国家賠償法2条に入ることにします。

国家賠償法1 沿革と民法715条との違い

の中で「徳島遊動円棒事件(大判大5.6.1)」に触れました。これは、国家賠償法がまだ制定されていない時代に民法717条を根拠に公共団体の損害賠償責任を認めたものです。
 この民法717条を国家賠償法に取り入れたのが国家賠償法2条と考えることが出来ます。民法717条は「不法行為」のところで取り上げていなかったようなので、まずこの規定の簡単な説明をすることにします。

 その前に言い訳をひとつ。
 民法の「不法行為」や「不当利得」を書いた平成24年と現在とでは、拙ブログの考え方が少し変わっています。当時は、それ以前に出題されたものとその周辺の理解を深めることを主な目的としていました。従って、条文以上は出題されないと考えて717条の説明を省いています。その後、本試験の出題傾向が変化して「ここを出すのか?」、「ここまで聞くのか?」という問題が出るようになったため、現在は「より詳しく、より細かく」書くようになっています。その分、量が増えてしまい、以前よりもさらに読みづらくなってしまっているとは思います。その点はご容赦を・・・。
民法
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
717条 土地の工作物設置又は保存瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2項 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3項 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

 条文上、「土地の工作物」の「設置又は保存」の瑕疵です。これが後掲する国家賠償法2条と異なります。
 次に、賠償責任は、

第1次:占有者-免責規定あり
第2次:所有者-無過失責任

です。 占有者が「損害の発生を防止するのに必要な注意をしたとき」に該当するとして免責される場合に所有者が賠償責任を負うことになりますが、この所有者の責任は無過失責任です。「過失責任の原則」に対する重大な例外という点から重要です。以前にも書いたことがあると思いますが、試験で出題されやすいものの1つは、

原則を理解しているのを前提に例外を聞く

というものです。

 担保責任が「無過失責任」であることは、

売買5 他人物売買1

で書き、特に重要と思われる瑕疵担保責任については、

売買12 瑕疵担保責任1

以降に書いています。

 土地の工作物の設置・保存の瑕疵の具体例といって思い浮かぶのが広告看板の落下です。たまにニュースになると思います。
 随分前に渋谷センター街の看板が台風の際に落下して死傷者が出たことがあったと思います。センター街の写真を探したら、「渋谷センター街ウェブサイト」に現在の写真がありました。

センター街

 同じ支柱を使っているのかどうか分かりませんが、当時の看板は2つの支柱をアーチ状につないだもので、風がまともに当たるようなものでした。法的な処理がどうなったかは知りませんが、民法的には717条の問題です。

 試験用にはここまでで良いと思いますが、検索したら、「ビルの看板が落下し、ケガを負ったら、誰が責任を取るべきか」がありましたので、参考にして下さい。改めて「占有」を認識できると思います。

 これに対して、国家賠償法2条です。

国家賠償法
2条 道路,河川その他の公の営造物設置又は管理瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは,国又は公共団体は,これを賠償する責に任ずる。
2項 前項の場合において,他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは,国又は公共団体は,これに対して求償権を有する。

 条文上、「公の営造物」の「設置又は管理」です。民法717条の「保存」が国家賠償法2条では「管理」になっていることに一応、注意して下さい。最近は条文の知識そのままの問題は出にくくなりましたが・・・。

 もっと注意しなければならないのは「公の営造物」です。これは「土地の工作物」に限らないことです。
 「公の営造物」を定義した最高裁判列はないと思いますし、「これも公の営造物に含まれるのか」と思わせるような最高裁判列もないと思います。ただ、判例六法には下級審判例が載っていますので、覚えるものではありませんが、「土地の工作物」に限らないというのを頭に入れて貰いために挙げます。

「公の営造物」に当たるとされたもの:
・自衛隊の砲弾(東京地判)
・警察署の公用車(札幌高判)
・拳銃(大阪高判)
・刑務所内の工場の自動旋盤機(大阪高判)

「公の営造物」に当たらないとされたもの:
・国有林野(長野地判)
・市営住宅(名古屋地判)
・防空壕(東京高判-戦後の事件)

 それぞれの事案を見てみないと、どういう状況があってこういう判断になったのかは分かりません。繰り返しますが、覚えるものではなくて、

「土地の工作物」以外も「公の営造物」になり得る

ということだけ、頭に入れておいて下さい。

 今日はここまでにします。

 一寸だけど役にたったと思った方はクリックを・・・。

資格(行政書士) ブログランキングへ