真田家の旗と言えば「六文銭」(幸村は大坂の陣では使わなかったらしい)、武田家の旗と言えば「風林火山」というのは知っていますが、徳川家は「葵のご紋」を、豊臣家は「五三桐(五七桐)」を旗印に使っていたのかというと途端に自信がなくなります。映画やテレビで見たという記憶がありません。ざっと確認したら、実際には使っていたようなのですが、当然のことだからなのか全く印象に残っていないのです。

 子供の頃から散々見ているはずの戦国時代の旗でさえこうなのですから、李舜臣将軍が使った旗なんて知る由もない訳で、「使っていたんだ!」と言われれば、ただ「そうなんですか」と思うしかありません。日本のメデイアも拙ブログと変わらないようで、例えば朝日新聞の「韓国軍艦、豊臣軍破った李舜臣の旗を掲げる 国際観艦式」にもこう書いてあります。

以下引用(太字は済印によるもの。以下同じ)

 また、韓国海軍は、文在寅(ムンジェイン)大統領が演説した艦艇のマストに、豊臣秀吉の朝鮮侵略で豊臣軍を撃破した李舜臣将軍が使ったものと同じデザインの旗を掲げた。・・・

引用終了

 「李舜臣将軍が使ったものと同じデザインの旗」となっています。

以下引用

 韓国は11日に南部済州島(チェジュド)で開かれた観艦式で、文在寅(ムンジェイン)大統領が乗艦する駆逐艦の左舷のメーンマストに、抗日の象徴として英雄視される李氏朝鮮の李舜臣(イスンシン)将軍の旗を掲揚した。

引用終了

 「李舜臣(イスンシン)将軍の旗」となっています。
 そんな中、ツイッターを見ていたらこんなツイートがありました。
 現在も放送中のようですから韓国人は「李舜臣将軍の旗」と受け取ったのでしょう。

 実際に見たわけではありませんが、「ENJOY korea」の中で日韓が論争した際、日本側が根拠の提示を求めると「テレビドラマでやっていた」なんて回答があったそうで、それを思い出しました。そこで検索してみたら、togetterに「【注:追記あり】NHK『韓国観艦式で李舜臣の旗』がってそれ本当?」がありました。様々な分野の詳しい方がネット社会にはいますので、それなりの分析ができているようです。その中のひとつ。
 どうもこの映画が元と考えて良いようです。 「NHK、『イ・スンシン(李舜臣)将軍が使った旗』という “韓国の妄想ストーリー” を疑うことなく放送する」にさらに詳しい説明がありました。

 恐らく、李舜臣将軍の死後で近代以前に旗自体は存在したのでしょうが、「辛未洋擾」で使われるとともにアメリカに奪われ、平成19年(2007年)に韓国に返還されたとのことで、平成19年(2007年)10月22日付「辛未洋擾で米国持ち帰った帥字旗、136年ぶり帰還」から。

以下引用

 1871年に米国が江華島を攻め朝鮮開国のきっかけとなった「辛未洋擾」で、魚在淵(オ・ジェヨン)将軍が指揮する朝鮮軍は米国に立ち向かったものの大敗し、魚将軍の「帥字旗」は米国の戦利品として持ち去られたままになっていたが、この帥字旗が136年ぶりに故国の空に翻った

引用終了

 「136年ぶり」ということなので韓国内でそれなりに話題になり、その図柄は韓国民に浸透したものと想像します。「サクラの旅(7)・海軍士官学校博物館」によると旗は海軍士官学校博物館にて展示されているようです。入れませんが、リンク先には写真も載っています。

 「バトル・オーシャン 海上決戦」は平成26年(2014年)製作だそうなので、プロデューサーか監督かそれ以外の誰かが韓国民にとって「古い由緒ある旗」として馴染みがあるこの旗を「李舜臣将軍の旗」として使いそれが定着して文在寅大統領ほかの政府要人も信じてしまったのではないでしょうか。信じていなければ、国際舞台で披露するなんてことはできないでしょう。

 以上の推理が当たっているとすると

たった4年前からの話なのか?

ということになりますが、


でも書いたように、「旭日旗=戦犯旗」が平成23年(2011年)1月以降なのにもかかわらず執拗に攻撃し、自衛艦の不参加を「勝ち取った」と考える人たちです。

 既に韓国内でも例えば朝鮮日報の「なぜ今になって韓国は旭日旗に怒っているのか」では、

以下引用

 戦犯旗とは通称、侵略戦争を起こした犯罪者を意味する「戦犯」と、「旗」の字を合わせた単語だ。国立国語院によると、戦犯旗は韓国の標準国語大辞典に正式登録された単語ではない。ここ10年の間に韓国国内で作り出された新造語とみられる。また、法的・学術的に通用する概念でもない。・・・

引用終了

と書いてあるようです。
 なお、この記事は朝鮮日報の日本語版にはないので、「カイカイch」をリンクしました。朝鮮日報日本語版に「6日付『なぜ今になって韓国は旭日旗に怒っているのか』記事への韓国読者コメント」というのがありますので、上記引用部分が存在したことはほぼ間違いないと思います。

 また、元は韓国経済新聞のようなのですが、中央日報日本語版にあった「韓経:【コラム】対日外交、『感情』より『事実』を前面に出すべき」にもこんな記述があります。

以下引用

 だが「戦犯旗」という単語がここ5~6年の間に韓国で作られた新造語という点まで考慮すると、旭日旗追放という主張が海外世論の共感を得るのは決して容易ではない。何より、韓国は日本が1952年に旭日旗を海上自衛隊旗に採用した時も、1998年と2008年観艦式で旭日旗掲揚艦船が入港した時も異議を唱えなかった。その時は大丈夫で、今回はダメだという客観的理由を果たして説明することができるだろうか。

引用終了

 さらに、5ちゃんねるの「【旭日旗】 韓国だけが使う『戦犯旗』という言葉では他国の理解を得られない~別の戦略的思考が必要だ[10/06]」によると、「[ファクトチェック]旭日旗は戦犯旗?『戦犯旗』はない」という記事もあったようです。

 このようないくつかの記事があっても多くの韓国国民は「旭日旗=戦犯旗」と今現在も信じているのでしょうから、「李舜臣将軍の旗」も今後「反日の象徴」としていろんな場面で登場してくると考えられます。事実の有無よりも「自分が信じたいものを信じる」ということです。
 事実で韓国人を説得しようなんて“大それた希望”は棄てるしかないのでしょう。

[追記]
 続編のようなものを


に書きました。