イギリス、なんて言ってると、状況が見えない。CNNなどでは、イングランドとブリテンを分けている。日本のニュースではEU崩壊か、などと言っているが、それ以前にブリテンが瓦解する。もともとブリテンがイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの同君四ヵ国連合で、この四ヵ国連合がまとまってさらにEU、すなわち、ヨーロッパ連合に加盟する、という二重の連合形態を取ってきた。これにもともと無理があった。

 今回の国民投票は、ブリテン4ヵ国連合としての残留か離脱かという話で、4ヵ国連合として離脱が決まったとしても、スコットランドや北アイルランドがEUに加盟することはできないことではない。もちろん、現状では、これら4ヵ国は独立国家ではなく、主権も持っていないが、ここまで方向性が異なると、ブリテン連合として維持していくことの方が無理だろう。スコットランドのブリテンからの独立は、昨年、否決されたとはいえ、数年以内に確実に再可決されることになる。

 さらに面倒なのはアイルランド。アイルランドは、ブリテンとは別の独立国だが、北部をブリテンに「占領」され続けている。独立アイルランドは、EUに加盟しており、通貨もユーロ。これによって、かつての最貧国は驚異的な成長を遂げている。占領下の北アイルランドにおいても、総体としてEU派が強く、ブリテンの経済支援が弱い以上、ブリテンから離脱して、EU下のアイルランドとしての統一をめざす可能性が高い。

 いずれにせよ、移民労働力はもちろん、それに頼っていた外国企業も、もともとEU市場相手なのだから、イングランド・ウェールズからは逃げ出す。これまで米国と同じ英語圏ということで外国企業を集めてきたが、立地や語学のメリットを失い、いよいよ老人閉塞国家としてイングランド・ウェールズは凋落する。スコットランドが独立し、アイルランドが統一するまで、EU帰参はできないだろうから、外国企業は、工業国のドイツかチェコに拠点を移すだろう。

 イングランドの中でも、へたをすると、ロンドン市だけ独立国家になってEUに加盟する、という可能性すらある。ヴァティカン市国のように、ヨーロッパの主要都市の多くは、もともと地域とは別の独立都市国家。女王は、総じて同君連合であれば、それぞれの国が主権を持って、個別にEU加盟することに反対するまでもあるまい。ただ、経済圏としてできたEUの大統領制と、ブリテン諸国の伝統的な王政とは、もともと調整が難しく、たとえロンドン市国やスコットランド、アイルランドがEUに加盟したとしても、EUの中心になることはない。