国家賠償法も最後になりました。残るのは6条と本試験に出題されているのに入れ忘れた2つの判例だけです。

国家賠償法1 沿革と民法715条との違い

を書いたのが昨年の10月11日ですので、途中に時事などが入ったとはいえ、ほぼ1年掛かったことになります。
 条文や判例の結論が載っている本やブログは数知れず、それに対して拙ブログは、

「理解のための情報提供」

との趣旨ですので、これだけの分量と時間が必要だったと考えています。
 それでも国家賠償法の判例はまだ沢山ありますので、本試験では書いていない判例も出るかも知れません。その際は、ここで説明してきた最高裁の考え方を元にその場(試験会場)で判断することになりますが、「その判断が正しい確率」は、相当高くなると信じます。

 今日は6条です。
 外国人観光客の増加が度々ニュースで取り上げられるのみならず、在留許可を得て長期に滞在する外国人も増えているようです。
 これらの外国人が国家賠償法1条1項、2条1項の被害者になった場合に、その外国人は国・公共団体に対して賠償請求ができるのか、という問題です。

国家賠償法
6条 この法律は,外国人が被害者である場合には,相互の保証があるときに限り,これを適用する。

 外国人が被害者になった場合は、その外国人が属する国で日本人が被害者になったときに日本人がその国に賠償請求できるなら、その外国人に対して日本も賠償するというのが6条であり、「相互保証主義」と称されているものです。
 この規定については良心的な学者などからの批判もあるようなのですが(後述する平成20年・問題19の肢2の解説参照)、

国際社会とはそんなものだ

というぐらいに考えれば良いのだろうと思います。
 多くの国が法律で国家賠償制度のような規定を持っているでしょうから、賠償されない外国人というのはそんなにはいないと考えられます。どの国が対象外かというのは拙ブログには分かりません。

平成23年度・本試験問題
問題19 国家賠償法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

3 外国人が被害者である場合、国家賠償法が、同法につき相互の保証があるときに限り適用されるとしているのは、公権力の行使に関する1条の責任についてのみであるから、2条の責任については、相互の保証がなくとも、被害者である外国人に対して国家賠償責任が生じる。

解答・解説
3 ☓ 上掲の6条は「この法律は,外国人が被害者である場合には・・・」というように「この法律は」となっています。つまり、1条と2条を区別しておらず、双方の被害者につき「相互保証主義」を採用していますので、本肢は誤り(☓)です。

平成20年度・本試験問題
問題19 国家賠償制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

2 国家賠償法は、憲法17条の規定を受けて制定されたものであるので、日本国民と外国人とを区別せずに損害賠償を認めている。

解答・解説
2 ☓ 「相互保証主義」を採用していますので本肢は誤り(☓)です。
 なお、国家賠償法6条が憲法17条に違反するかどうかについての最高裁判決はまだ無いようで、平成14年に東京地方裁判所で合憲との判決が出ています(東京地判平14.6.28)。
 この原告はアメリカ人なのに何故か「6条は憲法違反」と主張しています。判決文にざっと目を通したのですが、主張の趣旨が今ひとつ分かりませんでした(1条1項に基づいて賠償請求をしている)。原告のアメリカ人が属する州では国家賠償請求が認められていないのかも知れません。アメリカでは公務員個人が責任を負うのが原則のようですが、判例法主義の英米法系のため、これ以上は拙ブログには無理です。

 書き忘れた判例に入ると長くなりそうなので、憲法関連の余計なことを書きます。憲法の復習だと思って読んで下さい。

憲法
17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

 17条の主語は「何人(なんぴと)も」なので、 「外国人にも“当然に”国家賠償請求権がある」 という説があったようです。
 これは外国人の人権享有主体性についての「文言説(もんごんせつ)」に基づくものだと思われます。「何人も」となっている条文については日本人か外国人かに関係なく適用されるという考え方です。
 しかし、この説は次の条文で破綻します。

憲法
22条2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

 外国人に「(日本)国籍を離脱する自由」はそもそもあり得ないからです。外国移住の自由も外国人なら当然のことで、条文で断るまでもないでしょう。
 外国人の人権享有主体性に関する一般論は、「マクリーン事件」の最高裁判決で一応の決着が付いていると思います。

 外国人と人権については、

マクリーン事件1 外国人の人権享有主体性

新しい人権3 指紋押なつと外国人

外国人への生活保護に関する最高裁判決

で書いていますので、参考にして下さい。

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