売れっ子デザイナーが説く
「コンセプトメイキング」手法
２０１０年６月３０日（水）
コンセプトメイキングの指南書だった。
遅ればせながら２、３年前に一大ベストセラーになった
『佐藤可士和の超整理術』を読んだ。
整理術などまったく興味がなかったから手にすることすらなかったし、
同様にベストセラーもよほどのことでないと読まない。
かつては広告の仕事を手掛けていたこともあった。
でもこの２０年来、ほとんど編集分野の仕事が主で仕事の必要上、
広告にはたまにそれなりにかかわる程度だった。
それがたまたまこの本を手にして目を通したら、
「整理術」とはあるものの、
中味は「コンセプトメイキング」の本だった。
（たしかに身の回りの整理のポイントからはじまっているので、
整理術の書でもあるが）
ご存じのように佐藤可士和と書いて「サトウ カシワ」と読む。
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この数年ユニクロなどの仕事を手掛けて高い評価を得ている
気鋭のアートディレクターというか、
グラフィック分野では
いま一番の売れっ子のデザイナーと言っていいだろう。
とまれ、デザイナーがものした整理術なんだという程度の
認識でしかなかったから、この本が売れていた当時、
まったく興味はなかった。でも、「なんで、デザイナーが
整理術なんだ？」という疑問は頭の片隅にあった。
「整理術」のキーワードでアマゾンの図書検索で調べたら
検索に引っ掛かる本が結構あることに気づいた。
ビジネス分野に軸をおいた整理術とでもいう
ジャンルがあるのだろう。今更ながらにして、そのことを認識した次第。
ところで広告屋さんなら、広告表現上、
「コンセプトメイキング」は仕事上の�爛灰↓瓩任△蝓�
まずそれがあってはじめて広告表現の
コピーやデザインイメージができあがる。
ただしぼくは、コンセプトが決まれば、
コンセプトをベースにしての表現は無数にあると解釈しているのだが、
そこのところは正しいのだろうか間違っているのだろうか、
どうなんだろう。
広告の世界に数年いて、コンセプトについては
そこまでしか理解できなかったが……。
もっとも、その頃はクリエイターではなかったから、
職場の雰囲気で習うより慣れろで、コンセプトメイキングを身に付けたのだが。
厳格なことをいえば、たとえば文学の世界では、
表現とは究極のところそれに最もふさわしい言葉（語彙）は
たったひとつしかないなどという事をたまに耳にするが、
果たしてデザインも、コピーもそうなのだろうか、
ぼくの解釈からいえば、そうではない、ということになるが――。
あるいは達人の域に達すると、デザインもコピーも、
たったひとつになるのかな、どうだろう。
ところで何で、この本をとりあげコンセプトメイキングについて
触れたかというと、ぼくが最近、ある勘違いをしたからだ。
ある広告制作会社のホームページを見ていたら、
次のようなフレーズに出くわした。
「その会社の役割とは何か」を言い切った、
つまり表現したキャッチコピーである。
問題を解決できるパートナーは多い。
しかし、問題を抽出できるパートナーは少ない。
第一級のコピー表現であり、説得力がある。
見事な変化球を見舞われたようで、
ストンと胃の腑に落ちてそのまま居着いてしまうようなコピーで、
なんかすっかりハートをわしづかみにされた。
で、この表現の「問題を抽出できる」のところだ。
仕事での必要があってそれまでやたらと企業戦略・事業戦略について
著された有名経営コンサルタントたちの書をひもといていた。
それで「問題の通出」について、
経営コンサルタント流の問題解決手法の思考方法に凝り固まっていた。
つまり彼らが企業の、あるいは事業の問題を抽出する手法であるところの、
彼ら一流のいわゆる「論理思考」などを駆使して問題点を絞り出す手法と、
彼らのコンセプトメイキングのスタイルに。
彼らの論理思考について、素人が学ぶことはできても、
つまり学習はできても、それは身につくものではないことは
認識しているが、それでも仕事の必要上、
それなりの取り組みはしたのだ。それで凝り固まっていたのだ。
それで上述の広告制作会社のコピーの「問題を抽出」のところで、
へえ〜、この会社は論理思考等をもちいて、問題を抽出してるんだ、
素晴らしい〜、と思ってしまったのだ。
でもそれって、おそらく誤解だったのだ。
この会社がいう「問題の抽出」とはつまり、
佐藤可士和が言うところのコンセプトメイキングによる
「問題」の抽出の手法だったのだ（と思う）。
要は広告表現のためのコンセプトメイキングの手法だったのではなかったか。
でも、冷静に考えると、そこそこの広告制作会社なら、
コンセプトメイキングは当たり前でやっているはずだ。
でも、本当はそこが問題なのだろう。コンセプトメイキングではあるものの、
人が、会社が異なれば、出てくるコンセプトが異なる。異なってしまう。
その結果が、コピーやデザイン表現に違いが出てくるということだろう。
そう、経営コンサルタントの手法と違って、
やたら小難しい論理手法などは使わないが、
広告表現のコンセプトがずれると、作り手やその企業の人たちは、
それなりの自身をもって訴求したつもりでも
�爛魯坤讚瓩箸いΔ海箸�あるものだ。
それってはやりコンセプトがずれていたのだろう。
表現はコンセプトに適ってはいたが。
そう、コンセプトの抽出は簡単だけど難しい。そういうことです。
これを読むと、広告表現に至る過程のコンセプトメイキングの手法が
おおよそ分かるようになるが、
そしてそれを学んでビジネス上のスキルにしてくださいということだが、
�狡境瓩�ついた「整理術」は
問題を整理してコンセプトを
ひねり出そうという手法について論じたものだった、ということ。
この手法、一見簡単なようだが、
やはりそれなりの経験を要する、ということです。
でも、奮起をうながしてくれる本です。
傍らに置いておくにはいい本です。
