2006年11月16日

広い視野に基づく災害研究がもたらした成果

 15日夜8時半頃に津波警報が出た最中ですが、木股・田中・木村編著『超巨大地震がやってきたースマトラ沖地震津波に学べ』(時事通信社、11月刊)の紹介をします。
 スマトラ沖津波の調査報告かと思って読み始めましたが、それだけの書物ではありませんでした。読みやすい文章、難しいことをやさしく説く姿勢に誘われて、本を閉じることなく、読み終わりました(第1章の自然現象としての超巨大地震は飛ばし読みですが)。
 本書は、スマトラ沖地震津波で激甚被害を受けたインドネシア・バンダアチェの多角的調査を中心に、現地での津波観測施設の問題、日本の津波被害の歴史、これから予想される南海津波、東南海地震などにも言及する幅広く且つ中身の濃い本です。
 たとえば、開発途上国での自然災害の救援、海外支援が国民全体のレベルに届かない問題点などにも率直に言及しながら、その原因を被災地の社会構造、政治紛争の問題を踏まえて指摘しています。これは、広い視野に基づく災害研究がもたらした成果でしょう。 
 本書のあとがきによれば、これは文理連携型を実践しようという意気込みで、スマトラ沖地震津波の被災地に災害発生以来2ヶ月後から数次入って調査したとのことです。復興の姿を時間をおいて調査した結果、復興達成度の地域差も歴然としているとのことです。
 内容的にも研究のスタイルとしても一押しの本です。
北原糸子さん (次々と歴史災害を新たな観点から掘り起こし 活躍中です)

sumatra2004quake at 07:05│Comments(0)TrackBack(0)clip!書評 | 読後感想

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