杉山茂樹のBLOGマガジン

Profile
[プロフィール]
  • 静岡県出身。東京都在住。AB型
  • スポーツライター
  • 得意分野はサッカーでヨーロッパが厚め
  • W杯は82年のスペイン大会以降、9大会連続現地取材
  • 五輪も夏冬併せ9度取材
  • テーマは「サッカーらしさ」「サッカーっぽさ」の追求
  • 愛称はスギッチ。サッカー番長。スタジアム評論家
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    コンフェデ杯を勝った「ドイツ式5−4−1」の優位点とダメな点

     昨年、フランスで開催されたユーロ2016で、4−3−3(4−1−4−1)は4−2−3−1に次ぐ使用率を誇った。20年前、4−3−3がここまで浸透するとは想像すらしなかった。4−3−3の宣伝役を担ってきたのはバルセロナだ。そのカリスマ性、そして布陣の流行性について、改めて思い知らされる。

     一方、ユーロ2016で3バックをメインに戦うチームは、ウェールズとイタリアに限られた。それぞれ3−4−2−1と3−5−2になるが、ここにきて3バック、とりわけウェールズ的な3−4−2−1が目立ち始めている。

     4−4−2を定番にするイングランドでも、例えば4−2−3−1をベースに戦っていたアーセナルが、昨季の終盤の数試合を3−4−2−1で戦っていた。1トップ、オリビエ・ジルーの下で構えるのはアレクシス・サンチェスとメスト・エジル。2人が閉じ気味に、いわゆるシャドーストライカー的に構えれば3−4−2−1。開いて構えれば3−4−3になる。
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    【メルマガ】日本対オーストラリア。攻撃的サッカーを貫くのはどちらか

     W杯予選は残り2試合。この組で3位になると別組の3位(現在、その座を韓国とウズベキスタンが勝ち点1差で争う)とプレーオフを戦い、それに勝てば、北中米カリブの4位(現在、アメリカとパナマが勝ち点1差で争う)との大陸間プレーオフに進出する。3位になれば、待ち構えるのはいばらの道だ。アジア最終予選B組。現在の状況をお復習いをすれば、以下の通りになる。

    1位)日本17(+9)※残り試合は、オーストラリア戦(H)とサウジ戦(A)
    2位)サウジアラビア16(+7)※同、UAE戦(A)と日本戦(H)
    3位)オーストラリア16(+6)※同、日本戦(H)とタイ戦(H)

     日本はホームの次戦、オーストラリア戦(8月31日)に勝てば、本大会出場が決まるが、引き分け、負けでは、最終戦のサウジ戦へ持ち越される。

     勝ち点19(2戦とも引き分け)では危ない。勝ち点20(2戦のどちらかに勝利)まで積み上げないと確実にならない。現在の日本のリード(勝ち点1)は、対戦カードを考えれば、あってないようなもの。あと1勝なので「王手」かもしれないが、それを逃せば一転、大ピンチ。むしろ勝ち点1差では、足りない状況だ。にもかかわらず、世の中に心配する様子が見られないのはどういうわけか。

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    佳境を迎えたW杯予選。日本に欲しい小国気質

     アメリカ、中国、ロシア。大国はおしなべてサッカーが弱い。日本も例外ではない。主要国でありながらサッカーも強い国と言えば、ドイツ、フランスが1番、2番に来る。

     アメリカ、中国、日本は、ずっとサッカー後進国だった国。言い訳の材料はたっぷりあるが、ロシアは別だ。それなりのサッカー史を持つ伝統国。ソビエト連邦時代の88年に、欧州選手権(ユーロ)で準優勝を飾っているが、これは監督以下、メンバーの大半がウクライナ人で、ロシアとはあまり関係がない。ロシアとしての特筆すべき出来事はユーロ2008のベスト4に限られる。

