2022年08月07日

魔女の館

 コーヒーカップがソーサーにゆっくり置かれ、カチャンと小さな音が静かな部屋に響く。館の主である魔女・ノエラは優雅なひとときを過ごしていた。
 魔女ではあるが年齢は25歳。膨大な魔力と数多の魔法の知識を除けば、魔女の風格といった大それたものがあるわけでもなく、年相応の一般的な女性だ。
 綺麗に整えられた長い茶髪が特徴的なノエラは、かなり大きく主張の強い豊満な胸、丸くハリのある臀部、運動能力の乏しさに反してがっちりとした太さの脚、それでいてきっちり引き締まっているくびれなど、同性からも嫉妬されるようなスタイルの良い体型を備えており、その意味では並みの女性ではないかもしれない。

 しかし、その静穏な時間に終わりを告げる気配が館に近付いてきていた。
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2022年05月08日

ファスナーの秘密

(……ファスナー?)

 私の見間違いかと思い、目を擦ってからもう一度我が親友、樽見琴音(たるみ ことね)の背中をまじまじと見つめた。琴音の首筋にはファスナーがくっついてた。

(いやいや、素肌にファスナーって。……でもあれって、そうだよね……?)

 見間違いではないみたいだけど、それはそれで疑問が解消されない。いったいなんなんだ、アレは。気になって仕方がない。
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2022年03月04日

常識的な憑依6 ~回帰~<完>

 朝食を終え、食器を下げて、制服に着替えて、まだ不慣れではあるものの一連の動作は昨日と同じだ。途中、身支度は七尾さんのお母さんに手伝ってもらった。

「大変お世話になりました。学校に行ってきます」
「行ってらっしゃいませ、三雲さん。またいつでもいらしてください」

 七尾さんのお母さんに見送られて、七尾さんの家を出発した。七尾さんのお父さんは先に出勤したので家にはもういない。
 七尾さんの両親とも優しくていい人だったけれど、ブレスレットで変な補正がかかってしまっているので、元々の人柄はわからないままだ。物腰丁寧なところはたぶん元のままなんだと思うけれど。

 昨日とは逆方向に、七尾さんの家まで来たときの道を逆に辿りながら学校を目指した。
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2022年03月02日

常識的な憑依5 ~煽情~

 リビングに戻ってお風呂から上がったことを七尾さんのお母さんに伝えると、髪の毛を乾かすのを手伝ってくれた。このあたりは聞いたところでうまくやれる気がしないので、お言葉に甘えて乾かしてもらった。

 このまま部屋に戻って寝ると伝えたら、七尾さんの歯ブラシはこれだと教えてくれた。そうだよね、ちゃんと歯を磨かないとね、と歯ブラシを手に取ってそれを見つめた。続きを読む

2022年02月28日

常識的な憑依4 ~水浴~

 階段を下りて最初に通された部屋に向かうと、すでに夕食が準備されていた。いい匂いだ。

「あら、三雲さん。もう少ししたら呼びに行こうと思っていたところでした」

 危なっ。やっぱり部屋に来るつもりだったんだ。セーフ。続きを読む

2022年02月26日

常識的な憑依3 ~熟視~

 案内されたトイレに入った僕は、便座をじっと見つめていた。別に普通のトイレなんだけど、今は僕の身体が普通じゃないので緊張する。が、さすがに膀胱がそろそろ耐えられなくなっていて、いつまでもこうしてはいられない。
 意を決してスカートとショーツを下ろして便座に腰かけた。ここも見てみたいけれど、まずは用を足そう。まだ慌てなくていい。
 すっと心を落ち着けてから、尿意を我慢してきつく締めていた力を抜いていった。続きを読む

2022年02月24日

常識的な憑依2 ~転換~

 釈然としない顔をしている道川を横目に見届けて、顔をゆっくり左右に振ってあたりを見回した。部室には道川しかいない。七尾さんの姿がない。僕の視界には黒いものがふわりと現れ、そして耳元に髪の毛が当たっているようだ。
 確認のために、目の前に置かれているさっきまで七尾さんが使っていた鏡を手に取って覗いてみた。小さくてかわいらしい唇が特徴的な、長い黒髪の美少女、七尾さんが驚いた様子で目を見開いてこちらを見ていた。続きを読む

2022年02月23日

常識的な憑依1 ~祝福~

「ハッピバースデートゥーユー♪」

 僕たちが歌う誕生祝いを聴いていた本日の主役、七尾(ななお)さんは顔を輝かせた。

「ありがとうございます、香音(かのん)ちゃん、三雲(みくも)くん。私のために」

 七尾さんはにこにこと微笑みながら深々とお辞儀をした。そんなにかしこまらなくてもいいのにと思うけれど、そんなところに彼女の魅力が現れている。

「もう、そんなにかしこまらないでよ~。今日は遥奈(はるな)の17歳の誕生日なんだし、もっと偉そうにしてていいんだからね。でもそんなところも好き~」
「か、香音ちゃん……!」

 道川(みちかわ)も同じことを考えていたようだ。っていうか、どさくさに紛れて七尾さんに抱きついている。ずるいぞ。
 その一方で、七尾さんは照れているようだ。嬉しいやら恥ずかしいやらで感情が忙しそうだ。

「ちょっと、何見てんのアンタ。見世物じゃないんだから、しっしっ」
「えっ、ひどくない?」

 目の前でベタベタしてるところを見せつけておいて見るなだなんて無茶にもほどがある。道川は今日も今日とて強引だ。続きを読む

2021年12月15日

色を植え付け蝕む魂

箱守聖奈(はこもり せいな)は本日の委員会活動を終えて、他の委員と集まっていた。

「箱守さんもお疲れ様でした」
「お疲れ様でした。委員長」

各委員にねぎらいの言葉を掛けていた委員長が聖奈に対しても同様に声を掛けると、聖奈は綺麗なお辞儀で委員長に挨拶を返した。長い黒髪をふわりとなびかせながら身体を起こす聖奈のその姿はとても上品で、育ちの良さがにじみ出ている。
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2021年10月06日

快適な部屋の作り方

永原直希(ながはら なおき)が昼食を終えると、時計は13時近くを示していた。

「さて、午後はどうしようかなあ」

土曜日の昼下がり、前日までの仕事の疲れでのんびりと午前を過ごした直希は、午後の過ごし方を考えていた。

「んー、そろそろ部屋を掃除しないとなあ」

直希は部屋を見回した。一人暮らしで誰も部屋に入れない日々が続いているせいで、直希の部屋は散らかり放題だった。

「はぁー、面倒くさいなあ。でもそろそろやらないとなあ。でもなあ……」

踏ん切りがつかない様子の直希だった。
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