杉山茂樹のBLOGマガジン

Profile
[プロフィール]
  • 静岡県出身。東京都在住。AB型
  • スポーツライター
  • 得意分野はサッカーでヨーロッパが厚め
  • W杯は82年のスペイン大会以降、9大会連続現地取材
  • 五輪も夏冬併せ9度取材
  • テーマは「サッカーらしさ」「サッカーっぽさ」の追求
  • 愛称はスギッチ。サッカー番長。スタジアム評論家
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    【メルマガ】佳境を迎えているJリーグ。優勝の行方を左右するポジションと選手とは

     終盤を迎え、鹿島と川崎に優勝争いが絞られているJリーグ。前節、首位を行く鹿島が広島に2−0で勝利する一方、2位の川崎は、仙台に逆転勝ちを収めた。両者の勝ち点差5に変わりはなし。得失点差では川崎が上回るので、その差を野球式に言えば、1.5ゲーム差未満となる。

     鹿島に与えられている余裕は、川崎が今後、全勝すれば1敗分しかない。まだまだ予断を許さない状況にあるーーとの想いは、広島戦を見ていると、なおさら膨らむのだった。

     2−0で勝ったけれど苦戦。降格争いの渦中にいる広島相手に、一歩間違えば、引き分けてもおかしくない試合をした。それでも2−0で勝ってしまうところが鹿島たる所以なのだが、それ以上に触れたくなるのは、広島の善戦ぶりだ。鹿島苦戦の原因は、広島の戦い方にあった。

     ヤン・ヨンソン監督が就任したのは7月11日。以降、鹿島戦前までの10試合を4勝4分け2敗で乗りきってきた。2勝5分け11敗だった森保時代とは、全く別のチームかと思わせるほど、見事に息を吹き返した。ヨンソン監督の力を思わずにはいられない。

     森保一前監督との違いは何か。分かりやすいのは布陣だ。前任監督の基本布陣は3−4−2−1。対するヨンソン監督は4−2−3−1。森保時代、後方だったボールを奪う位置が、ヨンソン就任後、上昇した。前線からプレッシャーを掛けていくサッカーだ。サイドの人数も森保式が各1人なのに対し、ヨンソン式は各2人。サイドをウイングバック1人に頼るサッカーから、2人で埋めるサッカーに変化した。

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    いまこそ声を大にして叫びたい「ハリル解任論」

    「心理面、メンタル面。何人かの選手の脆さ、弱さにがっかりした。日本代表でプレーするためには、もっとよく考えなくてはいけない 定期的に出場していない選手でしたけれど、言い訳できないですね」

     ハリルホジッチは、ハイチ戦後の記者会見でこのような選手のダメ出しを何度も繰り返した。「選んだのは私なので、責任は私にある。しっかり批判してください。サポーターの皆さんに謝りたい」。この台詞も幾度となく繰り返した。というわけで、それに従い突っ込ませてもらえば、自分の見る目がないことを、それは素直に認めたことになるのだ。

     就任直後の話なら仕方がない。候補選手の情報をまだ把握できていない段階なら許される話だが、就任後、2年半が経過したいま、それを口にすることは、自分の過去を否定したことになる。

     本番まで、残された試合はもう幾らもない。11月のブラジル戦とベルギー戦はともかく、12月に行われる東アジアE1選手権は、国内組だけで戦う大会だ。来年に入ると(4年前のスケジュールに照らせば)2試合のみだ。3月に1試合。残るは、W杯本大会直前の壮行試合になる。壮行試合は、本大会の登録メンバーを発表した後なので、選考の基準になる試合は6試合。フルメンバーで戦える試合は3試合だ。

     最終コーナーを回り、最後の直線もすでに半分ぐらいの所までさしかかった状態だ。そこで代表監督から「しっかり批判してください。謝罪したい」と言われると、とりつく島はなくなる。期待感は急速に萎み、絶望的な気持ちに誘われる。 

    「メンタル面が弱い」と言われれば一瞬、そうなのかなと思う。だが、長友以外、全取っ替えして臨んだハイチ戦のメンバーは、いわゆるサブ組だ。選手の混乱を、このサブ組の選手のせいにするのは、まさにお門違い。「選んだのは私なので、しっかり批判してください」と言われても、了解しましたと納得する気にはなれない。