     W杯では1994年大会以降、6大会中3度予選を通過しているが、いずれもグループリーグ落ち。ユーロも2008年のベスト4を除けば、グループリーグ敗退、あるいは予選落ちを繰り返している。2018年W杯で、開催国としてのノルマといわれるベスト16入りを果たせるか。微妙なところだ。

     アメリカはサッカー環境という点で、ロシアより劣るのにロシアより強い。90年以降、W杯には7度連続出場し、決勝トーナメントに4度出場。2002年日韓共催W杯ではベスト8に輝いている。準々決勝対ドイツ戦の敗戦は、ドイツMFフリングスが、アメリカのシュートをゴールライン上で手で止めたにもかかわらず、主審がPKを取らないという誤審に泣いた結果だった。悔しい試合として記憶される。

     アメリカは2009年コンフェデレーションズ杯では、準決勝で、翌年開催されたW杯本大会を制したスペインに2−0で勝利。続く決勝対ブラジル戦も、前半を2−0リードで折り返した。2−3で逆転負けを喫したが、強国ブラジルを番狂わせ寸前のまで追い込む敢闘精神に、感激せずにはいられなかった。

     ロシアとアメリカ。日本のお手本として、あるべき姿を示してくれたのはアメリカだ。ロシアより、番狂わせを狙う気質に優れている。立ち位置が確保できている。アメリカは弱者になれるが、ロシアはなれない。この差は大きい。ロシアが格上に勝つ姿は、想像しにくいのだ。

     つい、オランダ人指導者の常套句を聞かせたくなる。彼らに話を聞けば、例外なくこの言葉を枕詞に、話を進めてくる。

    「我々は小さな国だ」。「だからどうするか」。「工夫しなければ生き残れない民族なのです」

     ロシアにこの謙虚さはない。「小さな国」と謙ることはない。大国意識を前面に押し出しながら、強者と対戦する。「工夫しなければ生き残れない」との危機感はない。

     ベスト4入りしたユーロ2008で、ロシア代表監督を務めたのはオランダ人監督のヒディンクで、準々決勝の相手も「強国」オランダだった。ヒディンクはオランダ戦用の布陣、メンバーを組み、対抗したことが奏功。3−2で勝利を収めた。ヒディンクという存在は、ロシアにとって最高の処方箋だった。

     ヒディンクはご承知の通り、2002年日韓共催大会では、韓国代表監督として采配を振るい、そしてチームをベスト4に導いた。韓国はもともと小国気質を備えた国だ。特にこの時は、共催国日本に対して、強烈な対抗意識を持っていた。ドイツに対するオランダのように。そのベスト4という結果には必然を感じた。

     ヒディンクはその4年後、今度はオーストラリアの監督に就任する。同国が、W杯の大陸間プレイオフで、南米5位のウルグアイと対戦するタイミングだった。下馬評で上回っていたのはウルグアイ。だが、ヒディンク率いるオーストラリアは、そこでまさかの勝利を飾った。

     ヒディンクのようなタイプは、格上と対戦する小国の監督を任せると、無類の強さを発揮する。小国の監督に適していないのは、大国気質が抜けない監督だ。2014年ブラジルW杯に臨んだザッケローニ。2006年ドイツW杯でヒディンク率いるオーストラリアに初戦で1−3で敗れたジーコ、しかり。日本との相性は、どう見ても悪かった。

     オシムには小国の気質がふんだんにあった。同じボスニア&ヘルツェゴビナ出身のハリルホジッチはどうなのか。オシムほどのアイディアマンではなさそうだ。そのあたりの冴えを見せた試しは少ない。

     2018年ロシアW杯アジア最終予選もあと2試合。日本に欲しいのは、小国の気質だ。大国の気質ではない。そこでオーストラリア、サウジアラビアの後塵を拝し、最悪、プレイオフに回れば、なおさら不可欠になる。

