マイケル・ジャクソンが亡くなったあとの
ある種の「マイケル・ブーム」には、
気持ちの上で、乗れない部分があった。
むしろ、抵抗を感じていた。
マイケルがスゴイ!好きだ!王だ、神だ!と言うなら、
生きているうちにもっと言ってあげたらよかったじゃないか、
と感じてしまうのだ。
亡くなったのを機に思い出したかのように、猫も杓子もマイケル、
というのはなんだか・・・
と、夏以来ずーーっと感じてきた。

そもそも、マイケル・ジャクソンは、
わたしにとっては”初体験のひと”、である。
というのも、
実は、小学生のときに初めて自ら買った音楽のカセット(当時はカセット!)が、
マイケル・ジャクソンのアルバム「スリラー」だった。
白いジャケットを着て横たわるマイケル・ジャクソンの姿に
初めて「オトナの音楽」を手にした気がして、
8歳か9歳なりに、ふふふ、と背筋を延ばしたものだ。

わたしがアメリカ・シアトルで過ごしたのは、
80年代前半、つまり、MTVが始まったころである。
MTVに加入していた両親の知人のお宅で遊んでいたとき、
たまたま「スリラー」のミュージック・ビデオがオンエアされた。
仰天した。
ほかの大人向けの音楽とは一線を画した、おもしろさ。
こどもでも目が離せなくなるストーリー性。
曲はポップで覚えやすく、
それに合わせてゾンビたちが踊るんですから!
その日から虜になってしまったことは言うまでもない。
その後、カセットを手に入れ、
擦り切れるんじゃないかというほど、何度も聴いた。
間違いないなく、自分の音楽感覚の基礎には、
マイケル・ジャクソンのエッセンスが練り込まれている。

それでも、
抵抗があったのだ。
ブームよりも、切なさのほうが先に立った。
あえて、マイケルが特集されている記事とかテレビとかも
避けてきたところがある。

しかし、映画「THIS IS IT」は
ぜったいに映画館で見ておいたほうがいいと、
複数の信頼する友人に薦められ、
行ってみることにしたのだ。

どうだったのか。
結論から言うと・・・
ほんとうに観にいってよかった!!!

細かいところがどうのこうのという以前に、
見ているうちに、
この上ないポジティブな気持ちになる。
もちろん、音楽やダンスがすべてカッコイイため、
めちゃめちゃ興奮するというのもある。
立ち上がり、踊りたくなってしまうほど、体が疼く瞬間もあった。
しかし、それだけではない。
マイケル・ジャクソンの「天才性」と「人間らしさ」両方が垣間みえるドキュメントを通して
希望が湧く。
そんな彼とともにライブを練り上げる、スタッフ、ダンサー、ミュージシャンたちの
情熱、努力、プロ意識に感銘を受ける。
すべてのディテールに対するマイケル・ジャクソンの真摯な姿勢に、
生きて、表現をするということへの純粋な夢を感じる。
そんな、「夢」とか「希望」とか「愛」とか「使命」とか、
ちょっと照れくさいようなストレートな感情が自然と体内に生まれるのだ。
漢方薬的な効果があるかも、と思うほど、
シネマに入る前のわたしと、出てくるときのわたしは
別の次元を歩いていた。優しいエネルギーに満ちていた。

ここまで思う映画って、なかなか無い。

そして、すごいのは、
やるはずだったライブ本番よりも、
今回のドキュメント版のリハーサルの方が、
もしかしたら、
マイケル・ファンに限らない、世界中の多くの人に届く可能性があり、
それぞれの心をつよく揺さぶるかもしれない、と感じたことだ。

イタリアの天才芸術家ミケランジェロは
晩年、多くの彫刻を未完成のまま残しているが、それは、
「神の愛」のような美しく、壮大なテーマを
彫刻上で物理的に表現することの限界を
天才の嗅覚でかぎとった故ではないか、という説もある。
(イギリスの神経生物学者、セミール・ゼキによる)
だから、あえて作品を未完成のままに残し、
鑑賞者に想像の糊しろを与え、その想像力で補ってもらうのだ。
すると、表現できないほどの美しさや壮大さは、
鑑賞者の脳の中でちゃんと完成する。
ミケランジェロはこれを計算して未完成にした可能性もあるというのだ。

「THIS IS IT」を見ていて、そのことを思い出した。
銀幕に映るのは、完成した本番ではない、
未完成の破片、bits and piecesだ。
それをつなげて完成品にするのは、わたしたちに委ねられている。
マイケル・ジャクソンが醸し出すメッセージを読み取るのも、われわれ次第。
すると、ことばに出来ないほど壮大なスケール感が、
円のように完全な、ほの温かい熱が、
体内に残る。
これは、伝説の人としての運命だったのだろうか?
それとも、マイケルは、生前、こういう可能性を考えたことはあっただろうか・・・
なんだか、いろいろなことを考えてしまう。
とにかく、言えることは、マイケル・ジャクソンは天才だ。
どこまで自覚していたかわからないけれど、天才。
そして、"マイケル・フォーエバー"の本質が、腹に落ちた。

この記事の異常な長さからも、わたしの興奮ぶりが伝わるだろう。
もちろん、わたしが今ちょうど、このような前向きなきっかけを渇望していたから、
これだけ心に響いているのもある。
観て、ほんとうに、ほんと〜うに、よかった。
計り知れないほどのインスピレーションを戴いた。

Thank you, Michael.....
sincerely, yours.

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