2023年05月11日

憑依初心者

 チャイムが鳴って結構時間が経っている。急いで教室に戻ってきて時計を確認すると9時55分を差していた。もう2時限目の古典の授業が始まっている。保健室で思っていたより時間を取られてしまっていたようだ。ただ寝かせてくれればよかったのに。
 授業はあと残り35分だが仕方ない。俺としては別に休み時間に食い込んだって構わない。どうせ1時間しか続かないんだからそんなに焦らなくていいか。

 さて、と。窓側の一番後ろの席だ。向かう途中で空席となっている俺の席を眺めた。誰かが俺の欠席を先生に伝えてくれただろう、きっと。
 窓際最後尾の席、そこに座っている長坂霧乃(ながさか きりの)の背後に立った。授業中にそんな不審な行動をする俺に対して誰も注意をしない。教卓で教科書を手に授業をしている吉田(よしだ)先生も、長坂の隣の席の四宮(しのみや)も、そして長坂も。それで今の俺が透明で誰にも見えてないことが確認できた。
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2023年01月07日

雑記と合同誌宣伝(2023.1.7)

 もう1月7日ですが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 昨年11月にようやく『風紀委員の使命5』を投稿することができました。5年と1日もお待たせしてしまい大変申し訳ございませんでした。残りはあと2話の見込みですが、続きはあまり長くお待たせしないように頑張ります。今年中に完結させられればという高いような低いような目標を掲げておきます。

 続いて宣伝です。昨年んごんごさん(@ngongo_TSF)主催の乗っ取り小説合同誌『DARK POSSESSION合同』に参加させていただきました。全部で5作品掲載されていますが、私は憑依小説『公衆電話の怪』を寄稿しております。また、投職さん(@tousyoku)から挿絵も戴いております。書いた作品が同人誌になるという貴重な機会と素敵なイラストをありがとうございます。
 私は事情により自分で同人誌を作る可能性がないため、今回の機会は大変ありがたく、また運よく時間の都合がギリギリつく頃合いだったため、無事本の形として文字が残ることになりました。実を申し上げると執筆期間中にあの流行り病に感染していたため、一時期ピンチだったりしたのですが、それもまた一つの経験として。もうかかりたくないですね、アレは。

 ということで、下記リンクから合同誌の電子版をお買い求めいただけます。よろしくどうぞ。

○DLsite
https://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ01012813.html

○FANZA
https://www.dmm.co.jp/dc/doujin/-/detail/=/cid=d_256895/

 以下「続きを読む」に公開されている分あたりまで冒頭を載せておきます。初稿版なので製品版とは若干体裁や文言が異なります。
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sumimist at 18:30コメント(0)雑記

2022年11月13日

風紀委員の使命5

「ふっふっ、ついに西畑亜海を堕としたぞ……!」

瀬田は部屋で一人、ターゲットのうちの片方である亜海を手中に収めたことに喜びを噛みしめていた。

「本当はもっと大笑いでもしてやりたいところだがな……。くそっ」

瀬田は飛鳥たちの通う桜鳥女子高校で教師として勤めていた。しかし、元教師であった瀬田は高校から解雇処分を受けており、そのことは周辺の住民にも知れ渡っている。そのため、変な行動をするとどうしても目立ってしまうので、日常の行動からこれ以上不審がられないように細心の注意を払って生活している。

「表向きいい人を演じるのも楽じゃねぇんだよ。西畑亜海さん、だなんてあんなやつにさん付けとか気色悪いってんだ」

ぼそぼそと吐き捨てている言葉は誰に聞かせるというわけでもなく、自らの精神を落ち着けるために呟いている。

「なんにせよもうすぐだ。次はあの忌まわしき月崎飛鳥だが、その前に……。ふっふっ」

これからの計画のことを考え、笑いを堪えきれない様子の瀬田であった。
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2022年08月07日