     力に大きな差がない両チームが対峙したとき、勝ちやすいのは挑戦者だ。受けて立つ側ではない。そして、どちらに立つかは監督の演出に委ねられている。

     日本は、アメリカ的か、ロシア的かと言えば、ロシア的だと思う。番狂わせに適した気質とは言い難い。これまでどれほど番狂わせを起こしたことがあるか。格上に対してまさかの勝利を収めたことがあるか。格上を倒す方法論を知っている監督か否か。日本代表監督を選考する上で、ここが一番のチェックポイントになる。

     ポルトガル、メキシコ、チリ。コンフェデレーションズ杯を賑わした3チームも、大国気質、小国気質、どちらなのかと言えば、後者に見える。そして、一見そうは見えないドイツも、この大会では意図的にそっち側につこうとしていた。ユーロ2016に出場した23人の中から、今回選んだのはわずか8人。15人を入れ替え、チャレンジャーに扮して臨んだ。メンバーを落とすことで得られる効果に期待したわけだ。

     アジアのどんな相手にも、ベストメンバーで戦ってしまう日本代表監督では、強者相手に番狂わせを演じることは難しい。

     晴れて本大会出場を決めたら、その時は別の監督で。そう言いたくなる理由である。

    【メルマガ】日本対オーストラリア。攻撃的サッカーを貫くのはどちらか

     W杯予選は残り2試合。この組で3位になると別組の3位(現在、その座を韓国とウズベキスタンが勝ち点1差で争う)とプレーオフを戦い、それに勝てば、北中米カリブの4位(現在、アメリカとパナマが勝ち点1差で争う)との大陸間プレーオフに進出する。3位になれば、待ち構えるのはいばらの道だ。アジア最終予選B組。現在の状況をお復習いをすれば、以下の通りになる。

    1位)日本17(+9)※残り試合は、オーストラリア戦(H)とサウジ戦(A)

    2位)サウジアラビア16(+7)※同、UAE戦(A)と日本戦(H)

    3位)オーストラリア16(+6)※同、日本戦(H)とタイ戦(H)

     日本はホームの次戦、オーストラリア戦(8月31日)に勝てば、本大会出場が決まるが、引き分け、負けでは、最終戦のサウジ戦へ持ち越される。

     勝ち点19(2戦とも引き分け)では危ない。勝ち点20(2戦のどちらかに勝利)まで積み上げないと確実にならない。現在の日本のリード(勝ち点1)は、対戦カードを考えれば、あってないようなもの。あと1勝なので「王手」かもしれないが、それを逃せば一転、大ピンチ。むしろ勝ち点1差では、足りない状況だ。にもかかわらず、世の中に心配する様子が見られないのはどういうわけか。

     オーストラリアは、先月行われたコンフェデレーションズ杯に出場。グループリーグを、決勝戦を争ったドイツとチリ、そしてカメルーンと同じ組で戦い2分1敗で3位になった。敗れたドイツ戦も2−3の接戦。全体的に好印象を残した。オーストラリア恐るべし。日本危うし。むしろ、そう感じた人が多数派を占めるはずだが。
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    【メルマガ】日本代表のマックス値を上げる一手。内田篤人を守備的MFに。

     本田圭佑の移籍先はどこなのか。長友佑都はインテルに残留できるのか。柴崎岳はテネリフェからスペイン1部のクラブへ移籍できるのか等々、この時期、欧州組の先行きに注目が集まっている。どのレベルに落ち着くか。それなりの場所で出場機会を得られるか否かは、日本代表に直接、影響する話。気になる話ではあるが、それを言うなら、もっと気にせずにいられないのが、内田篤人の回復ぶりだ。
     
     日本代表から離れて2年と数か月経過。報道によれば、先日、ブンデスリーガ6部相当のチームと対戦したプレシーズンマッチで、後半45分間、右サイドバックとして出場。2ゴールをマークしたという。100%順調なのか。昨季後半から、徐々に復帰の道筋が見えてきているとはいえ、復帰まで莫大な時間を費やした感は否めない。膝の靱帯はサッカー選手の泣き所。重症であることに間違いはないが、医療の発達で、かつて復帰は絶望的と言われたものは、半年程度で復帰できるまでになっている。内田がどれほど重症だったのか、詳しく知る身ではないが、それなりの人から、もう少し詳しい説明が欲しい気がする。日本代表にとっても、これは痛すぎる話だからだ。

