前回は、「高知落石事故」に関する最高裁判決(最判昭45.8.20)が、「不可抗力ないし回避可能性のない場合」には、賠償責任を負わないことを示唆している点を挙げて、終わりました。

 「公の営造物」で何らかの損害が発生したということは、

その「公の営造物」が通常有すべき安全性を欠いていたから

と考えるのが自然でしょう。従って、多くの場合は国・公共団体の賠償責任が認められることになります。
 ただ、河川の氾濫による損害は直ちに賠償責任が肯定されることにはならないのですが、これはいずれ改めて取り上げることにして、河川以外の「公の営造物」について責任が否定されている場合を「例外」として挙げることにします。2回前に、出題のパターンの1つは、

原則を理解しているのを前提に例外を聞く

と書きましたが、その例外と考えて下さい。
 「例外」を頭に入れておけば、知らない判例が出ても、

多分、原則通りなのだろう

との推測で、何とかなる(正しい可能性が高い)と思うからです。

Ⅰ.不可抗力
 冒頭に書いたように、「高知落石事故」に関する最高裁判決は「不可抗力(ふかこうりょく)」の場合は賠償責任を免れることを示唆していますが、実際に「不可抗力」の文言を出して賠償責任を否定した最高裁判例はないと思います。少なくとも、拙ブログは思い当たりません。
 ここでは、不可抗力の意味だけ書いておくことにします。有斐閣の法律用語辞典からです。

以下引用

ふかこうりょく【不可抗力】:外部から発生した事故で、取引上あるいは社会通念上普通に要求される一切の注意や予防方法を講じてもなお防止し得ないもの。その事故が予期し得たか否か、また、自然力に出たか人為に出たかを問わない。不可抗力があると、債務不履行責任や不法行為責任を免れると解されており、義務の免除・軽減を受ける場合もある。なお、金銭債務の不履行については、不可抗力をもって抗弁することはできない(民419③)。

引用終了

 最後の民法419条については、

いろいろな債権2 金銭債権・金銭債務

で触れました。

Ⅱ.回避可能性-赤色灯事件
 回避可能性がないとして責任を否定したのが「赤色灯事件」といわれるものです。この判例は、

津波訴訟で思い出した判例など

で入れました。直ぐ上の「不可抗力」の説明もそこで書いたものの繰り返しです。

 事案は、工事中の道路で夜間に起きた事故です。夜は工事をしていませんから、赤色灯標柱やバリケードで工事中の道路であることを分かるようにしていたのですが、ある自動車がこれらをなぎ倒してしまったところ、その直後に通りかかった自動車が工事中であることに気付いて慌ててハンドルを切ったら横の田んぼに転落し、助手席の男性が死亡したというものです。

 判決文を元にしてもう少し詳しく書くと、北進道路を工事中であったある県道で、この工事箇所を表示する標識として、工事現場の南と北各約2メートルの地点に工事標識板および高さ約80センチメートル、幅約2メートルの黒黄まだらのバリケードが一つずつ設置され、バリケード間の道路中心線附近に高さ約1メートルの赤色灯標柱が一つずつ設置されていました。ところが、本件事故が発生する直前に、同所を北進した他車によって前記工事現場の南側に設置されていた工事標識板、バリケードおよび赤色灯標柱はその場に倒され、赤色灯が消えていました。
 ここを通りかかった乗用車がこれに気付いてハンドルを切ったのですが、3メートル下の田圃に転落して助手席の男性が即死しました。

 これについて最高裁(最判昭50.6.26)は、

「右の事実関係に照らすと、本件事故発生当時、被上告人において設置した工事標識板、バリケード及び赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたのであるから、道路の安全性に欠如があつたといわざるをえないが、それは夜間、しかも事故発生の直前に先行した他車によつて惹起されたものであり、時間的に被上告人において遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であつたというべく、このような状況のもとにおいては、被上告人の道路管理に瑕疵がなかつたと認めるのが相当である。」

というように「道路の安全性に欠如はあった」が、「遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であつた」、つまり、結果を回避する可能性がなかったとして、責任を否定しています。

 「回避可能性」について簡単な(雑な)説明を入れると、まずその事態を予見出来たかどうかが問題になり、予見可能性があると予見義務が認められ「予見すべきだった」となります。しかし、それだけでは駄目で、発生する結果を回避できたかどうかという結果回避可能性が次に問題になり、これが認められると結果回避義務が発生し、その義務に違反したということで「過失」が認められると考えるのが一般です。

Ⅲ.予期せぬ行動
 被害者の“想定外”の行動が原因の場合、賠償責任が否定されることがあります

ⅰ)通常の用法に即しない行動
 事案は、6歳の幼児が道路から約4メートル下の高校の校庭に転落し、怪我をしたというものです。判決文から、拙ブログなりに図を描くと、

          ○
         |防護柵
    道路   ○
  ―――――  |   
          |
          |高さ4メートル
          |
          |  >――○ 幼児  
           ――――――――――
             高校の校庭

 道路の端に防護柵を設けていました。これは2メートル間隔で高さ80センチのコンクリート製の柱を立て、その間を上下2本の鉄パイプを通して手すりとしていたものでした。6歳の幼児が上の鉄パイプ製の手すりに座って遊んでいたところ、後ろ向きに高校の校庭に落下したようです。

 最高裁(最判昭53.7.4)の裁判要旨をまず入れます。

裁判要旨
 営造物の通常の用法に即しない行動の結果事故が生じた場合において、その営造物として本来具有すべき安全性に欠けるところがなく、右行動が設置管理者において通常予測することのできないものであるときは、右事故が営造物の設置又は管理の瑕疵によるものであるということはできない

 防護柵自体は「営造物として本来具有すべき安全性に欠けるところがなく」、予想できない行動に基づく場合は設置・管理の瑕疵がないとの判断です。

 判決文から営造物の設置・管理の瑕疵に関する一般論の部分を入れます。

「ところで、国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があつたとみられるかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものであるところ、・・・」

 「諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきもの」というところをざっと頭に入れておけば、試験に出ても対応できるのではないかと思います。

 入れようとした判列がもう1つあり、さらに平成22年と23年の過去問の説明を入れたいのですが、長くなってしまうため、今日はここまでにします。

 一寸だけど役にたったと思った方はクリックを・・・。

資格(行政書士) ブログランキングへ