「成年」に関する民法改正が国会で成立しました。附則によると施行は、

平成34年4月1日

になっています。つまり、4年先の「2022年、新元号の4年」ですので、今年の試験に直接の関係はありません。
 なお、債権法の大改正を中心とする改正民法の施行は平成32年(2020年、新元号の2年)4月1日ですから、それよりも2年後になります。

 拙ブログは「明日にでもしなくちゃ」と思ったことが1年以上先になることが珍しくない物臭で、個人情報保護法の改正を書いていないどころか、行政不服審査法の改正もまだブログに反映していないぐらいですので、今日を逃すと何年先になるか分からないことから、書いておくことにします。

 改正法自体は衆議院の「議案」にあった「民法の一部を改正する法律案」で直接読めますし、以下もこれを元にして書きました。
 現在の条文を先に、改正条文を後にします。いつものように条文の漢数字はアラビア数に換え、「第○○条」の「第」は省いて書きます。

Ⅰ.成年を「18歳」に
 成年年齢が「18歳」になります。これが一番大きな改正点でしょう。

現在の条文:
(成年)
4条 年齢20歳をもって、成年とする。

改正条文:
4条 年齢18歳をもって、成年とする。

 未成年者については、


で書いています。
 ついでの話になりますが、大改正で意思能力の規定が新設されると最近に書いた記憶がありますので、入れておきます。

平成32年(2020年、新元号の2年)施行の大改正:
3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

 従来は、

「条文はないが、民法の解釈上当然」

とされていたものを明文化したようです。
 意思能力と行為能力の関係については、


を参照して下さい。

Ⅱ.婚姻適齢を「18歳に統一」
 婚姻適齢が男女とも18歳になりました。

現在の条文:
(婚姻適齢)
731条 男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない。

改正条文:
731条 婚姻は、18歳にならなければ、することができない。

Ⅲ.未成年者の婚姻における「父母の同意」を削除
 未成年者の婚姻の際に必要とされた父母の同意に関する規定が削除されました。

現在の条文:
(未成年者の婚姻についての父母の同意)
737条 未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
2項 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。

改正条文:
削除

 拙ブログを検索したら、737条については書いていませんでした。
 737条は「親権者」とせずに「父母」とし、それも2項で緩和しています。これは、

「子供なんだから、結婚したいなら周りの大人に一応相談してみろ」

というような趣旨の規定で、一番近い「周りの大人」として「父母」が挙がっています。そのため2項で、片方が反対してももう片方が同意すれば足りるというようになっているのです。
 18歳を大人(成人)とするとともに婚姻適齢も18歳にしましたので、「未成年者の婚姻」ということ自体がなくなり、削除されるのでしょう。

Ⅳ.737条の削除に伴う740条の改正

現在の条文:
(婚姻の届出の受理)
740条 婚姻の届出は、その婚姻が第731条から第737条まで及び前条第2項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。

改正条文:
740条 婚姻の届出は、その婚姻が第731条から第736条まで及び前条第2項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。

Ⅴ.成年擬制の削除
 18歳を成年とし、婚姻適齢を18歳に統一しましたので、上記「未成年者の婚姻」がなくなったように、「成年擬制」の存在意義がなくなり、削除されます。

現在の条文:
(婚姻による成年擬制)
753条 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。

改正条文:
削除

Ⅵ.養親となる年齢の維持
 今回の改正があっても個別の法律では「20歳以上」・「20歳未満」を維持したものも少なくありません。
 民法上も「養親となる年齢」を維持したようです。

現在の条文:
(養親となる者の年齢)
792条 成年に達した者は、養子をすることができる。

改正条文:
792条 20歳に達した者は、養子をすることができる。

 個別の法律に関しては、「民法の一部を改正する法律案」の「附則」の6条以下を見て戴ければ分かります。飲酒と喫煙を入れます。

現在の法律名:
未成年者喫煙禁止法
未成年者飲酒禁止法

改正法律名:
二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律
二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律

 漢字カタカナになっているのは、法律自体が古くて条文が漢字カタカナのため、法律名もそれに合わせたからなのでしょう。
 条文は入れませんが、附則10条では公営ギャンブル(競馬法、自転車競争法、小型自動車競走法、モーターボート競走法)についても「20歳未満は駄目」を維持しています。

Ⅶ.792条の改正に伴う改正

現在の条文:
(養親が未成年者である場合の縁組の取消し)
804条 第792条の規定に違反した縁組は、養親又はその法定代理人から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、養親が、成年に達した後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。

改正条文:
(養親が20歳未満の者である場合の縁組の取消し)
804条 第792条の規定に違反した縁組は、養親又はその法定代理人から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、養親が、20歳に達した後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。

 以上です。

 一寸だけど役にたったと思った方はクリックを・・・。
資格(行政書士) ブログランキングへ