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    真ん中は危ない。もう少し声高に叫ばれるべき、サッカーの核心

     ピッチの中央でボールを保持する時間が長いチームは危ない。僕にはこれが真実であるとの確信があるが、少なくとも日本では聞かされることがない話だ。重要視されているようには思えない。ところが先日、知人編集者から送ってもらった翻訳本をめくっていると、やはりと思わせる記述が目に止まった。
     
    「サッカーマティクス」(デーヴィッド・サンプター著、千葉敏生訳・光文社刊)。サッカー+マスマティクス(数学)。サッカーに数学的な視点を様々な角度からあてがった単行本だ。
     
     その中で、著者が言及した試合のひとつに、14−15のチャンピオンズリーグ準決勝第1戦、バルセロナ対バイエルン(3−0)があった。
     
     要約すればーー両軍のパスのネットワークを分析すれば、バルセロナが中央の支配をバイエルンに譲り、左右バランスよく構えたのに対し、バイエルンの選手は中央に固まる傾向があった。バイエルンはバルセロナよりパスを多く出したが、円を描くばかりで、中央で停滞したーーとなる。
     
    「バルセロナはスアレスを機首に据え、バランスの取れた両翼を広げ、まるでジェット戦闘機のごとくピッチを飛び回った。一方のバイエルンは、環状交差点にはまりこみ、いつまでも同じところをぐるぐると回りつづけたのであった」(本文よりそのまま抜粋)
     
     環状交差点(ラウンドアバウト)にはまり、身動きが取れなくなれば、ボールを奪われる危険は増す。中央で奪われることと、サイドで奪われることと、どちらがリスクが高いかといえば中央だ。単純にゴールまでの距離がサイドより近い。いきなりバイタルエリア等々の危険な箇所に侵入されやすい。また、中央で構える選手が瞬間、逆モーションになりがちで、泡を食いやすい。サイドで奪われるよりピンチに直結する。
     
     ピッチの中央でボールを保持する時間が長いチームが危ないことは明々白々。奪いたい箇所は中央。奪われてもリスクが低い場所はサイド。いわゆる攻守の切りかえが、どこで発生するか。試合を観戦する上で見逃せないポイントだ。にもかかわらず、日本ではそれが語られていない。
     
     むしろ、中央中心主義的なサッカーが目立つ。危険地帯でのパス交換を好む傾向にある。
     
    「サッカーマティクス」の分析は、パスの本数など、詳細なデータに基づいているが、見た目でもある程度確認できる。それぞれの陣形がどんな形をしていて、お互いが相まみえた際に、どのような化学反応が起きるか。それは将棋より、いっそう陣取り合戦的な要素を含む囲碁に似ている。
     
     相手を中央に誘い出し、両サイドからサンドウィッチするように、プレスを掛けて挟み込む。だからこそ、サイドで主導権を奪う必要がある。
     
     サイドを制するものは試合を制するーーは、現代サッカーの格言だ。真ん中を制するものは試合を制するーーは大間違いだ。
     
     以前にも出した例で恐縮だがーー06−07のチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦、PSV対アーセナルを引き合いに出したくなる。中盤フラット型4−4−2のアーセナルに対し、PSVは中盤ダイヤモンド型4−4−2の変形版(センターフォワード不在の0トップ型)で臨んだ。

     PSVのサイドアタッカーは、4人の中盤の両サイドを半サイドアタッカー(0.5人分)と見なせば、両サイド各2.5人。対するアーセナルは両サイド各2人。両サイドにおいて0.5人分の優位に立ったことで、弱者PSVは強者アーセナルに対し、サイドを制することに成功した。アーセナルの攻撃が真ん中に偏り停滞するところを、両サイドで優位に立つPSVが挟み込む。アーセナルの攻撃は行き場を失うことになった。番狂わせが起きた、最大の原因と言っていい。
     