     彼らには、スタメンに這い上がろうとする高いモチベーションがあったはず。活躍したい一心で試合に臨んでいたに決まっている。弱いと言うより、混乱してしまったのだ。理由は簡単。このメンバーで試合を戦った経験がないからだ。チームとして機能しそうもないことは、最初から分かりきっていた。にもかかわらず、よい試合をしようとすれば、監督からの綿密なアドバイス、的確な指示は不可欠。選手の高いであろうモチベーションを形に結びつける指導力、すなわち監督力が問われた試合でもあったのだ。

     選手の力不足というより監督の力不足。それが露呈した試合。監督の混乱が選手に乗り移った試合。ハイチに3−3で引き分けた理由を一言でいうなら、采配ミスだ。ハリルホジッチの限界が見えた試合となる。

     いまこそ声を大にして、監督解任を叫びたくなる。

     そのタイミングは、いままでにも幾度かあった。この試合に敗れたら解任やむなしと、協会サイドが動きだそうとしたことも、実際にあったと聞く。だが、本大会出場を決めたいま、最低限のノルマは果たしたので、言い出しにくいムードが形成されている。

     本番の足音が迫ってきたこの時期に、監督を変えるリスクの方が大きいと考えているからだろう。少なくとも日本に、そうした前例がないことも、そうしたムードを後押しする大きな原因だ。

     協会にその力があるのか。それなりの監督を連れてくる力があるのか。僕でさえ、それについては懐疑的になるので、多少の躊躇いはあるのだけれど、やはり、ここは解任を叫ぶべきタイミングだと思う。なにより回復しなければならないのは、萎んでしまった期待感だ。監督交代はその一番の起爆剤。このタイミングで監督交代が行われた例は、他国には頻繁にある。

     ハイチ戦後の会見でハリルホジッチはその後半部分で、こんなことを言っていた。「最終予選を突破し、皆さんが熱狂に包まれている時、私は後ろの方で、ちょっと待てよの思いでいました」と、自分がその時、いかに冷静でいたかをアピールした。しかし、その分析は正しくない。それで熱狂した人は、一部のサポーターだ。少なくとも、過去と比較する力を備えた、そこそこ観戦歴の長いファンは、懐疑的な目を向けていたのだ。本大会では大きな活躍はできないだろう、と。

     監督の力についても同様だ。ハリルホジッチが選手に「ちょっと待てよ」の思いを抱いている以上に、代表監督に対し、この人でいいのかと疑いの目を向けている人は少なくない。ニュージーランド戦、ハイチ戦を終えたいま、その欲求はいっそう深く進行している。

     横浜国際日産スタジアムに集まったハイチ戦の観衆は47420人にとどまった。空席率約35%。ハリルジャパンへの期待感の薄さを表す現象に他ならない。W杯本大会出場を決めても、国民的な盛り上がりは感じられない。そしてこの現実が、ハリルホジッチには伝わっていない。その当人から、「しっかり批判して下さい」といわれても、批判しても、伝わりそうな気がしない。のれんに腕押しだと言いたくなる。意思の疎通が図れない状態にある。会見で、質問の内容に、満足な答えを返さず、怒りを延々、一方的にぶちまけるその姿を見ていると、限界が訪れている気がする。

    【メルマガ】現代サッカーにおける両サイドバックの重要性と日本代表の現状

     3−3に終わったハイチ戦後、「私は監督を長くやってきましたが、こんなに内容が悪い試合を見たことはない」と吐き捨てたハリルホジッチ。だが、その4日前のニュージーランド戦(2−1)も、かなりひどい内容だった。2得点のうち1点はPK。相手DFの手に、山口蛍のミドルシュートが当たって得たものだが、そのシュートが向かった先は、GKの正面だった。

     相手の力、そしてニュージーランド戦を従来のスタメン組で、ハイチ戦をサブ組で戦った事実を考慮すれば、むしろ引き分けたハイチ戦の方に救いはある。「こんな試合は初めてだ」と、ハイチ戦の不出来を強調すれば、苦戦したニュージーランド戦の悪い印象は、ともすれば薄れがちだ。ハイチ戦に気を取られすぎていては本質を見誤る。

     ハイチ戦。相手の守備がガタガタだったので褒めすぎは禁物だが、その前半の戦いに限れば、むしろニュージーランド戦を上回っていた。

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    「怒るハリル」に呆れる。 20分で失速した理由を理解できているのか

