新設大学について次のような協定書が市と学校法人との間で交わされたとします。

「大学用地として市有地約15ヘクタールのうち10ヘクタールを無償譲渡、5ヘクタールを無償貸与する。また、開学資金100億円のうち、50億円を市が提供する。」

 このような協定に対して、あなたはその是非をどう判断しますか?

 今日の産経新聞1面トップ(15版)は「苫小牧駒澤大が中国化する」でした。その横にカコミで「苫小牧駒澤大学」の説明があるのですが、ネット上で見当たらないので、記事から(ネット上の2頁)引用します。

以下引用(太字は済印によるもの。以下同じ)

 譲渡されるのは、苫駒大の敷地15ヘクタール(10ヘクタールは苫小牧市からの無償譲渡で、5ヘクタールは無償貸与)と校舎、図書館(蔵書数10万4千冊)、備品類で、全て無償だ。総資産は約40億円で雑書類や備品を加えると50億円を超えるという。

引用終了
 苫小牧駒澤大学が中国と関係の深い京都市の学校法人に無償で譲渡されるという記事の譲渡の内容について説明している部分です。

「15ヘクタール(10ヘクタールは苫小牧市からの無償譲渡で、5ヘクタールは無償貸与)」

というように、大学用地は市から無償で提供されている(譲渡と貸与)と書いてあります。
 そこで確認のため検索したところ、この譲渡を扱った苫小牧民報の3月29日付「文科省に設置者変更の申請へ 苫駒大-京都育英館に移管」にはこう書いてありました。

以下引用

 1998年の苫駒大開学を前に、市と駒大は協定書を96年8月に締結。市はこれに基づき、キャンパス用地として錦岡の市有地約15ヘクタールのうち10ヘクタールを無償譲渡、5ヘクタールを無償貸与した他、開学資金に50億円も提供した。

引用終了

 土地の無償提供は事実のようです。上に触れたネット上で見付からなかった産経新聞の説明には、

以下引用

・・・設立資金95億円のうち総額53億円を市などが負担した「公私協力」の大学。

引用終了

となっています。お解りのように冒頭の「協定」はこれを元に作成したものです。

 大学の新設に際して地方公共団体が土地を無償提供し、補助金を支給するというのが加計学園で問題になっています。 大学の新設なんてことには全く関心がなかったのですが、補助金の額などの内容は違うとしても、土地の提供や補助金自体は加計学園が特別に優遇されているとも言えないようです。

 加計学園について「週刊朝日 3月17日号」に載ったらしい「第2の森友疑惑 安倍首相“お友達”大学に公有地36億円を無償譲渡」にはこう書いてありました。

以下引用

 アッキーが名誉校長を務めるはずだった“愛国”小学校を建設中の森友学園が国有地を激安で手に入れた疑惑が連日、国会で取り上げられている。そんな中、「第2の森友疑惑」が急浮上した。

 愛媛県今治市議会で3月3日、可決された2016年度補正予算案の内容が、にわかに注目を集めている。

 この決定は、今治市内の土地を、新設される岡山理科大獣医学部の用地として無償で譲渡するというもの。広さ16.8ヘクタール、約36億7500万円相当の広大な土地をタダであげ、さらに23年までの学校の総事業費192億円のうち、半分の96億円を市の補助金で負担するという。まさに至れり尽くせりの厚待遇である。

引用終了

 苫小牧駒澤大学が貸与分を含めて全体で15ヘクタールなのに対し、加計学園は16.8ヘクタールだそうで、大体同じです。15ヘクタールという広さの実感が全くないのですが、加計学園は獣医学部と同様、苫小牧駒澤大学は国際文化学部だけのようですから、単科の大学の広さというのはこのぐらいなのかも知れません。

 また、補助金についても額は異なりますが、「半分を補助」という点は同じなのだと感じます。

 地方に大学を誘致するという例が全く思い浮かばないので、他にも同様な例があるのかないのかは確認出来ませんでした

 それでも、

市が土地を提供
大体半額を補助

という点で、両校は一致します。そうすると、上記週刊朝日の記事は何を問題にしているのか、改めて検討することが必要なのだろうと考えてしまいます。例えば、

・苫小牧駒澤大学も大物政治家の働きかけがあり(仮定の話であって、現実にあったかどうかは不明)、加計学園で同様のことが繰り返されようとしている
・加計学園では苫小牧駒澤大学の倍近い補助金が支給される

というように、「加計学園の問題」が変わってくるように思われます。

 「総理のご意向」によって「行政がゆがめられた」点ついては、

a.岩盤規制を破って獣医学部新設に至った点でゆがめられた
b.京都産業大学にすべきだったのに、加計学園に決まった点でゆがめられた

のどちらなのかも前川前文部科学事務次官に改めて聞く必要があるのかも知れません。
 因みに、a.について拙ブログが規制緩和に賛成であることは書いてきましたし、b.については過去の経緯からすると加計学園が認められるのは順当なのではないかと考えています。

 以上、マスメディアは大学新設に関する他の例を検証せずに加計学園だけを取り上げて問題にしているらしい、という話でした。