     真ん中に長い時間、居座らないサッカー。Jリーグでこれを実戦しているのは鹿島だ。石井監督から大岩剛監督に変わっても、その点に関して変化はない。柏戦(3−2・7月2日)、ガンバ大阪戦(1−0・7月5日)、FC東京戦(2−2・7月8日)という、アウェー3連戦を、移動込みの中2日で行うという信じ難い日程を、鹿島が2勝1分けで乗りきることができた大きな理由だと思う。
     
     柏戦は苦戦だったが、理由は相手もサイドを奪おうとしていたからだ。鹿島は柏にサイドを取られるとピンチに陥った。柏も同様。真ん中を進んでプレスを掛けられる割合が、鹿島の方が若干、少なかったことと、3−2というスコアは大きな関係がある。
     
     ガンバ大阪戦はスコアこそ1−0だったが、相手を中央付近に、よく追い込んでいた。中央付近の支配をガンバ大阪に譲ったのにもかかわらず、中盤を制することができた試合だ。

     FC東京戦は、悪コンディションで戦っていたことが明白なので、2−2という結果も、試合内容も割り引いて考える必要があるが、それでもFC東京よりはできていた。鹿島の方が勝ちやすいサッカーをしていた。数学的には、明らかに。

     だが、決して難しい話ではない。眺めのいいガンバ大阪のホーム、吹田スタジアムの上階から目を凝らせば、おぼろげながら浮かび上がってくる話でもある。数学的な話ではあるが感覚的だ。中央に追いやられ、その回りを取り囲まれる状態にはならないこと。そこでパスを奪われないこと。真ん中は危ない。もう少し声高に叫ばれるべき、サッカーの核心だと僕は思う。

    【メルマガ】ドイツと鹿島にあって、日本代表にはない“余力”

     ドイツとチリが決勝を争ったコンフェデレーションズ杯は、ドイツの優勝で幕を閉じた。平均年齢24歳。今回のメンバーで、前年のユーロ2016を戦った選手は8人しかいない。優勝はまさかの結果だったと思われる。今回は選手層を厚くすることが一番の目的で、大真面目に優勝を目指していたわけではないはずだ。本番はあくまでも1年後。そこで優勝するために、いま何をするべきか。ゴールから逆算して強化を図るその計画性に、堅実なドイツ人気質を見る気がする。今回のドイツから学ぶべき一番のポイントになる。

     このように物事をある計画に基づいて忠実に推し進める気質、能力は、日本人も負けないものがある。ドイツと日本は実際、似ている箇所が多い、近しい人種と考えられる。サッカーもその中に含まれてものだと言いたくなるが、なかなか見えてこないのが現実だ。むしろ計画性の乏しさが目立つ。日本代表に、今回のドイツ代表のような真似はまず望めない。

     代表チームはベストメンバーで戦うものーーという概念が、日本国内には必要以上に蔓延している。メンバーを落として戦うことを許さないムードだ。メンバーを落とせば、世間の関心は、選手の知名度に比例するので、その分だけ低下する。テレビの視聴率やスポーツ系新聞の売り上げ、ネットメディアのページビュー等々は伸び悩む。日本代表産業にかかわる人が、それを後押しすれば、商売にブレーキを踏むことになる。 

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    最もお金を払いたくなるサッカーをしているクラブはどこか

     サガン鳥栖は、5月27日に行われた対札幌とのホーム戦で、こんな企画を実施した。

    「値段のないスタジアム」

     入場料を支払うのは試合を見終わった後で、値段は観戦者自身が満足度に応じて決めるという仕組みだ。当日、取材に行ったわけではないけれど、思わず拍手を送りたくなるハイセンスな企画だと思う。

     鳥栖スタジアム(ベストアメニティスタジアム)の収容人員24500人に対して、集まった観客は14416人。対象である2000円から3700円の席に5620人が集まり、出口に設置された料金箱には4,568,215円が集まったそうだ。