     3−3で引き分けたハイチ戦後の記者会見。ハリルホジッチはのっけから怒りっぱなしだった。

    「就任以来28試合(正確には31試合)戦ってきた中で最悪」と吐き捨てると、具体的な選手名こそ出さなかったものの、選手のダメ出しを開始した。

    「いい入りをして2−0になって、1点取られて、選手の頭の中に何が起こったかわからないけれど、急にストップしてキレてしまい……。こんなひどい試合、見たことない」
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    日本代表のサッカーをレベルアップさせる3つの改善策

     10月6日のニュージーランド戦。後半27分前後のプレーだった。左サイドの深い位置でボールを受けた長友は、中の様子をうかがいながらボールをキープ。そして、後方のライン際にポジションを取っていた小林祐希に、ボールを戻すように預けた。だが、小林祐希にはすぐマークが付く。選択肢は限られているかに見えた。

     そこで一瞬、マーカーの逆を突き、ヒラリとした身のこなしからスッと縦に抜けるプレーを目にした時、オオッと、感嘆の声が漏れそうになった。同様な反応を示したスタンドの観衆も少なからずいた。急に晴れ間がのぞいたようなパッとムードに包まれた。

     サイドアタッカーはともかく、真ん中系の中盤選手で、この手のプレーができる選手は、他に誰がいるだろうか。一瞬、相手の逆を取り、スッと前に出るプレー。今回、選考の過程で怪我をしたため、招集が見送りになった柴崎岳、大島僚太の両選手は可能だろう。本田圭佑も、かつては普通にできていた。

     先発メンバーの山口蛍、井手口陽介は、やればできるのかもしれないが、守備的MFというミスが許されない立場が、二の足を踏ませているのだと思われる。だとすれば、試合を重ねるほど、そうした能力は失われていく。年齢を重ねるにつれ、面白くない選手になってしまう可能性がある。

     とはいえ、場所はサイドだ。縦抜けに失敗しても、奪われる可能性は少ない。最悪、奪われたとしても、そこはピッチの端なので、カウンターを食う心配はない。タッチに蹴り出され、マイボールのスローインになるか、運が悪ければ、相手ボールのスローインになるか、そのどちらかだ。

     小林祐希は他にもよいプレーを見せたが、ニュージーランド戦で最も印象に残るワンプレーはこれだ。彼と交代でピッチを後にした香川真司には、望めないプレーである。できそうに見えて、できそうでない。サイドでプレーすることが得意ではないからだ。サイドでボールを受けると、芸が出ないタイプ。ポジションの適性に欠ける。右でも左でもだ。最近では、真ん中でも特別な動きができなくなっている。香川と交代で入った小林祐希のプレーとを比較すれば、そのあたりが鮮明に浮き彫りになるのだった。

     香川、井手口、山口。この3人がスタメン候補に挙がる現在のハリルジャパン。それは言い換えれば、中盤のボール回しに変化が起きにくいことを意味する。ゲームコントロールが上手くできないこととも深い関係にある。

     日本のサッカー教育を「ボール支配率をベースに作られている」と斬り、縦に速いサッカーを好む監督には、この現状がどう映っているのか。不満を抱いているとすれば、サッカーが変わっていく可能性がある。小林祐希的な選手が必要だと思い直してくれればいいが、そうでない場合、価値基準が従来と変わらぬならば、悲観的にならざるを得ない。

     後半27分のプレーに話を戻せば、小林祐希は縦に抜けた後、再び、長友にボールを預け、そして長友を追い越すように、ゴールライン際まで走った。しかし、ボールは一転、中に入っていく。長友から、山口と素早く回り、それが吉田麻也のミドルシュートを生んだ。吉田はこれをキックミス。シュートはあらぬ方向に反れていき、スタンドは溜息に包まれた。展開がよかったその反動のリアクションと言ってもいい。

     ボールを支配しシュートで終わる。奪われる危険もなし。形は理想的。文句なしだった。サイドの特殊性を利用したことと、それは大きな関係がある。片側がタッチラインなので、相手のプレッシャーも片側に限られる。奪われる危険が少ない場所。そこでパス交換を繰り返し、中央の様子をうかがいながらボールをキープする。ゲームをコントロールする環境として、そこは最適な場所なのだ。

     乾貴士が小林祐希と同時に投入されたことも、流れを好転させる原因だった。小林祐希と長友がサイドで連携した後半27分のシーン以外では、乾と長友の2人が中心となって、サイド攻撃を仕掛けながら、ゲームをコントロールした。

     サイド攻撃とゲームコントロールとは密接な関係にあるのだ。縦に速い攻撃では、そこのところが生かされない。縦に速い攻撃をあくまで貫くつもりなら、それでいてゲームをコントロールしたいのなら、サイド攻撃のスピード感と安定感を追究すればいい。

