗れ去る姿は、まさに「美しい」の一言だった。同じ頃のブラジルにもそれは言える。サッカーは勝利だけがすべてではない。美しい敗戦も優勝に匹敵する価値があることを彼らは我々に知らしめてくれた。それは日本人にとってカルチャーショックそのものだった。

 その後、日本代表がW杯本大会にコンスタントに出場するようになり、日本はサッカーに、当事者目線で触れ合う機会が激増。勝利至上主義、結果至上主義が幅を利かせていった。80年代のフランス的な価値観は、みるみる萎んでいった。バランスが悪いというか、サッカーを見る目に余裕がなくなっている。これが、W杯本大会に出場するようになってからの日本の傾向だ。

 美しいサッカーは、常駐しているわけでない。テレビ画面を通して伝わりにくい、空気感のようなものでもある。発見しにくいもの。

 フランス代表からもすっかり拝めなくなっている。フランスは98年W杯、ユーロ2000を立て続けに制し、強者となった。その頃から80年代の美しさは拝みにくくなっているが、現在はさらに拍車がかかっている。それは、アフリカ系選手の存在感が増していることと大きな関係がある。ポグマやシソッコは確かにフィジカルで、凄い選手なのだけれど、サッカー的かと言われると必ずしも100%イエスとは言えない。バランス的にチームに1人で十分。その数が増えれば増えるほど、パワーが雑なものに見えてくる。サッカーに必要な繊細さが表現しづらくなるように思える。

 82年、86年W杯それぞれの準決勝で、フランスを蹴散らしたのはドイツだった。勝者ではあるが悪役。可愛げのない強者だった。しかし今回、ドイツとフランスの関係は逆転した。

 試合を押していたのはドイツ。フランスはPKでラッキーにも先制。後半には、ダメ押しのゴールを奪い2−0で勝利したが、その2点目のシーンでは、ポグバにゴールライン際から決定的なラストパスを送られた。フィジカルにやられた恰好だった。80年代、フィジカルで勝ったフランスに、ドイツはフィジカルで屈した。その褐色のアフリカンパワーに。

 だが、そのアフリカンパワーはコンスタントではない。アフリカ勢がW杯でベスト4入りしたことは過去に一度もない。90年イアタリアW杯の開幕戦で、カメルーンがアルゼンチンを下した時、まもなくアフリカの時代が到来するだろうとメディアは伝えた。アフリカンパワーが世界を席巻すると予想したが、実際はそうなっていない。アフリカ系の選手は欧州サッカー界で、個人として存在感を発揮しているが、代表チームになると空回り。優勝しそうなチームには見えない。今回のフランスがそんな感じだった。フランス代表は、アフリカの代表チームに瓜二つ。優勝するチームには見えなかった。

 実際、決勝では、C・ロナウドがいなくなったポルトガルを下せなかった。開催国にもかかわらず。

 美しい美しくないの前に、格好悪かった。フランスが、アフリカ系のフィジカルを武器に、世界一の座に就くことはあるのか。あるいは、アフリカ系の代表がW杯ベスト4の壁を破ることが出来るのか。そのフィジカルなアクション。サッカーと完全に適合した能力には見えないのだ。 
 

C ・ロナウドを欠いて栄冠。頼りなさげなポルトガル指揮官の見事な采配


開催国という地の利に加え、戦力的な面でもフランスはポルトガルに勝っているように見えた。準決勝までの6試合を振り返るならば。
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優勢なのに負けたドイツ。サッカーはうまいがゲルマン魂が足りない

 マヌエル・ノイアーとアントワーヌ・グリーズマンが対峙する姿を見て想起したのは、今季のチャンピオンズリーグ(CL)準決勝だ。下馬評で5〜6番手だったアトレティコ・マドリードと、バルセロナとともに本命に推されていたバイエルン・ミュンヘンの一戦。
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ユーロの現場で思う。「日本代表はW杯本大会で美しく散れ!」