     1人平均にすると812円。微妙な数字だ。相手が下位の札幌で、スコアが1−0だったとはいえ、もう少し集まってもよかったかなという気はする。

     監督、選手は、満員の雰囲気が忘れられません。『満員のスタジアム』でもう一度戦いたいという選手の願いを叶えてくださいーーとは、クラブのHPに掲載されていた文言だが、目的が集客だけにあったとは思えない。
     
     いわゆるファンの顧客満足度について、クラブ側は常に気を配っている。よい観戦環境を提供しようと心がけている。これは、そうした宣言を同時にしたも同然なのだ。単純に、現場で見て面白いか。来てよかった、また来たいと思ってもらえたか。

     善し悪しの基準となるものに成績がある。成績とファンの満足度は概ね比例関係にある。この日、1−0だったスコアが、2−0なら812円は1000円を越えていた可能性がある。

     スタジアムも大きな要素を占める。見やすいか。見にくいか。快適空間か否か。鳥栖のスタジアムのレベルは高い。なにより上階の視角、眺望がいい。さらに言えば、アクセスもいい。収容人員がさほどではなく、代表級の国際試合ができるレベルにはないので、4つ星、5つ星スタジアムとは言えないが、知る人ぞ知る通好みの3つ星スタジアムという感じだ。

     とはいえ、毎度、足を運ぶ地元民は慣れっこになっているので、そのあたりのありがたみは伝わらない。他との比較で初めて浮き彫りになる感覚なので、そのためには全国を飛び回る必要があるが、ファンの立場でそれができる人はそう多くいない。

     さらに、サッカーそのものの中身も、満足度を推し量る上で重要なポイントになる。面白いか否か。しかし、これも相手あってのもので、相手との噛み合わせが悪ければ、いくら攻撃的でもサッカーが面白くなる保証はない。

     そもそも、面白いか否かはサッカーの場合、レベルに関係しない。レベルが高くても、面白くない試合もある。一方で、レベルが低くても、例えば少年サッカーの試合でも、思わず引きこまれる好試合がある。それがサッカーだ。

     7月2日に行われたJリーグ、柏対鹿島(2−3)は、上位対決に相応しい好試合だった。舞台となった柏日立サッカー場も盛り上がり、大岩剛、下平隆宏両監督とも、試合終了後の監督会見で、試合がよい雰囲気の下で行われたことについて言及した。

     この試合が「値段のないスタジアム」なら、観客は試合後、料金箱に一体いくら支払っただろうか。特に知りたいのは、試合に敗れた柏ファンの評価だ。その満足度がいかほどだったか知りたくなる。

     サッカーはまずまず攻撃的で、鹿島との噛み合わせもよかった。試合内容はよかったのに、敗れた。結果は出なかったが、エンタメ度は高かった。さすがに鳥栖と同レベル(812円)ということはないだろう。

     観衆は13945人。スタジアムの定員は15349人とあるが、スタジアムはすし詰めで、立錐の余地がなかった。鳥栖対札幌(14416人)より、観衆は少なかったわけだ。スタジアムの器が小さいために。

     鳥栖のスタジアムと同様にサッカー専用でもあるので、見やすいことは確かだ。臨場感も楽しめるが、両監督が触れたスタジアムの雰囲気は、小さいが故に生まれた産物だった。もう少し大きなスタジアムで見たい試合。より多くの観衆の前で行われるべき試合でもあったのだ。サッカーのレベル的に言えば。

     内部施設は手狭もいい所だ。記者席も狭い。アジアチャンピオンズリーグの試合を行うには辛いレベルにある。料金箱にお金を投入する時に、その安普請なスタンドの観戦環境に、マイナスのイメージを抱く人がいたとしても不思議はない。

     面白さ、攻撃的サッカーを伝統的に追求しているクラブと言えば、真っ先にバルセロナを想起する。ホーム「カンプノウ」の収容人員は98000人強。視角、眺望も抜群だ。大きいのに見やすい。アクセスも悪くない。少なくとも僕の感覚の中では、カンプノウで見るバルサ戦は、最も高いお金支払いたくなるものとして通っている。

