国家賠償法
2条1項 道路,河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは,国又は公共団体は,これを賠償する責に任ずる。

 この設置・管理の瑕疵について、通常有すべき安全性を欠くことと一般に考えられています。基本となるのが「高知落石事故」に関する最高裁判決(最判昭45.8.20)です。

 事案は、国道56号線の一部で以前から落石などがあり、県の土木出張所は過去に、通行止め、「落石注意」の標識や竹竿の先に赤い布切れをつけたものを立てること、見回りなどの措置を講じたことがあったようです。
 昭和38年6月13日の昼頃、降り続いた雨が誘因となって、崩土とともに大小20個ぐらいの岩石が落下し、そのうちの1つが通りかかった貨物自動車の助手席の上に落ちて、助手席に乗っていた人が死亡しました。
 両親が原告となって、国と県を相手に損害賠償請求をしたという訴訟です。

 判決文から重要と思われるところを入れます。

「国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい,これに基づく国および公共団体の賠償責任については,その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。」

 繰り返すまでもありませんが、

営造物が通常有すべき安全性を欠いていること

をキーワードといて覚えておくと良いと思います。

 もうひとつの注意点である「過失の存在を必要としない」という点を後回しにして、被告である国と県に関する部分を先に引用します。

「してみれば,その余の点について判断するまでもなく,本件事故は道路管理に瑕疵があつたため生じたものであり,上告人国は国家賠償法2条1項により,上告人県は管理費用負担者として同法3条1項により損害賠償の責に任ずべきことは明らかである。」

 国道での事故ですので、「国の営造物」の設置・管理に瑕疵があったことによって発生した損害になります。従って、国家賠償法2条1項によって責任を負うのは国です。
 ただ、費用の一部は都道府県が負担しているようで、特別法もあるらしいのですが、基本となる道路法の規定を参考のために入れます。

道路法
(国道の管理に関する費用負担の特例等)
50条 国道の新設又は改築に要する費用は、国土交通大臣が当該新設又は改築を行う場合においては国がその3分の2を、都道府県がその3分の1を負担し、都道府県が当該新設又は改築を行う場合においては国及び当該都道府県がそれぞれその2分の1を負担するものとする。
(2項以下略)

 高知県が費用を負担しているとなると、

国家賠償法
3条1項 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において,公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給,給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは,費用を負担する者もまた,その損害を賠償する責に任ずる。

「公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者」として、この3条1項により高知県も被告になったということだと思います。これが上記引用の判決文が、

「上告人県は管理費用負担者として同法3条1項により

と言っている理由です。

 さて、 「過失の存在を必要としない」 という部分です。
 1審・2審と原告の請求が認められたため国と高知県が上告したのですが、上告理由は予算の制約と天災で、「社会通念上不可抗的に生じた」事故であると主張したようです。その予算について判決文は、

「そして,本件道路における防護柵を設置するとした場合,その費用の額が相当の多額にのぼり,上告人県としてその予算措置に困却するであろうことは推察できるが,それにより直ちに道路の管理の瑕疵によつて生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできないのであり,・・・」

というように、費用を捻出するための予算がないことは理由にならないと言っています。

平成22年・本試験問題
問題20 道路の設置管理に関する国家賠償についての次の記述のうち、判例に照らし、妥当なものはどれか。 2 土砂崩れなどによる被害を防止するために多額の費用を要し、それについての予算措置が困難である場合は、道路管理者は、こうした被害についての賠償責任を免れる。

解答・解説
2 ☓ この判例から出題されているのが分かると思います。

 過去問をもう1つ入れます。

平成23年・本試験問題
問題19 国家賠償法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
2 国家賠償法2条は、無過失責任を定めたものであるが、無過失責任と結果責任とは異なるので、不可抗力ないし損害の回避可能性のない場合については、損害賠償責任を負うものとは解されない。

解答・解説
2 ○ これが正解肢です。判決文の予算措置に関する上記引用部分「あり、・・・」の「あり、」の後は、

「その他,本件事故が不可抗力ないし回避可能性のない場合であることを認めることができない旨の原審の判断は,いずれも正当として是認することができる。」

となっており、本肢はここから出題されているのが分かると思います。
 そこで、「不可抗力ないし回避可能性のない場合」の話になるのですが、今日はここまでにします。

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