魔女の館

 コーヒーカップがソーサーにゆっくり置かれ、カチャンと小さな音が静かな部屋に響く。館の主である魔女・ノエラは優雅なひとときを過ごしていた。
 魔女ではあるが年齢は25歳。膨大な魔力と数多の魔法の知識を除けば、魔女の風格といった大それたものがあるわけでもなく、年相応の一般的な女性だ。
 綺麗に整えられた長い茶髪が特徴的なノエラは、かなり大きく主張の強い豊満な胸、丸くハリのある臀部、運動能力の乏しさに反してがっちりとした太さの脚、それでいてきっちり引き締まっているくびれなど、同性からも嫉妬されるようなスタイルの良い体型を備えており、その意味では並みの女性ではないかもしれない。

 しかし、その静穏な時間に終わりを告げる気配が館に近付いてきていた。
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2022年05月08日

ファスナーの秘密

(……ファスナー?)

 私の見間違いかと思い、目を擦ってからもう一度我が親友、樽見琴音(たるみ ことね)の背中をまじまじと見つめた。琴音の首筋にはファスナーがくっついてた。

(いやいや、素肌にファスナーって。……でもあれって、そうだよね……?)

 見間違いではないみたいだけど、それはそれで疑問が解消されない。いったいなんなんだ、アレは。気になって仕方がない。
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2022年03月04日

常識的な憑依6 ~回帰~<完>

 朝食を終え、食器を下げて、制服に着替えて、まだ不慣れではあるものの一連の動作は昨日と同じだ。途中、身支度は七尾さんのお母さんに手伝ってもらった。

「大変お世話になりました。学校に行ってきます」
「行ってらっしゃいませ、三雲さん。またいつでもいらしてください」

 七尾さんのお母さんに見送られて、七尾さんの家を出発した。七尾さんのお父さんは先に出勤したので家にはもういない。
 七尾さんの両親とも優しくていい人だったけれど、ブレスレットで変な補正がかかってしまっているので、元々の人柄はわからないままだ。物腰丁寧なところはたぶん元のままなんだと思うけれど。

 昨日とは逆方向に、七尾さんの家まで来たときの道を逆に辿りながら学校を目指した。
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2022年03月02日

常識的な憑依5 ~煽情~

 リビングに戻ってお風呂から上がったことを七尾さんのお母さんに伝えると、髪の毛を乾かすのを手伝ってくれた。このあたりは聞いたところでうまくやれる気がしないので、お言葉に甘えて乾かしてもらった。

 このまま部屋に戻って寝ると伝えたら、七尾さんの歯ブラシはこれだと教えてくれた。そうだよね、ちゃんと歯を磨かないとね、と歯ブラシを手に取ってそれを見つめた。続きを読む

2022年02月28日

常識的な憑依4 ~水浴~

 階段を下りて最初に通された部屋に向かうと、すでに夕食が準備されていた。いい匂いだ。

「あら、三雲さん。もう少ししたら呼びに行こうと思っていたところでした」

 危なっ。やっぱり部屋に来るつもりだったんだ。セーフ。続きを読む

2022年02月26日

常識的な憑依3 ~熟視~

 案内されたトイレに入った僕は、便座をじっと見つめていた。別に普通のトイレなんだけど、今は僕の身体が普通じゃないので緊張する。が、さすがに膀胱がそろそろ耐えられなくなっていて、いつまでもこうしてはいられない。
 意を決してスカートとショーツを下ろして便座に腰かけた。ここも見てみたいけれど、まずは用を足そう。まだ慌てなくていい。
 すっと心を落ち着けてから、尿意を我慢してきつく締めていた力を抜いていった。続きを読む

2022年02月24日

常識的な憑依2 ~転換~

 釈然としない顔をしている道川を横目に見届けて、顔をゆっくり左右に振ってあたりを見回した。部室には道川しかいない。七尾さんの姿がない。僕の視界には黒いものがふわりと現れ、そして耳元に髪の毛が当たっているようだ。
 確認のために、目の前に置かれているさっきまで七尾さんが使っていた鏡を手に取って覗いてみた。小さくてかわいらしい唇が特徴的な、長い黒髪の美少女、七尾さんが驚いた様子で目を見開いてこちらを見ていた。続きを読む

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