     日本ではどうだろうか。最もお金を払いたくなるサッカーをしているクラブはどこか。成績の善し悪しは一目でわかるが、こちらは微妙な争いだ。その分だけ興味が湧く。ミシュランのような客観性を備えた第3者が、満足度を覆面で調査してまわり、そのエンタメ度をランキング化して欲しいものだと思う。さらに言えば、欧州でUEFAが5つ星スタジアム、4つ星スタジアムを選定しているように、日本にもスタジアムに同様な指標が欲しい。スタジアムには、レストランやホテルに似た役割がある。「値段のないスタジアム」も、そうした発想に基づいているのではないか。ウチのレストランで食べるこの料理、一体いくらの価値があるか。他のクラブも鳥栖に倣い、年1くらいで実施して欲しいものである。

    【メルマガ】その3バックは攻撃的か、守備的か。数字の先を語る重要性

     チリ代表は、これまで3バックをたびたび使用してきたが、今回のコンフェデ杯では今のところ4バック(4−3−3・中盤ダイヤモンド型4−4−2)で通している。その一方で、従来、主に4バックだったドイツは、3バックで臨んでいる。すでに敗退しているオーストラリアも同様。従来の4バックではなく3バックで戦った。

     3バックと4バック。世の中で多数を占めるのは4バックながら最近、増加傾向にあるのは3バックだ。とはいえ、「だから何?」と問われれば言葉に窮する。布陣は3バックか4バックかに分類される。そうした意味では、分類の基準になり得るが、区別することに特段、意味はない。そこは重要な論点にはならない。サッカーの中身、性質を語ろうとした場合。

     3バック、4バックそれぞれには、様々な種類がある。特に3バックの幅は広い。攻撃的な布陣もあれば、守備的な布陣もある。

     その布陣は、攻撃的なのか、守備的なのか。3か4かの前に本来、語るべきはこちらだ。ピッチの横幅は68m。そして、その最後尾を3人でカバーしようとするのが3バックだ。しかし、相手がピッチを広く使って攻撃してくると、3人でカバーすることは難しくなる。3人はゴールのある真ん中を中心に構えるので4人ではなく、5人になりがちだ。

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    日本のW杯予選に危険信号。 コンフェデのオーストラリアが驚きの強さ

     ロシアで開催されているコンフェデレーションズカップは、グループリーグの戦いが終了。準決勝の対戦は、ポルトガル対チリ、ドイツ対メキシコに決まった。しかし、4強以上に目を引いたのがアジアの代表、オーストラリアの戦いぶりだった。

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    9番なのに10番的。大迫勇也こそが日本を救う道

     8月31日。オーストラリアとの大一番を控えたいま、最も期待したい選手は誰か。アタッカー陣で言えば大迫勇也になる。乾貴士を推したい人もいるだろうが、彼は、前戦のイラク戦に先発出場はおろか、交代選手としても出場していない。ハリルホジッチから高評価を得ているとは思えないので、推すに推せない状態にあると言うべきだろう。

     大迫である理由はわかりやすい。相手ゴールの一番近くで構える選手。センターフォワードであるからだ。勝利に直結するのはこのポジション選手の活躍。10番ではなく9番のデキだ。

     一方で、日本は長い間、中盤至上主義、10番幻想に支配されてきた。偉いのは9番より10番。テレビ実況も「中田英寿のスルーパスにフォワードが反応できませんでした」的な言い回しを、定番スタイルとしてきた。

     両者の立場はここに来てようやく逆転した格好だ。10番タイプである香川真司、本田圭佑のプレイに輝きが失われていることも、大迫に目が行く原因の一つ。少し前までスタメンを張っていた岡崎慎司とのタイプの違いも見逃せない。ボールが持てるのは大迫。ポストプレイが得意なだけではない。9番(センターフォワード)なのに10番的。パスも巧い。ゲームメーカー的なセンスがある。