     一方、反対側に位置する右サイドでは、最後までそれができなかった。酒井宏樹と長友の平均的なポジショニングにそれは端的に表れている。左(長友)は高く、右(酒井宏樹)は低い。さらに、その前で構える久保裕也、浅野拓磨は、乾とはタイプが違う。縦に速く進むタイプだ。まさに縦に速いサッカーにうってつけの選手だが、実際問題として、この右サイドはほぼ機能しなかった。酒井宏樹と久保(浅野)が、協力関係を築きながら攻撃を仕掛けるというシーンは稀だった。

     改善策は見えているのだ。香川でなく小林祐希的な選手を1人加える。乾と長友のような関係を、右サイドでも築く。そして、縦に速いサッカーをほどほどにする。この3点で日本代表のサッカーは、ずいぶん改善されるはず。少なくとも僕はそう思うのだ。

    「柔よく剛を制する」。ハリルホジッチに学習してほしい日本スポーツの基本気質

     61%対39%。日本はニュージーランドにボール支配率で大きく勝った。メンバー発表記者会見で「日本のサッカー教育はボール支配率をベースに作られているようだ」と切り出し、それに否定的な言葉を並べたハリルホジッチだが、試合は監督の趣味趣向とは異なる展開になった。
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    NZ戦のイマイチな香川真司に見る、「迷路にはまり込んだ」ハリルJ

     ニュージーランド戦は親善試合。メンバー交代は6人枠で行なわれた。いつもの倍だ。ハリルホジッチも試合前、6人すべてを使うと言っていた。メンバー交代が始まった段階でテスト色は強まっていく。その分を差し引いて見る必要がある。

     最初に交代のカードを切ったのは日本。後半15分だった。香川真司(out)と小林祐希(in)、大迫勇也(out)と杉本健勇(in)の交代を機に、フレンドリー色(テスト色)は増していった。
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    https://news.yahoo.co.jp/byline/sugiyamashigeki/

     これからも面白いメルマガ記事の発信に、励むつもりです。
     引き続き、ご愛読のほど、よろしくお願いします。 

                                        杉山茂樹

    本日の新国立競技場

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    【メルマガ】ハリルホジッチが目指すサッカーとは一体何か?

     ハリルホジッチの招聘に関わった当時の専務理事、原博実氏と技術委員長、霜田正浩氏は、もはや代表の仕事に関わっていない。もちろん、現在の技術委員長、西野朗氏も、その職に就いたのが去年の3月なので、当事者ではない。会長の顔もその間、大仁邦彌氏(招聘時)から田嶋幸三氏(現在)へと変わっている。

     日本代表の現在のスタッフの中に、代表監督に対して責任の取れる人物は存在しない。本来は、西野技術委員長、田嶋会長にあるが、任命した責任者ではない。逃げ道は残されている。

     ハリルホジッチは、ひとりエアポケットに置かれたような存在だ。組織として、これは異常だ。ロシアW杯が終了すれば、ハリルホジッチは日本を離れ、帰国する。いわば一時的な、3年強に限られた代表強化スタッフだ。ザッケローニやジーコと同種の人間である。その後は日本とは関わりのない世界で、生きていく。

     日本サッカーの方向性を論じようとすれば、1年後には日本を去っているハリルホジッチを、その手の議論の主役に据えるのはナンセンスだ。アドバイスは求めるのはいいが、決めるのは日本人。目指す方向性に相応しい次期代表監督を探すのは日本人の仕事だ。

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    コンディションの話題に中身なし。説得力に欠けるハリルホジッチの独演会

     先日行われた、代表メンバー発表記者会見で、ハリルホジッチは前回外れた倉田秋を再び招集した理由についてこう答えた。

    「ここ2週間ほどで、コンディションが上がってきている」

     コンディションが上がってきている。良くなっている。この手の問いかけに、ハリルホジッチはかなりの確率でそう答える。すると現場はなんとなく納得したムードに包まれる。だが、はたしてそれが第一の理由だろうか。

     ハリルホジッチは、「候補として追跡していた柴崎岳、大島僚太、斎藤学が怪我をしてしまって残念」と述べたが、この3人が怪我なく無事でいたら、どうだったのか。倉田は招集されていただろうか。

     記者会見が行われたのは9月28日。試合が行われるのは10月6日(ニュージーランド戦)と10日(ハイチ戦)だ。そもそも、ここわずか2週間の情報で8日後、12日後の試合に向けた判断をするのは拙速ではないか。

