地方に出かけたときなど、フラッと入ったら思いがけずにいい店に出会ったという経験はどなたもお持ちでしょう。それが旅のいいところで、そんな経験を繰り返し得たいというのも旅の動機のひとつになっているのかもしれません。

今日は出張や旅行ではないのですが、東京でも似たような経験をするという話です。


先日、都立小金井公園の中にある「江戸東京たてもの園」に前川圀男邸を観に行きました。

少しだけその話をさせてください。

公園の中は夏の植物の息が立ちこめて噎せ返るような空気でしたが、青空をバックにした枝葉が作り出す模様がすがすがしく映り、心和ませます。

小金井公園にて

園内には、江戸期から昭和の戦前までのおよそ30ほどの建築物が散在しています。

ル・コルビジェの弟子で、東京文化会館を設計した前川圀男の自宅もそのひとつです。

昭和17年の建築ですが、とてもモダンです。左が正面玄関口、右が裏の庭側。

前川圀男邸正面前川圀男邸庭

猛暑の中を10軒ほどテクテクと見て回りました。どれも見る価値のある建築ばかりです。

しかし、とても今日だけで全部は見られない、もう一度出直すことにしました。

武蔵小金井から中央線に乗ったのですが、途中で、フラッと吉祥寺で降りてみたくなりました。

たまに中野とか、荻窪まで呑みに行くことがあり、吉祥寺にも「いせや総本店」とか「,ハモニカ横丁」など行ったことのあるところがあります。

駅に降りて一旦は、立ち呑みの「いせや」のほうに足が向きました。実にたくさんの飲食店が軒を連ねています。

でも、せっかく来たのだからほかの店はないかと思い直し、ネットで『立ち呑み』を探します。

何軒かがリストアップされましたが、一番上に出てきた『ブラットスタンド 酛』という店名が気に入りました。ハモニカ横丁に極めて近い距離です。

スマホの地図を頼りに近づいたのに、場所が分からない。グルッとハモニカ横丁を2周してしまいました。もうなくなってしまったのかと思いつつ店舗情報を見ると、自分が立っている前のビルの地下だということが判明して、ガックリ。

上は賑やかなスーパーみたいな店舗だというのに、階段はどことなく寂しく、トボトボと地下へ降りますと、そこもまたうらぶれた感じの飲食街になっていました。

少し進んだところに通路に面した側を上から長いビニールで囲った店があります。

ここかなとビニール越しに中を覗くと、立ち飲みではなくて、コの字カウンタを囲む椅子席だけです。どこか静かな雰囲気です。

小さな看板には『ブラットスタンド 酛』と確かにあります。

とにかく入ることにしました。

日本酒の店らしいのですが、奇妙なことに数人の客は女性ばかりです。しかもまだ夕方6時を少し回ったばかりだというのに。

「お店の名前の『酛』という漢字は何と読むんですか」と尋ねると、「モトです。生本造りの生酛(きもと)です」と答が返ってきました。

カウンターの後ろにはずらりと日本酒の瓶が並んでいます。それもただ並んでいるのではなくて、上からのライトに照らされて日本酒が光るディスプレイになっているのです。気が利いています。

とりあえずビールを頼みましたが、酒の種類はすごい。

禁煙なのがいい。私もタバコを吸わなくなってから20年くらい経っていまして、最近は禁煙を歓迎するようになってしまいました。

酒場にたばこの煙は必須だと思っていたのに、変れるものですね。

コの字のカウンターはやや高めで、立ち飲み時代のママなのかもしれません。

和風酒場というわけでもないし、でも一升瓶がディスプレイとしてしゃれて並べられているところは和風を少し超えてるし、酒肴も刺身をはじめ和風といえばそうだけれど、洋風料理の酒肴もあるし、カウンターと椅子の組合せはショットバーのようでもあるし・・・・・・・。

広く客を受け入れようとする趣向なのか、わざとこういうつくりを指向したのか、曖昧といってしまえばそれまでで、でも、雰囲気は悪くないのです。

こういう演出が女性に人気がある理由なのでしょうか。

まずはマグロの刺身を注文して、ついでポテサラ、ジャガイモの甘辛煮、柚白菜。追加で珍しいメニューの納豆麻婆豆腐、締めは鯛茶漬け。

ずいぶん食べてしまいました。

納豆麻婆豆腐はちょっとという感じがしたけれど、ほかはどれも美味しかった。

居酒屋料理ではなく、メシ屋の手作りおかずといった趣でした。

女性に人気がある理由は、料理がいけてるからだと確信しました。

店構えにしては安くはなかったですが、フラッと入った店にしてはアタリでした。

ついでに今日の一枚を披露させていただきます。

20170707