2008年08月

2008年08月06日

「高円寺 古本酒場ものがたり」の見本が出来たと中川六平さんから電話がある。受け渡し場所は吉祥寺のいせやだ。六平さんは先に来てビールを飲んでいる「お前はいっつも遅れてくるなあ」。時間どおりに言ったのだが、小言を言われる。元新聞記者の六平さんは待ち合わせの五分前に来るのが基本だといつも言う。「はし、すみません」となんの反省もにじんでいない口調で謝る。かわいくないねえ。
 実物を前に二人で乾杯。思えばいつもいせやで打ち合わせだった。ゲラの直しまでいせや。本当に酒の臭いがしみこんだ本だ。
 「ほら、いい装丁だろ。帯もいい文章だ、ばーんとでっかく書いてあるだろ。わかりやすいだろ。俺が書いたんだよ」
 六平さんも本を前にしてうれしそうだ。僕も手にして中を開いてみる。ちょろちょろ読んでみる。しかし恥ずかしいな。
 巻頭は「店長日記」だ。数年間書き続けた日記から拾い上げ、鑢をかけて、紙の上に載せた。毎日、毎日、飽きもせず、酔いの残った頭で、ふらつく指先で、キーボードを押しては文章を書いてきた。それがまとまるとこうなるのか。目次を見ながら、犯罪を犯したような気分になってくる。
 次に書き下ろしの国立で開業してから今に至るまでの、まあ、道程のような文章。これは初稿のゲラが出てから三週間で書いた。読んでいて思うけど、しみじみといい加減で大雑把で成り行き任せだな。それでいてどこか神経質な匂いがする。
 読んでいるうちに、触っている間に、じんわりと本当に本になったのだと、ようやく実感が湧き出てきた。うれしいだけではない、複雑な気分だ。
 「お前もよかったよ、このタイミングで本が出せて」六平さんはビールから焼酎のロックだ。まだ午後二時半なのに。ちなみに焼酎はいっぱい230円。「お前の店は高いんじゃないのか」と六平さんが言っている。「今日何曜日だっけ」ともつぶやいている。
 一年半前に荻原魚雷さんが連れてきてくれたんだ。「社長」「おいマスター」と大声で呼び「トリスのロック、ダブルでね。魚雷、角なんて高い酒飲むなよ」と。ひょんなことから「お前の本作ろう」となり、ああなって、そうなって、こうなって、目の前に本がある。離婚の保証人にもなってもらった。
ノリで作り始めた本かもしれないが、本というのはノリだけで出来上がるものではないと、心の底から感じた。人と人がぶつかり合い、時には火花を散らして作り上げていくものだった。
 後書きには書かなかったけど、中川六平さんに感謝です。出会いのきっかけの荻原魚雷さん、ありがとうございました。
 今日辺りから店頭に並ぶそうです。読まなくていいので、買ってください。

(11:27)