     W杯本番に臨むメンバー発表なら理解できる。コンディションは絶対的な条件になる。本番まで9ヶ月あるいまは違う。直近のコンディションより重要な視点がある。9ヶ月後から逆算する視点だ。いまは、大袈裟に言えば、どうでもいい問題なのだ。9ヶ月後の姿に可能性を感じる選手は、多少試合に出ていなくても選んでおくべきだと思う。

     ヘルタ・ベルリン所属の原口元気は、先週末リーグ戦(対バイエルン戦)で、今季初スタメンを飾り、活躍した。だが、メンバー発表の時点では今季、6試合を消化した段階で、計54分間しか出場していない。出場機会に恵まれず、コンディションを確認する機会が少なかったにもかかわらず、代表に選出された。ハリルホジッチはこう述べた。

    「試合には出ていないが、彼は代表では必ず良いパフォーマンスを見せている。彼を呼んで励ます話をしたい」

     一転して、コンディション重視を覆したわけだ。しかし、今回招集を見送ったパチューカ所属の本田圭佑には、その理由をコンディションを前面に出してこう述べた。

    「彼は怪我をしていた。彼にはコンディションをしっかり取り戻してもらいたい。コンディションを取り戻したら、入れるかどうかを考える」

     だが、本田は原口より多い195分間に出場し、得点も2点奪っている。原口には優しい言葉を掛ける一方で、本田に対しては厳しめの言葉を吐いている。「コンディションを取り戻したら、入れるかどうか考える」は、「コンディションを取り戻しても入れないかもしれない」と、同義語だ。いったいどっちなのか。

     所属クラブで試合に出ている人を優先的に選ぶ。これは、ハリルホジッチが就任以来、一貫して言い続けている台詞だが、かつてミランで出場機会をほとんど失った状態にあるにもかかわらず、ハリルホジッチは本田を招集し続けた。代表で優れたパフォーマンスを発揮できなくなっても、だ。

     招集するかしないか。評価基準を、所属クラブでの出場時間と深い関係にあるコンディションのみで当落の決定を説明しようとする姿勢に、無理を感じずにはいられない。整合性がとれない瞬間に、多々出くわす。 

     ハリルホジッチは最後にこう締めくくった。

    「それぞれのクラブで試合に出なければ、ロシアでのプレーは確約できない」

     いちいち理由を説明していると面倒くさい。コンディションで語った方が手っ取り早い。そう考えるのが自然だが、それでは議論は深まらない。本田が代表に必要な選手でなくなった理由、心変わりした理由はなんなのか。

     毎度大々的に行われるメンバー発表だが、選考理由が、サッカー的な見地から語られることがまずない。話を聞いていてなるほどと思わせる瞬間が少ない。そこにこの監督の弱さが見て取れる。堂々としいるようで、実はオブラードに包んだ説得力の低い物言いをする。

    「斎藤は最近、好調だっただけに残念」

    「植田直通は、先週のガンバ戦で非常にいいパフォーマンスを見せていた」

     またしても代表から外れた西川周作についても「最近調子が上がってきている」と述べている。だったら、なぜ選ばないのか。

     この会見は、ハリルホジッチの演説で始まった。日本はボール支配率を重視する傾向が強すぎる、と。会見時間の半分近い時間を、日本サッカー界への反論に費やした。突っ込み所満載の荒っぽい説明だったが(それは別の機会に書くとして)、ハリルホジッチがそうではないサッカーを標榜していることが、明確になった瞬間だ。

     ならば、それと選手選考の基準とは、どんな関係があるのかをセットで語る必要がある。ボール支配率を重視するか否かは、理念の問題だ。簡単に言えば監督の趣味の問題。重視しないと言い切るなら、こういうサッカーがしたいから、こういう選手を選びたい。あるいは、選んだつもりだと、選手の好みも明確に示す必要がある。コンディションばかりを切り口に、選考理由を語られても、自らの理念は浸透していかない。説得力に欠ける発言になる。

     毎度約1時間に及ぶ、メンバー発表の会見は、この日に限らず、ほぼハリルホジッチの独演状態になる。自らのサッカー論を語る時間はたっぷり用意されているが、それは名監督の演説には程遠い内容だ。こちらのサッカー観を触発させる、なるほど! という台詞は聞こえてこない。本番で何かをしてくれそうな気配をハリルホジッチには感じない。感じさせてくれる監督でないと、支持する気持ちは湧かないのだ。
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