11月21日に開幕するW杯。本番まで5ヶ月余りとなった。6月に開幕する通常のW杯ならば、現在は1月の段階になるが、それと比較すると慌ただしく感じる。当落線上の選手は誰か等々、世の中はすでに本番直前のムードにある。

 確かに現在行われているキリン杯(この原稿は決勝戦対チュニジア戦の前日に書いている)が終了すると、海外組を含むA代表の活動は9月に予定されている親善試合2試合を残すのみになる。

 だが、本番はそこからさらに2ヶ月先だ。前回、2018年ロシアW杯は、まさにその2ヶ月前に当たる4月に代表監督が解任される事件が発生した。ハリルジャパンに変わり西野ジャパンが誕生。それでも本大会ではベスト16に進出した。自己最高位であるベスト8を目前にして敗れるというエンタメ性にも富む、劇的な終わり方をした。2010年南アフリカW杯に臨んだ岡田ジャパンも交代劇こそ起きなかったが、ドタバタしたまま本番に臨み、ベスト16に進んでいる。

 過去を振り返ると、落ち着いた様子に見える現在が心配になる。大敗が心配されたブラジル戦も、無事0-1という最少失点差で切り抜けることに成功。森保監督は危ない橋を無事渡りきることに成功した。わずかに残された心配事は、来月日本で開催される東アジア選手権で対戦する韓国戦ぐらいだろう。ファンが感情的になりやすいこの一戦を通過すれば、本番を迎えることができるだろう。

 森保ジャパンは、ジーコジャパン(2006年ドイツW杯)、ザックジャパン(2014年ブラジルW杯)と似た傾向にある。順調そうに見える時の方が危ないという教訓を忘れるべきではない。メディアはできる限り騒々しくありたいものだ。

 通常のW杯は欧州のシーズン終了後に開催された。チャンピオンズリーグ決勝というシーズンのフィナーレを飾る大一番の、およそ半月後と相場は決まっていた。そこから2週間。各国代表は開催国の周辺で合宿に入り、親善試合を組むなど最終調整を行った。しかし、欧州のシーズンを一時、中断する形で行われる今回は、合宿を長々と張っている時間も、親善試合を組んでいる時間もないという。新シーズンの流れのままにW杯に突入することになる。

 今季の流れが来季に直結しないのが欧州サッカーだ。今季スタメンでバリバリ活躍した選手も、来季はどうなるか分からない。移籍がリスキーになる可能性もある。欧州組が大半を占める日本代表にも、影響は大なり小なり出るだろう。それは誰なのか。代表チームの調子は、8月から始まる新シーズンの流れと密接に関係する。

 サンプドリアから移籍するのか否か、注目されている吉田麻也。出番が見込めないリバプールから移籍する可能性が増している南野拓実、ユニオン・サンジロワーズから移籍すると言われている三笘薫。Jリーグから欧州に渡り、新たに活躍する選手も出てくるだろう。

 いまが旬の選手をどれほどピッチに立たせることができるか。特にアタッカー陣は、その数が多いほど得点への期待が高まる。今回のW杯から登録選手の数が23人から26人に増える。交代選手も5人制で行われる。増員分はほぼ、アタッカー陣に回されることになるだろう。選考には実力も問われるが、それと同じぐらいその時の調子も重要になる。

 開幕からゴール数を順調に伸ばしている選手は、いつも以上に魅力的に映る。国内組を軽視する傾向がある森保監督だが、Jリーグで得点王に輝いた選手はメンバーに加えるぐらいのことを、いまから宣言してみても面白い。 

 選手のコンディションはシーズンの最中と言うことで、悪くないことが予想される。現地カタールの気温が若干心配されるが、日が暮れれば暑さは和らぐ。交代枠5人制を背景に、高い位置からプレスを掛けてくるサッカーが展開されるだろう。

 日本には今回、伊東純也を筆頭に前田大然、古橋亨梧、浅野拓磨と、100mを10秒台で走りそうなスピード系の選手がいつになく揃っている。プレッシングを敢行する上で貴重な戦力となる。だが並び方を間違えると、サッカーは荒くなる。左右前後のバランスに問題が生じる。

 いまがまさにその状態にある。他にボールを収めることができるセンタープレーヤーとドリブラー、あるいはヘディング得意な長身選手など、アタッカーと一口に言っても様々なタイプがいる。数多くの人数を選ぶことができる今回は、彼らをいかにしてピッチの上に落とし込むかが日本代表監督に課せられたテーマになる。メンバー交代の上手い下手も当然のことながら問われることになる。

 ブラジル戦を経て、森保監督是非論はすっかり盛り上がりを欠いているが、アタッカーはピッチの上に綺麗に収まらずにいる。森保監督は攻撃に策がないとよく言われるが、バランス感覚が欠けているのだと思う。ラスト5ヶ月強。森保監督が解任される可能性は低い。だとすればその点について学習していただきたい。でないと相手にそこを突かれる可能性がある。監督の力が今回ほど成績に反映するW杯はない。筆者はそう考える。