     味の素スタジアムで行われたシリア戦(親善試合)。巧いなと思ったのは、後半29分、ボールを受けてから本田にパスを出すまでの一連のプレイだった。左サイドで倉田秋からボールを受けるや、ディフェンスの網をかいくぐりながらドリブルで前進。真ん中に進出すると、本田の走る鼻先に寸分の狂いもない、巧い! と唸りたくなる優しいラストパスを送り込んだのだ。

     本田が放った右足シュートはGKの正面を突き、ノーゴールに終わったが、それに至る大迫のアクションこそ、この日一番と言いたくなる質の高いプレーだった。

     9番なのに10番的。シュートよりアシスト好き。これは以前から引き続く傾向だ。そしてそれはどちらかと言えば、好ましくないものとして捉えられていた。センターフォワードなのだから、もっとシュートを。ゴールを狙え。その一歩手前で発揮されるプレーについて、高い評価を得られずにいた。

     いまなおその傾向がある。それは大迫ありきの発想ではないからそうなるのだと思う。4−2−3−1あるいは4−3−3。ハリルホジッチは主にこの2つの布陣を使用するが、それぞれのセンターフォワードは1トップだ。最先端に位置する。ここに大迫をシンプルに当てはめれば、そのプレーのキャラクターとの間に差が生まれる。その差がこれまではヨシとされてこなかった。ハリルホジッチは大迫に修正を求めてきた。

     だが、所属のケルンでは主に4−4−2の一角でプレーする。脇にはアントニー・モデストというフランス人ストライカーが構えている。1トップで先頭を切る感じではない。よって、下がってボールを受けても大きな問題にはならない。ハリルジャパンとケルン。大迫のキャラにプレーの環境が合っているのはケルンの方だ。

     4−4−「1」−1の「1」。1トップ脇。大迫が最大限に力を発揮しそうなベストポジションは、ここなのだと思う。想起するのは、かつてのアーセナルでアンリと2トップを組んでいたデニス・ベルカンプ。当時、布陣表記は3分割が主流で、アーセナルのこの布陣も4−4−2として紹介されていたが、実際は4−4−1−1だった。そこでベルカンプは背番号10をつけ、アンリとのコンビネーションで多くのゴールを演出した。

     名古屋グランパス時代のストイコビッチも、ベルカンプ的だった。

     10番と9番の間。そのキャラを認めざるを得ない力を現在の大迫は持ち合わせているのか否か。

     昨季、欧州組の中で最も活躍した選手はこの大迫か、乾か、だ。実際、先述のシリア戦を始めとする最近の代表戦でも、大迫はアタッカー陣の中で最も安定したプレーを見せている。

     彼が乗るか否かが、日本の浮沈のカギになってきたいまこそ舵を切るタイミングだと思う。10番と9番の間、すなわちその9.5番的なキャラを前面に行かすようなスタイルの採用こそが、日本を救う道と言っても言いすぎではない。試合の途中からでもいいから、1トップ脇でプレーする大迫を見たいものだ。

     とはいえ、大迫が代表に復帰したのはつい最近。わずか6試合前(昨年11月・オマーン戦)だ。ブンデスリーガで活躍する姿を十分すぎるほど確認してから、ハリルホジッチはメンバーに呼んだということだ。

     評価が低いのか、見る目がないのか。乾についてもそれは言える。評価が十分確定してからでないと、招集しようとしない。試合で積極的に使おうとしない。彼の目は正直、見る目が冴えているとは言い難い。試合の途中から4−4−1−1に変えるような、布陣の変更をフレキシブルに行う柔軟な思考性があるとも思えない。

     伸るか反るかのまさに大一番となった8月31日のオーストラリア戦に向けて、日本の流れは順調ではない。エースなのか、脇役なのか。大迫の中途半端な位置づけにそれは象徴されている。僕にはそう見えるのだ。
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