 終盤に来て、美しき敗者を続々と誕生させているユーロ2016。

 ウェールズの散り方もまた鮮やかだった。

 そのチームの真の姿が見て取れるのは終わった瞬間。どんな終わり方をするか。0−2。ウェールズは完敗だった。ラムジー不在というわけで、ポルトガルになすすべもなくやられた。しかし試合が終了するや、リヨンのスタジアムを埋めた観衆は、敗者をスタンディングオベーションで讃えた。
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【メルマガ】ユーロ2016も残り3試合。本命ドイツは守備的で行くのか攻撃的で行くのか

 先日のドイツにはガッカリした。ボルドーで行われたユーロ2016準々決勝対イタリア戦だ。

 舞台は、この大会に向けて建設された新築スタジアム。設計者はミュンヘンの「アリアンツ・アレーナ」や、北京の「鳥の巣」、バーゼルの「ザンクト・ヤコブ・パルク」、東京青山の「プラダ」等の設計で知られるヘルツォーク&ドムーロンだ。スタジアムに入る時、ここまで胸をときめかせたことはないーーと言いたくなるモダンで斬新な建築物だ。

 エンタメ性は試合前、最高潮に達しようとしていた。

 ところが1−1。ドイツが延長PK戦を制したこの試合。よく使われるのが、死闘を制したとの言い回しだ。しかし、両軍、死にものぐるいで戦ったという印象の試合ではなかった。お互いが外しまくり、9人目のキッカーまで行ったPK戦は確かに死闘らしかったが、それはあくまでも抽選の代用品だ。試合そのものではない。PK戦の内容と試合の内容を一緒くたにするのはナンセンスだ。

 好試合。そうした記述も目に付いた。しかし、僕には試合そのものはとてもショボく見えた。入場時に抱かせてくれたエンタメ性は、試合が始まるとみるみるうちに萎んでいった。
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ユーロ準々決勝。フランスに見る、よくない勝ち方。アイスランドに学ぶ、美しい散り方

 決勝トーナメント1回戦でハンガリーに3−0で快勝したベルギーは、続く準々決勝では一転、ウェールズに番狂わせの餌食になり、敗退の憂き目に遭った。

 サッカーは大勝した次戦、沈黙しがちなスポーツだ。

 7月3日、スタッド・ドゥ・フランスで行われた準々決勝。アイスランドを相手に、前半45分を終了して4−0でリードするフランスを見ていると、その次戦が限りなく心配になるのだった。

 準決勝の相手はドイツ。緊張感溢れる試合になる。そこから逆算すれば、ひとつ手前の試合は、同レベルの緊張感が欲しい。楽勝は避けたい。むしろ好んで苦戦したいほどだ。しかしフランスは、アイスランドを相手に、予想を上回るハイペースで、前半から加点する。次の試合との関係性が難しい試合になっていった。

 4−0になってしまった試合に、いかにして緊張感を生み出すか。監督に求められるものは新たなテーマだ。ピッチ上の選手になにがしかの刺激を与えた方がいい。メンバー交代。布陣変更。どちらかをいち早く行うべき。そんなことを思いながら、後半の観戦に臨んだ。

 スタジアムには多くのアイスランドファンが詰めかけていた。1万人に迫る数はいた。人口32万人中の1万人。だとすれば、国民32人に1人がアイスランドからフランスにはるばるやってきたことになる。後半が始まり、ほどなくすると、スタンドには、アイスランド国歌が響き渡った。国歌にしては少し長めの曲の大合唱が終了したその直後だった。右からの折り返しに、アイスランドFW、シグトルソンが鮮やかに飛び込んだのは。

 フランス代表の面々は、ご馳走を食べ過ぎて、お腹いっぱいという感じだった。このゴールを境に、前向きな姿勢になっていったアイスランドとは対照的な姿を描いた。試合は緩い感じの打ち合いになった。次戦ドイツ戦とは比較にならないであろう低レベルな一戦に。

 フランスはその4分後、ジルーがすかさず入れ返し5−1。後半15分の出来事だったが、デシャン監督は、その1分後、得点を決めたばかりのジルーを下げ、ジニヤックを投入。初めての交代を行った。

 メンバー交代は、その後2回行われた。後半27分(コシールニーOUT、マンガラIN)が2度目で、後半40分(パイエOUT、コマンIN)が3度目だ。しかし、それぞれは少なくとも、もう10分、早く行われるべきだった。

 この試合、最後の得点となったのは後半39分。アイスランドMF、ビルキル・ビヤルナソンのゴールだった。トータルスコア5−2とは、サッカーらしくないスコアだ。フランスにとって、同じ3点差なら3−0の方が、よっぽどよかった。締まった試合をしてドイツ戦に臨みたかったにもかかわらず、それは叶わぬ願いとなった。大一番に向けて、ステップを誤ってしまった。

 片やドイツは、イタリアに1−1。延長PK勝ちだ。内容は褒められたものではなかったが、結果的に緊張感は維持されることになった。試合の終わり方は、フランスの何倍もよかった。

 もう一方の山の準決勝で、ウェールズと戦うポルトガルは、苦戦を繰り返している。90分間の試合で決着をつけたことは、今大会一度もない。緊張感溢れる中での戦いをずっと繰り返しているわけだ。トーナメントの勝ち上がり方という視点で言えば、上々。もし準決勝で、勢いのあるウェールズに大苦戦しながら勝ち上がれば、フランス対ドイツの勝者と、いい試合が出来るのではないか。

 トーナメント戦では、苦戦、接戦はいくらでもしろ。それこそが次に繋がる戦い方だ。ドイツ、ポルトガルは、準決勝から逆算すれば、フランスより断然、よい終わり方をした。

 恐れ入ったのはアイスランドだ。スタンドには、多くの自国ファンが駆けつけたとはいえ、舞台は完全アウェイだ。しかも相手は強者。4−0になれば万事休すだ。濃厚になる敗戦ムードに、心は折れるもの。抵抗力は鈍りがちになるが、彼らはしっかり盛り返した。後半に限ればスコアは1−2。世界に向けて、アイスランドは意地を示す見ことに成功した。

 勝ち目はないにもかかわらず、黙々と追いかける姿には感激する。無欲の尊さを、アイスランドは再認識させてくれた。これぞまさに美しい敗戦。今大会はチーム数が16から24に増えたことで、これまでよりアウトサイダー的なチームの数も同様に増えた。W杯本大会における日本のようなチームが、だ。そして彼らは一様に大健闘。忠実、勤勉、真面目なプレイぶりで、強国を苦しめながら、ウェールズ以外、美しく散っていった。世界に好印象を残しながら。勝つ時は少々汚くてもいいが、負ける時には美しくーーとは、ヨハン・クライフの哲学だが、試合を、大会をどのようにして終えるかは、終盤にさしかかったユーロ2016の現場で、一番考えさせられることだ。

 2014年ブラジルW杯における日本の終わり方、2010年南アW杯における日本の終わり方、2006年、2002年、1998年、過去5大会の日本は、そうした意味ですべて不合格だと僕は思っている。

 次回こそ、美しい散り方に徹底的に拘ってほしい。フランス対アイスランド戦をスダッド・ドゥ・フランスで観戦しながら、僕は強くそう思うのだった。

7月3日。「中田英寿の引退から10年」でフランスの空に想う

 ユーロ2016の取材でフランス各地を訪問中だ。会場のひとつであるリールにも再三、足を運んでいるが、そこで視察中の日本代表監督、ヴァイッド・ハリルホジッチの姿を確認することもできた。

 リールとハリルホジッチと日本人――。この関係で想起するのが、2001−02シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)だ。
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